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勇者と姫のそれから  作者: べるこさん
第1章 異世界編
59/135

059

「召喚の秘密についてです」


俺が呆然としていると マリアは改めて言葉を重ねた。


「ナオキ様が お帰りになることを切望していたことはわ分かっていました。分かっているからこそ 言えないでいました。偉そうな事など言えませんね」


辛そうなマリアを見て思った。俺は 嫌われたくなく 失いたくなかったから言えないでいたがマリアは俺を思って 言わないでいてくれたのであろうと。同じ行為であっても その意味には天と地ほどの差がある。何も知らず ただ、帰りたいと 言うだけの俺を見て 黙っていた事は さぞ辛かっただろう。

素直に思ったことをマリアに伝えた。

マリアは ではお互い様と言うことでと 笑顔で答えてくれたがすぐに真剣な表情に戻る。


「ナオキ様は 今のままでは 永遠に帰ることはできません」


「それは どういう事?秘密と言うか 召還陣の起動方法が分かれば帰れると思うのだけど?」


「それは・・・・」


マリアは 口ごもる。よく考えれば 俺に帰って欲しくないという気持ちもあったのだろう(と思うと言うか 思いたい) だが、俺に秘密とやらを言えなかったのには訳があるはずだ。秘密を知っても そのファクターを俺が用意できないと言うことなのか?しかし 俺自身や今までの勇者だって 召喚してきたのだから まったく 用意することが無理な物でもないだろう・・・

しばしの沈黙の後 マリアは重くなった口をようやく開いた。


「召還陣の起動には鍵が必要です。その鍵というのが・・・・・」


またも沈黙・・・・マリアは 次の言葉を出そうと口を開くが声にならない。そして 喉の振動が声となって 出た。


「鍵というのは・・・・命です・・・・・。

・・・・・・・・・・・・・王家の人間の命です」


真っ白になった。いつ立ち上がったのかは分からないが 気がつくと立ち上がっていた。王家の人間の命?それじゃあ 俺がここに居るのも・・・・マリアは 俺が来る直前に母親を亡くしたと・・・・まさか・・・・?


「マ、マリア・・・・それじゃあ 俺が召喚されたときも・・・・もしかして・・・・?」


「はい・・・・母が・・・・・」


俺は マリアの母親を奪ったと言うのか?マリアの大切な人を奪ったと・・・

しかし マリアは 俺の様子を見て慌てて 否定する。


「それは ナオキ様の所為ではありません。もしそれを ナオキ様の責任にするなら 母の考えや思いを踏みにじり侮辱することです。むしろ 命惜しさに ナオキ様を送り帰さない 私達のほうが 軽蔑されるべきなのです」


そして、マリアは話の核心を 俺に突きつけてきた。


「ナオキ様が 帰るには 誰かが死ななければなりません。ナオキ様は 誰かを生贄にして お帰りになることを望みますか?」


「・・・・・・・・・・」


返す言葉が見つからない。誰かを犠牲にしなければ帰れないが ここに居続け 俺の心が壊れて魔王になれば 数百万 数千万の 罪もない人々を俺自身が殺してしまうかもしれない。そして 力なくソファーへと 崩れるように座る。


「ナオキ様 答えは とても簡単なのです。わたくし・・・・」


マリアの言葉を遮る。当たり前だ!マリアの命を奪ってまで 帰れるわけがない。だが・・・・。


「マリアの命を奪ってまで 帰ることなどできない!」


キョトンとするマリア


「私は 死ぬつもりなどありませんよ?」


「へ?」


マリアのそっけない返事に 間抜けな声を上げる。いや・・・・話の展開を考えれば マリアが自分の命と引き換えに俺を送り帰そうということではないのか?まあ 俺自身そんなことは望んではいないのだが 何か こう やりきれない気分になった。

微妙な表情をしていると マリアは したり顔で言う。


「私が死んで ナオキ様がお帰りになっても ナオキ様は 喜ばれないでしょう?その程度のことは 初めから分かっています」


「確かに マリアの死なんか 望んではいないけど・・・・でも いつかは帰らないと 俺も魔王になってしまうかもしれない。どうすば・・・・」


「だから 答えは簡単だと 申しているではありませんか!」


「?」


そんな簡単な 解決法があるなら こんなに悩んだりしない。マリアは一体何を考えているんだ?


「ナオキ様は 私と結婚すればよいのです!!」


「へ???」


突然のプロポーズに 頭の中どころか きっと 頭の上にまで 『?』が たくさん浮かんでいるような気がする。まったくもって 意味が分からない。


「さすがのナオキ様でも 察しがつきませんか。要するにですね ナオキ様は不老不死でしょうが 私は違います。健康であれば 何十年後かには 寿命でこの命は尽きます。では 命尽きる 直前に 風前の灯の命を使い ナオキ様を 元の世界に お送りすると言うことです。どうですか?見事な解決法でしょう」


マリアは エリーほどではないが 立派な胸を突き出し 自慢げだった。しかし それでも何十年か後のマリアの命を奪うことには変わりないのでは・・・・?


