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勇者と姫のそれから  作者: べるこさん
第1章 異世界編
64/135

064

「それは、操心の玉!」


操心の玉は 人の心を思いのままに操る魔道具。その力は精霊であるレノですら抗えなかった程に強力で 込められた力はとても邪悪なものだ。だから俺も その邪悪な波動にあてられ 軽くではあるが暗示にかかってしまったのだろう。


「ほう 流石は勇者殿。よくご存じですね。ならば話しは早い。さあ!陛下 お早く姫とお別れしてください」


「マキシム 貴様は!」


陛下はマキシムを睨み付け言葉を漏らし 今度は俺に視線を見据えて言葉を続けた。


「勇者殿、予とマリアはどうなっても構わん!こやつを止めるのだ。この様な者にマリアをくれてやる訳にはいかんし 国を任すなどもってのほかだ!」


マリアの強い視線も陛下の言葉を肯定していた。扞臣に国を任すことなどできないと言う まさに これこそが 王家の人間の義務 責務であり意思なのだろう。

しかし マキシムの判断は早かった。伊達に若くして騎士団団長の地位を得てはいない。即断即決、更にその行動の速さ。どれを取っても一流の指揮官だろう。


マキシムはそうは させまいと 陛下にあてがった剣を少し引き 胸に突き入れようとした その時

突然 魔力の集中を感じ その方向を見たときには マリアは 魔力弾を完成させ マキシムに向かって 放っていた。

マリアは おそらく この技を密かに練習していたのだろう。モニリの森でレクチャーしたときは 魔力を集中させるためのイメージ強化のため 指を立てたり 魔力弾を放つために投げる動作をしていたが 今は 腕を押さえ付けられ その様な動作はできない。魔力弾はマリアの額付近に作られ その大きさも 森の時とは比べ物にならないほど大きかったのだ。


マリアの放った 魔力弾は マキシムが陛下に剣を突き刺すより早く マキシムの体に着弾して 壁まで体ごと吹き飛ばした。

と、思われる。何故なら 俺は魔力弾の狙い 威力を見て 結果を確認することなく マリアを押さえつけている騎士と コナンに向かって飛び出していたからだ。

マリアは 魔法を封じる魔道具「封魔の首飾り」を付けられていたにも関わらず 魔法にしか見えない技を見せられ また、俺の突進に 驚き慌てた騎士は 何もできないまま 一撃で無力化された。

コナンは 一瞬 呆気にとられるが すぐに切り替え剣に手をかけたが その一瞬が命取りとなり 俺の一撃をまともに食らい 意識を手放した。


そして 俺とマリアは 陛下の元へ駆け寄る。


「お父様 ご無事ですか?」


マリアが声をかけ 俺は「失礼します」と一声かけて マキシムが落とした剣を使い 陛下を縛っていた縄を切った。


「ああ、大丈夫だ。勇者殿 それにマリア 助かった。それにしても まさかマキシムが謀反を企てるとは・・・・」


「マキシムは 勇者不要論を強く申しておりましたから」


マリアは つい 口を滑らせ 言い終わってから はっ とする。


「勇者不要論?」


俺の疑問に マリアが口篭っていると 陛下が見かねて 代わりに答えた。


「たとえ勇者であっても 一個人が 魔王より強力な力をもつのは 魔王が居るのと同じだと・・・・それがマキシムの持論だったのだ」


勇者不要論・・・・・当事者だけに少なからず衝撃を受けた。しかも 言っていることは 決して間違ってはいない。考えてみれば 歴代の魔王は 人間に絶望し 自身が生きることに絶望し 全てに絶望した勇者の成れの果てなのだから。マキシムさんの取った方法は褒められた物ではないが この世界の人間にとっては 正しい選択なのかもしれない。


俺はまたも 思考の迷宮に囚われていた。

そして そのことを後悔することになる。


突然 マリアは 陛下と立ち位置を入れ替える・・・・陛下を庇うように・・・・

その直後 「うっ・・・・」と、小さく呻き声がマリアから漏れる・・・・

マリアの純白のドレスは腹部を中心に みるみる赤く染まっていく。そして崩れ落ちる。

マリアの後ろには 意識があるのかないのか 分からない虚ろな目をしたマキシムが血に染まった短剣を持ち ただ ぼうと 立ちすくんでいた。

俺の目は血走り マキシムを いや、マキシムの胸を睨み付けていた。魔力弾を受け破れた服の下、胸の辺りに 禍々しい魔力を発する 操心の玉が埋め込まれていたのだ。玉から発せられる魔力はマキシムの体全体を覆い 人形のように 操られているように見える。


