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勇者と姫のそれから  作者: べるこさん
第2章 地球編
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071

--17年前

とある森林地帯。そこに聳え立つ洋館。噴水に手入れの行き届いた庭。一見すれば森の中にある邸宅と言った感じだが それこそが異形であった。レンジャーやハンターすら滅多に足を踏み入れない深い深い森の奥、そこだけ 絵本を切り抜き張り付けたような景色が広がっていたのだ。

その洋館の一室、学校の教室よりも広そうな部屋に キングサイズよりまだ大きい天蓋付きのベッド 部屋自体もおとぎ話に出てくるお姫様の部屋のようだった。ベッドに横たわる美しい少女、端整な顔立ち 病的なまでに白い肌 まさに作り物のような美しさはドールと言ってよい程だ。

深夜

その少女は静かに目を開く。時をおかず 一人の執事がベッドの脇に控えていた。彼は いかにも執事と言った風貌の執事だ。


「メアリー様・・・・・何かお見えになりましたか?」


彼の決して大きな声ではないが しかし良く通るの声にメアリーと呼ばれた少女は 静かに答える。


「魔王が、今 誕生しました」





--現在


薄暗い部屋の中 十数名のオペレーターが タッチパネル式のキーボードを忙しなく叩いている。部屋の正面全てが モニターで埋め尽くされ オペレーターの手元の画面と同じ物が表示されていたり 大きな地図や よく分からないグラフなど 様々な情報が映し出されている。

そこは、映画やアニメに出てくる軍隊などのオペレーションルームのようだった。


「解析は どうなっている?」


部屋の中を見渡せる数段高くなった 指揮官席のような場所に姿を現し躊躇うことなくその席に座った少年は 明らかに年上の男に声をかけた。


「はっ 出雲様 昨日 一昨日に起こった魔力爆発の場所はほぼ特定されました」


男は指揮官席の脇にあるコンソールを操作すると 正面のモニターのほとんどが 地図に変わり その地図上に 2箇所の円が書き加えられた。


「特定と言っても 半径100メーター程か・・・・」


「現在の観測体制では これが限界です・・・・が・・・・」


男の言い回しを不審に思った 出雲と呼ばれる少年は 短く問い詰める。


「が?」


男は 自慢げな表情で情報を追加する。


「望さんから 面白い情報が入りました。魔力を宿した指輪が持ち込まれたと、そしてその持ち込んだ者の住まいが・・・・」


そう言いながら 男は更にコンソールを操作すると 1つの円のほぼ中心に 赤い印が灯る。


「観測された地点と一致するではないか!」


「持ち込んだ者の 詳しい素性は 調査させておりますが、どうも当校の生徒のようです」


「分かった。何か分かれば 随時 報告してくれ」


そう一言を残しオペレーションルームを後にした。




出雲は オペレーションルームを出た後 映画に出てくる宇宙船の中の様な近未来的な通路を歩く。突き当りにはエレベーターがあり 乗り込むと静かに上昇してゆく。更に似たような通路を歩き行き止まりにあるパネルを操作すると 壁が開き執務室のような部屋に出る。

部屋に入ると 壁は閉じその壁を隠すように本棚が迫り出してくる。他の本棚と綺麗に並び そこに隠し通路があることなど まったくわからなくなる。

執務室のような部屋は 実のところ 執務室そのものだ。出雲は 椅子に腰掛けデスクに肘を突き物思いに耽る。


天啓の魔女の予言は 絶対だ。17年前にあった 「魔王誕生」の予言・・・・最新の予言によれば 近いうちにこの国に魔王が降り立つのは間違いない。そして この数日にあった計測器が振りきれてしまうほどの 大きな魔力の反応・・・・これは 魔王と関係する物かどうか?

--魔王

これは 我々 魔法使いの王ということなのか・・・・それとも 言葉通りの 災厄を振りまくところの魔王なのか・・・・。

どちらの意味にしろ 奴等に魔王が組すれば 世界は滅ぶ。なんとしても 奴等より先に魔王の身柄を確保しなければ・・・・。

そのためにも 指輪を持ち込んだという件の人物 その力を確かめなければ。


ノックにより 出雲の思考はそこで停止した。


「会長、よろしいでしょうか?」


「ああ、入ってください」


開かれた 扉に付けられている プレートには


『生徒会長室』


と 書かれていた。




昨日 骨董品屋さんから 戻って来ると マリアはずっと物思いに耽り 俺の言葉にも 上の空と言った感じだった。

マリアを一人 家に残したのは失敗だったか?

少し考えれば 俺だって一人の辛さや孤独感を知っているのだから こっちに来たばかりで一人にするべきではなかったと分かったはずなのに。

俺は やはり この世界に戻って来ることができ浮かれているのだろう、気を引き閉め直さなければ。


朝食の後、指輪の件をマリアに報告する。


「あの指輪なんだけど ビックリする値段で売れたよ」


「そうなのですか?」


「ああ、母さんに貰ったお金の10倍で売れたんだよ!」


「そうなのですか」


特に感動したようすもなく 淡々と答える。どうもマリアはお姫様育ちのせいか 金銭感覚が乏しいような気がする。まあ、お金にガツガツしたお姫様って言うのは かなり痛そうなのでこれでいいのかもしれないが 今後のことを考えれば 金銭感覚も養っていかなければならないだろう。

『パンを買えないなら ケーキを買えばいいのです』

そんなことを言い出されても困る。断頭台送りは 勘弁してもらいたい。


タラクシャを拠点とする案についても 相談しなければならないが アイリスの事を マリアにどうやって 話すか?マリアは アイリスの事を母親の仇と思う可能性もある。冷静に考えればアイリスもまた、被害者でしかないのだが・・・・。