「でも結局はマリアの命を奪うことには 変わりないじゃないか」


「これは お互いに傷つかない方法ではなく お互いが傷つく方法なのです。私は 年老いて残り少ない余命を失い ナオキ様は 元の世界に帰られたときには 数十年たち もしかすれば ナオキ様の父母様は お亡くなりになっているかもしれません。ご友人や 妹君様に対しては 年老いていないナオキ様は ご対面できないかもしれません。また、その様な状況を考えれば 生活基盤が何もないところに 放り出されるのですから その後の生活も かなり ご苦労があるかもしれません。・・・・・言葉にしてみるとナオキ様の負担のほうが 大きいですね・・・・・ですが 私が 今 考えうる最良にして唯一の方法がこれなのです」


「・・・・・マリア」


「私は 例え 命と引き換えでも 少しでも一緒の時間を過ごせるのであればこれほどの幸せはないと 思っています。この方法で 残り僅かな命を使えば ナオキ様は きっと悲しんでくれるのでしょうし 辛い思いをさせてしまうかもしれません。お帰りになっても きっと苦労のほうが多いと思います。これは 私の我侭なのです。ですが 同時に ナオキ様と・・・・・あなたと 一緒に居たいという 本当の・・・・・素直な気持ちなのです!」


我武者羅に心の内をさらけ出すマリアは 目には涙まで 浮かべていた。

俺は・・・・まだ 判断はつかないが マリアの真摯な言葉に 自分の中でも素直に マリアと一緒に居られれば きっと幸せななのだろうと言う気持ちが どんどん 大きくなってきた。すっと 立ち上がりマリアの横に座りなおし 肩を抱き 引き寄せるとマリアは 涙で潤ませた瞳で見上げてくる。吐息まで感じられる距離・・・・マリアは静かに目を閉じた。俺は 引き寄せられるように 唇を重ねる。時間にすれば数秒 だが 体感的には とても長く感じ 希望としては 永遠に続いて欲しかった。

唇を離すと 涙を溜めたままだが 見る物全てを溶かしそうな微笑を浮かべ 肩に頭を乗せてくると俺も肩を抱く力を少し増した。

2人で上気した顔が冷めるまで そのままの体勢で 時を過ごす。

落ち着きを取り戻したマリアは俺の目をじっと見つめながら言った。 


「今の口付けは 私の求婚を受け入れてくれたと理解してよろしいのですね?」


「えっ?」


マリアの言葉に一瞬 戸惑う。なんと言うか 場の雰囲気に飲まれ つい勢いでやってしまった感は否めない。


「まさか ナオキ様は 結婚の意思もなく 一国の王女の唇を まだ 誰にも許していない私の唇を奪ったというのですか?」


「いや・・・・それは・・・・その・・・・」


マリアの言葉で 結婚したい いつまでも一緒に居たいと強く思ったのは事実であるが・・・・。

戸惑っている俺を マリアは意地の悪い笑顔を浮かべながら呟いた。


「冗談です」


「へっ?」


「だから 冗談です。ですが、今の口付けで ナオキ様も私と同じ気持ちだと分かりました。結婚のことも私の案についても 前向きにお考えください」


冗談だという言葉はマリアなりの照れ隠しだと言うことは分かる。俺の秘密も召喚の秘密も開示された今 マリアの案は 多少の蟠りはあるものの 恐らく最良だと思う。それに 先送りと言われればそれまでだが 結婚をすれば 召喚陣の解読の時間もかなり取れるだろう。秘密を知った上で解読に当たれば 何か糸口が見えるかもしれないのだから。


「俺も・・・・マリア!俺と結婚し」


俺の 一世一代のプロポーズは 事もあろうに 当のマリアに遮られた。


「ナオキ様!」


呆然とする俺を尻目にマリアは続けた。


「ナオキ様は 雰囲気に流され 失念してはいませんか?」


「何を?」


「シオンとサヤさんのことです」


「あっ・・・・」


「あっ では ありません!まったく・・・・。ナオキ様 このことについても 私には 腹案があります。お聞きになりたいですか?」


ヤレヤレといった感じのマリアだが きっと この姿を見せなかった5日間に色々と想定して考えを纏め上げてきたのだろう。それに対し俺は 帰ることに固執し考えることを放棄していた。まったく 恥ずかしい限りだ。それを理解したのだから 自分で答えを見つけるべきなのだろうが 兎に角 マリアの話を聞き 自分の考えを纏めることにした。


「聞かせてくれるかな?」


「素直なのは 良いことです。これも答えは簡単です。私と結婚すればよいのです」


「あのー?」


なんと言うか 答えになってないし・・・・。だけど マリアが こんな自己中心的なことを 言うはずもないと思いつつも それも愛の成せる技なのかとも思う。マリアの真意を確かめるべく 問いかけた。


「えっと それは どういう理由でなのか 聞かせてくれる?」


「フフフフフ・・・・。私は 王族なのですよ?王族の私と結婚すれば 側室をもつことも 可能です。実は シオンもサヤさんもこのことについては 了承済みです」


おいおい・・・・・。側室って・・・・・。しかも 了承済みって・・・・。

ん?

待てよ・・・・この5日間 シオンさんとは 会うことは可能だろうけど シオンさん自身 マリアのことを心配していたから 会ってはいないだろうし そもそも サヤに会いに行くことも不可能なんだから 側室の話って 以前からしてたことになるよな・・・・。

女って 怖い・・・・。

これこそ 本当に 蟠りだらけだけど マリアの案は 解決策の一つであり 他の方法は思い付かない。

ハーレム

男一生の夢と 短絡的には どうしたって考えられないが 4人で よく話し合おう。


だけど 今は・・・・


「マリア・・・・・本当はもっと格好良くしたかったのだけど・・・・マリアの案に 乗っかろうと思う・・・・えーーと・・・・つまり・・・・その・・・・結婚しよう。

結婚に向けて 一度 4人で話し合おう。俺の ことも全部 聞いてもらった上で シオンさんとサヤに もう一度 判断してもらおう」


「そうですね。4人で 話し合いましょう。

それより 私 とても 嬉しいです!ナオキ様 大好きです!」


そう言って 腕にしがみ付いてきた マリアは清々しい春風のような雰囲気をかもし出していた。


見つめあう二人・・・・どちらからともなく 再び唇を重ねた。




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