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勇者と姫のそれから  作者: べるこさん
第1章 異世界編
48/135

048

俺とマリアは デンドロスの正面に座り シオンさんは 俺の後ろに立っている。デンドロスは いつものニコニコとした笑顔を崩さないまま 口を開いた。


「では お話しを聞かせていただきましょうか」


「では まず私から説明させていただきます」


俺は説明に入ろうとしたが 気になることがあった。


「その前に 一つお聞きしたいのですが」


「構わないですよ。何でもきいてください」


「お付きの方は どうなされたのですか?」


すると 待ってましたかとばかりに ニヤリとし答える。


「お二人の様子から 他に聞かせたくない話のようでしたので 下がらせています」


やはり この男は頭も切れるし行動力もある。次期王候補としては申し分ないが 手放しに 信用してもいけないのかもしれない。だが 迷っていては 何も進まない。信じると決めたのだから 最後まで信じ抜こう。


俺は念のため 部屋の中に結界を張り 盗み聞きされないようにした上で 橋の工事から始まり モニリの森の事 ドーム将軍の事 紅竜の事 それらの繋がりについて 最後に 精霊王が 加護を無くすと言っていることを 細かく説明した。


「では あなた方は 陛下が 我が国の国王 自らが勇者様 欲しさに 多くの人命を奪おうとした 犯人だと仰るのか?」


俺達は デンドロスを見据え 力強く頷いた。


「いや、だが、しかし・・・・。しかし 一国の国王を断罪しようと言うのだ。確固たる証拠がなければ!」


デンドロスからは 笑顔が余裕が消え呟いた。


「いや・・・・・陛下の性格を考えれば それも・・・・だが、やはり 証拠がなければ・・・・・」


デンドロス曰く ダリーン王は 他者を一切 信用しないらしい。デンドロスの事も 当然信用していないし 周囲がうるさいので 形だけ結婚した王妃の事も 自分の子供さえ 信用できないだろうと 子供も作らないほどだと。能力は 正しく評価するが その結果 人望を集め 回りに人が集まり始めると 自分を蹴落とす勢力になるのを恐れ 早期に潰しにかかる。デンドロス自身もいつ粛正の対象になるか不安を感じていたと言う。


「そ、それに あなた方は その話を僕に聞かせ 僕に何をしろと言うのですか?」


マリアは 動揺したデンドロスに追い討ちをかけるように


「この国のため 殿下自身のため 何をするかは 殿下がお決めになることでしょう。他国の それも王族である私が口出しできることではありませんので」


「それは そうですが・・・・」


ここに来るまでの道中 色々 話し合ったが 詰まるところ 他国の事であり 俺たちができるのは それこそ 国王を拉致するとか そう言った感じの強行策しかなく ダリーンに大きな混乱をもたらす。実際 加護が無くなることを思えばましなのだろうと 最後の手段としては 考えていたのではあるが できれば ダリーンの事はダリーンの人間で解決するのが 一番良い方法なのだろう。


しばらく考えたデンドロスは 何かを決意したように


「何をするにしても まずは証拠が必要です。・・・・・周囲を説得するにしても 証拠がなければ 僕の側には付いてはくれないでしょう」


デンドロスの決意が何かまでは 明言しないが 恐らくは正確に理解しているつもりだ。


「では 証拠を見つけましょう。この国の民のためにも」


俺はデンドロスに手を差し出し そう言うと彼も力強く握り返してきた。




俺達は タラクシャ側の宿舎に戻り マリアとシオンさんとも別れ 一人 部屋にいた。つらつらと これからの事を考えていたが 明日の石切場の視察で 朝も早いこともあり 早々にベッドに入った。


コンコン


窓を叩く音がする。しかし ここは2階。目を凝らし窓の方を見ると 1羽の鳥 いや、魔力の塊で作られた鳥ががいた。そして その魔力の持ち主を俺は 知っている。

ボル先生の魔力だ。

窓を開け そっと手を差し伸べると 鳥は 俺の腕にとまった。形も仕草も本物の鳥と見分けは付かない。この鳥は 日本風に言えば 式神 ここは魔法の世界だから 使い魔と言ったところか。

