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勇者と姫のそれから  作者: べるこさん
第2章 地球編
79/135

079

「ねぇ 直輝君さぁ 調子に乗ってない?調子に乗ってるよね」


クラスメイトの女子 桜さんに 詰め寄られ 言葉通り 告白とかではなかったようだ。

ここは この様な刺々しい空気の似合う場所の定番の体育館裏で 先輩 後輩を含め10人の人間に囲まれている。

何で俺が・・・・。心の中で盛大に溜め息をつく。

桜さんは 俺を睨みつけながら更に言葉を続けた。


「それで 説明してくれるかな?」


「何を?」


10人が 一斉に殺気だち 桜さんは 苛立ちを募らせた。


「どうして 君が姫様と一緒に登校してたかよ!」


「それは 俺に聞かれてもな。君達から踊子さんに聞いてくれよ」


「いいわ、分かったわ。一応 弁解の機会をあげたつもりだったのだけど 必要はなかったようね」


彼女が目配せをすると 竹刀を持った剣道部に所属する先輩が俺の前へと進み出て桜さんと入れ替わった。名前は知らないが 全国クラスの強者だとは聞いている。確かに構えは様になっているが 隙が多い。素人相手に本気になれない辺りがきっと、全国止まりの理由なのだろうが・・・・。

とは言え 素人相手に本気を出しつつ加減するのは難しい。先輩も怪我くらいはさせるつもりだろうが 病院送りにするほどの大事にはしたくないはずだ。

まあ、それは俺も同じなのだが・・・・。

いや 寧ろ少し怪我でもして 頭から血でも流してやれば 彼らのストレスも多少は緩和されるのか?

そんなことを考えながら俺に向かって 降り下ろされる竹刀をただ じっと眺めていた。

が、風を切り裂く音と共に先輩の竹刀は弾けとんだ。いや、もっと正確に言えば 爆発とか爆裂とかの表現になるだろう。

先輩の竹刀は花が開いたようになっている。


「お前たち 何をやっている!」


振り替えると 踊子さんが 木刀を片手に立っていた。踊子さんの木刀の一閃が 先輩の竹刀を爆裂させたのだ。


「ひ、姫様 わ、私たちは・・・・その・・・・姫様にまとわりつく悪い虫に天誅を・・・・」


「馬鹿者!」


踊子の一喝で 10人 全員が竦み上がった。ヤレヤレと言った表情をし今度は俺と向かい合う。


「直輝君もあの程度の一撃など簡単にかわせるだろう?」


「いや、受けていれば彼らの気もすむのかなと」


先輩は 『あの程度』の言葉や俺が気にも止めていない態度に少しムッとした表情をするが 次の踊子さんの言葉に驚き目を白黒させることになる。


「直輝君は兄上の渾身の一撃を易々とかわせるのだ。返り討ちにすれば良いのだ。直輝君が怪我でもしたらどうする」


踊子の兄 出雲さんは 武道部総代の踊子でさえ 手も足もでない まさに達人級の腕前を持ち その出雲さんの渾身の一撃を 避けたと言う事実は剣道部の彼ばかりか その場に居た全員が度肝を抜かれた。


「あの・・・・姫様、えっと 直輝君と姫様の関係って?」


踊子さんの俺への気遣いや 話の内容から 桜さんは おずおずと俺との関係を尋ねてきた。


「直輝君は 私の将来の伴侶となるお方だ!お前たち よく聞け。もしこれ以上 直輝君に手出しをするようであれば 私が直々に 天誅を食らわしてやる!」


「伴侶って、何ですか!そんなこと 私達は認められません。姫様はみんなの・・・・」


踊子は今まで見せたこともない険しい表情で 彼女達を睨み付け その眼光に怯え気圧された彼女は言葉を詰まらせた。


「私はお前たちの許可がなければ恋をすることも許されないのか!」


「そ、それは・・・・だけど やっぱり姫様はみんなの姫様でないと!」


「あのー 二人とも落ち着いて」


当事者であるはずの俺は取り残されていた。しかし 言いたいことは山のようにある。同時に二人は黙れと 言わんばかりに睨んでくるが ここで屈すれば 取り返しのつかない状態になりそうだ。


「踊子さん、大体 将来の伴侶って何だよ?」


「つまりだな 私も君の婚約者候補に立候補すると言うことだよ」


「待ってれ!俺は別に婚約者を募集などしてない!!」


「ん?そうなのか。だったら 候補を外して 婚約者で構わないぞ」


「だから!なんで そうなるんだ?そもそも 俺は踊子さんを 彼女にしたいとか そんな目で見たことなんかないんだ」


「だったら これから そう見てくれ。私は 容姿には多少の自信はあるし 鍛えているから スタイルもいいぞ。それに意外かもしれないが 料理もできて嫁としては 最高だと思うのだかな?」


踊子さんから 笑みが消え真剣な眼差しで俺を見詰め しばしの沈黙が、流れる。そして、ゆっくりと口を開いた。


「私は自分の好きになる人は自分で決めたいと考えている。兄上でも クラスメイトでも 家族でもない 自分自身の意思で決める。しかし 私には 課せられた使命があり 誰でもいいというわけではなかったのだ。私はな・・・・以前から君に好意を寄せていた。だが 実らぬ恋だということも分かっていた。だが 今は 違うだろ?昨日 私の全てを知っただろう?もう 私の心を阻む物はなくなった。

