表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
勇者と姫のそれから  作者: べるこさん
第1章 異世界編
62/135

062

タラクシャ王城 中庭にある大きな木の下 木漏れ日と爽やかに吹く心地よい風を 体全体で受け止め シートの上で 軽く伸びをする。

俺の隣には マリアが座っている。この心地よい気分は ただ 日の光と風の所為だけではないだろう。マリアが隣に居てくれるからこそなのだと思う。



俺とマリアは シートを広げ その上で 昼食を食べている。

4人で会合を開き 俺のハーレム計画?を確認しあってから 一週間が経ち 俺もマリアも 既に城内で広まっている噂を耳にしていたので 誰憚ることもなく逢引のようなことを堂々としていた。とは言え 相変わらずシオンさんは シートの端に立ち 俺とマリアの世話を甲斐甲斐しくしてくれている。一緒に座って 食べようと誘ってはみたのだが 

「まだ お二人は結婚していませんし 私は側室になったわけでもありません。分を弁えることは必要です」

と あっさり断られてしまったのだ。言っていることは正しいのだが 少し寂しい気もした。


昼食を取りながら 今後のことについて 相談する。ただ、結婚すると言っても 相手は一国の王女。結婚自体は 反対されていないし 寧ろ歓迎されているらしいが さすがに色々と 決めなくてはならないことや考えておかなければならないことがある。ある程度 自分の要望をまとめ それらに対する地固めは必要で目処が立ったら正式に陛下へ結婚の許しを乞うつもりだ。


「まずは お父様に爵位とモニリの町周辺を領地として賜ることをお願い致しましょう」


勇者は称号であって地位ではない。俺は地位で言えば平民なのだ。さすがに平民と王女が結婚するには無理があるので 前回は辞退したが 褒美として地位を頂くことにした。これで俺も貴族様だ。

そして 領地としてモニリの町周辺を求めるつもりだ。当然そこには サヤが居るからだか 多少 問題もあるようだ。


「その要求は通るでしょうか?確かにモニリの町は直轄領ですが それは 国境の町と言う重要拠点だからで・・・・それに そこをナオキ様が治めるとなると ダリーンを刺激する可能性もあります」


いつもは 政治的なことには あまり口を挟まないシオンさんだが 的確な意見を述べた。


「防衛拠点という観点では 俺だったら問題ないだろうし デンドロスじゃなくて 今はダリーン王か・・・・彼なら 事前に話を通しておけば問題ないと思うよ。問題があるとすれば 俺に領地経営ができるかどうかと 帰還の目処がついたときの引き継ぎかな?」


「そうですね。ダリーン王に付いてはそれで問題ないと思います。領地経営についても ナオキ様ならなんとかなるでしょう。お父様もナオキ様はただの武人ではなく 国政にこそ力を発揮するのではないかと申しておりました。とても博識で 機転もきくとよく誉めてらっしゃいます」


マリアや陛下にべた褒めされて照れるが 俺の最終学歴は 事実上 高校中退なのだから 過度に期待されても困るばかりだ。


「確かにヨーヒム様も申していました。頭が切れすぎて危険だと。まあ そのお陰で私はナオキ様のお側に仕えることができたのですから文句はありませんが」


振り向くと 少し照れて俯いてるが 俺は座って下から見上げているのだから バッチリ目が合い 更に顔を赤くし ソッポを向いてしまった。

兎に角 シオンさんの こんなところが 可愛い過ぎる。


「そんなに期待されてもな・・・・やったことがないのだから 上手くできるかどうかなんか 分からないのに。

ヨーヒムさんか・・・・

そうだ!

ヨーヒムさんの部下で できる人を俺の全権代理者として 赴任してもらおう。そうすれば ヨーヒムさんは 俺の監視と領地に国意を通すことができるから 安心してもらえるだろう。それに 結婚してもできれば 城に残って 召喚陣の研究もしたいからね」 


俺の言葉を聞き 今度はマリアが振り返りシオンと目を合わし 呆れたように言う。


「ナオキ様のそのように すぐに機転の利くところが ヨーヒムに危険だと言わせるのでしょうに・・・・ナオキ様が 元の世界にお帰りになった後の事はどうとでもなると思いますが・・・・その・・・・それよりも・・・・あの・・・・」


マリアは 俯き 頬を染めモジモジしている。トイレか・・・・?


「どうしたの?大丈夫?」


「大丈夫です!えっと・・・・こ、子供が・・・・できて・・・・ナオキ様が 元の世界にお帰りになるとき どうするかの方が・・・・」


「こ、子供!」


つい 大きな声で 言い直してしまい 慌てて 周囲に人が居ないか確認してしまった。誰かに聞かれていたら更なる 噂が広がるところだ・・・・。

と言うか 子供か・・・・確かに結婚すれば 欲しくなるだろうし 王家の血筋を守るためにも 必要なのだろうが 健全な男子として 子供を作る過程にも興味が・・・・。今まで そっち方面の経験がないので必然的に免疫もない。それは 俺だけでなく マリアもシオンさんも同じようで 皆 赤くなり視線を逸らしていた。


「まだ、親にはなってないけど きっと親心としては 元の世界に連れて行ったらきっと 苦労のほうが多いはずだろうから 置いていくとは思うけど 最後はその子供の意志を尊重したいと思う。それに 大事なことだから 考えておかなくちゃいけないんだろうけど まだそこまで考えられないよ」


