053
「暇だ・・・・」
魔王を倒し城に戻ってから今まで 色々な事があり過ぎな何もない日常に戻ると 途端に暇をもて余していた。召還陣の解析も続けてはいるが ここ最近は行き詰まっているのも原因の一つだろう。
「ナオキ様 自分のお部屋だからと言っても お行儀が良くないですわよ」
革張りの 立派なソファーに 寝転がり ダラダラしていると 元お姫様の侍女 アンナがお茶を淹れてくれた。アンナのお茶も まだまだ シオンさんには及ばないものの それでも 以前より 比べ物になら無いほど 上達し 香り高く 美味しくなっていた。
「美味しいお茶と お小言をありがとう。だんだん シオンさんに似てきたね」
アンナは 嬉しそうに 自慢気に答える。
「あら それは光栄ですわ。シオンさんは 私の目標ですから。そうですね、これからは お小言にも磨きをかけていきます」
さすが アンナは元お姫様と言うこともあり しっかり教育も受けているのだろうし 頭の回転も速く 俺の皮肉を見事に切り返してくる。俺は口がたつほうではないし 女の子に口で勝てる気がしない。
そうこうしていると 今度は エリーがたわわな胸を揺らし フルーツの盛合せを持ってきてくれた。ついついエリーの 胸元にある 2つのメロンを チラ見してしまう。
「ナオキ様!目が嫌らしいですわよ」
アンナの言葉に チラ見と言う名の ガン見を止め 目を反らし 慌てた言い訳をする。
「い、いや そんな目はしてないよ。本当に・・・・」
エリーは 腕で隠せないほどの胸を必死に隠そうとし アンナはジト目で見つめてくる。
「あーーー暇だなぁーーーーアンナ 何か面白いことない?」
とにかく 無理に話題を変えようとする俺に やれやれと 小さく溜め息をつく。
「ナオキ様は 元の世界でこう言うとき 何をなさっていたのでしか?」
「そうだなー 暇なときは 本を読んだり 町に買い物に出たり 後 ゲームしたりとかかな?」
エリーは 不思議そうに 尋ねてきた。
「げえむとは 何ですか?」
何と聞かれても 答えるのは難しいな。存在もしないことの説明の難しさに しばし悩む。
「えーと ゲームとは 遊びの一種かな?」
内容までは 説明する俺にも 受ける側のエリーたちにも ハードルが高いような気がする。薄い板(画面)の中に 自分の分身のキャラクターが 映し出され 戦ったり 冒険したり?言ったところで 理解できないだろうな・・・・。まあ 3年前の自分の状況が その通りなのだが。それに 実際は ゲームや買い物より ちょっとした 暇潰しだと スマホで ネットや動画を見ていることの方が遥かに多かったが ゲームですらあの程度でしか説明できないのに ネットとか スマホとか無理だろうと それらを読書と言ったのだ。
「その げぇむ と言うのは ここではできないのですか?」
今度は アンナが聞いてくるが それができるなら こんなに暇をもて余してはいない。
「んー 難しいかな?専用の機械・・・・専用の道具がいるから」
なんと言うか 「機械」と言う言葉で すでにキョトンとされるのだから この世界の人間を地球に連れていけば 一体どんな反応を見さんのだろうか?想像しただけで 少し笑えてきた。
「その様子ですと 道具と言うのもこちらで作るのは 無理なのですね?」
「そうだね。この小指の爪の大きさのところに 何万とか何十万とかの部品が組み込まれていて それをいくつも組み合わせて 使ったりするから ここで作るのは 無理だね。双六とか簡単なボードゲーム・・・・・・・なら・・・・・・・・作れるね!!!!」
