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勇者と姫のそれから  作者: べるこさん
第1章 異世界編
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マリアは ナオキに寄り添う。指を絡ませ握りあい 何を喋るともなく 時が流れる。

10分?

30分?

1時間?

時も仲睦まじい2人を暖かく見守り 時間を進めるのを忘れていたように ゆっくりと時間が経つような気がした。


突然のノックに 我に返った2人は 飛び上がる程 驚き 慌てて 体をはなし 再度のノックに返事をするが その声は 裏返っていた。


「ど、どうぞ~」


すると 深々と頭を下げ アンナが入ってくる。顔を上げた後 少し驚いた様子を見せるが すぐにニヤリとし 更に 普通の表情へと変わる。アンナの様子を不信に思ったときには 既に遅かった。俺の座り位置はどう考えてもおかしい。いくら 横長のソファーでも マリアの横はない。普通は正面だろう。テーブルの上のカップも マリアの正面のソファーの前に置かれているのだから 俺がマリアの横に移動したのは明白だ。

事態を誤魔化すためわざとらしく 立ち上がり わざとらしく 話をそらす。


「あれ?シオンさん 控え室に居なかった?」


「ええ、いらっしゃいませんでしたが」


まあ そうだろう。居れば 人払いをしている部屋に入れるような真似はしないだろう。

マリアも少し居心地が悪そうなので そろそろお開きにすることにした。


「マリア それじゃあ 詳細は 後日 改めて会合を開こう」


「は、はい。それでは 私はそろそろ 失礼いたします」


そういい残し 慌てて部屋を出ていった。

アンナはそれを見送ると 今度はジトッ とした目で見詰めながら ハンカチを手渡してくる。受けとるが 意味がわからず 呆然としていると


「ナオキ様・・・・・お口の端に 紅が付いています」


受け取ったハンカチで慌てて口元を拭う。俺とマリアが何をしていたのかは バレバレのようだ。俺の様子を見て アンナはクスクスと笑い そんなアンナを見て気恥ずかしくなった俺は 拭って 赤くなったハンカチを見ながら きっと この赤より よほど赤くなっているだろうと自覚していた。


「アンナ・・・・その・・・・このことは」


「当然です。主人の秘密を 言いふらす侍女など居りません」


しかし アンナはテーブルの上のカップを片付けながら ブツブツと呟く。


「そーなんですかー ついに そーなんですねー」


「・・・・・・」


自分の部屋なのに とても居心地の悪い時間を過ごすこととなった。




その日の夕刻 マリアは父である タラクシャ王と夕食を共にしていた。


「マリアよ 勇者殿と話をしたのだな?そして 良い 返事を貰ったのであろう?」


「えっ? ど、どうして?」


王は優しい笑みと共に優しく問いかけた。

マリアは 戸惑っているが 様子を見れば一目瞭然だろう。マリアは始終 薄ら頬を染め 表情を緩めっぱなしなのだから 血の繋がった親子でなくとも 良いことがあったのは 簡単に見抜けるはずだ。 

また、王にとっても 王としても父親としても 歓迎すべき事だった。王としては 勇者という存在を自国に引き留めることができるし 父親としては 娘が愛する相手と結婚できる事 その相手の事もよく知り 人間としても申し分ないのだから 歓迎しないわけにはいかない。


「式の日取りなども決めねばな・・・・しかし 情勢を考えれば 盛大には・・・・いや だからこそ 盛大にした方が・・・・」


父の呟きを聞き ナオキが煮え切らない訳ではないのだが このまま 勢いで結婚した方がなどと一瞬 思う・・・・が・・・・気が付けば 父は考えに耽って まだ、ブツブツと呟いている。慌てて声をかけた。


「お父様!ナオキ様は 前向きに 考えて頂けると仰いましたが まだ 決まったわけでは ありませんので」


「フム、そうであったか」


多少 残念ではあるが あの勇者殿にそこまで言わせたのだから 満足な結果であろうし 時間の問題だとも思え 王は納得した。

その後も王と王女は まだ 決まってもいない結婚について あれやこれやと語り合った。




数日後


ナオキはマリアとシオンを連れサヤの家に来ている。いつものリビングの いつものソファーに座る。今日は シオンさんも 後ろに立たせず サヤと並び俺の正面に座らせた。ちなみにマリアは 当然といった感じで 俺の横に座っていた。まあ 今日は サヤとシオンさんに話をするのだから これで良いのだろうが・・・・。


