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勇者と姫のそれから  作者: べるこさん
第1章 異世界編
49/135

049

陛下の 部屋を出た後 ヨーヒムさんと 少し実務的な相談をした後 橋の工事現場へと 転移し戻った。すでに 深夜と言っていい時間であったが しばらく考え事をしていたので なかなか 寝付けず ようやく うとうと し始めた頃 ドアの外に気配を感じて また 目が覚める。慎重に物音をたてずにドアまで移動し外の様子を窺うが既に気配は消えている。念のためドアを開け 外を確認するが やはり 誰も居ない。

しかし 床には手紙が置かれていた。ドアを閉じ 明かりをつけて 手紙を確認する。


『モニリの町の サヤと言う女医は預かった。無事に返してほしければ 誰にも言わず 一人で町まで戻ることだ。サヤの家に手掛かりは残してある』


沸々と怒りが沸いてくる。今度はサヤを・・・・もしサヤに何か有れば 今度こそ 自分を押さえる自信はない。敵の狙いは明らかだ。わざわざ乗ってやる必要はないだろうと 俺はマリアたちの部屋へと転移する。誰にも言わずと書いてあるくらいだから どこかで 監視されている可能性もある。更に転移した後 盗み聞き防止のために 室内に結界を張るのも忘れない。

薄暗い部屋の中 マリアはベッドで 可愛らしい寝息をたてている。もう少し近くで見たいと言う欲求に刈られ近づくと 首筋に冷たい感触が・・・・。


「止まりなさい!手を上げて ゆっくり こっちを向きなさい。怪しい真似をしたら」


言いながら 更に強く 刃物を俺の首に押し付けてくる。

こ、怖い・・・・。

言われた通り 手を上げ 振り替えると そこに居たのは シオンさんだった。まあ 声で分かってはいたんですかが。


「ナ、ナオキ様!?」


シオンさんは慌ててご自慢のダガーを 引っ込める。一瞬 驚きの表情となるが すぐさま 険しい表情へと変化した。


「ナオキ様 夜這いとは 関心いたしませんね」


「へっ?」


夜這いって・・・・シオンさんが激しい勘違いをしているため 思わず 素っ頓狂な 声をあげてしまった。

シオンさんは 今度は 頬を赤らめながら


「こんなことをしなくても 私は いつでも覚悟も準備もできていますのに」


覚悟は分からなくもないけど 準備って何ですか?あれですか?勝負下着とかですか?

外は 日が登ってはいないが それでもうっすら明るくなってきている。恥じらいを見せるシオンさんの姿が ぼんやりと写った。ついつい 見蕩れてしまうが 何故 既にメイド服・・・・。

いかん!妄想が爆発しそうだ・・・・。

そうこうしていると マリアも目を覚ましようだ。


「んんんぅぅぅ~~~~ん」


体を起こすと軽く伸びをし 眠そうな目をこすっている。少し 着崩れた寝巻きが た、たまりません・・・。


「ん~~~~・・・・・・ ん?ナオキ様?」


そこでようやく 俺に気付き 慌てて 毛布で 体を隠す。しかし マリアも顔を真っ赤にしながら


「夜這いなどなさらなくても 私は 覚悟も 準備もできていますのに」


「・・・・・・・・・・・・・・・」


マリアさんもですか?マリアさんも勝負下着なのですか?

って言うか なぜ 夜這い前提なんだよ・・・・

しかし 遊んでいる場合ではなかった。サヤの命がかかっているのだ。気持ちを切り替え 説明に入る。


「2人とも聞いて。夜這いじゃないから・・・・。俺の部屋に 差出人不明の手紙が来たんだ。内容は サヤを誘拐したから 誰にも言わずにモニリの町に1人で来い と言うものだった」


「サヤさんが!?」


2人とも 先ほどまでのふざけた気分から一転 真剣な表情となる。


「では サヤさんを盾にナオキ様をどうにかしようと言うことなのでしょうか?」


マリアの意見も普通に考えれば 間違いではないだろうが 幸か不幸か 残念なことに 俺は普通じゃないし 相手もそのことは分かっているだろう。


「いや、多分 違うね。今回の標的は マリアだろう。そもそも 俺を狙うなら どこでも狙える訳だし 相手だって 人質1人で 俺をどうにかできるとは思っていないだろう」


