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勇者と姫のそれから  作者: べるこさん
第1章 異世界編
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「敵襲! 敵襲ーーーーーー!!!!!」


護衛の兵の声が荒野に響き渡った。その声に呼応するかのように 前の岩陰から4人 後ろの岩陰から3人が姿を現す。ここは荒野であり 整備された街道以外は 大小の石や岩が点在し 馬車がまともに走ることはできない。そして 街道の前後を塞がれたことにより 逃げ場がない状態だ。護衛の兵の一人が 御者のシオンに声をかけた。


「自分達が 前方の襲撃者の気を引く その隙に 全速で馬車を走らせろ。いいな?姫を頼んだぞ!」


しかし その言葉に シオンは目深にかぶったをフードを脱ぎながら 意味不明な返しをした。


「お構いなく」


兵も シオンの言葉に疑問をもちながらも 混乱してるのだろうともう一度声をかけ 馬の前に出た。


「とにかく 全速で逃げろよ!」


残る護衛は3人 馬車の前に2人 後ろに1人 どう考えても 多勢に無勢。ジリジリと 襲撃者達は距離をつめてくるが 護衛たちは 突破口すら開けず これ以上 後退できないというとこまで 追い詰められていた。前方の2人は同じ死ぬなら せめて 僅かな隙でも作れないかと 玉砕覚悟で 特攻しようとしたその時


「止めておけ!お前達では 相打ちすらままならんだろうよ。俺が言うのも変だが命を粗末にするな」


リーダーであろう 男から発せられた 声 気迫 殺気・・・・結局 護衛は 一歩を踏み出すことさえできず その場へ 蹲ってしまった。

リーダーは 馬車の傍らまで来ると 矢に射抜かれた護衛を見下ろし呟く。


「すまんな・・・・命を奪うことはしたくなかったのだが・・・・」


そして 御者席に居るシオンに 視線を送りながら 殺気を篭め 声をかける。


「女、そこを退け。素直に言うことを聞けば 命までは取らん」


シオンは 返事をしないまま 動こうともせず 顔だけを その男に向け ニヤリと笑った。男は イライラしながら 動こうとしないシオンを引き摺り下ろそうと 一歩 馬車に向かって 足を前に出そうとしたとき その足が動かないことに気付き 見下ろすと 矢に射抜かれた 兵が自分の足を掴んでいる。


「この死に損ないが!」


倒れている男に 剣を突き刺そうとするが 瀕死とは思えない力で 足を掴んだまま立ち上がり 盛大に転倒させられた。


「バカな・・・・お前は確かに 射抜かれて・・・・!!!」


リーダーは 今度は 立場が入れ替わり 射抜かれた兵を見上げると どこにも 傷がない。血の一滴も垂れていなかったのだ。


「な、なぜ!?」


「なぜって? 簡単だよ 矢を受け止めて 刺さった振りをして倒れたんだから」


兵は言いながら 外套の中から 剣を抜き 自分がされたように リーダーの突き刺そうとした その時 おもむろに 剣を持っていないほうの手を前方に突き出し 言った。


「こんな風にね」


突き出した手には またも 矢が握られていた。


「バカな・・・・・」


握った矢を 持ちかえると せーの と軽い掛け声をかけながら 来た方向へ投げ返す。投げられた矢は まさに言葉通り 目にも留まらない速度で 弓術士の顔の横を通り過ぎた。弓術士は振り返ると 後ろにあった大岩に 先ほど放った自分の矢が 突き刺さり その岩が 2つに割れるのを見ると 腰が抜け その場にしゃがみこんでしまった。

馬車を囲んだ襲撃者たちに 弓術士がどのようになっているかは 知る術はないが 少なくとも 魔力を通した矢を受け止めるなど ありえない光景を目の当たりにし 動揺から ポカンと動けなくなっていた。


