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勇者と姫のそれから  作者: べるこさん
第2章 地球編
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ようやく、家に着くが休むまもなく俺は出掛けようとしていた。


「また、お出かけですか?」


「うん。あの指輪を売りに行ってみようと思って」


一緒にと言うマリアを 疲れているだろうと なだめテレビでも見てゆっくりするように言い含める。

マリアを残して行くのに多少の不安はあるものの 取り敢えず 一人で 近所にある骨董品屋さんに向かった。

店はごちゃごちゃと 壺や皿から良く分からない物まで 乱雑に並べられている。ちょっと 触れただけで壊れそうな物も 普通に置かれていて慎重に店の奥にあるカウンターに向かった。

カウンターには誰も居ない。店内には高価な物は無いのだろうか?全く不用心だ。とは言えカウンターからは入口の方は見えないのでもしかするとカメラなどでチェックしているのかもしれない。

待っていても 一向に誰も出てこない。どうやら カメラなどは無いようだ。


「すみませーん」


声をかけるとようやく 店の奥からのそのそと 気だるそうに 女性が出てきた。女性の年齢を見た目で判断できるほど人生経験はないが 俺の主観では 30前後だろうか?俗に言う アラサーと言うやつかもしれないが この 微妙な年頃の女性の年齢を確めるのは危険だと言う程度の人生経験は積んでいる。

見た目に気を使っている感じは全くないが それでも美人と言っても過言ではない。もう少し何とかすれば 女優さんでも通る雰囲気を持っていた。


「何かしら?」


お姉さんは 雰囲気と同様に気だるそうに 問いかけできた。


「指輪の査定と言うか 買い取りをお願いしたくて来ました」


「あなた、高校生でしょ?若いうちからこんな店で物を売って小遣い稼ぎなんて あまり感心しないわね」


お姉さんの厳しい言葉と表情に少し気圧されるが小遣い稼ぎと言うわけではない。はっきり言えば今後の生活がかかっているのだ。


「僕は高2なんですが 次の夏休みに夏期講習を受けたくて このゴールデンウィークにバイトするつもりだったんですが いいバイトが見つからなくて それで 夏期講習の費用になればと 来たのですが」


「あら、ごめんなさい。苦学生だったのかしら?ご両親はいらっしゃらないの?」


普通なら聞きにくいであろうことを顔色も変えず聞いてきた。


「いえ、両親は健在です。ただ 自分も妹も私学に通わせてもらっていて この上 夏期講習までは 言いにくくて。数万くらいなら 出してくれるだろうし それくらいの余裕もあるとは思うのですが・・・・」


「今時の若者にしては 立派ね。いいわ、夏期講習代になるかは分からないけど 兎に角 査定してあげる」


俺は勇者より詐欺師の才能の方があるのかもしれない。自己嫌悪になりつつお姉さんに促されトレイに指輪を置いた。その瞬間 一瞬ではあるが お姉さんの目が鋭くなった気がする。手に取り 全体を眺めながら口を開いた。


「この指輪はどうしたのかしら?」


「がらくた集めを趣味にしていた祖父に貰ったのですが?本人曰く 高価なものなので 進学か結婚の資金にすればいいと言ってはいたのですが そこまで 高価な物とも思えないので・・・・まあ、夏期講習代になれば いいし ただのがらくたなら 参考書でも買います」


「そう・・・・素材は多分 金ね。後でちゃんと調べさせてもらうけど、今のうちでの 金の買い取り価格はグラム4000円だから まあ、数万にはなるわね」


おお!数万か。なら、いくつか売ればそこそこ 資金ができるな。

とは言え それも一時凌ぎでしかない。こうなったら 本格的に異世界貿易でも始めるか?


「素材の確認をしてくるから 少し預かるわね」


お姉さんは 指輪をトレイに置きトレイごと奥へ行ってしまった。

異世界貿易か・・・・こちらでの生活基盤ができなければシオンさんやサヤを呼ぶこともできない。いや、自由に行き着きできるなら 俺が向こうで暮らす方が いいのか?もしくは 寝食はあっちでして そこから学校に通うとか?

