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勇者と姫のそれから  作者: べるこさん
第1章 異世界編
29/135

029

ついつい 話し込んでしまい 長湯をした2人は 茹でタコのようになってしまった。体を拭き荷物を顕現させ着替えを済ませたのだが.スズちゃんの着替えがなかった。


「着替えを持ってくるの忘れたね。サヤさんに言って持ってきてもらうよ」


そう言ってスズちゃんを残し診察室に戻ったが明かりも消え誰もいなかった。 気配を辿ってある部屋の前につきノックをしようとしたものの 中から話し声が聞こえ手を止めてしまった。


「ええ・・・母さんは・・・もう・・・長くないの・・・・・いえ、私の診たてでは・・・もって後 数日・・・」


「そ、そんな」


サヤさんとマリアの声だった。


「その事をスズちゃんにはお話に?」


「そんなことを言えるわけないでしょう!」


「何故ですか?ちゃんと お話したほうが良いと思いますよ」


「何故って・・・あんな小さな子に 母親の死を受け止めろと言うの?」


「ですが・・・死は誰にでも訪れますし その死がすぐそこにあるのなら 尚のことです。結局 お母様がお亡くなりになれば 嫌でも受け止めなければならないのですし」


「だからって・・・」


「もし サヤさんが お伝えすることが 辛いと仰るのなら 私が代わってお話してもよろしいのですが?」


「勝手なことをしないで!どうして そこまで・・・」


「私も・・・私も3年ほど前に お母様を亡くしました。死期を悟ったお母様は 私にそのことを教えてくださいました。確かに スズちゃんの倍ほどの年齢にもかかわらず簡単には受け止めることはできませんでしたが それでも残された数日 お母様とたくさんふれあい お話をし お母様の心に触れられたのは 良い思いでとなりました。私は思うのです、もし 最後まで 教えられずある日突然 お母様が亡くなっていたら・・・それは きっと相手を思って秘密にされるのでしょうが 残されたものにとっては・・・」


「でも・・・・スズはまだ子供なのよ・・・・」


「スズちゃんもいずれ大きくなりサヤさんの配慮を理解できるでしょうが 理解できても過ぎ去った時間を巻き戻すことはできません。その時 スズちゃんは 知っていればもっとできることがあったのではないかと きっと後悔するはずです。そんなスズちゃんを見ればサヤさんも後悔するはずです。家族や愛する者どうしに 秘密って不要だと思いませんか?私も今 愛する人に言えないでいることがあります。とても辛いです。でも いつか いつかは必ず・・・ごめんなさい。偉そうなことは言えませんね。でも どんなに辛くてもスズちゃんには サヤさんのような優しくて素敵なお姉さんがいるのです。きっと 大丈夫ですよ」


「マリアさん・・・」


そのまま、中は静かになった。俺はマリアの言葉に ドキッ とさせられた。マリアの秘密と言うのも気になるがそれ以上に、俺にはマリアに 大切に思っている人達に言えずにいることがある。言えるわけないと思っていたが いや、あんなこと言えるわけが・・・・だけど、愛しているからこそ 大切に思っているからこそ ちゃんと話さなければ・・・俺の動揺が中にまで伝わってしまったのか シオンさんに気付かれた。


「ナオキ様?」


「あ、ああ 風呂から上がったんだけど スズちゃんの着替えがなくて、サヤさん お願いできますか?」


扉越しに返事をして 風呂場へと戻った。


「お兄ちゃん 遅いよー スズ風邪引いちゃう!」


「あははは、ごめん すぐに サヤさんが着替えを持ってきてくれるよ」


すると すぐにサヤさんが 着替えを持ってきた。


「スズ お待たせ。ハイ 着替え。着替えたらリビングに来てちょうだい。少し話があるの」


「うん、スズもお姉ちゃんとお話ししたい」


着替えを済ませ スズちゃんを連れリビングに向かう。中に入り サヤさんはスズを隣に座らせ 向かい俺とマリアが座り ソファーの後ろにシオンさんが立った。外で待とうかと聞くと不安そうな顔で居て欲しいと言われ同席することになった。


サヤさんは斜めに座り直し スズちゃんの顔をしっかり見つめ 話始める。


「スズ よく聞いて、母さんのことなの。母さんは・・・・・・・・母さんはね・・・・・・」


「お姉ちゃん?」


サヤさんの不安はスズちゃんにも伝わり スズちゃんも不安そうになる。


「母さんはね・・・・もう 数日しか 生きられないの」


「えっ?」


目に涙を溢れさしたサヤさんは 更に続ける。


「よく聞いて!母さんは もうすぐ 死んじゃうの・・・・」


「えっ?だって そんな・・・・お姉ちゃん 嘘でしょ?」


サヤさんは 小さく首を振った。


「お姉ちゃん・・・お姉ちゃんが治してよ!お医者様なんでしょ!早く お母さんを治してよ!」


「私だって 母さんのこと 大好きなの!私だって 母さんのこと治したいの。だけど、だけど・・・・私の 私の魔力では 私の力ではもう どうすることもできないの・・・」


「うそ・・・うそ うそうそよ・・・」


泣きじゃくるスズちゃんの肩を掴み


「スズ 聞いて!母さんに今必要なのは 森の泉の水ではなく あなたが 手を握ってあげて 声を掛けて お母さんを安心させてあげることなの。わかる?森に行って母さんに心配を掛けてどうするの!もう母さんは・・・・だから、あなたが母さんを安心させて」


