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勇者と姫のそれから  作者: べるこさん
第1章 異世界編
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お母さんを 診察室に移動させ 準備を整える。


「スズちゃん マリア シオンさん 外で待っていてくれるかな?特に マリアは魔力が大きいから どうしても干渉しちゃうんだ」


「お兄ちゃん お願い!お母さんを お母さんを助けて」


本当のところ 俺自身 どうなるかわからない。下手に期待を持たせて 失敗すれば スズちゃんは 立ち直れないかもしれないが ここで 弱気になっては できるものもできなくなってしまう。


「俺とお姉さんに任せて!絶対に 成功させる!」


俺は 力強く答えた。もう 後には引けない・・・。


「さあ 邪魔にならないように 外で待っていましょう」


マリアに連れられ 3人は外に出た。




「さあ、始めましょうか」


「ええ、でもどうすれば?」


「取り敢えず いつも通りの感じで」


彼女は 片手を患部にそっと添えて 俺を見た。俺は 彼女の手の甲から手を握る。


「えっ えっ」


更に 反対の手を腰にまわし ギュッと抱きしめる。


「えっ な、ナオキさん?」


俺はサヤさんの耳元で囁く。


「サヤさん 落ち着いて。俺の魔力を感じて」


サヤさんは 目を閉じる。


「もっと 心を開いて」


更に強く抱きしめ 互いの鼓動を感じるほどに


「もっと 俺を感じて」


そして 体も意識も マドラーでかき回された様に一つに混ざってゆく。混ざりあった 意識には言葉は不要だった。


今 ナオキさんと一つになった、そんな感じがする。


そうだね。


ナオキさんの心を感じる。誰かを助けたい、必死に願う心を感じるわ。私 もっと もっとあなたを感じたい。


サヤさんだって お母さんだけじゃない、病気の人 みんなを治したい、そんな心を感じるよ。


もっと もっとあなたと繋がりたい、もっと 深く・・・えっ?何・・・この大きな苦悩、苦しみ・・・。


ははっ 見つけちゃったね


どうして こんなものを抱えてそれでも 優しくできるなんて・・・あなたって人は・・・。苦しいときは 苦しいって 言ってもいいのよ


ありがとう


あなたの優しさ 暖かさに包まれたい。私も あなたを包んであげたい・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。

結果は大成功だった。お母さんを部屋に戻すとスズちゃんは 安心したのかお母さん手を握ったまま 寝てしまった。同じように マリアとシオンさんはリビングのソファーで寝てしまった。


俺は 診察室の窓から 外を見ていた。外はすでに 朝焼けに包まれている。


「しかし、疲れた・・・・」


魔力の消費は 俺にとっては まったく問題ないレベルであったが 治療中は 細心の注意を払い 常に 繊細な魔力のコントロールが要求されたからだ。精神的な疲労が 半端ではない。だが 成功したこともあり 心地よい疲労となった。


「ナオキさん お疲れ様 本当にありがとう」


「お疲れ様 成功して何よりだよ」


「・・・・・」


サヤさんは 押し黙り 俯く。


「どうしたの?」


彼女は 何かを決意し 顔を上げた。


「ナオキさん ここに残らない?」


「え?」


「だから・・・その・・・あなたが ここに居てくれたら スズも喜ぶし それに私だって・・・きっと 母さんも反対しないと思うし・・・・だから・・・だから・・・・えっと 私と一緒にここで 暮らしていかない?」


「へ?」


言われたことの意味はおそらく 正確に理解できたと思う。つまりは、プロポーズだ。


「いや つまり それって?」


「女に そんなこと 何度も言わせないで」


うん。間違いない。


「でも 俺たち 今日 っていか 出会ってから まだ 数時間だよ」


「わかっているわよ・・・だけど、あなたと繋がったあの時間は 何年 何十年掛けても得られないほどのことを得られたと思う。あなたもそう思わない?」


それは そのはずだ。心が繋がり お互いに本質的なことを共有したのだから マリアより いや 元の世界にいる幼馴染みより 互いを理解しあっている。そして、俺もまた 彼女に 好意を抱いたのは否定できない。


