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勇者と姫のそれから  作者: べるこさん
第1章 異世界編
3/135

003

コンコン


「ナオキ様」


コンコン


「ナオキ様」


ノックと呼び声で、俺は 目を覚ました。体を起こし軽くのびをする。


いつの間にか 眠ってしまったようだ。


戦いに身を置いていた頃は 人の気配だけで目が覚めたのにな。


さすがに、疲れが貯まってるのか。そう思いながら 返事をした。


「んーーー。はーい 開いてるからどうぞ」


ドアが開くと 侍女が深々と頭を下げ 失礼しますと言い部屋に入ってきた。


「ナオキ様 お休みのところ申し訳ありませんが 祝宴の準備も 間もなく整いますので ご準備をお願い致します」


「あー そうか。ところで やっぱり、祝宴って 偉い人達がたくさん来るんだよね?」


「出席される方までは 存じ上げませんが おそらくは」


「そうだよね」


と言いながら 自分の服を見下ろす。


「この服じゃ 駄目かな?これしか 持ってないんだよ」


「ナオキ様が お召し物をお持ちでないかもしれないと マリア様が 数着 ご用意しております。そちらをお召しになればよろしいかと」


「さすが 姫様は気が利くな!」


「お召し替えの前に お風呂になさいますか?」


「シオンさん 俺 臭いかな?」


彼女は 驚いた顔をし俺を見つめた。


「どうかした?」


「どうして私の名を ご存知なのですか?」


「どうしてって、何度か城内で顔を合わせてるじゃないか?それに たまに

俺の身の回りの世話もしてくれてたでしょ?

俺は美人の名前を忘れないようにしてるんだ」


シオンは頬を赤らめながら 少し意地悪そうに 


「ナオキ様は お上手なのですね。さぞかし おもてになるのでは?」


「いやいや、そんなことはないよ。元の世界でも 彼女はいなかったし

女の子と二人で 遊びに行ったことすらないよ」


「そうなのですか?」


「そうだよ。あまり女の子とは縁がなかったね。ところで、俺 臭う?」


「いえ そんなことは ありませんが?」


「よかった。実は 今朝 登城前に 城下でお風呂に入ってきたんだよ。

旅から戻ってきたばかりで 汚れたまま 陛下に謁見するのが 気が引けてね」


「では、お召し替えに向かいますか?」


「お風呂の時間を計算して 呼びに来たなら 少し 余裕あるよね?」


「申し訳ありません。私が余計な気を回したせいで お休みの時間を

削ってしまいました」


「いいんだよ。丁度よかった。昨日の晩から 何も食べてないから お腹が減っててさ、少し食事をしたいんだ」


シオンさんは 少し呆れ顔をする。


「ですが、しばらくしますと 祝宴も始まります。そこで、お食事も出ますが?」


「たぶん 祝宴では 人に囲まれて 食事どころじゃないと思うんだよね。

祝宴の食事って ウォン料理長が作るんだろ?知ってる?料理長の作った物って 滅茶苦茶 美味しいんだよ!お腹が減ってるのに ウォンさんの料理をお預けされるなんて 拷問だよ」