言っただろ?『覚悟するように』と、私は これからは 全力で君を奪いにいく!」


踊子さんの 告白を聞き終え その場に居る全員が 呆然とする。その中から 桜さんはいち早く覚醒し口を開いた。


「姫様のお気持ちはよく分かりました。これより 私たちは 姫様の恋を全力で応援する事にします!姫様の幸せは 私達の幸せでもあるのです。どうか 私達にお任せください!!」


「おお、そうか!それは頼もしい。これからもよろしく頼むぞ!」


「いやいやいやいや、ちょっと 待ってよ!俺の気持ちは・・・・・」


そこで、始業のチャイムが鳴り 踊子さんは俺の言葉を遮る。


「おっと チャイムが鳴ったな。ホームルームが始まってしまった。みんな急いで 教室に戻るのだ!」


「はいっ!」


集まった者たちは一斉に教室に向かい 踊子さんや桜さんも歩き出した。俺がその場に立ち尽くしていると 踊子さんが振りかえり声をかけてきた。


「何をしている。直輝君も急いだほうが良いぞ」


何か 上手く踊子さんのペースに乗せられたような気がする・・・・。

俺は 来た時と同じように 心の中で 盛大な溜息をつき 二人のあとを追った。




教室の前に着くと 既にホームルームは始まり マリアの自己紹介の途中のようだった。昨日 打ち合わせた通りに 上手くやっているようだ。

踊子さんが 自己紹介の最中に入り邪魔をしては悪いと 終わるまで 扉の前で待つことになった。

マリアの透き通った 美声は 扉越しでも良く聞き取れる。


「・・・・・・・・・・・・・最後に 私には婚約者が居ます」


「えーーーーーーーーーーーーーーーー!」


教室内は 悲鳴とも怒号とも取れる声が広がった。


そして 俺も心の中で 「えーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!」と叫んだのは 言うまでもない。


「その婚約者は このクラスの直輝さんです」


「えーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!!!!!!!!!」


教室内は もうパニック状態になっている。俺も慌てて 教室に飛び込もうとしたが 後ろから 強烈な力で肩を掴まれ 振り返る。

そこには 鬼の形相の桜さんが居た。


「直輝君 どういうことかな?君には 舞姫様が居るんだよね?さあ もう一度 体育館裏に行こうか・・・・」





その後 踊子さんの口添えもあり 桜さんの尋問を受けることなく 事なきを得た。

俺は自分の席に座り ぼんやりと教室の中を眺めている。三年ぶりの学校、自分の席 全てが懐かしく思える。実感できる。


帰ってきたんだ。

だけど なんだろう?

ポッカリ 心の中に穴が空いたような この喪失感は?何か,何かが足りない。そんな気がする。思い出そうとしても 思い出せない。


「直輝さん?」


俺が 考え事に没頭していると 心配そうに隣の席からマリアが声をかけてきた。


「ああ、大丈夫だ」


すると 不思議と喪失感や 気になっていたことも 心の奥底へと沈んでいった。思い出さなければならないことがあったことすら 忘れるほどに・・・・


朝霧先生は マリアの婚約者発言でだったらと わざわざ俺の隣をマリアの席にした。嬉しいような 迷惑なような・・・・。


「ところで なんであんなこと言ったんだ?」


「あんなこととは 何でしょうか?」


「だから 婚約者とかなんとか・・・・」


「それですか。それは 男性の方々が 彼氏はいるのかとか 付き合ってとか うるさく仰るので はっきりと しておいたほうが良いかと思いまして」


「だからって・・・・」


軽く頭痛がしてくる。それは,マリアとの会話だけが原因ではない。


「ねえ、直輝 少し話があるんだけど」


目の前には遥がなんとも表現のしにくい表情で立っているのが 頭痛のもうひとつの原因だ。


「もう授業も始まるし 昼休みでもいいか?」


「ええ」


授業が始まり 取り敢えず 先生の話に集中するが 懸案事項が多すぎて 集中しきれない。その上 休み時間の度に 遠巻きに俺とマリアを見ては コソコソ噂話に花が咲いている。

しかも それは このクラスだけではなく 先輩や後輩まで 見に来ているのだから 登校時に引き続き 針のむしろだ。


ようやく 昼休みになったが さてどうしようか?遥は話があると言っていたが マリアを放っておくわけにもいかないし・・・・。

話の内容は まあ、想像はついている。となれば、マリアは連れていかないほうが良いのだろうが 困った。


「直輝さん 遥さんとお話してきてくださいね」


「でも それだとマリアが一人に」


「私は子供ではありません。食事くらい一人でとれますし 直輝さんがいらっしゃらないほうが クラスメイトと交流が持てるでしょうし」


確かに マリアと喋りたそうにしている人間は多そうだ。マリア程の社交術があれば 問題はないだろうと 言葉に甘えることにした。


「遥、行こうか?」


先ほどから 俺たちをチラチラ見ている遥の席まで行き声をかけた。

遥も立ち上がり 二人で教室を出ようと歩き出したとき 椅子の倒れる大きな音がした。

桜だ。

彼女は椅子が倒れるほどの勢いで立ち上がったのだ。

そして 爆弾を投下した。


「直輝君!あなたには 舞姫様が居ながら マリアさんだけでなく 遥さんにも 手を出すつもりなの?少しは姫様の気持ちを考えたらどうなのよ!」


投下された爆弾は このクラスだけでなく 学校中に衝撃を与えることとなり 遥との会談も 持ち越しとなってしまった。



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