不安そうに 私ですかと マリアは呟いた。


「俺を マリアから 引き離して 誘拐するなり 命を奪うなり・・・・そして 可能性としては 後者のほうが強い気がする。誘拐して 国益を損ねるような要求をされても 陛下は恐らく マリアを切り捨てるだろう・・・・」


マリアに痛烈な宣告を浴びせかける。陛下は 良くも悪くも国王なのだ。心の中で血の涙を流しながらも自分の娘より 国益を優先させるだろう。

マリアは ベッドから抜け出すと シオンさんはすかさず 上着をマリアにかける。そのままマリアは窓のところまで歩き 朝もやに霞んだ 景色をじっと見つめ 俺達のほうを向かずに 呟く。


「お父様なら 陛下なら 恐らくそうなさるでしょう。それに私も 覚悟はできています」


「マリア・・・・ごめん・・・・無神経だった」


「いえ いいのです。王族と言うのは そう言うものですわ」


マリアは 俺達に向き直ると 無理に笑顔を作り尋ねてきた。


「それで ナオキ様は どうなさるのですか?」


「デンドロス殿下にもこのことを伝えた後 町に戻って サヤを助けに行くよ。俺に少し考えがあるんだ。詳しくは 後でもう一度、伝えに来るからそれまで 悟られないように 部屋でじっとしておいて」




2人が 頷いたのを確認し 今度はデンドロス殿下の部屋に転移した。ここでも忘れず 結界を張る。


「殿下・・・・殿下・・・・殿下!」


少し離れたところから 何度か呼びかけ 何とか 目を覚ましてくれた。


「勇者様・・・・結婚をなさらないのは やはり 男色の趣味が・・・・残念ながら 僕には 覚悟も準備もできていませんので できれば ご容赦いただきたいのですが」


がーーーーーーーーーーー!

なんで みんな 夜這い設定なんだよ!


「違います! 俺には そんな趣味はありません!!!」


「冗談です」


まったく この男は 寝起きから何を しゃれにならない 冗談を・・・。兎に角 時間が惜しいので 手早く 俺の知り合いが拐われ モニリの町に来るよう指示されたことを説明をした。


「これは 明らかに罠でしょう?」


「分かってはいますが サヤを見捨てるわけにもいきませんので」


「ですがそれですと・・・・」


デンドロスの言葉を遮り


「考えがあります。どちらにも 助けますよ」


デンドロスも今回の件は 俺ではなく マリアが狙いだと考えているようだった。そしていつもの笑顔に戻ると冗談めかし言った。


「おもてになるのですね。英雄色を好むと言うところですか」


「いや そんなことは・・・・・」


しかし デンドロスは 陰りの有る表情で 遠くを見るように呟く。


「こんな時代です。僕も大切に思う人たちを たくさん失くしました。ですが 勇者様には 守れる力をお持ちだ、羨ましい限りですよ」


「殿下・・・・・」


「勇者様は 結婚なさらないのてはなく 誰かを選べないでいるのですね。だけど これだけは覚えておいてください。誰も選ばないと言うのは 誰かを選ばないと言うことより 時として残酷なものですよ・・・・・いや これは余計なお世話と言うものでしたね。申し訳ない 忘れてください」