これ程 接近して俺に魔力を悟らせないとは 流石は先生・・・・・と言うか 気を抜きすぎだと 後で怒られそうだ。

使い魔の足にくくられた 手紙を取り外すと 役目を終えたとばかりに 使い魔は消滅した。

手紙には ボル先生に手渡した操心の玉の解析が終わり そこには 面白いものが記録されていたので 至急に 取りに来るように 記されていた。

何が 記録されているのかは 分からないが 証拠になる可能性は 低くないはずだ。俺は 取るものも取らず 押っ取り刀で 王都へと転移した。

魔法院の 先生の部屋へと急ぐ。ノックをし返事を待ってから部屋に入る。


「先生、流石は仕事が早いですね!」


先生は頭をかき 照れながら


「早いのは勇者様でしょう ダリーンにいらっしゃったのでは・・・・と、愚問でしたね。それより 私を誉めても 何も出ませんよ。それと いい加減 先生はやめてください」


「だったら 師匠と呼びましょうか?」


「ほほー 勇者様は 私を苛めるのですね。良くわかりました」


「苛めるなんて そんな・・・・それより 先生だって 勇者様はやめてくださいよ」


俺は慌てて 否定し先生を見つめる。しばしの沈黙が続くが 二人とも 我慢できず 笑いだした。まあ これはいつもの お約束的な 会話なのだ。


「それで、先生 記録されていた内容と言うのは?」


急かすように 聞くと 先生は先程とは打って代わり 神妙な面持ちになり まあ見てくれと 玉に魔力を通した。



驚愕した。余りの内容に 怒りが沸いた・・・・殺意すら・・・・・強く握られた拳からは 血が滲むほどに 食い縛り過ぎ口の中も血の味がする。


「勇者様、勇者様、勇者様、勇者様!!!」


先生に肩を掴まれ 大きな声で 呼ばれようやく我を取り戻した。


「勇者様 大丈夫ですか?それに すみません、面白い だなんて 不謹慎でした。後 お気持ちは 察しますが」


先生の言葉を 遮る。


「分かっていますから・・・・大丈夫ですから・・・・」


きっと 祐太もこんなことを何度も味わったのだろう。こんなことが 何度もあれば 人間を信じられなくなるだろうし 壊れもするだろう 狂いもするだろう。だけど 俺は そうはならない。激情に流されたりしない。だって 知っているんだ。そもそも 人間には 白い部分も有れば黒い部分だって有る、光を持っていれば 暗い闇や影だって持っている。俺だって 英雄だ 勇者だと言われるが 決して 聖人君子ではないのだから。俺だって 楽をしたいと 金や女に溺れてみたいと 誰かを憎んだり 殺したいと思うことはある。誰だって持っている気持ちなんだから それを分かって どうするかなのだ。究極的に言えば 罪を憎んで人を憎まず・・・・そこまで 割りきれないが 殺すのではなく 犯した罪の分 贖ってもらいたいのだ。


と、自分に言い聞かす・・・・・。

割り切りもできないし 納得もしていない。

だけど 言い聞かす・・・・・。


でなければ 俺はいずれ魔王に・・・・。


兎に角 無理矢理にでも 気持ちを切り替える。


「陛下は このことを?」


「ええ。ことがことですので お伝えしました。陛下は 勇者様が 暴走しないか大変 心配なさっていました」


「なんとか 踏みとどまりましたよ」


苦笑いを浮かべ 冗談めかして言うと先生は またも 沈痛な面持ちになる。


「勇者様・・・・・」


「先生が気にすることではないですよ」


「何か あったら いつでも 私を頼ってください!私だって 勇者様には遠く及ばない存在ですが それでも 三賢人と言われる人間です。

それに、私は ナオキ君の 先生なのですから!」


「・・・・・・先生・・・・・ありがとうございます」



ボル先生の部屋を出た足で そのまま城へ向かう。城には門番も居るし夜の出入りは基本的に禁止だが 俺は城の中に部屋があるため 顔パスだ。とは言え 陛下に謁見できる時間ではないため 少し悩むが あの人なら まだ城内に残っていそうなので まず そこへ向かった。


