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勇者と姫のそれから  作者: べるこさん
第1章 異世界編
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044

「さあ、ボクを殺してくれ!」


裕太はまるで 芝居を演じてるかのように 俺の前に立ち 両手を広げ言った。だが これは芝居じゃない・・・現実なんだ。現実だからこそ 認めたくない。こんな現実を認めたくはない。


「な、何を言ってるんだ。そんなこと 親友を殺せる訳がないじゃないか!それに もう孤独じゃないだろ?同じ立場の俺がいるんだ・・・・そ、そうだ 一緒に帰る方法を探そうぜ」


俺は返ってくる言葉に予想はつきながらも 子供が親に怒られたときのように 見栄すいた言い訳のような言葉を重ねた。


「後、100年か200年早ければ 直輝君と生きていく道も選べたんだろうけど ボクはもう 疲れたんだよ。それにね、ボクがこの世界に何年居たと思っているんだい?帰る方法なんか探し尽くしたよ。多分 歴代の魔王もね。だけど 見つからないんだよ。ボクを親友と呼んでくれるなら ボクの願いを叶えてよ、ボクを殺してよ!」


裕太は涙を溜め 叫んだ。どれだけ本気の言葉なのか痛いほど伝わってくるが、認める訳にはいかない。もし認めてしまえば 将来俺も魔王になってしまう。それに、自分が死にたいがためにこの世界にどれだけの迷惑をかけたのか、どれだけの命を奪ったのか・・・・。


「とにかく 俺は 力尽くでも祐太を連れて行くぞ」


「はははは・・・・それは無理だよ」


「無理なものか!力は互角だ」


「ああ、そっか・・・言ってなかったね。魔王を倒すとね 魔王の力や魔力を引き継いでしまうみたいなんだよ。だから、ボクには今 歴代の魔王の力を所有しているんだ。多分 直輝君の10倍以上の力や魔力をもっているよ。今、力を抑えているのは 全力の力を解放していたら 勇者がビビッて やってこないと思ったからだよ」


祐太は少し力を解放したのだろう。互角と思っていた魔力は 簡単に凌駕されてしまった。今の俺でも 世界中の魔物を同時に相手取って 簡単に勝てるほどの力を持っていると言うのに・・・。


「・・・・・・・」


どうすればいいんだ・・・・どうすれば・・・・・・・。


「直輝君 もう諦めてよ。そりゃ 将来 魔王になることで 思い悩むだろうけどさ、200年も生きればボクの言ってることが理解できるよ。そこから すぐに魔王になれば無駄な時間をすごさずに済むと ボクに感謝すらするはずだよ。

ボクはね もうとっくに壊れているんだ。君は 自分が死ぬために多くの人を殺すなんて とか思ってるんだろ?でも ボクは自分が死ねるなら タラクシャ以外の国の人間を全て殺したっていいって思えるほど 壊れてしまってるんだよ・・・・」


俺にも雄太の気持ちは 少しは分かる。召喚されしばらくは 孤独感に苛まれ 辛い日々を送った。あんな思いを数百年も続けたのなら 狂いもするだろう・・・壊れもするだろう・・・。


だけど・・・・。


「直輝君がやってくれないなら いいよ・・・。ボクは君を殺して 更に多くの人を殺し 次の勇者を召喚させるだけさ・・・・」


「そんなことはさせない!」


祐太の言葉は 脅しなのだろうが、目からは 本気であることをうかがい知れた。俺は 慌てて 剣を抜き構える・・・・が 震えが止まらない。切先は定まらず こんなことでは ろくな攻撃はできないだろう。


次の瞬間


剣に軽い抵抗を感じたかと思うと 祐太は 俺に抱きついてきていた。


俺の構えた剣ごと抱きついてきた。


剣は祐太の胸を貫いていた。


祐太は俺の剣に自ら刺さりに来たのだ。抱きついた祐太は俺の耳元で うわ言のように呟く。


「直輝君ごめんね・・・・みんな・・・・ごめんね・・・・・でも・・・・これで・・・し・・・ね・・・・・・る・・・・・・・」


抱きつかれた勢いのまま 後ろに尻餅をつく。タックルほどの力ではないのだ 普通であれば受け止められるだろうが もう足腰に力が入らない。後退り 裕太の体を引き離し 両手を見ると血で真っ赤に染まっていた。