だけど


「ゴメン・・・・」


俺は 元の世界に帰らなければならない。後ろ髪は引かれる。マリアやシオンさんを城に戻し俺だけここに残ってもいいと思わせるほどの経験をした。


だけど


「ゴメン 俺はやらなければならないことがあるんだ。ここに 残ることはできない」


「うん。わかってた、だって あなたのことは 何でもわかるのだもの」


サヤさんは しっかり俺を見据えるが目には涙が溢れていた。俺はそっと彼女を引き寄せ抱きしめ 囁く。


「サヤ ごめんな」


彼女の温もりをいつまでも感じていたい 。だけど、彼女は すっと 俺から離れ


「何度も謝らないで。それに そのナオキさんが言う やらなければならないこと がなくたって 私を選ばないしここにも残らない。何でもわかるのも 残酷なものね」


サヤは どことなく、寂しげな笑顔を投げ掛けた。付いてきて欲しい。本心では思うが 彼女がここを離れられないのは 俺にもわかっていた。それに 例え繋がっていなかったとしても この状況で 母親と妹を置いて 付いてこれないのは 容易に理解できるだろう。


「また、会いに来てくれる?」


「必ず」


手を伸ばし もう一度 サヤさんを抱きしめた。




太陽はすっかり昇り 時間はもう 昼前 。俺、マリア、シオンさんは 姉妹に 見送られていた。


「ナオキさん、本当にありがとう。旅はまだ 続けるのよね?気を付けてね」


「ありがとう。サヤも頑張って」


やり取りを聞いていた マリアが ピクリと反応する。


「年上の女性を呼び捨てにできるほど いつの間に 仲良くなられたのですか?」


ああ、いつもの表情だ!笑顔なのに 目が全然 笑ってない・・・。


「いや・・・それは その」


俺が口ごもっていると サヤは 挑戦的な視線をマリアとシオンさんに送りながら 抱きついてきた。


「ナオキさん 約束は 守ってくださいね。いつでも 会いに来てください」


「お、おい」


「ナオキ様!これは、いったい どういうことですか!」


マリアとシオンさんは声をあわせた。


「いや だから、それはだな・・・」


まさに修羅場。しかし この'者たちはまだ 知らなかった。ここに、真の悪魔が潜んで居たことを。


「お兄ちゃん こっち」


サヤの抱擁から解放され 必死に言い訳をしていると スズちゃんに呼ばれ 正面で しゃがんでやる。


チュ


頬にキス!された・・・


「えーーーー!」


大人の女性達の合唱。俺は 子供のすることと 微笑ましく見てたのだが どうも 駄目だったらしい。


「スズ!何してるの!」


「スズはね、お母さんを治してもらったお礼に お兄ちゃんのお嫁さんになってあげるの!」


「ダメーーーー!お嫁さんは お姉ちゃんがなるの!」


「お嫁さんは 私が!」


「お嫁さんは 私が!」


3人は 見事にハモった。言っている意味 わかってますか?いや・・・嬉しくは思うけど・・・。その事に気付いた 3人は真っ赤になっていた。


落ち着きを取り戻したサヤは マリアとシオンさんに向き


「お二人も ありがとうございました」


「いえ 私たちは 何もしてませんので」


マリアの顔をじっと見つめ 何か 腑に落ちない顔をするサヤは 尋ねる。


「マリアさん、あなたとどこかで お会いしてませんか?見覚えがあるような気がするのですが?」


「私は 初めてお会いしたと思いますが」


「ンーーーー・・・マリア マリアマリア・・・マリア・・・マッ! リア姫?マリア姫!」


あっ ばれた。


「あなたは いえ、あなた様は マリア姫では?王都に居たときに 何度か遠くから お見かけしたことが」


マリアは困った表情で 俺を見てくるので 頷いてやる。もう 今更 彼女に 秘密にしても仕方ない。


「はい。私はタラクシャの王女 マリアです。でもこの事は内緒でお願いしますね」


「そ、それじゃあ ナオキさんって もしかして!?」


俺は彼女の唇にそっと指をあてる。


「そ、そんな・・・・・」


あからさまに落ち込むサヤを見かねたマリアは 近づき彼女にだけ聞こえるように


「何を落ち込んでいるのですか?恋に身分など関係ありませんよ。それにあの人もそんなことを気にする方ではありません。その程度もわからないようでは 私の敵ではありませんね」


「! 私は 姫様にだって負けません」


落ち込んだと思ったら また 急に元気を取り戻し シオンさんは 呆れ顔で呟いた。


「マリア様 敵に塩を贈ってどうするのですか」


「私は 全ての敵を打ち破って 掴み取るのです。シオン あなたもうかうかしていたら 取り残されるわよ」


マリアは腰に手をあて 宣言した。



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