「お、お前は 何者だ!?」


尻餅をつき 動けないでいるリーダーは なんとか声を搾り出した。そして 兵はゆっくりと フードを外す。


「!!!!!!!!!!!!!勇者」


そこに居たのは 勇者だった。襲撃者達は 全員 モニリの町で 勇者の顔を覚えこんだのだ 忘れるはずも 見間違えるはずもなかった。しかし、勇者は 自分達の罠に嵌り 今は モニリの町のはず?疑問はそのまま声となり発せられた。


「勇者様は 今はモニリの町のはず? いや・・・あの女医を見捨てたと言うことか?」


「ああ、サヤは 助けたよ」


ナオキは 馬車の扉を開き 縛られた男女2人を 降ろすと リーダーの男は 驚く。サヤを攫うために モニリの町に残した 2人だったからだ。そして 馬車の扉から そっと顔を出した サヤを見て 驚愕した。


「一体 どうやって・・・・」


ナオキは 早朝 モニリの町に転移したが それは 指示された サヤの家ではなく サヤが監禁されていた場所に直接飛んだのだ。

ダリーン騎士団 団長ロックの作戦は サヤを攫い 町中に 手がかり つまり 「次は どこへ行け」と言った感じの物を配置し 時間を稼ぐものだったのだ。

では 何故 ナオキにはサヤの監禁場所が分かったのか?答えは簡単で サヤにも マリアやシオンが付けているのと同じ ミサンガを贈っていたからだ。ミサンガには 結界の効力と ナオキ自身の魔力を付与しているため 自身の魔力を探ることにより 居場所を簡単に突き止められるようにしていたのだ。そして モニリの町に転移し サヤを助け 誘拐犯を縛り上げ 宿舎に戻ってくるのに 10分もかからなかった。その後 サヤとナオキ そして魔法で眠らせた 誘拐犯は 馬車の中で 時間が来るまで待機、最初はナオキも馬車の中に隠れるつもりだったが 都合よく 雨が降り 雨具で顔を隠せたため 護衛の兵に成りすましていた。 そして ナオキが転移で 連れ込んだ人物がもう一人。

その人物が 馬車から降りると 襲撃者達は 時間が止まったかのように 固まってしまった。


「ダリーン騎士団 その団長たる者が 何をやっている!」


「・・・・・・・・・・・・デンドロス殿下・・・・・な、なぜ・・・・・」


「全ては 勇者様の手のひらの上 と言うことだ」


デンドロスは ロックを哀れむように見下ろし また、周囲の騎士団員を睨みつけ続ける。


「お前達も 誇りあるダリーン騎士団であるならば このような暴挙からは手を引け。凡その事情は 理解しているつもりだ。素直に投降すれば悪いようにはしない」


襲撃者たる騎士達は 持っていた武器を手放すと 力なくその場にしゃがみこんでしまった。しかし ロックだけは 剣を握りなおすと 立ち上がろうとする。


「駄目だ!妹の・・・・妹の命がかかっているのだ。ここで、諦める訳には・・・・」


「そうか、妹が人質に取られているのだな。だが・・・・今回の作戦 成功しても失敗しても責任は全て お前に押し付けられ そして連座の罪で妹も処分されるだろう。陛下のことだ 禍根を残すはずがないからな。しかし ここで 手を引けば 僕がなんとか手を回そう。助けるとは約束できないが こちらなら ほんの僅かではあるが 助かる可能性があるぞ。どうする?」


真摯な視線で見つめるデンドロスを じっと見つめ返す。そして ロックは剣を鞘に収め デンドロスの前まで 近づき 片膝をつく。


「殿下に全てを委ねます。できることならば 妹だけは・・・・」


「ああ、善処しよう」


その後 ダリーンの騎士団の面々を タラクシャの とある山村に 預かってもらうべく 転移し送り届けた。タラクシャ王城や 魔法院のボル先生を頼ることも考えたが ヨーヒムさんによると王城内には ダリーンと 繋がりがあり しかも 国の秘密に接することができるほど高い地位の者が居ると言っていた。タラクシャ王にも 国としては関与しないと明言されたので どちらの案も 却下し、知り合いの居る村で 預かってもらうことにしたのだ。