「殿下・・・・肝に命じておきます。それと 殿下にもう一つ見ていただきたいものがあります」


そして 操心の玉に残された記録も 一緒に見てもらう。


「・・・・・・・陛下」


記録を見終わった後 デンドロスは 驚愕の表情と共に 一言呟くことしかできなかった。


「これは 確固たる証拠になりますよね?それに 今回の襲撃者も うまくすれば 証言を得られるでしょう」


「ええ、間違いなく 証拠になります。僕も腹を決めました」


その後 今回の作戦をデンドロスに説明すと呆れ顔になる。


「なんとも やはり勇者様は規格外ですね」


「では 先ほど話した作戦通りという事でお願いします。俺は マリア姫に 作戦の内容を伝えたらすぐに 町に戻りますので こちらのことは 殿下にお任せします」


「分かりました。お任せください」


マリア達に 今回の作戦を伝えた後 予定通り 俺は モニリの町に 転移した。




日は登り 朝食の時間・・・・・


「シオン ナオキ様は見つかりましたか?」


「見つかりませんでしたが お部屋にこのような物が」


手渡されたのは 小さなメモ書きの様なもので 中には

『用事ができたので出かける。石切場には後で向かうので 心配するな』と書かれていた。

ここは 昨日 食事をした食堂ではなく デンドロスが用意した 部屋で 少しばかりの調度品が置かれ 机や椅子も良いものが使われていた。机を挟み マリアの正面には デンドロスが座り その後ろには お付きの者が立っている。


「ナオキ様は 所用ができ出掛けられたようです」


マリアの言葉に お付きの者は 嫌味っぽく言った。


「タラクシャの人間が我が領内を勝手に動かれては困りますな」


「勇者様は 別にタラクシャ王の臣下と言うわけではないでしょう。別に構わないさ」


デンドロスは軽く手をあげ お付きのものを窘めるとあからさまに 苦々しい表情となった。


「まあ 勇者様のことだ 心配はないでしょう。食事を始めましょう」


デンドロスの言葉で食事が始まり 食事中は世間話から 政治の話まで 語られ 長めの朝食となった。最後にデンドロスは 申し訳なそうに 言った。


「申し訳無いのですが どうしても 片付けないといけない仕事がありまして 僕は同行できません。それに 先程から 雨も降りだしたようですし 中止になさいますか?」


確かに早朝は 薄雲がかかっていた程度だったが 今はもう厚い雲に覆われ ポツリ ポツリと雨も降りだしていた。


「雨で視察を中止したたとなっては 兵達に示しがつきませんので」


マリアは気丈に答えた。


「分かりました。それと勇者様がいらっしゃらないのであれば こちらで護衛を用意させますが?」


「ありがとうございます。ですが 護衛は こちらの隊長に言って 数名出させます。まあ 何事もないでしょうから 大層な護衛も必要ないでしょうし」



出発前

宿舎に馬車と4人の護衛が集まっていた。雨は大雨と言うほどではないが しとしとと降り続いている。護衛の兵も 御者を受け持つシオンも 外套を羽織り フードを目深に被っていた。

マリアは玄関でデンドロスに見送られ 挨拶を交わし馬車まで来ると 整列した兵に言葉をかける。


「雨の中 ご苦労様です。道中 よろしくお願いします」


兵の一人が 答えた。


「もったいないお言葉です。姫を護衛できるなど一生の自慢です。目的地まで どうぞ おくつろぎください」


マリアが馬車に乗り込むと 出発する。シオンは御者をし 馬車の周りに4人の兵が囲んだ。他国で 護衛が4人とは少なすぎるが 護衛に人を避けるほどの余裕はない。


雨で足元が悪いながらも 順調に進み 喉かな草原の風景が 後 1時間もすれば到着すると言うところから 徐々に 草木は減り 大小の岩で囲まれた 荒野に変化した。

マリアは 御者席に顔だけを出し シオンに話しかける。


「そろそろかしら?」


シオンは前を向いたまま答える。


「有るとすれば そろそろかと」


「分かったわ。あなたも気を付けてね」


「問題ありません。だって 私達には・・・・」


シオンは一瞬 目線だけを 足首に巻いた ミサンガにやり


「だって 私達にはナオキ様が ついていてくれますから」


マリアも自分の足首に巻いたミサンガをそっと触り

そうね とだけ答え 戻った。


しばらく進むと シオンは 一筋の光を 確認するが 確認したときにはすでに その光は 護衛の一人の胸に突き刺さっていた。光と思った物は 矢であった。何らかの術式が組み込まれていたのであろう 弓術士の場所が分からないほどの遠距離より放たれた矢は 空気も雨も切り裂き 一直線に 護衛の兵の胸へと収まっていた。

兵は 言葉を発することもなく その場に崩れ去った。その様子を見た者が 大声をあげる。


「敵襲! 敵襲ーーーーーー!!!!!」


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