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勇者と姫のそれから  作者: べるこさん
第1章 異世界編
34/135

034

森の中心に転移した俺は、意識を集中し一気に魔力を解放する。慎重に一つ一つの反応を確認した。


「見つけた!」


しかし、その反応は一瞬で消える。正確には、ゼロに近いところまで 抑えられたというべきか?明らかに 俺の走査に気付き 身を潜めた感じなのだ。


「逃がすか」


反応があった地点まで転移し 周囲を窺うが気配は感じない。絶対に近くに居るはずだと 更に走査をかける。


「逃がすものかよ」


僅かではあるが反応はあり しかも移動している。その方向へ俺も駆け出した。真っ暗で 足元すら見えない森の中だが 魔力をコウモリの超音波のように 潜水艦のアクティブソナーのように使い 地形や敵の位置を把握する。 全力で走り 後ろ姿が見えるまで追い付いたところで 転移で 前に出た。魔物も 逃げ切れないと諦め 俺と対峙するが暗く姿はわからないので 照明魔法を発動する。目が明るさに慣れ 魔物の姿をはっきりと確認できた。あいつは・・・。


「お前は・・・ドーム?」


「これは 光栄だな。勇者に名を覚えていてもらえるとはな」


魔物と言うよりは 魔族と言うべきだろう。魔王直属の5人の部下の一人 魔王軍の 将軍ドームだ。


「お前だけは 忘れるものか!」


ドームは 俺が南の大陸に入ったとき 最初に対峙した 5万の魔物を率いた将だった。奴は 俺を見て 不敵に笑う。


「フフフフ、俺はこの日を 勇者に一矢報いる この日を待ちわびたぞ!」


「お前 なんかカッコつけてるけど オシッコ チビって泣きながら5万の魔物を見捨てて逃げ出したんだ。忘れようと思っても 忘れられないよ」


「・・・・・・・・・・・・・そ、それを言うな!チビってなんかない・・・・」


あっ また泣き出しそうだ。


・・・・・こいつは こいつで 凹んでいるのだけど これ、俺のほうがショックは大きいんだぜ。考えてもみろ、5万もの魔物のリーダーを務める奴が 俺の魔力にビビッて失禁して 逃げ出したんだ。だから、マリアやシオンさんに力を見せるのが嫌なんだ。強力な魔族ですら 恐怖する力を 普通の人間が見たとき どのように思うのか・・・・。駄目だ、余計なことを考えてると また 気が滅入って来る。今は ドームを何とかしよう。とりあえず 俺にトラウマを植え付けた責任を取ってもらうため 軽くいじらせてもらおう。


「ズボン ビッショリだったし 足元には 大きな水溜りができてたじゃないか?」


「あ、あ、あれは・・・・そう・・・あれは 汗だ!」


青い肌を持つドームだが 顔は真っ赤になっていた。


「それ、相当 無理があるよ?」


「うるさい!とにかく これでお前に受けた屈辱を晴らせんのだ」


「何かわからないけど お前を生きて帰すと思うのかい?お前のせいで多くの人が困っているんだ」


「そうだな。俺は ここから逃げることもましてや お前を殺すこともできないが・・・さあ 早く俺を殺せ!ハハハハッ さあ殺せ!」


言い終わるか どうか そんな瞬間に すでに俺の構えた剣に自ら刺さりに来た。抜き身の剣を握り締め自らの胸へとおさめていく。剣はドームの胸を貫くが 全てに満足したような笑みを浮かべている。


「これでいい!これでいいのだ!お前が全てを失い打ちひしがれる姿を拝めないのは残念だが まあ、楽しみにしていろ!そして 絶望しろ!ハハハハハハハハハハハハハハハハ・・・・・」


ある光景を思い出す。魔王との戦いだ。魔王もまた、自ら俺の剣に刺さりに来た。ある意思 意味を持ち 自ら刺さりに来た。


・・・・・・・・・・・。


今はとにかくドームの企みだ。

いつまでも続くと思うような笑い声を残しドームは消滅した。ドームとの会話 奴が何かを隠しているのは 明白だが・・・。

殺すのは尚早だったか?だが、生かして捕らえたところで話はしないだろう。死を覚悟していた。そんな奴に脅したとしても 口を割らないだろうし 隙を見て自ら命を断つはずだ。


