073
トイレを済ませ 建物の中を散策すると スタバがあった。飲み物は自販機でいいかと思っていたが 金があると思うとつい 財布の紐が緩くなる。
スタバに入り 普通のアイスコーヒーと あまーいコーヒーを二つ頼んだ。
これは、遥の好みなのだが マリアもこれでいいだろう。
トレイに飲み物を乗せ 二人の元へ戻ると ナンパされている。これ程の美少女が二人もいるのだから仕方がないと思いつつも 美少女過ぎる二人に無謀にもチャレンジしたこの男たちに寧ろ敬意を評したい。
とは言え 放置もできないし 少なくとも一人は自分の婚約者だと思うと面白くもない。
「お待たせ!」
最初から喧嘩腰で挑む必要もないしトラブルは避けたいので 努めて 明るく軽く 声をかけた。
「何ですか~ 僕ちゃんは あっちに行っててね?」
男たちは振り向き 俺を一瞥するなり 相手をしないと言う雰囲気だ。
「君達 あんなの待っていたの?あんなのより 俺達と遊んだ方が絶対 楽しいよ。さあ、行こう」
男の一人がそう言って 遥の腕を掴もうとしたとき 俺は割り込んで 遥に飲み物のトレイを手渡した。
遥は手が早すぎだ。腕を掴もうとしていた男に 一撃 入れる体制だったのを制しトレイを押し付けたのだ。
遥を落ち着かせるためにも 笑顔で見詰めると 毒気が抜けたのか 平常心を取り戻したようだ。
さて、後は こいつらか・・・・ぶっちゃけ 面倒だ。振り向き 男たちに向かい 一言。
「お兄さん 俺の女に手を出されては困りますよ」
おお!一度は言ってみたい台詞ベスト10に入りそうな事を言ってしまった!
マリアは うっとりした表情で 見詰め 遥は 呆れてシロい目で見詰めてきた。どちらにしろ 急に恥ずかしくなってきた。
「おいおい ボク~ カッコつけるのはいいけど 分かっているよね?」
三人は 凄んでくるが・・・・。
「ねぇ こっちが笑って済ませれるうちに 引いてくれると助かるんだけどな」
俺も 男達を睨み付け その視線に少しだけ 殺気を乗せると 三人は数歩 後ろに下がる。そして 顔を見合わせ アイコンタクトの末 捨て台詞をはいて 立ち去っていった。口汚く罵られはしたが 気にもならないし 穏便に済ませる事ができたのでよかったのだろう。
「二人とも大丈夫?」
「はい!ナオキさんが助けに来てくださると信じていましたので」
マリアは満面の笑みでそう言ったが 遥は 厳しい表情で俺を睨み・・・・。
「あなたは 誰?」
「えっ?」
「あなたは 誰なのよ!」
「俺は直輝だけど?」
遥の視線を受け止めつつ 優しく見詰め返す。何か混乱していたようだが はっ と我に返った。
「ごめん・・・・そうよね 直輝よね。私 何言ってるんだろう・・・・」
「遥どうしたんだ?そんなに 怖かったのか?」
「その・・・・直輝の雰囲気がやっぱり変わったような気がしたから・・・・えっと・・・・その・・・・なんだか、急に格好良くなったような・・・・」
そう言った後 俺と目が合うと頬を染め 視線を逸らしモジモジしている。遥のこんな乙女な姿を見るのは初めてで新鮮だ。とても愛らしく抱き締めたくなるほどだが マリアさんの目が怖くなりそうなので我慢しておこう。
しかし、『雰囲気が変わった』か・・・・。そうだろう、人は三年もあれば変わりもする。決して悪い意味ではなく 自分で言うのもなんだが 経験を積み 成長する事もまた 過去から見れば 『変わった』ことになるはずだ。
「取り敢えず コーヒーでも飲んで 落ち着こうか」
また、三人でベンチに座りコーヒーを嗜む。
「これ、とっても甘くて 美味しいですね」
マリアは 何にでも簡単に感動してくれるので チョロ過ぎる。元い、何でもしてあげ甲斐がある。
一方 遥はと言うと ニコニコと これまた、美味しそうに飲んでいる。
「直輝さ よく私の好きなのを知っていたわね?」
「まあ、付き合いが長いからな お前の好みくらい把握してるさ」
