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勇者と姫のそれから  作者: べるこさん
第1章 異世界編
41/135

041

「陛下 お呼びとあり 参上いたしました」


今の時期の呼び出しであれば 紅竜がらみであることは間違いないだろうと予想しなが 陛下の前で跪き 顔を伏せる。


「勇者殿 呼びたてて申し訳ないな。まあ 楽にしてくれ。 マリアも ここへ」


「はい 陛下」


マリアも短く返事をし 俺の横へと並ぶ。

マリアと俺は呼び出され 2人 陛下の前に立たされる姿は 悪戯をして 学校の先生に怒られている様だった。


「この度の働き ご苦労であった。勇者殿には 何度も国を助けてもらい 本当に感謝の念に絶えない」


怒られるどころか お褒めの言葉を頂いたと 胸を撫で下ろす。


「もったいないお言葉です」


「時に 勇者殿にマリア、モニリの町の町長へは 報告したのかな?」


「っ!?」


そうだ、すっかり忘れてた!森の魔物も 恐らくはドームが居なくなったことで これ以上 増えることはないだろうけど 増えたぶんが 減った訳じゃないし・・・・色々ありすぎて 抜け落ちていた。まさに、宿題を忘れ 先生に怒られている気分だ。冷や汗が 出てきた。


「その様子だと 忘れているな?」


陛下は やれやれと言った感じだ。


「申し訳ありません」


「すまぬが もう一度 モニリの町に赴いてもらえるかな?それと もう一つ 仕事を頼みたいのだ・・・・・」





そして 今日もまた 城門にいる。俺達はまた、モニリの町に行くことになり マリアとシオンさんを待っているのだ。

ちなみに 陛下に頼まれたもう一つの仕事とは ダリーン領内の街道にかかる橋の工事の 視察と慰問だ。恐らく 陛下やヨーヒムさんも今回の事件の黒幕におおよその目星はついているのだろう。しかし 証拠がないため 公式に抗議はできないが わかっているのだぞって 揺さぶりをかけるための 視察と慰問なのだろう。


「お待たせ致しました」


その言葉と共に2人は待ち合わせ場所にやって来た。2人に 今後のことを簡単に説明する。


「2人を町まで送るよ。そうだな サヤの家で待っていてくれるかな?」


「ナオキ様はどうなさるのですか?」


マリアは不思議そうな顔で尋ねてきた。


「俺は 森で魔物退治をするよ。多分 増えなくはなっているだろうけど 増えた魔物が減った訳じゃないから」


「では 私もお手伝い致します」


シオンさんは 言うが 効率を考えると・・・。


「シオン ここはナオキ様にお任せいたしましょう」


「ですが・・・」


食い下がるシオンさんをマリアはなだめ 同意を得た。しかし マリアもついてくると言うと思っていたので意外だった。


「それじゃあ 行くよ」


声をかけ モニリの町のそばへと転移した。いつもの門番に挨拶を済ませ町へと入る。サヤの家まで行き ドアをノックすると 意外な人物が出迎えてくれた。


「どちら様かしら?」


その女性の問いかけに呆然と呟いてしまう。


「お母さん・・・」


そう 俺の呟きに不思議そうな表情をするこの女性は 俺とサヤで命を救った スズとサヤのお母さんであった。扉の隙間から ひょっこり 顔を出したのは スズちゃんで いきなり飛び付いてきた。


「お兄ちゃん いらっしゃい!」


「スズ こちらの方は?」


「スズとお母さんを助けてくれた お兄ちゃんだよ」


「それじゃあ あなたが ナオキさんなのかしら?」


さすがは サヤの母親と言うことで 改めてみると とても綺麗な女性で にこやかに問いかけてきた。


「はい。俺・・・・私がナオキです」


「そんな 改まらなくていいのよ。とにかく 上がってください。スズ お姉ちゃんを呼んできてあげて」


「はーい」


スズちゃんは 俺からようやく離れ 返事をしたあと 姉を大きな声で呼びながら 家の中へと入っていく。お母さんも笑顔を崩さないまま 俺達を家の中へと促した。

いつものリビングのいつものソファーに座り待つこと数分 お母さんがお茶を持って戻ってきた。しかし 今更ながら 「お母さん」って呼び方はどうなんだろう・・・。


「お待たせ」


お茶を俺たちの前に置き 「ふーん」と呟きながら 俺を観察するように見てくる。美女に見つめられるのは 悪い気はしないが 何だか気まずい。


「あ、あのー」


たまらず声をかけると とんでもない返しが来る。


「いえね、息子になる子がどんな子かよく見ておこうと 思って」


「息子って?」


「あら サヤと結婚してくれるのじゃないの?」


「け、結婚って!そんな・・・・」


思わず 吹き出しそうになる。何をどうしたら そんな話になるんだ?そもそも 数日前まで 死にそうだったのに 何でこんなに 元気なんだよ・・・。


「ナオキさんが私のことをお母さんって呼んでくださるから てっきり・・・それにサヤも私が目覚めてから ずっとあなたのことばかり話ものだから」


俺が全力で否定すると しばらく考え込み 出てきた言葉に唖然とする。


「あら、それじゃあ もしかして 私と?娘と男を取り合うなんて なんて罪な母なのでしょう・・・も、もしかして 母娘 2人とも 貰ってくれるのかしら?それなら 前向きに考えさせていただくわ」


確かにサヤのお母さんはとても美人だ。それにこの世界は地球に比べれば遥かに早婚で 10代 中、後半で子供がいることもそう珍しいことでもない。その年代でサヤを生んでいれば まだ40歳にもなっていないはずだ。熟女と言っても若い部類に入ると思う。