シオンさんは くすくすと笑いながらも納得したような表情をした。


「わかりました。では 何か作らせて こちらにお持ちいたします」


「それより 厨房へ行こうよ。みんな 忙しいだろ?祝宴に出す料理を少し分けてもらえたらそれでいいし」


「ですが、そのような場所へ ナオキ様をお連れするわけには」


「いいんだって!俺は別に 王族でもなければ 貴族でもないんだよ。

さあ 行こう」


俺はシオンさんの手を握り 強引に部屋を出るが、彼女は頬を赤らめながらも


困ったような表情となる。


「ナオキ様 お放しください」


「ああ、ごめん」


俺は 慌てて手を離す。


「わかりました。では 厨房へ参りましょう。ご案内いたします」


俺は、シオンさんに連れられて 厨房へと向かった。




厨房に入るとそこは戦場だった。10人ほどの料理人が 食材を切り


鍋を振るい 次々と料理を仕上げていた。


ウォンさんを見つけたので 近づいていくと


「オイ そこの!邪魔だ。用がないなら 出て行け!」


ウォンさんに いきなり怒られた。


その声に若い料理人が 顔を上げ こちらを見たかと思うと


彼は見る見る 顔を青くし


「料理長!ゆ、ゆ、勇者様です!」


「勇者様がどうした?」


そう言いながら こちらを向いた。


「ゆ、勇者様。どうしてこのような場所に?はっ 勇者様 失礼しました。

申し訳ありませんでした。どうか お許しを」


「いいよ、いいよ 突然来たのは 俺のほうだし」


その後も 何度も謝罪してきた。ウォンさんは ようやく落ち着きを取り戻し


「で、勇者様 どのようなご用件で?」


「お腹がすいたので 何か食べさせてもらおうと思ってさ」


「ですが、しばらくしますと祝宴が始まりますが?」


祝宴では 人に囲まれて 酒は注がれるだろうけど 食事の余裕はないだろうと シオンさんにした説明を繰り返した。


「なるほど、では至急何かお作りいたします」


「忙しいのに いいよ。できてる 祝宴に出す料理を少し分けてくれれば」


「よろしいのですか?」


「うんうん。ウォンさんの料理は 何を食べても美味しいからね」


「ありがとうございます。それでは お好きな物をお取りください」


皿を受け取り 出来上がった料理を一通り見て回った。俺の選んだ料理は


肉じゃがのような物と 焼き魚 和え物 味噌汁のようなスープと パン


「このメニューなら 完全にご飯なんだけどな」


そう思ったのだが残念ながらご飯はなかった。


俺がウォン料理長の料理を気に入ってるのは この和食のような


料理があるからだ。しかも 彼の家に伝わると言う 秘伝の調味料


それが まるで味噌と醤油のようなものなので 驚いた。


だから俺は 彼の料理に 故郷の味を重ねているのかもしれない。


料理を取り終えると シオンさんに 奪われ


「あちらにお席をご準備いたします」


「そこでいいよ」


と 厨房の隅にある 料理人たちが休憩する席を指差した。


「ですが」


と、言うシオンさんの手から料理を奪い返し その席で 食事を始めた。


シオンさんも渋々 諦め その席に お茶を運んできてくれた。


料理を堪能し 腹も満たされ お茶で一服し 手を合わせ ご馳走様という。


俺は皿を重ねて 洗い場に運ぼうとしたが 慌てて 


シオンさんに呼び止められる。


「私が運びます」


そう言えば 前にもこんなことがあったなと 思い出す。


基本的に庶民の俺は 自分でできることは 自分でしてきたし


親にもそう躾けられてきた。世間的にもごく普通のことだろう。


しかし、王城では違う。


「みな、それぞれの仕事があります」


侍女には侍女に仕事があるのだと マリアに窘められた。


それを思い出した俺は


「それじゃあ お願いするよ」


シオンさんに 皿を手渡した。


俺はウォンさんに お礼を言おうと 彼に近づき言った。


「ウォン料理長の料理は 大陸一だと言うけど それは 間違いだね」


ウォンさんは 不安そうな表情になる。


「お気に召しませんでしたか?」


俺は 顔を横に振り


「大陸一どころか、世界一だよ。世界中を旅してきた俺が言うんだから

間違いないよ」


その言葉を聞いた 料理人たちは 歓声を上げた。


更に 驚いたことに ウォンさんは 俺の両手を取り 「ありがとございます」


と涙を浮かべながら 何度も言ってきた。


落ち着いたところで、再度 ウォンさんにお礼を言い 厨房の料理人たちにも


「頑張ってください」と声をかけると 「はい」と


威勢の言い返事が返ってきた。





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