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勇者と姫のそれから  作者: べるこさん
第1章 異世界編
51/135

051

無事 妹さんを 救出できた。今は ダリーン騎士団 団長ロックと一緒に タラクシャの とある村で匿ってもらっている。


ダリーン城内に居るデンドロスの息のかかった人間を使い ロックの妹にお使いをたのみ 城の外に連れ出す。監視者が 付いてきていたが それは こちらとしては好都合。死んだと思わせるには 目撃者が必要だからだ。町の雑踏の中 シオンさんと入れ替わってもらい 川沿いを歩き 川へ転落 水中で待機している俺が 転移で助けると言うシナリオだった。流れの速い川だったので 死体が上がらなくても不自然ではないし 溺れるシオンさんの演技は真に迫っていた。が、本当に溺れていたらしい・・・・。海の近くに住むものは 比較的泳げるが 内陸部に住む人のほとんどか 泳げないとか。まあ 学校の授業があるわけでもなく 町に市民プールが有るわけでもない。そう 考えれば やむを得ないと言えるだろう。


抱き合う 兄妹を見ながら そんなことを思い出していた。シオンさんも泳げないなら 最初に言ってくれればよ良かったのに。


麗らかな日差しの中 兄妹の姿は日差し以上に眩しく思えた。


――兄妹愛


その一言が 眩しさの理由なのだろう。

俺にも『こまち』と言う妹が居る。仲が良かったかと聞かれれば まあ良かった方かと思う。会話はあったから・・・・。同級生で小学生の妹に無視されてるとか言っていた奴が居るくらいだから・・・。

妹への愛はあると思う。月並みな言葉だが 会えなくなって初めて気付くと言うやつだ。愛はあっても恋愛感情でないことは ここで明言しておこう。あんなのは アニメの中だけの世界だ。妹が風呂上がり バスタオル1枚で


「お兄ちゃん パンツ取って」


と言われても 何とも思わなかったし むしろ怒ったくらいだ。

だけど 会えなくなるならもっと 仲良くしておけば 良かったと 悔やまれることばかりだ。遺伝子学なんて 知りもしないが 恐らく 遺伝子的に一番 近しいのは 兄弟 姉妹なのだろう。

自分の半身を無くしたような そんな 喪失感があるのだ。


恋愛感情と言えば 幼馴染みの 遥に対してだろう。俺と 魔王に成り果てた 祐太 そして遥は 幼馴染みで ガキの頃から いつも 一緒に居た。祐太は比較的 何でもそつなくこなす タイプで 俺はと言えば デンドロスとのことでも分かるように 頼まれ事は断れず いつも 貧乏くじを引いていた。


「だから あんたは 世話が焼けるのよ」


遥は そんな お小言を言いながらも よく助けてくれる。

祐太は 遥かのことが好きだったようだ。今となっては確かめようはないが・・・・。俺は?どうだったんだろう・・・・。日本に居た頃の俺にはよく分かっていなかった。祐太に対しての遠慮もあったのかもしれないし いつも 一緒に居たので 改めて好きだなんて 恥ずかしくて 言えるわけもない。なにより3人の関係性を崩したくなかったと言うのが 一番なんだろう。

ある日 冗談で こまちに

 

「俺が結婚するまで お前は 彼氏作るの禁止な。俺の目が黒いうちは どこの馬の骨とも分からん奴に こまちをやるつもりはない!」


何ていうと 呆れながら シスコン過ぎてキモイとか言いながらも


「だったら 早く はるちゃんに 告っちゃいなよ。はるちゃんも お兄ちゃんのこと好きだと思うよ」


「バカ!遥は 祐太のことが」


「はぁーーー バカはお兄ちゃんだよ。見てれば 分かるよ。って言うか みんな はるちゃんがお兄ちゃんのこと好きだって 気付いてるよ。後は お兄ちゃんが告るだけなんだから。それに祐太さんだって 分かってる・・・・まあ 祐太さんのことは こまちに 任せてくれればいいよ」