「また、またお前なのか!」


俺は手にしていた剣で、マキシムの胸に埋め込まれた玉を突き刺す。玉は割れ そこから一気に 黒々とした光を放ち 消滅する。それと同時に マキシムは糸の切れた操り人形のように その場に力なく崩れ落ちた。

マキシムは 確かに魔王が倒れた時点で勇者は不要だと持論を持っていた。しかし それは、自分の欲ではなく この世界の事を思ってのことであり 何より この世界を救った勇者を思ってのことだったが その思いにつけこまれ 操心の玉に あらぬ方向にねじ曲げられたのであろう。


「勇者殿!早く、早くマリアを!!」


陛下の声で、現実に引き戻される。そうだ、早く、マリアを助けなければ!たとえ どんな怪我であろうと 魂さえ失われていなければ 助けることは可能だ。時間が経てば 後遺症が残ることもあるが まだ 然程 時間は経っていないので 心配する必要はない。

俺は 大きく行きを吸い込み ゆっくりと吐き出す。それを2度、繰り返し 心を落ち着かせた。手をかざし 回復魔法と治療魔法を発動させる。


「馬鹿な!?なぜ・・・・?」


俺は 狼狽えた。確実に魔法は発動していたが 傷は塞がらず ドクドクと血は流れ続けている。マリアの血は 床を流れ召喚陣の一部に触れていた。召喚陣は白い塗料で描かれているが 血が触れたところから 徐々に赤く変色していっている。まるで、召喚陣がマリアの血を飲み干そうとしているようにも見えた。

何度、魔法をかけても 傷口を押さえ止血しようとしても 出血は止まらない。


「どうして!どうして・・・・・」


「ナオキ様・・・・もう いいのです・・・・。どうか 私の命を・・・・使って お帰りください・・・・」


「嫌だ!嫌だ!そんなことできない!!マリアを失うくらいなら 帰りたくなんてない!」


そこには もう 世界を救った勇者の姿はない。泣きじゃくりただ、駄々を捏ねている子供のようにであった。

マリアは そんな子供を 優しくあやすように 語りかける。


「私の魂は 既に 召喚陣に繋がれています。だから、魔法も効かない。私の命を無駄にしないで・・・・どうか・・・・お帰りください。それと、お父様 先立つ不幸をお許しください・・・・」


嫌だ!嫌だ!嫌だ!

マリアを失うなんて・・・・。

嫌だ!


そうだ!

だったら、召還陣を破壊してしまえば・・・・・。

今 マリアを助けたとしても 時が 2人をまた 引き離すだろう・・・・。

マリアは永遠には生きられないのだから。

その後、俺は悠久の時を生き続けなければならないとしても こんな形でマリアを失いたくはない・・・・。

迷っている余裕はない。召還陣がマリアの血を飲み干す前に 壊さなければならない。


もう、迷いはなかった。

破壊するにしても 物理的に破壊すれば 城を壊してしまうことになり 巻き込まれ 怪我人や最悪、死人も出るかもしれない。そばに居る 陛下は間違いなく・・・・。そんなことをして 助けてもマリアは決して許してはくれないだろう。そこで、召還陣を焼き切ることにする。つまりは、魔力の過剰供給によって内部から破壊するのだ。

俺は、魔力を高め 一気に召喚陣に注ぎ込んだ。

以前に 魔力は満タン補給していたのだが 何故か その一部が消費されている。既に 起動しかけているからかもしれないが・・・・。

再度 魔力をフルチャージし そこから更に 流し込む。俺と召還陣との間にできたバイパスから 軋み音が聞こえてくる。それでも 止めることなく流し続ける。

すると 「パチン」と 何かが弾ける音が聞こえた。

成功か? だが 分からない以上 止める訳にはいかない!

尚も魔力供給を続けると バイパスを通じ 俺の脳内に直接 「声」が聞こえた。所謂 テレパシーと言うやつか?


「も、もう・・・・やめて・・・・これ以上 魔力を・・・・私は・・・・消滅しちゃう」


「お前は 誰だ! いや そんなことは どうでもいい。マリアを助けるためだ。壊れるまで止めるつもりはない!」


「私は・・・・この・・・・魔方陣に囚われていた・・・・あなたの・・・・・魔力で 拘束の術式が 破壊された・・・・・」


「すまないが マリアのためだ」


「お、お願い・・・・あなた・・・の・・・・言うことは・・・・なんで・・・も あな・・・・たに・・・・付き従います・・・・・だ・・・から・・・・そ、それ・・・に・・・・その・・・・子との・・・繋がりは・・・・すで・・・に・・・・切れて・・・いる・・・・す・・・ぐに 助けれ・・・ば・・・・死な・・・ない・・・・は・・・ず・・・・」


召還陣から聞こえてくる声は既にかすれ 聞き取るのがやっと と言った感じだ。しかし、ちゃんと 聞こえた。繋がりは切れていると!