俺の言葉を聞くと また、赤くなり恥ずかしそうにそっぽを向いた。
ヤバイ・・・・遥が 一々 可愛過ぎる。
昼の時間までは もう少しあるのでショッピングエリアをブラブラすることにした。ベンチから立ち上がり建物のほうへ向かうが 二人は付いてこない。見ると マリアが遥に何か耳打ちをしている。
「遥さん 先程の質問 よく考えてみてくださいね」
当然 俺には聞こえなかったが マリアは一方的に何かを言うと 小走りで近づいて来て また腕にしがみ付いた。遥は しばらくその場で固まっていたが 何かの思いを振り払うかのように頭を激しく振ってマリアと同じように 腕にしがみ付いた。
嬉しいのだけど、視線が・・・・。
歩きながら 遥に昨日の買い物の内容を教えた。
「何よ、全然 足りないじゃない」
男の俺に 女の子の必要なものなど分からないし マリアもこの世界の常識がないので 仕方がないのだが。
「そうか?思い付く限りは買ったんだけどな」
「全然駄目!そうね 例えば ブラシは買った?」
「買ってないけど 家にあるぞ?」
「ブラシは家族で共有するのも嫌って言う子もいるのよ。それに 出先で使うことだってあるのだから自分用のは必要よ」
「そう言うものか?」
「そういうものよ!」
やっぱり、女の子の事はよく分からない。マリアも 話は聞いているものの 内容までは理解していないようだ。考えてみれば この世界の常識を知らない以前に お姫様だけに 一般人としての常識すらない。
「そう言えば さっき 大きな百均があったよな?そこで、要りそうな物を揃えようか?」
「直輝にしては 良いアイデア!私も見たいものがあるし 行ってみよう」
一緒に百均の店内には入ったが 百均であっても女の子の買い物は男には退屈で仕方がない。俺はすぐに飽きて 一人で店内を物色したが それすらすぐに飽き 店の前のベンチに腰掛け スマホを弄りながら二人を待つことにした。
スマホで投稿小説を読み耽り 気が付けば 30分以上も経っている。しばらく ベンチから店内の様子を窺っているとようやくレジに並んだ。二人は会計を済ませ 俺のもとにやって来るが 大きな袋を二つも持っている。
「そんなに 一体 何を買ったの?」
「女の子には 色々 あるの!」
「あるのです!」
二人は 照れながらも 言いきるが 袋の上の方にはスナック菓子が 見える。
「色々ね~」
慌てて袋を後ろに隠すが もう遅いですよ!
お釣りとレシートを受けとるが五千円以上使っている。まさか ほとんどお菓子じゃないかと 心配になる。
「こんなに買うとは思わなかったよ。これだったら最後に来たらよかったね。取り敢えず 邪魔だし ロッカーに入れよう」
荷物をロッカーに入れ 昼御飯に向かう。
「マリアさんは日本に来たばかりだから 色々楽しめる方が良いわよね?」
そうだなと頷くと
「それじゃあ そこにする?」
遥の指差したのは ビュッフェ形式のレストランで、所謂 バイキングというやつだ。
「良いんじゃないか?」
「あっ でも私、あまりお金 持ってきてないしなぁ~」
確かに こういった店は 単品や定食の店より少し割高だ。遥は甘えるように 上目遣いで見詰めてくる。
クソッ
こんなときだけ 女の武器を使いやがって!
「付き合ってもらった礼におごってやるよ」
「やったー!だから 直輝の事が大好きよ」
言いながら 更に体を密着させる。
遥からは 微かだが それでもとてもいい香りがする。それに 掴んでいる腕には 柔らかな感触が・・・・。
「おい、遥?」
遥はようやく 自分の言葉と行動に気付いたのか 慌てて 俺から離れ真っ赤になり俯いた。
私、どうしちゃったんだろう?
どうして 直輝にあんなこと。
直輝に私を見てもらいたかったから?
今まで そんなこと 意識したこともなかった。
違うかな?意識はしていたけど
アーーーー!