帰ってきた嬉しさで自分で選択肢を狭めていたみたいだな。

帰ったら今後のことを マリアとよく相談しよう。




その頃 マリアは ナオキと同じ様に考え事をしていた。

先程まではナオキさんと一緒に居たので思いませんでしたが 一人になると急に寂しく心細く・・・・。でも 私たちはこんな思いをナオキさんにさせていたのですね。私はまだいい 私には愛し合うナオキさんがいる。でも 召喚されすぐの頃のナオキさんは 本当に一人だった。それも理解できず、私はナオキさんに怒りを覚えたりしていた。今になって思えば なんとも身勝手で恥ずかしいことをしていたのだろう。しかも 一人 心細く 辛い思いをされていたのに 残してきた人たちの心配までされていた。

本当にナオキさんは・・・・。だから 私も シオンもサヤさんも こんなにも あなたのことを愛してしまったのだろう。


私は私の意思でここに来たのだ。ナオキさんと共に生きていくために。

この世界で私の居場所はナオキさんの隣しかない。その居場所を守るためにも この世界に 馴染み溶け込んで いかなければならない。まだ、ここに来て一日も経ってはいないが 甘えてなどいられないはず。

それに 気になることもある。


私はこまちさんの部屋のドアをノックする。反応がない。もう一度、ノックし声をかけた。


「あの、マリアです」


「あっ マリアさんだったのね」


こまちさんは 返事をしながらドアを開けてくれた。


「お兄ちゃんだと思ったから、ごめんなさい。いつもお兄ちゃんは ノックをしても返事をする前に入ってきちゃうから

で、どうしたの?」


そう言いながら 中へと招待され 椅子を勧められ そこに座る。こまちさんは ベッドに腰掛けた。

こまちさんの部屋は広さはナオキさんの部屋と変わらないものの 物が少ない分 広く感じる。物が少ないと言っても無味ではなく 明るい色を基調にセンスよくまとまっている。


「で、どうしたの マリアさん?」


「私は とんでもない田舎から出てきて 今日も町に連れていってもらって 凄く驚きました。私の住んでいた所には車や電車も無かったしあんなに高い建物もありませんでしたから。それで こまちさんにも 色々 教えてもらおうと思って」


「漠然と教えてもらいたいって言われたてもなぁ」


こまちさんは じっと私を見詰めた後 ニヤリとし言う。


「マリアさんの知りたいこと・・・・例えば はるちゃんのこと?」


「えっ!? ど、どうして?」


私の気になっていたこと、それは 遥さんのことだった。ナオキさんが召喚前に好きだった人・・・・ナオキさんを好きだった人のこと。おそらく ナオキさんは帰ることができないと遥さんのことを諦めていたのだろうが 帰ってきた今 その思いは・・・・。


「どうしてって・・・・顔を見れば分かりますよ。寧ろ こまちが 『どうして』って聞きたいくいらなんですが、お兄ちゃんと出会って まだ 1日2日でしょ?お兄ちゃんも マリアさんに気持ちが移っているようだし・・・・この数日に何があったんですか?」


本当は数日なんかじゃない。でも 本当のことは言えないし どうしたものかしら?


「人の気持ちに時間は無意味でしょ?」


「そう言われればそうなんだろうけど。いいですよ、お兄ちゃんと はるちゃんのことを教えますね。

お兄ちゃんとはるちゃんは 生まれたとき 赤ちゃんとときから一緒に居たんですよ」


「赤ん坊の頃から?」


「はい、はるちゃんの家は すぐそこなので 生まれた時期も近かったこともあって よく一緒に遊ばしてたらしいです。それから 幼稚園も小学校も中学校も そして今 通っている高校もずっと 一緒なんです」


「そんなに」


「たぶん一緒に居る時間は妹のこまちより長いと思いますよ」


「・・・・・・」


言葉を失うと こまちさんは意地の悪い笑みを浮かべ続けました。


「あれ?時間は無意味じゃなかったのですか?」


「こまちさん・・・・意外に意地悪ですね」


「へへへへ」


舌を出して 笑っている姿は まだ、幼さを残し憎めない愛らしさを持っています。でも表情を引き締め少し遠くを見るような目をし 更に続けました。


「お兄ちゃんって 頼まれたら断らない 困っている人が居れば放っておけない そんな性格なんです。本当に 損な性格なんです。放っておけばいい様な事まで首を突っ込んで 困って・・・・そして いつもはるちゃんに 助けてもらって・・・・本当にいいコンビなんですよ。

多分 はるちゃんは お兄ちゃんのそう言った所が好きなんだと思います。そしてお兄ちゃんは 文句を言ったり怒ったりしながらも 本気で心配してくれるはるちゃんのことが 好きなんだと思います」


長い時間を共に過ごした 揺るぎない信頼関係。二人にはきっと それが存在するのでしょう。私は、その様な二人の間に割り込んでいいのでしょうか・・・・。だけど、私とナオキさんの間にある気持ちも本物はずです。勝ち負けと言うものでは ないのでしょうが それでも 負けたくない、ナオキさんを失いたくはない!