今 この瞬間 治療魔法や回復魔法を使えばまだ 間に合ったのかもしれない。だが・・・・・わずかに悩んでいる間に 自分の中に裕太の魔力 力が流れ込んでくるのを感じ 直感的に 裕太の魂が消滅したことを理解した。


もう、間に合わない・・・・。


俺はこうして 友を親友を殺したのだ。






走馬灯のように あの時の記憶が流れ込んできた。


「アプロ様は何を言いたいのですか?」


「この先 お前には 更なる試練が待っておる。その時 1つの思いにとらわれず しっかり 考えるのじゃ」


厳しい表情のまま 睨み付ける俺に対し 包み込むような優しい笑顔で続ける。


「少しお節介をやきたかったのじゃ。ワシは お前のことを 気に入ってるのじゃよ」


アプロ様は立ち上がり踵を返し 歩いて行こうとする。


「また、会うこともあるじゃろ その時まで壮健でな・・・・ああ、その飲み物は置いていってやろう。フフフフフ・・・・・」


一歩 一歩 進むにつれ 徐々に姿が薄くなり言い終わる頃には姿を消していた。


「お話しは終わったの~?」


アプロ様が姿を消したのと入れ替わりに イリスが現れた。


「ああ、終わったよ」


アプロ様との会談の真意も掴みきれていないし 俺にはもう一つ 懸案事項がある。小さくため息をつき イリスに話しかける。


「なあ、加護を無くすってのは本気なのか?」


「本気なのよ~」


「でもそんなことをしたら 生きていけなくなるぞ」


「私達 精霊は人と共に生きてきたの~ 先に裏切ったのは あそこの人たちなのよ~」


結局 説得は失敗に終わったが 収穫もあった。まず 主犯は やはりダリーン王であることと 国ごと加護を無くすこと。元の場所に戻してもらった後 今後の対応について マリア達と相談をしたかったので急いで サヤの家に向かった。




「そうですか・・・・・精霊王が そのようなことを」


アプロ様とのことは伏せたまま イリスのことだけ 説明すると マリアは思案顔で呟いた。


「精霊王が実在することに 驚きです」


シオンさんの言葉に サヤも頷いている。精霊王は おとぎ話の世界で語られているくらいで 実際に会ったと言う話を聞いたことはない。まあ 会わない方がいいだろう。幻滅するだろうから・・・・

心の中で苦笑いを浮かべつつ 話を続ける。


「一連の出来事が全て繋がっているとすれば 一個人でどうにかできることではないし 状況を考えれば ダリーンが手を引いていたことは簡単に推測できるし イリスが言うのだから 間違いないだろうね」


「しかし 国ごととなると・・・・・精霊王は相当にお怒りなのでしょうね」


「だね、民主国家での失策は全ての国民の責任だけど王政国家で その責任を国民にまで問うのは酷だね」


マリアは不思議そうに尋ねてくる。


「民主国家とは何ですか?」


「ん?元の世界の 俺のいた国の国家体制だよ?」


俺も不思議そうに答えたが よくよく考えれば この世界に民主主義は 概念すら存在しない。アニメなんかじゃ 悪い王様を倒し 民を解放する話はよくあり、民主主義が善で 王政が悪のようなイメージだが 少なくとも俺が旅の途中で出会った王様に悪い人は居なかった。魔王と言う強力且つ世界共通の敵が居たためかもしれないが みな高潔で民、思いだったのだ。しかし、ダリーン王のように 自分の目的のためなら 他国の民などどうなっても構わないと考えるものも居るのも事実で 王の人柄により国が左右されるところが王政の限界なのかもしれない。だが 考えてみれば 結局 日本の政治家も大差ないような気がする。政治や政治家が腐っているのかどうかは 当時、高校生だった俺には 分からなかったが 選挙や自身が所属する政党のことしか考えていないんだなと 少なくとも俺にはそう見えたのだ。ただ 唯一 民主主義が優れているのは 自分達で 政治家を選べる点だろう。失敗も 成功も国民次第ということなのだから。