分かんないや。
でも やっぱり 好きなんだろうな・・・・。
「おーい はるか~ もどってこ~い」
心ここに有らずな遥に直輝は声をかけると 意識は現実に回帰する。
その様子をマリアはしたり顔で見詰めていたことは 直輝も遥も気付いてはいなかった。
食事を終え 更にショッピングエリアをウロウロとしたが ここはそれほど広くもないため すぐに 見終わってしまう。
とは言え その間にも 何軒かのお店で買い物の追加があり その度に俺は一人 店の前でスマホをいじることになった。
「さて そろそろ 帰ろうか?」
海も見れたし ショッピングエリアも一通り回れたので声をかけた。だが、マリアは
「帰る前に もう一度 海を見ておきたいのですが 駄目でしょうか?」
「いいよ、それじゃあ そこから出たところで 見ておいて。俺はロッカーから荷物を取ってくるよ」
俺は 外の広場に出る出口を指差す。そして 二人と別れ ロッカーへと向かった。
「ん~~~~ 潮風っていいですね。風に香りがあるのがとても新鮮な感覚です」
外の広場に出て マリアは軽く伸びをしながら言った。
「私 また、向こうで見てきますね」
そう言うと 遥の返事も聞かないまま 少し離れた手すりのところまで 駆けていく。
マリアを見送り 遥は 壁際に設置されたベンチに腰をかけ また 直輝の事を 考え始めた。
ショッピングエリア2階にある海に面したテラスに 先程のナンパ三人組が居た。
「ちぇ さっきのガキ ムカツクな」
「いや、あの目は ヤバかったって」
「そうだな、マジ ビビった」
「でも あの女の子達 可愛かったよなぁー」
「なんで、あんなガキに!」
「おい!下 見ろよ」
「おっ さっきの子だ」
「ちょっと 脅かしてやろうぜ」
三人もそれ程 悪気があったわけではない。ちょっと脅かすだけのつもりだった。
つもりだったのだが・・・・。
「おーい」
三人は 下に向かって 声をかけると 遥は ベンチから立ち上がり 周囲を見回しようやく 上に居る三人組を見つけた。
彼等は手を振り そして・・・・
壁の補修用に組まれた足場があり その足場は 2階テラスの手すりに 固定されていた。三人は そのロックを外し 足場をゆすったのだ。
下に居る 遥を脅かすため 少し揺らすだけのつもりだったのだが 足場の足は 土台から滑り 遥に向かって 倒れていく。
遥は 成す術もなくただ、立ち竦むのみだった。
マリアが 振り向くと 三人が 足場を揺すっているところだった。マリアは 遥に向かって 全力で駆け出していった。もう少しと言うところで 足場は 傾き遥に向かって 倒れてくる。
--間に合わない!
マリアは 遥に覆い被さり その場に倒れ込む。
足場が二人に接触するかと思った瞬間 マリアたちを淡い光が包んだ。マリアの足首に付けていた ミサンガの結界が発動したのだ。足場が地面と衝突すると 周囲に大量の砂埃を巻き上げる。砂埃が落ち着く頃には 結界の効力も消え マリアは 遥に手を貸し立たせてやった。
「上手く 足場の隙間に入れたみたいです」
マリアは 魔法を秘密にしなければならないと思い 少々 無理のある嘘をつきながらも 心の中では 『また、ナオキ様は私を助けてくださいました』と ナオキに感謝を伝えた。
「バカ!なんて 無茶するの。もし マリアさんに何かあったらどうするのよ。それに 直輝だって悲しむじゃない!」
「遥さんに何かあっても ナオキさんは 悲しみますよ」
ハッ とする遥は もうそれ以上何もいえなくなってしまった。
ナオキは 二つの大きな袋を抱え 広場に出ようとしたその時 外から 大きな音が聞こえたので 慌てて 走り出した。そこには 足場が倒れ 周囲を砂埃が覆っている。野次馬から 女の子が二人 巻き込まれたと聞き 不安が募るが すぐに 俺の結界が発動している事に気付き 少し安心する。俺は更に五感の全てを総動員して二人の状態を確認するが どうやら 怪我も無く無事のようだ。
この様な時は 勇者のスペックに 感謝するしかない。
だが、何だろう?違和感を感じる。何か 思い出せそうで 思い出せない。もう少しで・・・・
何か掴めそうに思えたとき 俺の視野に入り 認識すると 思いは急激に意識の奥底へと消えていった。
見上げると 先程のナンパ三人組が居たのだ。慌てて逃げる姿を見ると 凡その事情を把握した。
そして、俺は 三人組を追いかけた。
人気なの無い 建物と建物の隙間の路地のようなところで 三人は 相談している。
「おい、どうする?」
「さすがに、ヤバいぞ・・・・」
「でも あの子は もう 駄目だろ?だったら 俺達の事は ばれないって・・・・」
「ねえ、俺の女に手を出すなって 言ったよね?」
ピクリとした三人は ゆっくり振り返る。
俺の怒りは頂点に達していたが 殺すのは不味いと言うくらいの冷静さは残しつつもただで 帰すつもりは毛頭無かった。どうしてやろうかと 考えながら 先程の数倍の殺気を視線に込め睨みつけると・・・・
三人は 失神し失禁している・・・・。
その哀れな姿を見ると急に冷めてしまい 放置する事にした。とは言え 責任は取ってもらう。警備員に 事故の犯人だと伝え 俺はマリアと遥の元に向かった。
その後 俺達も事務所で事情を聴かれ 遥の証言と防犯カメラの映像により 三人が犯人だと確定され 彼等はパトカーで 連れて行かれてしまう。
自業自得だ。
俺達は かなりの額の ここで 使えるお買い物券やお食事券を貰った。ハッキリとは言わないが 口止め料らしい。大人の世界って・・・・。
まあ また マリアに海を見せに来てやろう。タダで買い物と食事ができるのだから・・・・。