「今から話すことは お兄ちゃんには内緒でお願いしますね。お兄ちゃん 調子に乗っちゃうから。

お兄ちゃん あれで結構モテるんですよ。私の友達にも何度か紹介してって頼まれたこともあるし。お兄ちゃん あんな性格だから 周りの人には頼りにされているし 信頼もされているみたい。ただね、ヘタレのお兄ちゃんは 周りの人の好意に気付いてなかったり 気付いていても 気付かない振りをしてたりね。

私も小さい頃は お兄ちゃんが本当のお兄ちゃんじゃなかったらって思ったこともあったくらいに・・・・

だから マリアさんがお兄ちゃんに惹かれるのも分かるんです。でも はるちゃんのことも私、本当のお姉ちゃんって思っているので 二人を応援してるんです。だけど、マリアさんのことも 知り合ったばかりなのに なんだか放っておけない感じもするし・・・・

私、この件に関しては どちらの肩も持たないことにします。だから マリアさんも 気にせず 思いっきりお兄ちゃんにぶつかってみてください」


こまちさんは しみじみ噛み締めるように 兄である ナオキさんの事を語ってくれた。家族からも周囲の人からも 信頼される 素晴らしい人だと改めて実感しました。

そして 遥さんもまた、周囲から人望を集めるナオキさんが 素直に頼ることのできる ナオキさんが 心を許せる人だと・・・・。

一度 遥さんとお話ししてみたい。もし シオンやサヤさんと同じ様に ナオキさんを愛する者同士 認めあい 共に ナオキさんの傍らに居ることができれば・・・・。




戻ってきたお姉さんは 一旦 俺の前に指輪をのせたトレイを戻し言った。


「素材は間違いなく 金のようね。しかも 相当 古いもののようね、500年くらい前のものかしら?ただね、昔ってネットなんて無いでしょ?だから デザインとか製造方法でね いつの時代 どこの地域かって分かるのだけど これは どこにも当てはまらないのよ」


「はあ?」


それは そうだろう。メイド イン 異世界なのだから。真実を語るわけにもいかず 曖昧な相槌を入れる。


「だから 現代人が 昔のものと偽って作ったか 本当に珍しいものか どちらかと言うことになるわ」


「僕も貰い物なので 詳しくは分からないのですが」


「そうね。お店で買い取るとしたら 素材の値段以上では出せないわね」


「それで、いいですよ。夏期講習代にはなるようですし」


欲張って 色々 聞かれたり調べられるよりは 数万円で売った方が良いだろう。


「でも それでは私の気がすまないわ。初めて見たときに 感じるものがあったのよ。だから 店としてではなく 私が個人的に買い取るってことにしてもいいかしら?」


「お姉さんがですか?僕はどちらでも構いませんが?」


「私は 望よ」


お姉さんは 柔らかな笑顔と共に名前を教えてくれた。のぞみさんと言うらしい。


「えーと 望さんが 買ってくれると?おいくらくらいで?」


「そうね、100万でどうかしら?」


「はい、それでいいですよ・・・・・・・・・・・・・・・・・・!

100万!?

いや、そんな 100万円って!?」


望さんは涼しい顔のまま とんでもない金額を提示した。


「いいのよ。気に入ったから 見合った金額で買う。普通でしょ?大体 この店自体 私が気に入った物を私が買うための物なのよ。だから気にしないで。そうね どうしても気になるって言うのなら この指輪が珍しい物だとして それを買ったお祖父さんは相当の目利きってことでしょ?だから またお祖父さんの物で売れる物があったら うちに持ってきて。要は先行投資って思ってくれればいいわ」


その後 何度か本当に良いのかを尋ねると 「しつこい!」と怒られた。手続きも済ませ100万円を受け取る。帯の付いた札束など始めて見たので もう ドキドキが止らない。

店を出て家路につくが、すれ違う人全てが この金を狙う悪人に見えてくる。


俺って なんて小心な勇者なんだ・・・・。 


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