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勇者と姫のそれから  作者: べるこさん
第2章 地球編
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075

「人払いの結界?」


周囲からは音が消え 数度温度が下がったような錯覚に囚われる。すると 茂みの奥からこちらへ向かい魔力の塊が近づいてくる。俺もマリアも その方向を凝視し身構えた。

魔力の塊は茂みから ガサガサと音を立て唸り声を上げながら 姿を現す。


「ガルルルゥゥゥ・・・・」


牙を剥き 涎をたらし 唸り声を上げるその姿は一点を除き 野犬そのものだ。しかし 決定的に違うのは その大きさ。体長は 優に2メートルを超えていた。

俺もマリアも こいつを見たことがある!


「・・・・・大オオカミ?」


ここに居るのは一頭であるが モニリの森で散々 倒した大オオカミそのものだった。


「何故、ここに!?」


動揺しつつ観察するも目の前に居る魔物は こちらを攻撃する意思は明らかなので 反撃の準備を整えようと 集中する。

ところが、マリアは俺の前へ出ると


「私にお任せください」


マリアは 既に魔力を集中し いつでも発動できる状態だった。魔力をコントロールし 押さえることを常に強いられていたので ストレスの発散とばかりに 全身に魔力をみなぎらせている。


行きます! と言った後、素早く詠唱を終えると手のひらを 魔物に向ける。

すると 数千 数万の風の(やいば)が 魔物に放たれた。一つ一つは 小さな刃であるが その数により 大オオカミは 削られてゆく。

敵に反撃を許す事も無く 一瞬で戦闘は終わった。

魔物が立っていたところには 魔結晶が残されているが、それもすぐに 崩壊し消滅した。

通常 魔物を倒し 出現したばかりの魔結晶が 消滅する事などない。それも 向こうの世界ではという事なのか?もしくは 似て非なるものなのか?

疑問を残しつつも 人払いの結界は健在であるり 術者がまだ近くに居る。術者を探そうと 俺も魔力を放とうとした時 その必要は無くなった。その者はゆっくりと こちらに歩を進めてくる。

5メートルほど離れたところで 立ち止まり 俺達の前で跪く。


「あなた様のお力を試すようなまねをしたことを まずは お許し願います」


ローブを纏った男は 目を伏せたまま 恭しくそう言った。


「私は 魔術結社 アレティ−アに所属する魔術師 響と申します。以後 お見知りおきを」


俺は 驚きを隠しきれない。もしかしたら この世界にも魔法はあるかもしれないと マリアに言ったものの 実際は そこまで真剣な言葉ではなかったのだ。寧ろ 心の中の大半は 無いと思っていた。しかし 目の前に現れた男は 自分を魔術師と名乗り 実際に 人払いの結界を展開させたいるのだから 疑いようも無く この世界には 魔法が存在する。


響と名乗った男は立ち上がり、俺達を見据える。今まで ハッキリ見えなかったが こうやって対峙すると 響の姿は若く 俺と同年代と思われる。


「お迎えに上がりました。さあ! 参りましょう・・・・・我等が 魔王様!!」


!!!!!!!!!


今 なんと言った?魔王だと? こいつはいったい・・・・・。

俺とマリアは見詰め合うが お互いに 動揺が隠せないでいる。「魔王」この言葉に 俺達は散々苦しまされてきた。そして、この世界に戻っても尚 付いて回るというのか!?

俺は 響の言葉の真意を知りたくて 口を開く。


「お前は いったい何を言っているんだ?魔王ってなんだよ?」


「お前のような 普通の人間には 用は無いが・・・・我が結社の事を知ったからには 生きて帰す訳にはいかない。とは言え ここまで魔王様に付き従ってきたのだ 褒美として 痛みも感じず楽に逝かせてやるから安心しろ」


響は侮蔑の篭った視線で俺を睨みつけ、手を俺に向け口を モゴモゴ動かすと 掌から小さな火球が現れる。

いや、その火力だと痛そうだし 死ぬまで時間がかかり相当 苦しいだろう!まあ、ここで死んでやる謂れはないが。

響の魔法に興味が失せたわけではないが 俺の意識は 違う方へ向いていた。

響が火球を放つと 俺の意識を向けていた それは 俺と響の間に割り込むと 持っていた 剣 いや、片刃で反りのある形状からして 刀を振り払い 火球をその剣圧のみで 弾き返した。


「これは、舞姫では ありませんか。邪魔しないで頂きたい」


「人殺しを 見逃すことなどできん!」


舞姫と呼ばれた割って入った者は女性のようだ。まあ、姫と呼ばれているのだから 当たり前か。気になるのは なんとなく声に聞き覚えがあるような気がすることだ。


ジリッと 間を詰める舞姫に対し 響は視線だけで 周囲を確認する。俺もだが 響も気付いているのだろう、舞姫の味方と思われる人間が 二人 物影から響を狙っている。


「どうやら 多勢に無勢のようだ。ここは、引かせてもらおう。魔王様、また日を改めてお迎えに上がります」


「響よ!ここで会ったが というやつだ。みすみす 逃がすと思うな!」


響は 舞姫の言葉を涼しい顔で受け流すと 懐から二つの小瓶を取り出し 地面に投げつける。割れた小瓶から ビー玉のような玉が転がり出すと 周囲にもやが発生し そのもやは 玉へと吸収されていく。もやは どうやら凝縮された魔素のようだ。視界を奪うほど広がり また、すぐに玉へと吸収されそこには二匹の大オオカミが、立っていた。