そう思わせる程の狂気をドームから感じ取ったのだ。


取り敢えず町に帰るか。


まだ、町を出て 30分程しか経っていない。マリア達はまだ、起きているだろうと 町長の家へ向かう。窓からは灯りが漏れているので まだ寝ていないだろうと判断し ノックすると、ドアが開き町長の奥さんが出てきた。呼び出すように頼むと 就寝前の女性を訪ねるのは不躾だと 怒られてしまった。この世界に来て3年になり それなりに生活にも慣れたが やはり こういうときに携帯があればと よく思う。


しかし、ドームの最後の言葉がどうしても気になり 2人の安否を確認したいのだ。急用だと 頼み込み どうにか取り次いでもらった。

今 失って絶望するもの。それは 間違いなくここに居る 2人、いや サヤを足して3人だ。ドームは全てと言った、だったらもっと広範囲のことなのかもしれないが とにかくマリアとシオンさんだ。後で サヤの様子も見に行こう。


奥さんに呼ばれ シオンさんが 出てきた。


「ナオキ様 お早いお戻りで。何かございましたか?」


「うん。今から 出れるかな?」


「構いませんが、マリア様も お呼びになりますか?」


「うん、お願い」


少し残念そうな顔をするシオンさんは一旦部屋に戻り 少しと言うか・・・15分ほど待たされ ようやくマリアと出てきてくれた。女の子には 色々 準備があるのだろう・・・。

2人を促し サヤの家のほうへ歩きながら 状況を説明する。


「おそらく 解決したよ」


2人は キョトンとし、状況が飲み込めないマリアは 尋ねてきた。


「もう少しちゃんと説明してくださらないと わかりませんわ」


「2人と別れた後 森で 例の魔力の持ち主を見つけね、退治できたんだ」


「どんな、魔物だったのですか?」


「裏で糸を引いてたのは ドームだったよ」


「ドーム・・・・とは もしかしてあのドームですか?」


マリアは顔をひきつらせていた。シオンさんも驚愕の表情を浮かべ


「魔王軍の将軍ドームですか?」


「ああ そのドームだよ」


「森は・・・森は、まだありますか?ナオキ様とドームとの戦いです。相当激しかったのでは?」


心配そうな顔をするマリア。確かに 普通に戦えば いくら広大な面積を誇るモニリの森であっても その多くを消失させてしまっていたであろう。だが、今回は ドーム自身 死を選び 自殺と言っていい最後だった。


「森は 大丈夫だよ。瞬殺だったね。さすが 俺!」


おどけて見せるが 心配は尽きない。ドームは 間違いなく 何かを企んでいる。それが、何かは 今は まったくわからない。情報や手掛かりは 一切ない・・・。俺の不安が顔に出ていたのであろう マリアは敏感に感じ取ったようだった。


「元凶を退治した割には浮かない顔をなさるのですね」


「そうかな?そんな顔してるかな・・・・?」


まだ、なんの確証もなくみんなを不安がらせることもないと思い 伏せているつもりだったが どうやら 間違っていたようだ。


「私達は 何のお役にもたてないのですか?私達はナオキ様のお飾りなのですか?確かに お役にはたてないかも知れませんが お話を躊躇われるほど私達は信用がおけませんか?私達は少しでもナオキ様の・・・・」


「マリア様 ナオキ様は私達のことをお思いになって」


「そんなことは、わかっています!わかっていますが、それでも・・・」


以前 マリアに言われたことを思い出した。勇者が全て 救えると思うのは傲慢だと。自分一人で解決できないことは 人に頼るべきだと。そして 自分で抱え込まず ちゃんと 話をすると 約束した。


「ゴメン。ちゃんと話すって 前に約束したのにね。ドームは 自殺したんだ。俺の構えた剣に自分で刺さりに来たんだ。大事なものを全て失うって 言葉を残してね・・・だらか 3人のことが心配になって」


「私達がナオキ様にとって 大事な存在だと言っていただけるのは、とても嬉しいです。そして、そう思っていただけるのなら 私達に隠し事なく 何でもお話になってください。私達もナオキ様の横に立てる存在になれるように努力しますので どうか お願いします」


「ありがとう。俺も2人にそこまで 思われてると思うととても嬉しいよ。ところで、ドームの言葉が、どうしても気になって、何か身の回りに変わったことはない?」


「特には?シオンはどう?」


「いえ、これと言って」


「だったら あいつは何を企んでいるんだろう?」


「偉そうなことを言って お恥ずかしい限りですが まったく 見当もつきません」


「まあ 俺もさっぱりなんだよね。とにかく もっと情報を集めよう」




その後 サヤの家に着き 事情を説明した。サヤも無事なようで 特に気になることもないらしい。そして 時間も 時間だと言うことでこの日も サヤの家に お泊りするこになった。


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