魔力供給を止め マリアに駆け寄り 回復、治療魔法を発動させた。マリアは 血液の大半を失い 既に鼓動も止まり 死者の顔色になっていたが 魔法発動により 傷口は塞がり 顔色も見る見る 赤みを帯びてきた。心臓に何度か衝撃を与えると 鼓動も戻ってきた。

これで、これで 助かる・・・・・。


「おお!勇者殿・・・・ありがとう!本当にありがとう!」


陛下は 涙ながらに礼の言葉を述べる。

マリアも意識を取り戻し こんな場面にも関わらず 呆れ顔で それでも 優しく 呟いた。


「ナオキ様は 本当に馬鹿ですね。この機会を逃せば いつ帰れるか分かりませんのに」


「帰ることより 大切なものを見つけたんだ。まあ、先のことは その時 考えればいいよ」


起き上がろうとするマリアを まだ 動かないほうがよいと 制止したが それでも立ち上がろうとするので 手を貸してやる。

マリアは 俺の正面に立ち 今までで最高の笑顔を見せ一言・・・・


「だから ナオキ様のことが大好きなのです!愛しております。これからも変わらぬ愛を誓います」


ナオキはマリアをそっと抱き寄せ

見つめあう二人

どちらともなく 目を閉じ 顔を近づける。

唇と唇が 触れあう


かと

思ったとき 頭の中に響く声


「あのー ご主人様・・・・ いい雰囲気の時に申し訳ないのですが」


声に驚き マリアの体を引き離し キョロキョロと辺りの様子を見るが 誰もいない。

いや、正確には 生暖かい眼差しの陛下が居た!って言うか 陛下が居たんだ!急に恥ずかしさが沸き上がり 俯く。マリアも 最初は きょとんとしていたが 気付いたのか 同じように俯いた。


「あのー ご主人様~」


また、頭の中に直接 声が聞こえた。そして、心の中に 呼び掛ける。


「誰だ?」


「私は 召喚陣に 囚われていたものです。それより 急いでください!早く、召喚 今回は送喚になるのですか?どちらでも 結構ですので 魔方陣の魔力を消費しないと 大変なことになります!」


「大変なこと?」


「はい。ご主人様がとんでもない量の魔力を供給したので 暴走しかけています。このままだと この大陸ごと どこかの次元に飛ばされてしまいます!だから 早く、早く!」


「ど、どうすれば?」


「召喚陣の中央へ!後は私が 制御します。行き先はご主人様のもと居た世界でよろしいですね?」


「マリア!帰れることになった!皆にちゃんとお別れできないのは残念だけど 帰るよ。でないと この大陸ごと 無くなっちゃうらしいし・・・」


俺はマリアの手を振りほどき 召喚陣の中央へ向かった。振り返りマリアをじっと 見つめる。マリアも反らすことなく 見つめ返す。

俺は 感情の奔流に呑まれ つい 呟いてしまった。


「来るか?」


マリアは 1秒にも満たない時間 考え 振り返り 王であり 父である男に 視線をやる。

娘の視線に全てを悟った陛下は 頷く。

それを見た マリアは 深々と頭を下げ 俺に向かって走り飛び付いてきた。

その後ろで 陛下の口が動いていたが 俺には その声は聞こえなかった。

ただ、


「幸せに」


そう言った気がする。

俺も小さく頷き 陛下に答えた。


マリアを受け止め 抱き寄せる。

見つめあい、今度こそ 唇を重ねた。

頭の中で 小さく


「行きます」


と、聞こえた とたんに 強烈な光が二人を包む。

まるで、二人の門出を祝福するかのように。



これで、異世界でのお話は一旦終了で 次話からは地球編が始まります。

次話からは 月末まで 数日おきの投降になると思います。

昼の仕事のほかに夜もバイトをしていたのですが 月末でそのバイトを辞めることにしました。と言っても その時間を丸々 執筆に当てれる訳ではないですが それでも 多少は 余裕をもって 書いていけるかなと思っています。


今後ともよろしくお願いいたします。

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