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勇者と姫のそれから  作者: べるこさん
第1章 異世界編
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俺たちは 城に戻っていた。


サヤには泊まっていくように勧められたが 陛下への報告や事後処理があるのでと その日のうちに 帰ったのだ。マリアは陛下に報告へ シオンさんも いつの間にか 姿を消したので ヨーヒムさんの所に行ったのだろう。




ナオキの予想通り シオンは ヨーヒムの執務室で 報告を行っていた。


「なるほど・・・では モニリの森の魔物 大量発生の原因は 魔王軍のドーム将軍によって 引き起こされていた。王都を襲ったドラゴンは 誰かに操られていた。と言うことだな?」


「はい」


シオンの返事を聞き ヨーヒムは 背もたれに体を預け 目を閉じ考えに耽った。と言っても 彼の脳細胞は高速な演算能力を有し あっという間に ひとつの結論を導き出した。


「ダリーンか・・・・」


ヨーヒムの言葉にシオンは驚き 説明を求めた。


「ですが ダリーンが黒幕として 何故このような暴挙に?」


ヨーヒムは鋭い視線をシオンに送る。今までであれば 一介の情報収集要員であることを自覚しているシオンが 説明を求めてくることなど なかった。

シオンにしてみれば ヨーヒムの部下であることは承知しているが それでもナオキのために できるだけ情報が欲しかったのだ。

ヨーヒムはその程度のことは簡単に見抜いていた。


「お前も変わったな・・・」


「えっ?」


一瞬見せた ヨーヒムの優しい表情に戸惑い この封建的な社会の中 上司への態度とは思えない言葉がそのまま口から出てしまった。


「失礼しました」


「まあ よい」


すぐに いつもの無表情に戻り 今のは 幻かと思うほどだった。


「勇者殿は武人でありながら なかなか頭も切れるお方だ。私と同じ答えにすぐにたどり着くだろう。故に あえてお前に説明するのだ」


一息ついた後 説明を始めた。


「ダリーンは自国の橋の工事の応援を我が国に依頼し モニリの町に常駐していた国境警備軍を空にした。その上で ドーム将軍を使い 森に魔物を大量発生させる。そして 勇者殿を誘い出した。勇者殿は立候補され 自らの意思で遠征されたが おそらく 我が国の かなり高い地位にある者が ダリーンの手先に成り下がっているのだろう。で、なければ勇者殿が動くように 仕向けれないからな。こいつは 私が直々に 炙り出してくれるわ!」


ヨーヒムは珍しく 感情を露わにし 苦虫を噛み潰したような表情となるり 更に続ける。


「そして レノ・・・紅竜を洗脳し 我が王都を襲わせようとした。紅竜の動きを気付かせないためや 知らせを遅らせるために ご丁寧に 結界まで張らせていた。広範囲に結界を張るための人員 精霊を洗脳するほどの 魔道具 そして将軍ドーム・・・・これらは 一個人でどうにかできる話ではない。ダリーン王 自ら動いていたのだろうな。そして 目的は 勇者殿の獲得」


捲し立てるように話しきった後 静寂が 支配する。ヨーヒムは シオンから目を離さず 様子を窺い 小さく溜め息をつき 更に続けた。


「お前の役割はわかっているな?もし 勇者殿が暴走しそうになったら 命に代えてもお止めするのだぞ」


「承知しております」


短く答え シオンは部屋をあとにした。





俺は今 城門に居る。


「ふー」


短く息を吐き出し 意識を集中する。


「見つけた!また、モニリの森か」


俺が探していたのは 結界を張っていた魔法使い、奴の・・・・パンツに融合させた 呪符の痕跡だ。

反応のあった近くに転移したが 人の気配がない上 しばらくすると 咽返るほどの血の臭いが漂ってくる。反応のあった方へ 血の臭いのする方へ 急いで向い 辿り着くと 惨状が広がっていた。件の魔法使いだけではなく 30人分以上の遺体があり 魔物によって 食い散らかされている。こんな所からは一刻も早く立ち去りたいと言う衝動を抑え付け いくつかの遺体を確認すると 剣の攻撃による致命傷があることが分かった。一見すると 魔物に襲われ全滅したように思えるが 実際は 剣により殺され 血の臭いに誘われ 魔物が集まり 食われたと言うことなのだろう。


