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勇者と姫のそれから  作者: べるこさん
第1章 異世界編
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マリア姫一行は 珍しく馬車に揺られていた。いくら万能最強勇者でも行ったことの無いところには 転移魔法で移動することはできなかったからだ。普通であれば 王族が他国の領内に入るのだから相手に警戒されない それでも何かあれば 対応できるだけの護衛を付けるものだが 今回はマリアを含めたったの3人。それは世界最大戦力であるナオキが随行しているので 無駄に人員を増やせば足が遅くなると モニリの町で幌付きの荷馬車を借り マリア、ナオキ、シオンの3人で 目的地に向かうこととなった。


ナオキは 手綱を握り御者をし、シオンは隣に座っていた。

爽やかで心地いい風が 2人の頬を撫でる。


「こんなにのんびりした気分は久しぶりだよ。最近じゃ 旅って言っても転移魔法で一瞬だからね」


手綱を片手で持ち 軽く伸びをする。


「そうですね。この調子ですと 目的地まで 7日ほどでしょうか?」


「こうやって 風景を楽しみながらとか 今までそんな余裕はなかったし、シオンさんとゆっくりお喋りできるのが 何より楽しいよ」


「ナオキ様・・・・おだてても何も出ませんよ」


いつもクールな感じのシオンさんも 若干 表情を崩し 笑顔で答えた。シオンさんもまた、のんびりした旅のおかげで 心に多少の余裕ができたのかもしれない。


だが・・・・


「うううぅぅぇぇぇぇ」

「んんんぅぅぅぅ・・・・・」

「ひ、人が苦しんで・・・・うぇっぷ・・・・苦しんでいるときに・・・・・・・んぐっ・・・・・いちゃいちゃ・・・・・んんんん・・・・・しないでください・・・・・・」


荷馬車の 荷台から非難の声が上がった。ちなみに この苦しんでいるのは マリアだ。マリアに何があったのか?

まあ 乗り物酔いです・・・・。

モニリの町で借りれたのは 馬車ではなく 荷馬車だった。荷馬車は 荷物を運ぶための物であって 乗り心地は あまり良くない。俺も 気持ちよさそうな 言葉を吐いていたが お尻が痛くて 荷物から タオルや衣服を出して 座布団代わりにしてるくらいだ。マリアが 日頃 乗っている馬車とは 大違いで揺れやら振動で 気持ち悪くなったらしい。


「順調だし 少し休憩しようか?」


見かねた俺は 休憩を提案するが 


「へ、平気です!先を急ぎましょう・・・・うっぷ・・・・・」


全然 平気そうには見えず 有無を言わさず 荷馬車を道のわきの 草むらに寄せた。馬を木に繋ぎ 木陰にシートを敷き マリアを座らせる。


「申し訳ありません」


一度は強がりを言ったものの 相当 辛かったのだろう 素直に休憩を受け入れた。しかし 弱っているマリアも これはこれで なかなか 萌えるが人の不幸?を喜んではいけないのだろうと 反省する。


「ナオキ様 何種類か茶葉をお持ちですか?」


シオンさんに聞かれ 色々あるよと答えながら 茶箪笥を顕現させた。高さ160センチくらい 幅も1メーター無いくらいで80~90センチと言ったところか?まさに 茶箪笥である。扉を開くと わずかばかりの茶器以外は 全て 密閉容器に入れられた茶葉が並んでいる。世界中を旅したときに 集めたのだ。

シオンさんは呆れているのか 感心しているのか 微妙な表情をしていた。


「すごい 種類ですね。王都の専門店並の品揃えですよ。私も見たこともない物もたくさんあります」


そう言いながら 容器に書かれた名前をチェックし その内の1つを取り出した。


「これが よろしいでしょう」


シオンさんは ふたを開け 葉の状態や匂いを確認し頷いた。


「それは?」


「ご自分で集められた物なのですよね?」


ジト目で 見つめられ 頭をかき誤魔化す。


「これは 飲んだ後 清涼感が得られるハーブティーです。見たことも聞いたこともない茶葉も気になるところですが マリア様の体調を考えますと これが いいでしょう。それに 他の茶葉も この旅の途中に頂ける機会もあるでしょうし」


シオンさんは 甘えるような 媚びるような笑顔で 暗に 飲ませろよと、おねだりをしてるようにも見えた。


「シオンさんは お茶が好きなんだね」


先ほど取り出した 茶葉でお茶を淹れる 手を止めることもなく答えた。


「侍女として お茶の味を知ることは 義務ですし 淑女としても お茶を嗜むのは当然です」


辺りに爽やかなお茶の香りが広がる。


「マリア様。こちらをどうぞ。少しは すっきりすると思います」


マリアは ゲッソリした顔で ありがとうと言いながら お茶を受け取った。そして 俺にも手渡され 一口 飲むと シオンさんが言った通り 口の中に 爽やかな清涼感が広がった。イメージとしては ミントティーと言ったところか。


「さすが ナオキ様が持っている茶葉は 違いますね」


シオンさんもちゃっかり 自分の分もいれ お茶を堪能している。侍女なのだから主人と一緒にお茶を飲むなどありえないのだが 旅と言うこともあり 食事や休憩も 一緒にとるように 俺とマリアで いい含めたのだ。