「お前 祐太のことが好きなのか?」


「そだねー 少なくともお兄ちゃんより 素敵な人だとは 思うよ。後は 内緒!」




要は 自分の気持ちに気付かない振りをしていた ヘタレって言うことだ。

それこそ もう 会えなくなるのならと 悔やんでも悔やみきれない。


今 この世界に マリア シオンさんに サヤが居る。3人のことは とても大切に思っている・・・・

いや・・・・はっきり言おう


--愛している


元の世界に帰れないからと 告白することもできなかった 好きな相手を 心の奥に追いやり 3人のことを愛していると なんと節操のない男なんだ 俺は・・・・。

だけど 俺は 元の世界に帰りたいと思っている。魔王になんかなりたくはない。愛していると 今度はちゃんと 気付き認識しているのに また 伝えることもせず 同じことを繰り返すのか?


帰らなければならないからこそ 伝えることができない。


と言えば 聞こえはいいかもしれないが 誰を選べばいいのか 分からず 逃げているだけなのかもしれない。兎に角 同じ過ちは繰り返さない。伝えないことが 過ちかどうかは 分からないが 少なくとも 「後悔 先に立たず」だ。


--選ぶこと

--伝えること

--帰ること


それらを 今の 目標にしよう。




「ナオキ様 どうなされたのですか?」


仲睦まじい兄妹を見つめていたはずが その2人の姿は 既になく 俺は ただ ぼうっとしている人になっていた。


「ロックさん兄妹を見ていたら 妹のことを思い出しちゃってね」


視線を上げ 日差しに目を細め懐かしむように答える。


「妹君がいらっしゃったのですね。私は ナオキ様のことを何も存じ上げないのですね・・・・」


寂しそうに呟くシオンさんに


「俺だって 昔のシオンさんのことは 知らないよ。だけど 今のシオンさんのことは よく知っている。泳げないことも 知ったしね」


シオンさんの頭に手を置き 子供をあやすように 言うと 頬を赤く染めながら抗議する。


「もうっ!ナオキ様のことなんて知りません!」


寂しげな表情は 何処へ行ってしまったのか 赤らめた頬を 精一杯 膨らませる仕草は いつものクールな感じのシオンさんからは 想像できないほど 愛らしく そんな シオンさんを見て俺もついつい 笑顔がこぼれてしまった。


「いやいや さすがは勇者様だ。魔物と同じように 女を殺すのも得意なようですね」


そう言って近づいて来たのはニコニコ大魔人こと デンドロス殿下だ。ニコニコ顔と言いながら その笑顔は 意地悪そうな笑顔に思えた。


「ところで 勇者様 また頼みたいのだがよろしいですか?」


表に出すと また、弄られそうなので 心の中で大きく溜め息をつく。デンドロスには今回の救出作戦の他にもダリーンの有力な貴族や王族に対して根回しをするために ダリーン国内をあちらこちらへと 転移で送らされているのだ。

そして 俺が つまり 勇者が 自分と深い関係が有ることを この御家騒動で 自分は勇者に支持されていることを交渉相手にアピールする意味合いもある。




タクシーのような生活を2週間ほど送ると 根回しも終わり 橋の工事も 同じ頃に終わった。


そして デンドロスの姿は ダリーン城内 謁見の間にあった。謁見の間はタラクシャの物に比べると 荘厳さに欠け 質素な感じではあるが 広さでは勝っていた。国によって 仕来りや 文明 文化は違うので一概に比べれる物ではないが 窓もなく 壁に取り付けられた魔光灯の半分程度にしか火が灯っておらず 広い部屋が故に 余計に薄暗く感じた。北の大陸の一角を担う大国ダリーンであっても 城の全ての明かりをつけることができないのが現状なのだ。