「と言うことは!」


俺は 慌て モニリの町に 転移する。門の手前に転移したが その瞬間 焦げ臭い匂いが鼻につき 高い壁越しにでも分かるほど 黒々とした煙が 空に向かって上がっていた。


「くそっ・・・遅かったか・・・」


門番に軽く 挨拶だけして 煙の元へ走り急ぐ。そこは やはり警備隊の詰所だった。


「ジンさん!大丈夫ですか?」


野次馬の整理と消火をしている警備兵へ指示を飛ばし 忙しそうに動き回っているジンさんをようやく捕まえることができ話しかけた。


「あっ 勇者様!王都に戻られたのでは?」


「犯人探しをと 思ったんだけど・・・・やはり?」


「申し訳ございません。牢に 火が放たれたようで・・・・」


「囚人達は?」


「幸い 町の住人は居ませんでした。たまに、酔っ払いや 喧嘩をしたものなどを収容することもあるのですが、今は 勇者様たちを襲った盗賊と 勇者様が連れてきた ドラゴン絡みの3人だけでした・・・・恐らく全員・・・」


「そうですか・・・・」


申し訳なさそうなジンさんであったが 森で 薬か何かを使ったのだろうが 30人以上を殺し 牢に火をつけ その手際のよさから 考えれば 仕方のないことなのだろう。

延焼を防ぐため 住人 警備兵が必死に動きまわり ジンさんも戻りたそうにしているのがわかるが 更に引き止める。


「ジンさん 手伝いますので 火元の周りから人払いしてもらえますか?」


一人で何ができるのか、しかし 勇者の頼みも無碍にはできないと 複雑な表情をするジンさんだったが 俺は 大丈夫だから任せてくれと 押し通した。


「皆 下がれ!」


轟々と燃え盛る炎を前にし 確実に延焼する規模の火事であるのにもかかわらず 消火をやめ 下がれと言う指示に 住人や兵からも怒号が飛び交う。


「とにかく 消火をやめ 下がれ!」


ジンさんの気迫の篭った叫びに 不承不承ながら 全員が退避した。


「皆 下がらせました。どうするのですか?」


「まあ 見ててください」


短く 詠唱を済ませると 燃えている建物をすっぽり覆うほどの 魔法陣が空中に現れ 俺が指を鳴らすと 魔方陣から一気に 大量の水が 降り注いだ。ゲリラ豪雨のような 水は 激しい炎を瞬間で 洗い流してしまう。見ていた 住人 野次馬 隊員までもが 何が起こったのかわからず 呆然とするが どこからともなく発せられた歓喜の声は すぐに 全体に広がった。

喜んでばかりもいられない。ジンさんと目を合わせ 牢のあった所へと急ぐが そこが火元であったのであろう、無残な焼死体が 人数分あった。


「申し訳ございません・・・。大事な証人を殺させてしまいました」


「まあ、仕方ないですよ。敵はかなりの手連のようで 森の中で こいつらの仲間が全て殺されていました」


「では 全ての手がかりが途絶えたということですか・・・」


手がかりが途絶えたか・・・・いや! あれだ!


