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勇者と姫のそれから  作者: べるこさん
第1章 異世界編
33/135

033

診察室のドアをノックし 返事を待って中に入った。部屋の中は 薬品の物と思われる ちょっと変わった匂いで満ちている。入ったことはないが漢方薬の専門店などは きっとこのような感じなのだろうと思った。


「今 危ない薬を使ってるから 気を付けてね。あなたが くしゃみでもして大きな風を起こしたら私 死ぬからね」


冗談めかして言うが 冗談ではないのだろう。サヤの目は 真剣そのもの、職人の目をしていた。だから、この部屋で息をするのが 少し怖くなり 言葉が短くなる。なんて 小心な勇者だ・・・。


「サヤも疲れているのに無理させて済まないな」


考えてみれば サヤも昨日からほとんど寝てないはずだ。俺は 召還され ラノベ風に言えばチートボーナスで 数日寝なくても平気だし 少し休めば体力も魔力も回復するが サヤは そうはいかない。


「まあ、疲れてはいるけど これが終わればゆっくり休めるし 平気よ。それに、もうすぐ終わるし」


「無理はしないでくれよ」


「その無理を持ち込んで来たのは誰よ」


まったくその通りだ。俺は平気だからと ついつい 周りの人も同じように思ってしまう。サヤだって よく見れば 目の下には薄っすらだがクマもできているし 表情だって疲れている。それなのに 薬もだが 食事だって 作らせてしまった。


「ゴメン」


「いいのよ。あなたのためなら 少しくらいの無理はしたいの。あなたに必要とされていると言うのは 存分に心地いいものなのよ」


「ありがとう」


「さあ あなたはもう休んで。明日も魔物退治に行くのでしょ?」


「じゃあ 頼むよ」


俺が特別に思っている人が俺のために無理をしてくれている。それをとても嬉しく 愛おしく思い 座ったままのサヤを後ろから抱き締めてしまった。


「興奮して 鼻息を荒くしたら机の上の薬が舞って あなたも私も昇天よ。早く寝なさい」


「はい、ごめんなさい」


調子に乗ってしまった。


「おやすみ」


「お休みなさい」


挨拶を交わし 部屋に戻り眠りについた。


翌朝


俺たち3人は 玄関で 姉妹の見送りを受けている。


「ナオキさん 気を付けて行ってらっしゃい」


サヤは俺に抱きついてきた。そして また マリアとのバトルが始まる。なんだか 似たような事が最近あったような?デジャビュ?


「ナオキ様、現実逃避はおやめください。デジャビュではございません。昨日と同じ状況です。早く 止めてください」


ようやく、じゃれ合いが終わったかと思うと こっちに火の粉が飛んでくる。


「くれぐれも マリア様とシオンさんに薬を使っては駄目よ」


「使うか!そもそも 何に使うんだよ・・・まったく・・・」


「何にって 決まってるじゃない。あんなことやこんなこと?」


「す、するか!」


「あらあら、昨日の夜 興奮して 私に抱きついてきたくせに」


ニヤニヤするサヤ・・・。


「そんなこと して・・・・」


口ごもって居る俺を見て マリアは何を想像したのか 顔を赤く染め抗議してきた。


「したのですね?」


マリアさん、シオンさん 目が、目が・・・怖いですよ・・・。


「ナオキ様 あなたと言う人は!」


マリアが爆発した・・・。だけど 本当の爆弾を落としたのは シオンさんだった。


「あんなことや こんなこと してくださらないのですか?私は いつでも お待ちしているのですよ」


「シオンさん!」「シオン!」


マリアは さっきより更に顔を赤くし 俺と声を合わせ サヤはその様子を見ながら クスクス笑っていた。今から 魔物退治に行くのにすでに ヘトヘトだ・・・。




町を出て森へと向かう途中 今日の作戦を伝える。


「えーと 多種の群れを探して 近くに転移 取り敢えず 俺だけ出てリーダーを見極めるよ。判明したら 2人も出てもらって 雑魚を殲滅。そんな感じでよろしく」


「よろしくって、そんなざっくりした作戦で 良いのですか?」


「だって 魔物がこっちの思ったとおりに動いてくれるわけがないし 下手に事細かく決めるより 大筋だけ決めて 臨機応変に対応したほうがいいんだよ」


「やはり 戦闘に関しては一日の長がありますね」


シオンさん もっと俺を褒め称えて!最近 責められる事が多くて 誉められると 素直に嬉しかった。


「よし!じゃあ張り切って いこー」


森の入口で 魔力を集中し一気に解放する。森全体を走査すると また魔物の数が増えている。不信に思いながらも目的の多種の群れを探しいくつかを見つける。そこから更に近くに戦いやすい場所があること 他の群れが近くにいないことなど条件を絞り混み相手を選んだ。


「見つけた。転移でいくよ、近くに」


マリアとシオンさんを横に立たせ 腰にてをまわし転移魔法を発動する。触れてなくても 一緒に転移できるのだが まあ、役得ということで。あれ?俺ってこんなにエッチだったっけ?やっぱり 何か興奮してるのか・・・。