あったよ!何で今まで気が付かなかったのだろう?異世界に行く ラノベなんかじゃ 当たり前なのに・・・・しばし 考え 出た結論 それは リバーシだ。将棋やチェスも考えたが ルールや駒の動きなどを覚えるのに 子供では 無理がある。それに チェスに至っては 俺がルールを知らない。その点 リバーシは ルールが簡単で小さな子供でも すぐに覚えられるだろうし 簡単だが ゲームとしては 奥が深い。そして 道具も簡単に作れる。双六は 升目の指示が 移動 ○進むとか スタートに戻るとか だけだと すぐに飽きそうだが 知識レベルや生活様式にあわせて 色々 作ってみたら 面白いかも知れない。人生ゲームのような発展が望めそうだ。これは 作り方だけ 広めれば 良いだろう。娯楽という物がないこの世界で どこまで受け入れられるか どのような影響をもたらすかは分からないが やってみる価値はあるような気がする。
「できる! ありがとう アンナ エリー!」
嬉しさのあまり 2人を順番にハグをし 手を握り 感謝の言葉を述べる。2人は俺の突然の行動に 戸惑いを見せるが 抱きつかれたことに少し恥じらい 頬を朱に染める。
「魔王は倒したけど まだまだ みんな生活の再建に追われて 生きるだけで精一杯じゃないか。だから 少しでも 楽しみを見つけてもらったり 笑顔になれるようなことを できないか ずっと 考えていたんだ。まだ、受け入れられるかは分からないけど 2人のおかげで その答えが少し見えた気がするよ」
エリーは 俺の言葉を聞くと 目にいっぱいの涙を浮かべ 今度は彼女方から 抱きついてきた。
「ナオキ様は ご自分のことだけでもとても大変なのに それでも いつもこの世界の 人間・・・平民も貴族も大人も子供も関係なく 思い考えてくださっています。私 だからナオキ様のことを尊敬しているのです。だから ナオキ様のことが大好きなんです!」
「エリー・・・・」
って エリーさん・・・・せっかくの感動のシーンなんです。そんなに胸を押し付けないでください・・・・。あぁ・・・・柔らかい・・・・。
「エリーさんだけズルイです!私だって ナオキ様のこと 大好きです!!」
今度は アンナが 後ろから抱きついてきた。そんな 抱きついたら また胸の感触が・・・・って あれ?感触が・・・・?あっ! そっか エリーの殺傷能力のある胸の感触のせいで 並みの感触は感じないんだな!別に アンナが チッパイ って訳じゃないはずだ!
「ナオキ様 今 とても失礼な 想像をなさっていませんでしたか?」
「いや・・・・し、してないよ・・・・?」
アンナは 俺に回した腕を グイグイ締め上げてくる。
「アンナさん・・・・く、苦しいのですが・・・・・」
でも 美女達に こうされてるのも 決して悪い気はしない。むしろ 嬉しいくらいだが きっと ラブコメの神様は ちゃんと マニュアル通りの仕事を するんだろうな・・・・。
「ナオキ様 いらっしゃいますか?」と、声と共にドアをノックされる。アンナは 先ほどの仕返しとばかりに 「どうぞ、お入りになってください」と返事をすると 扉が開き マリアが 部屋に入ってきた。
まあ 後は 予想通りです・・・・。
マリアに みっちり30分は お説教され ようやく開放される。
「と言う訳で リバーシって言う ゲームをこの世界に紹介したいと思ってるんだけど いきなりじゃ どうかと思うので ここで 一度 遊んでもらおうと 思ってるんだけど 協力してくれるかな?」
みな 賛同してくれ 道具の準備もあるので 3時のお茶の時間に シオンさんや ターシャも呼んで 俺の部屋で リバーシの モニターをしてもらうことにした。
もし この世界で 受け入れられるとすれば これが 第一号 リバーシになるので 少し豪華仕様で作ることにする。受け入れられなければ 無駄になるのだが・・・・。聞けば 王城の床には 白や黒の石材が使われているところがあり その石は 国が管理する 採掘所で取れるらしいので 一応 ヨーヒムさんに 少し 分けてもらえるように 頼んでみる。
「今 石材と言っても 全ての物資は お金よりも貴重なのです。無駄にする余裕はないのですが」