「シオン ありがとう。とても美味しかったし すっきりして 気持ち悪いのも 幾分 ましになりました」


確かに マリアの表情は かなり良くなってきているし 真っ青だった顔色も 赤みを帯びてきている。

もう少し 休憩すれば 出発できそうだ。


「勿体無いお言葉です。それより ナオキ様は とてもたくさんの茶葉をお持ちで 私の知らないものも かなりありました。マリア様も お試しになりたいですよね?」


何だか シオンさんが 必死すぎる・・・・。マリアを篭絡してまで 俺の持っている お茶を飲みたいらしい。まあ それだけ お茶が好きだと言うことなのだろう。


「マリアの顔色もかなり良くなってきたし もう少し休んだら 出発しようか?」


「すみません。ご迷惑をお掛けして・・・・。こんな時 サヤさんが居てくれればすぐに治してもらえたのでしょうね」


「そうだね・・・・・・!そうだ いい薬があるのを忘れてたよ」


俺はそう言いながら 赤い液体の入った成人男性の親指ほどの大きさの小瓶を顕現させる。


「これは 大陸を渡る船に乗ったとき 俺も酷い船酔いをして 見かねた船員がくれた 酔い止めの薬で 飲んだらすぐに良くなったと言う 優れものなんだ!また 違う大陸に渡るときに 何個か買っておいたんだ。結構 高価な薬だけあって 効き目は本当に凄いよ!」


言いながらマリアに手渡すと 蓋を開け匂いを嗅いだりしている。確かに見た目は真っ赤で毒々しい。恐る恐る 口をつけ 一気に飲み干すと マリアは顔を歪めた。


「良薬口に苦しって 本当に良く効くけど味がね」


「はい・・・・・凄い味でした・・・・・でも 何だか効きそうな気がします」


「そうだろ? さあ それじゃあ そろそろ出発しようか。マリアはもう少し 荷台で横になってていいから」


「はい、ありがとうございます。それでは お言葉に甘えさせていただきます」



その後も旅は順調に進んだ。たまに 魔物の気配も感じたが その度に 俺が鋭い殺気と強い魔力を浴びせかけると 襲ってくることもせず 逃げ出し 戦闘をすることもなかった。

マリアの体調も 薬のお陰で すぐに良くなり シオンさんと交代で 俺の横に座り 景色を堪能したり俺との会話を楽しんでくれたようだった。

シオンさんといえば 事あるごとに 俺のお茶コレクションを要求してきて 休憩のたびに 違う茶葉を色々と 試していた。とても美味しいものから 変わった味のもの はたまた 薬茶のようなものまであった。シオンさんの言葉ではないが 自分で集めたのだが ほとんど飲んだことがなく 飲むとしても いつも決まった物しか口にしてなかったのだ。




野営を終え 朝食を取り 出発の準備をする。


「今日のお昼には 目的地の橋に到着するね」


どこか安心しように マリアは答える。


「そうですね。何事もなく 到着できそうで 何よりです。これもナオキ様のお陰と言うことなのでしょう」


「俺のお陰と言うか 薬のお陰でしょ?」


初日の自身の醜態を思い出し赤くなりながらも 頬を大きく膨らませる抗議。


「それは仰らないでください・・・・。本当に ナオキ様は 意地悪なのですから」


「はははは、ごめんごめん」


そろそろ いいかな・・・?俺は 心の中でニヤリと笑う。俺の言葉を信じなかった 報いを2人に受けてもらうとしよう。シオンさんも 後片付けと出発の準備を終え こちらへとやってきた。


「2人に 大事な話があるんだ!」


「大事なお話・・・・・ですか?」


マリアとシオンさんは 一瞬 見つめあい 俺へと向き直ると その表情は 一気に真剣さを増した。ヤバイ・・・・切り出し方を誤ったか・・・・?


「ごめん、大事な話ではあるけど そんな 真面目な話じゃないから 気軽に聞いて」


「はあ・・・?」


再度 2人は見つめ合い 困惑した表情となる。


「以前 サヤの家で話していたことを 覚えてるかな?あの 森の泉の話」


「ええ、それなら覚えています。確か 迷信とかではなく 効果がある場合もあると・・・?」


「そう!それ!!」


「はあ、その話が どうしたのですか?」


「サヤも マリアも シオンさんも あまり俺の話を信じてなかったでしょ?」


「・・・・・・・・」


沈黙は是なり・・・・2人とも 酷いよ・・・・。だが ここから一発逆転なのだよ!


「じゃーん!なんと マリアが 酔い止めの薬と思って飲んでいたのは ただの回復薬でした!」


「えっ!?」


「回復薬だから 何の効果もないわけじゃないだろうけど 少なくとも乗り物酔いを止める成分なんかは一切入ってないよ」


「えっ!? えっ!?」


「これで、俺の言っていたこと・・・つまり 効果がないものでも 信じることで 効果が出ることもあるってのが証明されたわけです!」


「・・・・・・・・・・・・」


あれ・・・?ここで 「ナオキ様 すごーーーい」 ってなる予定だったんだけど・・・・あれ?なんで マリアは フルフルしてるんだ・・・・なんで 俯いて 握りこぶしを作っているんだ・・・・なんで そんなマリアの肩を慰めるように シオンさんは抱いているんだ・・・・あれ・・・・?


「・・・・・・・・・・・・ナ、オ、キ、さ・・・ま!」


「あれ?」


「あれ? ではありません!ナオキ様は 私を騙したのですね! 」


「騙したって そんな、大袈裟な」


「酷い・・酷いです・・・・シオン聞いて 私 ナオキ様に裏切られました」


マリアはシオンさんの胸に飛び込み シオンさんは 優しく頭を撫でていた。


「シオンさんも 何とか言ってあげて」


困って シオンさんに助けを求めるが


「ナオキ様・・・・最低です」


ガーーーーーン シオンさんにまで・・・・・。




その後 目的地につくまでの間 ひたすら 2人に謝罪し続け ようやく許してもらえた。

どうやら 報いを受けたのは 俺だったようだ・・・・。


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