「あそこ」


少し離れた所に居る魔物の群れを指差す。


「こちらが風下だし気付かれてはないと思う」


後ろを振り返り


「あっちの方に数分歩いたところに 開けたところがあるから 2人はそこで 隠れてて。俺は群れをそこに誘導するから。他に魔物の気配はないけど 用心は怠らないように」


「わかりました」


2人は声をあわせ答えた。シオンさんは、また どこからか ダガーを取り出している。表情もいい感じに引き締まり 油断は無さそうだ。


「俺は魔物を連れてそこに着いたらしばらく リーダーを探す、見つかったら 合図をするので 出てきて加勢して。それじゃあ 行くよ!」


「はい!」


2人の返事を聞き 転移で 群れの反対側に出て 気付かない振りをして 目の前を横切り 打ち合わせの場所に向かって歩いて行く。

広場に出ると魔物も好機と見たか 姿を見せる。2人の気配も奥の茂みから感じる、打ち合わせ通りだ。魔物たちは俺を囲み 牙を剥いていた。

一斉に襲い掛かってくる隙をつき 短距離転移で 逃げる。冷静に観察すると 包囲に緩いところがあり その先に更に魔物が待ち構えている。そのあたりの周到さを考えると やはり 普通ではない。

鬼ごっこを何度か繰り返し ある一頭を中心に動いていることがわかった。


「あいつがリーダーだな」


僅かだが他の個体より強い魔力を感じる。その魔物は大オオカミだった。他の多種の群れでもほとんどが 大オオカミがリーダーを勤めていた。おそらく 大オオカミは元々 群れ行動を取るので リーダーとしての適正があるのだろう。


リーダーと他の個体の違い 2人にはわからないか?


少し考え 先にリーダーの処理をすることにする。麻痺薬を剣先に垂らし リーダーの後ろに転移、そして チョンと魔物を突き刺した。リーダーは あっと言う間に 倒れピクピクしている。


さすがサヤの作った薬だ。効き目抜群!こんな物を人に使ったら 死ぬぞ。サヤも冗談にしても 無茶を言うな・・・。


「リーダーは 麻痺させた!」


大声を張り上げ 2人を呼び寄せる。昨日の戦いぶりを見た限り 2人の実力はここに居る魔物のより圧倒的に高い。その上 リーダーが倒れた群れは 多種と言うことが裏目に出て 連携どころか 魔物同士で 戦ったりしだした。苦労もなく すぐに戦いは終わった。


「お疲れ様。さて・・・」


3人で 麻痺し 動けなくなった魔物の前に立つ。俺はしゃがみ 調べ始めた。そして 頭、眉間の部分で違和感を感じた。


「何かわかりましたか?」


マリアは俺の様子を敏感に感じ取ったのか尋ねてきた。


「この眉間の部分 小さいけど 他の魔力を感じる」


「他の魔力?」


「他の魔物 多分 この森の魔物より遥かに高位な魔物のものだと思う。だから、 種族に関わらず手下にできたのじゃないのかな?この魔力は覚えたから 今度は この魔力を探そう」




しかし、その日 夕方まで 粘ったが例の魔力を見つけることはできなかった。場所を変え何度も 魔力を解放して走査したが 見つけられず その間に出会った魔物は適当に蹴散らした。まあ、原因を取り除かなければ 倒したところで また増えるだけなので 敢えて 魔物を必死に倒すことはしなかったのだ。

日もかなり落ちたので町に戻り 風呂に入り 食事をとる。


「今日は 収穫無しですね」


マリアは残念そうな表情をした。だが、収穫が無かったわけではない。結果が出なかっただけだ。


「そう悲観しなくてもいいよ。収穫は有ったじゃないか?あの魔力を持った奴はこの森に居る魔物ではない。そいつが この森で悪さをしている。その魔物を何とかしたら 解決の可能性が高い。ほらね?」


「ですが、逆に言えば その魔物を見つけられなければ 解決しない。そして1日 探しても 見つけられなかった。ナオキ様はもう少し危機感を持たれたほうがよろしいのでは?」


「はい・・・すみません。おっしゃる通りです」


「では、明日も朝から 魔物探しですね」


「その事なんだけど 今晩 もう一度 森に入ってみるよ。魔物が増えるのも夜みたいだし 昨日 夜に入ったとき 森の雰囲気が 南の大陸に似てたんだ。だから夜のほうが何かあるかもしれないし」


「私達も・・・・」


言いかけたマリアの言葉を遮り


「それは 遠慮してもらうよ」


マリアは険しい表情をする。シオンさんも抗議のこもった視線を送ってくる。


「夜の森を歩いたことあるかい?」


「ありませんが ナオキ様と一緒なら 問題ありません」


頼られるのは嬉しい限りなのだが やはりリスクが高すぎる。そもそも 夜の森は真っ暗な上 今日は曇って 月も見えない。しかも月が出ていたところで 木々に遮られ 足元まで光が届かないのだ。そんな中 普通の人間はまともに歩くことすらできないだろう。


「足元が見えないほど 真っ暗だよ?」


「でしたら 明かりの魔法を使えばよろしいではないですか?」


「そんなことしたら いい的だよ?それに、探してる 魔物にも気づかれて 逃げられるかもしれない」


「・・・・・」


マリアもシオンさんもそれ以上 反論の言葉が見つからなかったのか 押し黙ってしまった。複雑な表情をする2人を見て 思う。


やっぱり 俺って弱いな・・・。こんな表情の2人を見ると 徹しきれない。このまま正論で押し通せば 納得するしかなくなるだろうが、俺自身が 納得できない。


「本音を言うとね・・・2人には ただ 危険なことや無理をして欲しくないだけなんだ」


2人は表情を緩める。


「そのほうが ナオキ様らしいです」


マリアは更に言葉を続けた。


「私達に夜の森を歩くのは無理そうですし なによりナオキ様のお気持ちもよくわかりました。おとなしく 留守番をしておきます」



2人を町長の家へ送り届け 自分は宿に戻る。鍵を受け取り 部屋に戻るが 休息を取ることもなく 部屋から 森へと転移した。




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