「ちょっと!お母さん 何を言っているのよ!」


サヤは 顔を真っ赤にして部屋に飛び込んできた。その後も サヤのお母さんに 弄られ続け 俺達は ぐったりしていた。とにかく、これ以上は もたないと話題を変える事にする。


「そう言えば スズちゃんは?」


「お昼寝よ。ナオキさんが来る前には 相当眠そうだったし、ナオキさんが 来て 一瞬テンションが上がった分 私を呼びに来た後 すぐに 寝ちゃったのよ」


まずい・・・会話が続かないと 今度は お母さんに話を振ってみる。


「それにしても とても元気になっていて びっくりです」


「あなたたちのおかげよ。本当にありがとうね。それに ライバルが多いようだから 我が娘のために無理もするわよ」


お母さんは マリアとシオンさんを見ながらそう言った。


後から聞いた話だが 医療魔法での治療では 開腹などの外科的なことを行わないため1日から数日 催眠魔法で眠らせ続け 適時 回復魔法で体力を回復させることで すぐに健康な状態に なるらしい。まあ 正確には 寝込んでいた期間分 筋力が落ちているので 相応のリハビリが必要だそうだ。




今回の来訪の趣旨をサヤに伝え マリアとシオンさんを少しの間 預かってもらい 森に向かう。森には元々 一定数の魔物が居るわけだし とりあえず 大きな群れだけでも駆逐すれば 問題ないだろう。転移しては 魔物の群れを倒し 転移しては倒しを繰り返し 1時間ほどで 大きな群れは 壊滅させた。残るのは 少数の 群れや 単独で行動する魔物くらいなので、町長への面目も立つだろう。

思いのほか 早く片付いたので少し 休憩を取ることにした。大きな木にもたれかかり 水筒の水を呷り 一息つく。

サヤのお母さんは 明るく朗らかだった。病気で心配をかけ続けた娘を気遣っているのもわかるし その優しさのこもった視線を見れば 娘の幸せを願っているのも分かる。少し自分の母親と だぶって見えるところもあった。離れて、会えなくなって 初めて実感できる 母の存在の大きさ・・・・。


「母さん 元気にやっているかな・・・・」




ナオキを見送り リビングに戻ってくると サヤはお茶を淹れにキッチンへ向かい サヤの母親と3人になる。戦々恐々とする2人であったが マリアとシオンの名を呼び 話し掛けた サヤの母親に 身構える2人。


「マリアさん シオンさんも ありがとうね」


思わぬ謝辞に 拍子抜けしながらも 答えるマリア。


「いえ、私達は ナオキ様に付き添っていただけで 何もお礼を言われるようなことはしてません」


「ああ、そのことではなくてね」


サヤの母親は とても優しい目をしながら キッチンのほうを見た後 視線を2人へ戻し 続けた。


「あの子 子供の頃に 王都へ奉公に出て 医者になって戻ってきても 手が空いているときは 本を読んだり 勉強したりで 同年代の友達なんて 居なかったから・・・。仲良くしてくれているのを見ると つい 嬉しくて」


食器の音がしたかと思うと そこには サヤさんが 戻ってきていた。


「ちょっと、お母さん マリア様が友達だなんて 失礼よ。マリア様は・・・」


サヤの言葉を遮るように マリアが言う。


「私達とサヤさんは 友達であり 同じ男を愛した ライバルです」


サヤの母親は サヤに向けた優しい目を マリアとシオンにも向ける。


「ふふふ・・・。本当にありがとう。さすがに はしゃぎすぎました。私は少し休ませてもらうわね」


そう言い残し部屋を出ていった。サヤは 軽く溜息をつきながら


「母が 失礼なことを言って 申し訳ありませんでした」


「私は嘘をつくのは好きではありません」


サヤは意味が分からず 聞きなおした。


「どういうことでしょう?」


「私はサヤさんのことを友達だと思っているということです。駄目でしょうか?」


「駄目だなんて・・・畏れ多いです」


じっと 見つめるマリアの視線が 冗談や冷やかしではなく 真剣な言葉だと物語っている。母が言った通り 子供の頃から 勉強 修行 仕事に追われ 友達と呼べる存在は皆無だった。そんな私が マリア様やシオンさんみたいな 素敵な人たちの 友達になれれば どんなに素晴らしいだろうか。


「あの・・・本当にいいのでしょうか?」


「もちろん!」


差し出された マリアの手を サヤは躊躇いながらも強く握り返した。

その後 しばらく 女3人 ガールズトークに華を咲かせた。

マリアは嬉しそうに 2人に対してある提案をする。


「私がナオキ様と結婚いたします!」


サヤとシオンは驚きの表情で抗議する。


「いくら姫様でも 横暴です!」

「そうです、そうです!」


反論を予想していたマリアは したり顔で 言う。


「私がタラクシャの王女だからです」


また、反論しようとした2人を制止し


「まあ 聞いてください。王女の私とナオキ様が結婚すれば ナオキ様は次期タラクシャ王となるでしょう。そうすれば 後宮の主となられ 側室を迎えることもできます」


そこで ようやくマリアの真意に気付き 納得した。


「あなたたちは 初めてできた 唯一の私の友達です。無下にはできません。これが皆が幸せになれる 方法ではないでしょうか?」


シオンとサヤは見つめあい 強く頷きあう。そしてマリアへと向き直り 3人は手を握りあった。

そして また、明るい家族計画をなど ガールズトークが弾んだ。

しかし 3人はわかっている。会話が途切れ 沈黙がリビングを支配する。誰も言えなかったこと 言わなかったことをついに サヤが口にした。


「でも ナオキさんは 元の世界に帰りたがっています」


誰もがわかっていたこと・・・そして 皆が俯き 再び沈黙が支配した。

マリアは沈黙の中 意を決し 顔を上げ 口を開いた。


「お二人に 聞いていただきたい お話があります!」


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