「手がかりが まだ あるかもしれません!俺は確認してきます。後の処理はお願いしますね」


そういい残し 返事を聞く間もなく その場から転移した。

そして 着いたのは レノと俺が戦った場所だ。まあ 戦ったと言うより 俺が一方的にやられれたのだけど・・・。ここに来ると 心が痛む・・・そう・・・ついさっきまで ここでレノと・・・・

また、折れそうになる心を奮い立たせ 目的の物を探す。この件はなんとしても きっちり方を付けたい。

レノのためにも・・・いや・・・俺のためか・・・。

魔力を探り 目的の物はすぐに見つかった。レノに埋め込まれた 玉だ。この玉からは レノ以外の魔力を感じる。その魔力を辿れば 犯人にたどり着けるはずだ。

魔力を張り巡らせた 周辺を調べるが 同じ魔力を見つけることは できなかった。更に魔力を込め捜索範囲を大陸全土まで広げるが 結果は同じ。無駄だとは思いながらも 更に魔力を消費しこの星全体まで調べるが・・・・。

さすがに 少し疲れた。と言うか こんなことをして 少し疲れたで済んでいる 俺が化け物じみている。自分自身が恐ろしくなる。

まあ 証拠には違いないので 持ち帰ることにした。これがどのような物かも知りたい。三賢人にでも見てもらったらわかるかもしれない。

俺は転移で城に戻った頃には 夜も更けていたため この日はそのまま寝ることにした。

翌朝、食事を済ませ 魔法院の三賢人を訪ねる。


「おお! 勇者様ではないですか。こんなところに どうしたのですか?」


この人は 三十代そこそこで 大魔導師まで登り詰め三賢人の一角を占めるまでになった男で 名前をボルと言う。天才肌ではあるが性格はとても気さくで 多くの者が彼を慕っている。そして 何より俺の魔法の先生でもあるのだ。


「先生に、見てもらいたい物がありまして お時間 よろしいですか?」


「もう いい加減 その先生はやめようよ」


ボル先生は 笑顔で言う。


「それじゃあ 先生も「様」はやめてください。俺にとっては 先生はいつまでも先生ですよ」


俺の言葉に先生の笑顔は苦笑いへと変わった。


「で、見せたい物ってなんだい?」


「これ 何だかわかりますか?」


取り出した 禍々しい光を放つ玉を先生へと手渡す。


「これをどこで!?」


先生はかなり驚いた表情となった。俺は この玉が 紅竜に 埋め込まれ 操られていたことなどを説明した。


「先生は何かご存知なのですね?」


「これは 操心の玉と言って 人の心を意のままに操る魔道具だよ。しかもこんなに大きな物は始めてみたよ。恐らく 紅竜程の存在を操るために 幾つもの玉を埋め込まれ 融合したのだろうね。だから 心や魂に大きな負荷が掛かって・・・・多分 取り除かなかったとしても 死に至ってたと思うよ」


紅竜も辛かっただろうねと 先生もまた 沈痛な面持ちとなる。


「犯人を見つけようと思って その玉から感じる魔力を探してはみたのですが 見つからなくて・・・すでに 殺されているかもしれません」


「見つからないだろうね。玉に元々ある魔力と 術者の魔力が 融合しているから そのまま 探しても 見つからないよ」


「そうですか・・・」


あからさまに落ち込む俺を見て 先生は疑問に思ったのだろう。


「どうして、そこまで犯人探しに拘るんだい?」


・・・・・・・。


躊躇いながらも 先生に俺とレノのことを説明した。


「・・・・復讐かい?」


「わかりません・・・。殺したいほど憎くは思っていますが・・・・でも責任は取ってもらいたいです」


「レノのためにも?」


「いえ・・・たぶん 俺自身のためです。英雄や勇者だって祭り上げられてますが 俺はそんなに強い人間じゃない。どこかで区切りを付けなきゃ 前に進めないような気がして」


「わかった。その玉 少し調べてあげるよ。貸してもらえるかな?」


先生は 今まで見せたことのない真面目な表情を崩し いつもの気さくな表情へと戻った。


「お願いします!」


先生に玉を預け 自室に戻ると エリーが 巨乳を揺らせ慌てて寄ってきた。


「ナオキ様 どこに行かれていたのですか?お探ししておりました。陛下がお呼びです!」


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