そして その僅かな光でさえ 精霊王の怒りのため風前の灯なのである。


今日は 月に一度の御前会議であり 有力貴族や役職を持つ王族が 集められている。デンドロスはダリーン王の前で膝まずくと 橋の工事が終わった旨の報告を始めた。


「陛下 橋の工事が完了したことを 報告いたします」


「おお、もう終わったのか。さすがは 我が甥と言うことか。一族の中でもお前は 特に優秀であったからな」


「勿体ないお言葉です」


「だが 若く 優秀であると 力量を知らず 暴走しがちになる。デンドロスよ、ワシはとても残念だよ」


ダリーン王が目配せをすると 兵士がデンドロスの両脇を固める。それを見た王は下卑た笑みを浮かべながら続ける。


「何やら チョロチョロと 動き回っていたようだが ワシが気付かんとでも思っていたのか?」


デンドロスも 負けじと不敵に笑う。


「その情報をわざと流していたとお気付きになられないとは 陛下の知略も陰りが見えますな」


王の腹心や王に寄っている貴族は デンドロスが王の座を奪ったときに邪魔にしかならずできれば 王と一緒に排除したかった。そこで 地固めを終えた後 その者たちにも接触し 話を持ち掛けるが 全ては語らない。勇者が自分を支持していること 精霊の加護がなくなるかもしれないことを・・・・。


「私は この国 ダリーンのために 陛下には 廃位していただきたいと思っています」


「フン!ついに 本性を現したな。デンドロスは 謀反を企んでおるのは 今の言葉で明白。衛兵 デンドロスを牢へ 連れてゆけ!」


「この国に対しての謀反を行ったのは あなただ!陛下」


「何を言っておる!世迷言も大概にしろ」


「入れ!」


デンドロスが 叫ぶと 謁見の間の大きな扉が開かれ 窓のある 廊下から 薄暗い部屋に日が差し込むと 集められた一同は 目を細めながら 扉の前に居る物を 必死に確認しようとする。

そこに立っていたのは ダリーン騎士団団長ロックと その配下のものだった。10人の騎士団員達は デンドロスを取り押さえようとした衛兵達を押しのけ 彼を守るように 立つ。


「陛下 ロックに 何を命じなられたか お忘れではないですね」


「知らんな」


この期に及んで ダリーン王は白を切る。とは言え 普通に考えれば 王の言葉と その臣下の証言どちらに 重きを置かれるかは明白ではあるが 今回は・・・・。


「なら 思い出させてあげましょう。陛下は ロックに タラクシャ王女 マリア姫の暗殺を 命じたのですよ。ロックよ 間違いないな?」


「はっ!陛下より その様に勅命を受けました」


「と言っておりますが 陛下は 思い出されましたか?」


証人など意に介さず 王は平然と答える。


「知らん物は 知らん」


「そうですか・・・・ちなみに 暗殺は実行され 失敗に終わっております。そして そのことはタラクシャの知るところとなっています。これが どのような意味をもつか 陰りの見えた知略であっても ご理解いただけますね」


「ワシが責任をとらねば タラクシャに 攻め入られると お前は言いたいのだろう。それこそ お前の謀ではないか!!」


しかし まだ ダリーン王には 余裕があった。王は デンドロスたちを捕らえ 真犯人として差し出すと同時に 自身が タラクシャまで赴き 正式に謝罪をすれば あのタラクシャ王であれば どうにかできると判断したのだ。


「衛兵!衛兵!!この国賊・・・反逆者たちを捕らえよ!」


「僕は 国に混乱をもたらしたくはないので 陛下には 素直に廃位していただきたかったのですが 仕方ありませんね」


王が訝しむようにデンドロスを見ていると またも 叫ぶように 声を上げた。


「入ってください!」


呼ばれ閲覧の間に入ってきたのは 平民とも思える何処にでも居そうな 少年だった。そう そこに立っていたのは ナオキだった。少年のように見えるが 実際は青年といった方が正しいのだろう。

この場に集まった多くの者は デンドロスの根回しにより ナオキとの面会を済ませているが ナオキの顔を知らない者も居る。テレビやネットのないこの世界では仕方のないこと。貴族や王族だけが集まるこの場に みすぼらしいと言っても過言でない姿を見て 会ったことのある者ですら 未だに信じられないでいる。

集まった 貴族の一人が声を上げる。


「お前は誰だ!」


しかし 王だけは 怒りで顔を赤くし 小刻みに震えていた。


「俺・・・・私は ナオキ。勇者ナオキです」


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