ヨーヒムさんは 表情を変えないまま その鋭い眼光をこちらに向けてくる。モニターをしてもらうための 仮の道具なので ここで 無理を通す必要もない。「そうですか」と 簡単に引き下がると 意外そうな顔をする。
「よろしいのですか?」
「まあ 町で廃材でも貰ってきますよ」
ヨーヒムさんは 小さく溜め息をつき
「分かりました。使って頂いてよろしいですよ」
「いいのですか?」
「たいした量ではなさそうですし 勇者殿の事だ 決して無駄に使うことは ないのでしょう」
「ありがとうございます!」
礼を言いながらも心の中で苦笑いを浮かべる。自分で言うのもなんだけど 余り我が儘を言ったことはないし 勇者の俺の機嫌を損ねたくもない。だから 最初から許すつもりなら余計なことを言わなきゃいいのに。まあ ヨーヒムさんにしてみれば それでも釘を刺しておきたかった と言うところなのだろう。本当に苦労の多い人だよ。
城に使われている石材は キャロフという町のそばにある 鉱山で取れるらしい。この鉱山は 良質な魔石の鉱脈があることで知られ また、この鉱山の石や岩には 極微量の魔力が含まれ 漆黒の艶やかな石は 特殊な魔法薬を塗ることで 真っ白に変色するらしい。ここで採れる白と黒の石材は 品質 色合いとも良く 高級品として 取引されるため 石に塗る魔法薬のレシピは 王家の秘密にされている。
鉱山に着き 責任者にヨーヒムさんから貰った紹介状を手渡し 彼は内容を確認する。
「これは 勇者様。わざわざこの様な場所まで 来ていただかなくとも」
「急いでいたもので」
挨拶もそこそこに さっそく 石材を用意してもらった。板状で厚さ1センチ強と言ったところか?
「もう少し 薄くなりませんか?」
「うちの一番の職人でも この厚さが限界ですよ」
と、責任者の男は言う。さすがに 分厚過ぎるので 自分で切ってみることにした。責任者の男も 後から来た 職人の男も 呆れ顔で 俺が頼んだように 板状の石材を立てて固定してくれている。
固定が終わり 俺は剣を抜き構えると 見守る2人は 剣などで切れるかと ニヤついていた。愛用のオリハルコンの剣に魔力を通し スッと振り下ろす。まるで 豆腐を包丁で切るかのごとく 何の抵抗もなく切り分けてやった。
2人は 俺が何をしたかも分からず 言われるまま 固定を外すと 見事にスライスされ 滑るように2枚に分かれる。2人は 驚きの表情のまま しばらく見つめあっていた。
更に 「片面だけ 白くしたい」と申し出ると 2人は もう なにがなんだか 分からないといった感じになる。普通は切り出した石は 白くする場合 水槽に浸すらしいが 今回は片面だけでいいので 刷毛で 魔法薬を塗っていき 待つこと数分 見事に 白黒の石が出来上がった。駒に切り抜くのは 城でするか。
後は 盤だな。日本にあった盤だと 緑色のフェルトような生地を使っていたよだが まあ これも石でいいかと思い 2人に聴いてみる。
「他に 色のついた石が出るところってありませんか?できれば 緑色の」
「んーー・・・緑色の石は国内からは 出ないです。宝石で 緑色の物が出るところはありますが そういった物をお探しと言う訳でありませんよね?」
「そうですね。厚みはあってもいいのですが 板状の石材が欲しいのです」
職人さんが 何かを思い出したように 話し出した。
「そう言えば ダリーンで 勇者様がお探しのような 石が出るようです。モニリの町なら あるいは 取引をし 持っている商人が居るかもしれませんね」
礼を言い 鉱山を出て すぐに モニリの町に転移した。って 結局 ここか・・・・。よほど縁がある町らしい。と言うか サヤと縁があるのか?自分で思いながら 照れてしまう。
門番と挨拶を交わし 何度も訪れた そして 俺が大切に思う人が住む町へと足を踏み入れた。