まあ これは 高校時代の担任の先生の受け売りで、なんでも 銀なんとか伝と言う アニメを見て 触発され熱く語ってしまったらしい・・・・・。


「まあ、今は国家体制の話はいいだろう。それよりもだ・・・・どうするかな・・・・?ダリーン王を拉致して 違う大陸の町にでも 放り出すとか できなくはないけど・・・・・それじゃあ まずいよね?」


「そうですね・・・国は乱れ かなりの混乱や跡目相続で争いが起こるでしょうが・・・・他に方法がなければ 最終手段として 考えておかなければなりませんね」


「シオンさんや サヤはどう?いい方法はないかな?」


2人のほうを見ると 申し訳なさそうに言った。


「侍女風情に政治のことは 分かりかねます・・・お役に立てなくて申し訳ありません」


「ごめんなさい ナオキさん 私にもさっぱり・・・」


「そっかー まあ しばらく時間はあると思うんだ。たぶん イリスは 俺に解決させたいんだよ。怒りと それでも人を苦しめたくはないと言う思いあって それで俺に話を振ったんだと思うんだよ」



ここで、顔を突き合わせ 浮かばないアイデアを探し時間を浪費するより とりあえず 仕事を済まそうと 町長に報告しに行くことにした。

町長の家につき ノックをするといつものように 町長の奥さんが出てくるが 俺だと分かると物凄い形相で睨まれた。どうやら お預りしている嫁入り前の娘さんをたぶらかす 男と思われているらしい・・・・。

俺、勇者なのに・・・・・・。

なんとか取り次いでもらい 町長と会談することができた。

部屋に入り 町長の勧められるまま ソファーにマリアと並び腰を掛け 後ろにシオンさんが立ち 正面に 町長が座った。

俺とマリアは背筋を伸ばし しっかりと町長を見た後 頭を下げる。


「報告が遅れて申し訳ありませんでした。森の魔物は 大体は倒しました。恐らくは大量発生の原因も取り除けたと思います。いずれ 増えるでしょうが いつも通りの数以上にはならないでしょう」


「とんでもない!頭をお上げください。こんなに早く解決するとは 思いもしませんでしたから これで 商人達も王都に向かえます」


本来であれば 立ち上がらなければ 失礼だが マリアは立場上 そうもいかないので 座ったままだったが それでも町長はかなり恐縮してしまったようだ。

しかし


「つきましては 勇者様と姫様に 町の広場で 住民や商人達に お言葉をいただけないでしょうか?国軍が動いていないのに 魔物退治は終わったと私が言っても 信用されないでしょうから」


ニヤリとしながら 頭を下げた町長を俺は見逃さなかった。勇者と姫を呼んだのは自分だと 町での評価をあげたいのだろう・・・・腹黒とまでは言わないが なかなか したたかである。でも よく考えれば姫を泊めたら 自慢になるだろうと吹き込んだのは 俺自身だ。

マリアと顔を合わせ 視線で語り合い 彼女は頷いた。面倒な役回りだが 町長の言葉にも一理あるし何より自業自得なのだ。



町長の家を出て シオンさんが聞いてきた。


「よろしかったのですか?今まで 騒がれるのを避け 身分をお隠しになっていましたのに」


「まあ 仕方ないでしょう。町長の言うことも理解できますし この後 公式にダリーンに入って視察するのだから いつまでも 身分を偽ってるわけにもいかないでしょう」


マリアの言うことももっともだ。俺の失言でこうなったのが ばれていないようでホッとする。その日は いつものように サヤの家にお世話になった。

翌朝

広場に作られた 舞台の上に立たされている 俺とマリアは ゲッソリしている。

・・・・・・深夜まで サヤのお母さんに いじられ続けたからだ。

どこ世界でも 母親は最強らしい・・・・。


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