滞りなく 視察を終え 宿舎に戻り 作戦会議を開く。 兎に角 全ては極秘利に進めなければならず 俺はマリアの部屋に入り そこからマリアを連れ デンドロスの部屋へ転移する。騎士団の面々を送り届けたり 見つからないように転移で部屋を移動したり 部屋に結界を張ったり サヤを助けに行ったり・・・・・なんだか 俺 一人 苦労しているような気がする。


「はあー・・・・」


デンドロスの部屋につき 今までの苦労を思いだし盛大な溜め息をつくと デンドロスは ニコニコ顔を崩さず聞いてきた。


「勇者様 お疲れですか?」


苦労を知らなさそうな ニコニコ顔が余計に腹立たしく思えてきた。デンドロスはあの騎士団長に俺の手のひらの上とかなんとか 言っていたが 実際 俺も デンドロスにいいように 使われているような気がしてならない。


「平気です。まず 問題を整理したいのですがいいですか?」


「えっ?もう本題ですか?勇者様 そんなことだからお疲れになるんですよ。 せっかく なんですから 酒でも飲みながら 世間話でもしましょうよ」


俺もマリアも ジト目で見つめると 両手を上げ 降参のポーズを取った。


「整理すると言っても 問題は2つ。ダリーン王をどうするか、ロックさんの妹さんをどう助けるかですかね?」


「うん、そんなとこかな?」


「ダリーン王のことはお任せするしかないのですが?」


マリアは タラクシャ王から この件に関して 関わらないように厳命されている。俺自身 できれば 関わりたくはないので デンドロスに丸投げしてみた。

お前もちょっとは 苦労しろ!


「ああ 任せてくれ!と言いたいのだけど できれば勇者様に手伝ってもらいたいんだ。さすがに 国王の座を狙うんだ。それなりに 根回しが必要だろ?しかも 相手に知られないようにね」


「また、転移で送れと?」


「せーかい!」


あー なんか・・・頭痛くなってきた。イリスと喋っている感じがする・・・・。


「はあーーーー・・・・・ 分かりましたよ」


「溜息 多いですよ。やっぱり お疲れですか?」


一体 誰のせいだと。そして このニコニコが 腹立たしい。だが 上手く使われているような・・・やはり 食えない男と言うことなのか・・・・それとも バカなのか・・・・。


「えーと じゃあ 次は 団長さんの妹さんをどうするかですね?」


もう 面倒なので スルーすることにした。


「そっちは 僕にいい考えがあるんだ。妹君には 死んでもらおうと思っている」


デンドロスは 表情も変えず にこやかなまま 言った言葉に 俺もマリアも 立ち上がり マリアは 見せたこともないような 厳しい表情で 今にも 噛み殺ろさんとばかりに 詰め寄る。


「殿下は 団長に 助けると言ったのではないのですか!それを、それを・・・・目的のために手段を選ばないのであれば ダリーン王と 何が違わないのですか!恥を知りなさい!!」


今まで、 マリアは 一切 口出ししなかった。それは 他国の権力争いに 関わらないよう タラクシャ王に厳命されていたからだ。しかし これは国の問題ではなく 人間としての問題だとマリアは考えたのだ。だが、一個人の命と国の命運 天秤がどちらに傾くべきなのか・・・・


「怒った姫を見ると ゾクゾクしてきますよ。まあ 冗談はさておき 妹君には 死んでもらうつもりですが 何も本当に見捨てる訳では ありません。死んだことにするのですよ」


「えーと それは どう言う?」


マリアは 理解が追いつかず 怒りをどう納めればよいのか 分からず 呆然としていた。そんなマリアの代わりに 俺が 聞いてみた。


「つまりだね そのまま 勇者様なりが 保護しにいけば 簡単でしょうが それでは陛下にこちらの動きがばれてしまう。だから 死んでもらう・・・・死んだことにするんですよ」


デンドロスは 自慢げに言った。そして・・・・


「まあ これも 勇者様に 手伝っていただかないと 成り立たないのですがね」


この ニコニコ魔人が・・・・・


俺は また 大きな溜息を漏らしたのであった。


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