「で、改まって 今日は何なのかしら?」


聞いてくるサヤであったが 期待と不安の入り交じった表情は おおよそ 話の内容は想像がついているのだろう。

俺は 姿勢をただし 口を開いた。


「シオンさんに サヤ 聞いて欲しい事があるんだ。俺は このままでは いずれ 魔王になる・・・・・かもしれない」


2人は俺の言葉を租借し飲み込むまで 相当の時間を要した。そして 2人はマリアの見つめるが 当のマリアは 余裕の笑みを浮かべ その様子が 更に混乱を大きくした。

2人が混乱を招くのは当然だろうが このことを 俺が魔王になるかもしれないことを 前提としてもらえなければ この後の話には進めない。俺が とても危険な存在であることを知った上で それでも俺のことを思ってくれるのであれば 愛し続けてくれるのであれば 俺もその気持ちに答えたい。

だから 最初に このことを話さなければならないと思ったのだ。


「ナオキさん それはいったい・・・・?」


サヤの言葉にシオンさんも頷き同調している。

俺は 俺と魔王のこと 歴代の魔王のことを 包み隠さず 知りうる全てのことを二人に語って聞かせた。

そして 最後に問い掛ける。


「こんな俺だけど 気持ちは変わらない?聞いた今でも 変わらず愛してくれるかい?」


「何を今更 言っているのですか?それは私に対する侮辱の言葉でしかありません。主人と決めた方に一生付き従うのが侍女というものです。それに 仮に魔王になったとしても 身の回りのお世話をする者は必要でしょうに その程度の事もわからない方から離れるわけにはいけませんね」


「・・・・シオンさん」


彼女は 言葉の辛辣さとは違い とても優しい表情をしている。だが、視線は裏腹に 強い決意を感じ揺らぐものではなさそうだった。


「私だって たかだか 魔王になるくらいで 気持ちが変わることはないわ!それに ナオキ様が秘密を打ち明けてくれたことや マリア様の余裕の様子からすると 何か服案があるのでしょ?」


たかだかって・・・・俺個人というより もう人類の存亡をかけた問題なんだけどね。でも そう言ってもらえる気持ちはとても嬉しい。

本当にこの人たちを好きになって良かったと心の底から思える。


「二人とも ありがとう・・・・二人の気持ちに答えるために マリアと結婚しようと思う」


聞いた途端に二人はキョトンとした。

あれ?

マリアを見るとマリアも 不思議そうな顔をしている。


「今までの流れで 何でそうなるの!」


サヤが怒り出した。シオンさんの目も非常に恐いです。マリアさん 何か話が違ってませんか?


「マリアから聞いたのだけど 俺との結婚について 三人で密約があるとか なんとか?」


二人は 「あー」と言った感じの顔をする。

あれ?

二人とマリアの間に なんだか 温度差が・・・・。

しばらく 沈黙が続くが シオンさんがとんでもないことを言い出した。


「私のような侍女ごときが ナオキ様の側室になれるなど 身に余る光栄なことだとは思いますが・・・・ただ、私達が等しくナオキ様を愛しているのは 確かめあいましたが ナオキ様は どうなのでしょうか?私達を等しく愛してくれますか?」


「当然だろ!だから 誰かを悲しませたり 傷付けたくなくて 誰も選べなかったのだから」


「では ここで私達に誓いの口付けをしてください!」


「はっ?」


「そんな恥ずかしいことを何度も言わせないでください・・・・」


「だけど・・・・するのは もっと恥ずかしいよ」


ここに居る 全員が想像したのだろう、皆が赤くなり 部屋の温度が数度は上がったかように暑く感じた。


「兎に角!正室と側室 側室同士など 色々な 軋轢が生じるのは世の常ですが 私達はナオキ様を中心に 互いを裏切らない事を ここに誓約しあうのです。そのための 儀式とでも思ってください」


「言いたいことは分かるけどだからって その・・・・しなくても?」


「言葉だけでなく 何か行動を伴った方が心に深く刻み込まれると思ったので・・・・それとも ナオキ様は私と口付けするのはお嫌なのですか?」


モジモジと恥じらう姿は・・・・

た、堪りません!