取り敢えず マリアにはこっちの生活に慣れてもらおう。タラクシャに帰るにしても将来 結婚するなら こっちの世界とも無関係ではいられないし こっちに残るなら尚のことだ。

そして タイミングを見て アイリスの事も打ち明けよう。

兎に角 今は


「今日も どこかに出掛けよう」


「ハイ!」


「何処か行ってみたいところはある?って まだ、わからないか」


「いえ 私、海を見てみたいです。昨日 見せてもらった地図によれば ここは比較的 海に近いようですし」


マリアは 昨晩のうちに悩み事を解決したのか 朝には元のマリアに戻っていた。そして 瞳を輝かせ海と言い出したのだ。


「マリアは海を見たことがないのだっけ?」


「はい。できれば死ぬまでに一度は見てみたいと思っていたのですが 無理でしょうか?」


大袈裟なように思うが あっちの世界には日本のような交通機関がないため内陸部に住む者は一生 海を見ないと言う事がほとんどのようだ。あの万能シオンさんですら 泳げなかったのだから。

ここから 海は電車ですぐに行ける。と言っても海水浴場ではなく 湾岸施設や ショッピングセンターなどがある 所謂 ベイエリアと言う感じのとこだが・・・・。


「ここから すぐに行ける海だと 砂浜とかないけどいいのかな?マリアが想像しているのとちょっと違うかもしれないけど、それに 海自体が あまり綺麗じゃないし」


「そこで 構いませんし 我侭は申しません。海が見れればそれで本望です」


マリアさん 一々 大袈裟ですよ。まあ 仕方のない事なのだろうが そこまで期待されていると 逆に連れて行こうとしているところが ベイエリアなのが 申し訳なく思う。今度 ちゃんと砂浜のある海にも連れて行ってやろう。

否!

海水浴に行こう。マリアさんの水着・・・・。

妄想を膨らませていると マリアさんが ジトッとした視線を送ってきた。


「ナオキさん 何やら 表情が いやらしくなっていますが?」


「そ、そうかな?そんなことないよ・・・・」



くだらないコントはこの辺で終わらせ 時間が勿体無いので準備を始める。俺は一旦部屋を出て マリアに着替えてもらい。終わると入れ替わりで 俺も着替えた。

マリアと俺は腕を組み 玄関を開けると そこにはインターフォンを鳴らそうとしている 遥と出会ってしまった。帰ってきたのだから いつかは出会うと思っていたが まさかこのタイミングとは・・・・。

そう このタイミングで 出会ってしまった。


「直輝?」


「やあ 遥」


気まずい沈黙が流れること数秒 耐え切れず 声をかける。


「久しぶりだな 遥!今日はどうしたんだ?」


「久しぶりって・・・・一昨日 学校で会ったばかりでしょ!でも・・・・・?何でもない!直輝が暇してると思ったから 顔を見に来てあげたのよ!」


「あっ そうだな 一昨日か そうだったな!で、『でも』って なんだ?」


俺にとっては三年振りなのだかな・・・・。もう 会えないと思っていた遥に また会えるなんて・・・・。


「なんだか、雰囲気が変わったのかなと?気のせいよね。ところで 何処かにお出掛けかしら?」


遥は 腕から離れ俺の後ろに隠れるように居るマリアの事をチラリと視線をやり言った。


「ああ ちょっとな」


「何処に行くのかしら?」


「何処でもいいだろ。お前は俺の嫁か?彼女か?」


遥は 可愛いと言うよりは美人タイプで元から少しきつめの印象があるのだが 更に目を吊り上げ怒りを露にする。そして 『しまった!』と思ったときには 既に遥かの手は振り上げられていた。

遥は口より先に手が出るタイプなのだ。身を固くし身構えていると 思わぬ伏兵が


「ナオキさん!遥さんに謝りなさい!」


後ろから マリアの言葉とゲンコツを貰った。呆然とする俺と遥を余所に マリアは更に続ける。


「ナオキさんは 自分の心に素直になることの大切さを学んだのでは なかったのですか?」


実際 俺と遥のこんなやり取りは日常的なことであったがマリアの勢いに圧倒され遥に謝罪する。


「遥 その なんだ、言い過ぎた。悪かった」


「えっ あー いいのよ。気にしてないから・・・・それより そちらの・・・・?」


遥の視線はマリアを捕らえている。

マリアは俺の言葉を遮るかのように一歩 前に出て自ら自己紹介をした。


「私は昨日からこちらでお世話になっています マリアと申します。遥さんとは一度 お話がしたかったので お会いできて光栄です」


「これは、どうもご丁寧に」


言いながら遥は視線をマリアから俺に移し追加説明を求めた。


「マリアは留学生で 昨日からうちでホームステイしているんだ」


「ふーん 知らなかったわ」


訝しい目で見つめられ 薄ら背中に汗が滲む。


「で、その留学生を連れて 何処にいくの?」


「マリアさん 海を見たことがないらしいので 南港にでも行こうと思って」


「あんた バカね!それだったら ちゃんと砂浜のある海に連れて行ってあげなさいよ。そんなに遠い訳でもないんだから」


今度は呆れられた。だけど それには訳があるんだ!と何度目か分からないが 例の置き引きの設定を説明する。


「昨日 大体 買い揃えたけど まだ何か要るかもしれないし 南港なら 買い物もできるだろ?」


「だったら 私も行くわ」


「な、何でそうなる!?」


「あんた ホント バカね!女の子の買い物は女の子しか分からないでしょ?」


バカって言うな。バカって言うやつがバカなんだぞ!俺だっていい加減 拗ねるぞ・・・・。



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