「いらっしゃいますか?」


どうぞと 返事を聞き 部屋に入る。ここは 国務大臣ヨーヒムさんの部屋だ。


「このような時間に どうなされましたか?」


「至急 陛下にお目通りを願いたいのですが・・・・玉の件と言えば ヨーヒムさんも ご存知なのでは?」


ヨーヒムさんは 相変わらず 表情も顔色も変えず 分かりましたと 一言 残し部屋を出た。待つこと10分 戻ってきた ヨーヒムさんは 陛下と会えるよう 計らってくれた。ヨーヒムさんと共に 陛下の部屋へと入る。


「陛下 玉に残された記録・・・・私も見ました」


陛下は 少し表情を曇らせ 「そうか」 と呟く。しばしの沈黙の後 


「で、勇者殿は どうするか?」


「実は・・・・・」


俺は 橋の工事現場での経緯を 説明すると さすがに これは 陛下も あのヨーヒムさんも 驚いていた。


「もし ダリーン国内で 加護がなくなり魔法が使えなくなれば 住民達の多くは生活に困り 我が国に向かってくるかもしれません。ですが さすがに 我が国にも 全ての住民を受け入れれるほどの余裕はありませんので 衝突は必至でしょうな」


ヨーヒムさんは 話を聞いた一瞬で そこまで 考えが至るとは 流石としか言いようがない。


「うむ・・・・民との争いは 絶対に避けねばならない。それが 他国の民であってもな。で、勇者殿 デンドロス卿は 信用に足る人物なのか?予は直接 会ったことがないのでな」


「とても 頭の切れる方です。その分 本当に信用していいのか 不安が残りますが 私は 信じたいと思っています。それに ダリーンのことは ダリーンの人間で解決するべきでしょうし 新国王には やはり デンドロス殿下程に 切れる方でないと 今の時代では 勤まらないでしょう」


またも 陛下は 考え込む。そして 出した答えは


「この件 タラクシャとしては 勇者殿に一任する」


ヨーヒムさんは 「よろしいのですか?」と慌てて聞きなおした。


「他国のことだ 我が国が 直接的には 動けん。だが 厳密に言えば 勇者殿は 予の臣下ではないのでな・・・・。勇者殿 マリアにもこの件に関して 表に出ないように 計らってくれると助かる」


「承知しております」




一方 その頃モニリの町では


ドンドン ドンドン


激しくドアを叩く者が居た。眠そうな目をした サヤは扉を開くと そこには 自分より少し年上だろう女性が血相を変え立っていた。


「あなたが この町のお医者様ですか?」


「ええ、そうですが」


「主人を 主人を助けてください!」


その女性は サヤの両肩をつかみ 必死に 訴えかけてくる。


「兎に角 落ち着いて。何があったの?」


「主人が 倒れた馬車の下敷きになって 血がいっぱい出ていて だから 来てください!主人を助けてください!」


話を聞いた瞬間には 目を覚ました。


「分かったわ。すぐに準備するから1分 待っていて!」


そのまま診察室に 駆けていきながら 大声で叫ぶ。


「お母さん!往診に出るから!!」


返事も聞かず サヤは往診用の鞄を持ち玄関に戻って来るのに30秒もかからなった。


「出血が多いなら早くした方がいいわ。急ぎましょう」


道中 状況を聞くと 馬車が横転し ご主人さんが 挟まれたらしい。周囲の人に 助けてもらったが 出血があったため 近くの納屋を借り そこで寝かせているらしい。町外れまで来たが 夜中と言うこともあり 人気は一切なく よく 助けてくれる人が居たものだと 疑問に思った時には その納屋に到着した。

扉を開くと 真っ暗で何も見えないが人の気配はする。扉のところで 中を窺っていたが 背中を押され よろめきながら 納屋の中に。後ろからは扉を閉じる音が聞こえ それが 最後だった。硬い物で鳩尾を 殴られ そのまま 意識を無くしてしまった。


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