舞姫は、大オオカミが、実体化した瞬間に 地を蹴り二匹の大オオカミの間に割り込み 舞姫と呼ぶに相応しく 舞うように刀を振るった。

大オオカミは、唸り声をあげることもなく消滅する。しかし、視線を響に戻したときには もうその姿はなかった。

どうやら魔物を囮にして、逃げ出したようだ。

刀を鞘に戻さず 振り向いた舞姫


「えっ!? 踊子・・・・さん?」


踊子さんは 俺の同級生だ。そして、俺の通う学校の女子武道部の総代でもある。武道部とは 剣道や柔道 弓道や薙刀 合気道など あらゆる武道 格闘系の部活を一つにまとめた部なのだ。以前は それら全て独立した部だったのだが踊子さんの入学と共に一変する。

彼女が入学し 女子の武道系の部に 体験入部すると その部のレギュラーどころか その競技の大会記録をも易々と塗り替え どこの部からも引く手数多の状態になり 果ては部同士の抗争まで発展する。

そこで、当時から生徒会長であった彼女の兄である 出雲さんが それらの部を統合し 一つの部 「武道部」としたのだ。そして 一年生ながら彼女を武道部の総代に据え全ての競技に参加できるようにした。

踊子さんの 容姿 立ち振る舞いは とても美しく いつしか 「姫」と呼ばれていたが その後 名前の「おどりこ」の意味と合わせ 「舞姫」と呼ばれるようになっていた。

また、競技中の姿が 流れるように 滑らかで まるで舞を舞っているように見えたことからも 舞姫の名を定着させることとなった。

言ってみれば、マリアが 西洋風の姫なら 踊子さんは 和風の姫といった感じである。


踊子さんは とても美人だ。美人度で言えば 遥も負けてはいないが 滲み出る気品や優雅さを含めれば 遥など足元にも及ばない。

男女問わず人気が有るが 特に女子からの人気が高い。男子からすれば 近寄りがたいのだ。

故に 恋愛対象としては 男子からは遥の方が親しみやすく人気が有る。とは言え いつも遥の側には俺が居たため それ程 告白されたりとかは無かったらしいが その分 俺が妬みの対象となった。

迷惑な話だ・・・・。

一方 踊子さんは 女子から 所謂 「お姉様」として見られているようだ。その上 親衛隊的な取り巻きがいつも側に居る。踊子さんは気にする様子もなく 一方的に付いて回る 金魚の糞のようだ。

しかし 彼女達は恐ろしい。

一年 二年と踊子さんと 同じクラスなのだが 朝 彼女に挨拶され 挨拶を返すと

「何を馴れ馴れしく 声をかけている」

と、殺気の篭った視線で睨まれ

だったらと 聞こえない振りをすれば

「何を姫様の言葉を無視しているのか」

と、怨みの篭った視線で睨まれる。

最近では 長年の経験で編み出した技で切り抜けていた。

挨拶を受ければ 0.1秒だけ視線を会わせ その瞬間に小さく 会釈をすると言うものだ。

まったく 迷惑で情けない話だ・・・・。


そんな制服姿の踊子さんが 日本刀を片手に厳しい表情で俺達を睨み付けている。

うちの学校の制服は 男子は学ラン 女子はセーラーとオーソドックスだが、最近の私学にしては 寧ろ珍しいような気もする。

セーラー服で 刀を持っている姿は 何かのアニメの1シーンを見ているようで 現実味がなかった。


「直輝君!その女から離れるんだ!!」


「えっ?」


「今ので分かっただろう?その女は魔女なのだ。君は騙されている!」


言っている意味が 分からない。俺もマリアも呆然としてしまう。


「ナオキさんのお知り合いですか?」


「あ、ああ 学校の同級生だ。だけど、どうして ここに?」


「私は 激しい敵意を彼女から感じるのですが・・・・。寧ろ 先程の響と言う方の方が友好的に感じます」


「だよな?まあ、俺は、その響に殺されかけたけど。兎に角 話をしてみるよ。マリアはいつでも身を守れるようにしておいて」


「わかりました」


踊子からは確かに敵意を感じる。それもマリアに向けての敵意をだ。

こんな 殺気を放つ踊子さんは初めて見た。何度か 踊子さんの試合を観戦したことはあるが その時ですら こんな殺気を感じた事はないし どちらかと言えば澱みや小波すら立っていない水面のようにも感じたほどだ。まあ 当時の俺は 勇者スペックではなかったので 分からなかっただけかもしれないが・・・・。


「踊子さん 兎に角 落ち着いて。話を聞いてよ」


「いいから、直輝君は黙っているんだ!私が 君を助けてあげるから」


駄目だ 聞く耳持たずだ。彼女は 掌をマリアに向けると そこに一気に魔力が集まり 何かしらの魔法が放たれようとしていた。


無詠唱?


俺の知る魔法では 詠唱は必須だ。技術として 詠唱短縮や無詠唱はあるし俺にもできる事なのだが それには 短縮したり なくした部分を魔力で補完しなければならない。つまり 同じ魔法を発動するにしても 普通に詠唱するのに比べると 短縮で1.5倍 無詠唱だと 2~5倍もの魔力が必要となる。

しかし 踊子さんから感じられる魔力は とても小さい。シオンさんと同程度だろうか?この程度の魔力で無詠唱での魔法発動など 不可能に近いはず。だが、彼女は 平然とそれを行っている。

もしかすると 俺の知る魔法と まったく違う物なのかもしれない。

いやいやいやいや!!!

何を 冷静に 解説しているんだ!

そもそも どうして 踊子さんが 魔法を使えるんだ!?


踊子さんが マリアに向かい 魔法を放とうとした瞬間・・・・・


パシィィィィーーーーー!


小気味いい音が 周囲に響き渡った。

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