「そ、そうですわね」


その後も あれやこれやと 結婚に向けて 話し合いが続き 最後には吹っ切れたのか 子供は何人欲しいとか そんなことまで 話題に上がった。




旅や 祭りは計画を立てたり 準備をしているときのほうが楽しいものだと よく言われるが そう遠くない将来に 自分自身がそう思うことを このときのナオキは まだ知らない・・・・。




城内にはもう一人 自身の目的のため着々と計画を立て 準備を急速に進めている者がいた。

しかし ナオキと違ってこちらは既に準備を終えていて 後は実行するのみとなっている。



マキシムは王の執務室のドアを激しくノックする。寧ろ 殴り付けていると言っても過言ではないほどの勢いだ。


「失礼します!」


返事を待たないまま マキシムはドアを開け部屋へと入る。ドアの前には衛兵が居たがあまりの勢いに押され呆然とし 執務室への侵入を許してしまった。


「陛下!失礼します」


「何事だ!」


しかし マキシムは答えようとしない。慌てて マキシムの後を追いかけてきた衛兵に王は 手を振り部屋から出るように指示をした。戸惑う衛兵だが 侵入者は 不審者ではなく 騎士団団長であり 陛下自身も退出するように指示を出したため 従うほかなかった。

王は マキシムを見据え 改めて問う。


「で、何事だ?」


「実は陛下・・・・勇者殿が乱心いたしました!今 マリア姫を人質に召喚の間に立て篭もり 陛下に来るように申しております」


「な、なんと!それは 誠か?」


「残念ながら・・・・事がことですので 他の者には知られないように 計らっております」


「そうか・・・・わかった すぐに行こう」


「ですが陛下!」


「構わん。行くぞ」


王は何の躊躇いもなく立ち上がりドアへと向かい マキシムは慌てて後を追う。


目的の召喚の間に着いた二人。

王は静かにドアを開き中へと入り マキシムは続いた。

王は入った部屋を見渡す。見渡す程もない部屋の中を それでも 何か残されてはいないのか 見落とさないように 見回す。誰も居ない部屋から呼び出されたとなれば普通 疑問に思ったり 不審に思ったりするだろうが 王は 苦悶の表情の中にも何か納得したようにも見える。

王は思ったのだ。マリアの命を使い勇者が帰ったのだと・・・・。


「遅かったのか・・・・」


「陛下 遅くはないですよ」


「マキシム 何を・・・・」


王は最後まで言葉を発することはできなかった。マキシムは 王の鳩尾に 拳を打ち込んでいたのだ。意識を手放し 崩れ落ちる王を見下ろし 呟く。


「陛下 遅くはありませんよ。今から 始まるのです」


マキシムの笑い声は 狭い部屋の中で響き渡った。




シオンは非番で 一人 部屋に居る。


--何もない部屋


シオンは 幼少の頃にヨーヒムに拾われ 草・・・つまり スパイとして育てられた。侍女としての訓練は当然 他にも 貴族たちの話の内容を理解するために 高い教養を身に付け 忍び込んだり 気付かれないよう後をつけたりするためのスキル 他にも 戦闘訓練も受け その戦闘力は 騎士にも匹敵する。

それらのスキルを使いこなし城内で 侍女とし その裏では 情報収集要因とし 国の道具として働いた。自分の意思のなどなかった。ただ言われるがまま 生きてきた。


いいえ 道具 ただの操り人形なのだから 生きてなどいない。動いていただけだ。


人形の名を知るものなど居るはずもない。裏の仕事のため できるだけ目立たず 人の意識に残らないよう振る舞ってきたのだから。

でも あの人は違った。直接の面識などほとんど無かったのに 数年ぶりの再開であの人は 私の名を呼んでくれた。私を知っていてくれた。たった それだけのことなのに 私はあの人の事を 気にするようになっていた。好きになっていた。

あの人と過ごした日々 あの人の事を知るほどに どんどんと気持ちは膨れ いつの間にか愛していた。

そして もうすぐ 側室とは言え あの人の妻になれる。


「・・・・・ナオキ様」


以前 ナオキから贈られた マグカップ。枕元のサイドテーブルに 飾るように置かれた カップの飲み口をそっと 指でなぞる。

そこにあるのは 道具や人形ではなく 活きいきとした 笑みだった。

シオンとて 年頃の少女。殺風景な自室を見回し 溜め息が漏れる。お洒落をしたり 自分の部屋を飾ってみたりしてみたいと思ったのだ。

今までは 貴族たちの話を盗み聞きしているところがばれればその場で打ち首になってもおかしくない。いつ死んでもいいように 物を増やしたりしなかった。

そもそも ナオキ様と出会うまでそんなことを思ったりすることもなかった。


貴族の娘なら自分のドレスや家具 そのほかにも色々と嫁入り道具として持参するだろうが 自分には何もない。強いて言えばこのマグカップだけだ。過去に侍女から 大貴族や王族の側室になった者も居るが それでも多少なりとも自分の物はあったろうに・・・・。 何か 自分の物を持っていきたい。平民が買える平民の服など持っていけないだろうし 持って行ったところで着る機会などないだろう。

アクセサリーなら 公式の場では無理でも 日常で身に付けるくらいなら問題ないかしら?後は 部屋を飾れるちょっとした小物くらいかな?

そんな些細な欲求を満たすため 買い物でもしようと 身支度を整え 町へと出かけていった。

その姿は 侍女でも草でもなく お姫様に憧れる少女そのものだった。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