「嫌なわけないだろ!むしろ したいくらいって・・・・って 何を言わせるんだよ・・・・」


もしかして 実はシオンさんもしたいだけとか・・・・?

その後 頑なに断ることでもなく 俺は 三人の美女に口付けをしていった。後付けの 言い訳にしか聞こえないかもしれないが 確かにお互いの気持ちが より強く繋がった気がする。

ん?

でも マリアとはもうしたよな?って そんなこと 今言ったら 確実に揉めそうだ。

それに 結婚すれば キス以上の事だって・・・・。

ヤ、ヤバイ

妄想しただけで

色々 ヤ、ヤバイ・・・・。

兎に角 落ち着こう。円周率を思い出しながら 深呼吸っと

シオンさんの氷柱のような冷たく 刺さったら痛そうな視線を受けながら 妄想を吹き飛ばそうと悶えていると サヤが辛そうに 声を出した。


「私・・・・ナオキさんの気持ちも お二人の気持ちもとても嬉しかった。だけど 付いては行けない。私は医者で 病気の人を見捨てて王宮の人になるなんて できない・・・・ごめんなさい」


とても悲しそうに俯くサヤを マリアもシオンさんも戸惑い 悲しみ 色々な感情が入り乱れた表情で見つめるだけで どうすればよいのか 分からずにいた。


だが 俺に秘策あり!


と言えば大袈裟だが サヤがそう言うだろうとは想定していたので 解決策にはならないかもしれないが 妥協案を考えていたのだ。


「サヤ そのことなんだけどさ・・・・元の世界には 医者を志す者が通う学校があるんだ。この世界にも 医者を目指す者のための学校を作れないかな?そして サヤはそこの校長というか先生になれないかなって。今まで 大きな魔力をもつ者は軍に入ることが多かったけど 魔王がいない世界なら 違う選択肢があってもいいのかなと・・・・いきなり 多くの学生を受け入れることはできないだろうけど 少しずつでも 本物の医者の数を増やしていったほうが 救える命も増やせると思うんだ。

問題は 王室に入って 先生とは言え 外で仕事をすることができるか・・・・後は 本物の医者と言う 地位を向上させて 医者を目指そうとするものを 増やせれるか というとこかな。

確約はできないし 障害は俺が思ってるより きっと大きいのだろうけど 俺もマリアも 協力するよ。それに 国のためになることなんだから きっと陛下も説得できると思うんだ。

どうかな?」


「ナオキさん・・・・そんなことを考えていたんだ。医者の数を増やすのは 必要なことだとは思うのだけど・・・・だけどやっぱり 今いる患者さんを見捨てることはできないわ」


「だーかーらー!教えるには 実際に治療を見せる必要が あるだろ?」


俺は ニヤリと口角を上げ 続ける。


「生徒に 医療魔法を教えつつ 患者さんも診る!」


「本当に ナオキさんは 狡賢いわね。でも それが いい方向に向かうなら歓迎すべきことなんでしょう・・・・・ありがとう・・・・」


「ただ、これは賭けなんだ。サヤが 王室に入ったはいいけど 計画は失敗したとなれば 苦しむのは サヤ自身・・・・」


「失敗なんかしません!私も協力しますし なんと言ってもナオキ様が 決意されているのです。もしかしたら時間はかかるかもしれませんが 必ず実現します」


マリアは力強くそう言った。なんだか 凄いプレッシャーをかけられているような気はするけど 好きな人と一緒に居るための努力は惜しんではいけないのだろう。


「ありがとう・・・・本当にありがとう。ナオキさん このお話 受けさせていただきます。末長くよろしくお願いします」


サヤは 涙ながらも 満面の笑みで答えてくれた。



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