「お母さんの・・・お母さんのところに行ってくる!」


スズちゃんは涙を振り払い 部屋を飛び出していった。見送ったサヤさんは その場に泣き崩れてしまう。マリアは サヤさんを背中から抱きしめ寄り添った。


「あの・・・・ナオキ様なら どうにかできないのですか?」


シオンさんが 申し訳なさそうに聞いてきた。


「お母さんは 怪我ではなく病気なんだよね?」


俺はサヤさんに聞くと 一瞬 輝いた瞳は 質問の意図を察し すぐに曇り 小さく頷いた。


「シオンさん 俺は 怪我は治せても病気は治せないんだ」


マリアはわかっているようだが シオンさんは知らないらしい。俺の使っている 治療魔法は 体 自身が覚えている体の形 詳しくはわからないが 地球で言うところの DNA情報をだと思う。を元に 細胞を魔力で活性化させ 復元していくというもので 回復魔法は 体力を回復したり増血したりする。俺であれば手足を切り落とされても 生きてさえいれば 綺麗に復元できる。小さな町や村で 医者を名乗っている者の多くはこの2つの魔法しか使えない。王都に居るような本物の医者が使うのが 医療魔法だ。これは、体の構造や病気について深い知識を持ち 症状 病状にあわせて複雑な術式を組んで 行使するもので 地球の医者と同じような スキルが必要とされている。例えば 風邪の患者が居たとして 俺のように 前者2つの魔法しか使えない医者は 回復魔法で 体力を回復することしかできない。体力が落ちていると他の病気になったり 悪化する恐れもあるので 意味がない行為ではないが 完治まで時間がかかるとこが多い。それに対して医療魔法であれば 熱を下げたり 風邪の症状 つまり喉の痛みや鼻水などを無くすこともできるのだ。


「サヤさんは 医療魔法は使えないのですか?」


「私は医者だって 言ってるでしょ」


「お父さんか お母さんが 医者だったんですか?」


「王都の有名なお医者様に 10歳の頃から修行してたの」


この世界では 医大のような専門の教育機関はないため 医者になるには 医者の弟子になるしかない。だが 膨大な知識を習得するには とても時間がかるため 幼い頃から教えることのできる 自分の子供を弟子にすることが多い。また、医療魔法には 大きな魔力が必要であり、魔力量は遺伝しやすいため 自分の子供や近しい親族に その技術を伝えることが一般的だったのだ。


サヤさんは 昔を思い出すような 遠くを見るような目で 語りだした。


「父さんは農家をやってたんだけど 足を怪我して上手く動かせなくなったの。畑仕事もできなくなって 畑を売ってしばらくは暮らしてたんだけど やっぱり 足が悪いとどこも雇ってくれなくてね。10歳にもなったら下働きに出るのも普通だし ちょうど 王都のお医者様の家で下働きを募集してたから 雇ってもらったの。私ね、父さんの足を治してあげたかったの。だから 先生が治療してるところをよく じっと見てたのね。すると先生は 興味があるのかって そして お父さんのこととか いろいろ事情を聞いてくれて 下働きの仕事が空いたときは治療の様子を近くで見ることや 先生が持っていた 医学書を読むことを許してくれたの わからないところも ちゃんと 教えてくれたし。でも 先生はとてもいい人でね 嘘がつけないのよ。しばらくすると 本当のことを教えてくれたの。

先生は お子さんがいらっしゃらなかったので 弟子を探してたらしいの それで 魔力の大きい子供を見つけるために あちらこちらで 募集をかけて それで 私が採用されたのよ。私は 魔力の素養も高かったし なにより父さんを治したいって目標もあったから どんどん 先生の教えを吸収して 3年が経つ頃には 下働きは卒業して 先生の助手にまでなって 更に3年経つと もう 開業できるくらいの 腕前になっていたわ。ちょうど その頃 スズも生まれたし 父さんの仕事も順調になっていたから 家に戻るようにも言われたんだけど やっぱり 父さんの足を治したかった。でも まだ その時の私の技術・・・いえ 先生でも 無理だったと思う。昔に負った怪我を治すのって 不可能って言われてるから。だから 私は両親を説得して 王都に残って 先生の元で研究と技術の向上に努めることにしたの。それでも先生は いい人でね 妹もできたんだからって 月に一回 往診ってことで高いお金を出して 転移魔法で 王都とモニリの町を往復させてくれたわ。大赤字なのにね・・・本当に先生は・・・・。それから また3年年が経って 父さんは事故であっさり亡くなったの・・・。私は 医者を目指す目的をなくして 母と妹が2人になること 魔王軍の侵攻も迫っていたこともあってモニリの町に戻ることにしたの。しばらくは 呆然として 何もできなかったんだけどね 母さんが言ったの 「お父さんは いつも あなたのことを 自慢していたわ。どんな病気でも治す 世界一の医者だって あなたが お父さんのために医者を目指していたのは知っているけど ここで やめちゃったら きっとお父さん 悲しむわよ」って・・・。それで 奮起してこの町で 開業したの」


「そうだったんですか。じゃあ 俺が王都に来たのと 入れ違いだったんですね。俺が王都に来たのは3年前ですから」


「そうだったの?私も 王都では結構 有名だったのよ。宮廷医師団にも誘われたくらいなんですから」


彼女は自慢げに 言ったが すぐに その表情は 曇ってしまった。


「それでも 母さんの病気に気づかず 治すこともできなかったけど・・・」


「ナオキ様ほどの魔力があれば どうにかできると思ったのですが 余計なことを言って 申しわけございませんでした」


シオンさんが サヤさんの様子を見て 申し訳なさそうに言った。


「・・・・・・」


「ナオキ様?」「ナオキさん?」


「ごめん ちょっと静かにして」


気になることがある・・・何かが 引っかかる・・・今の会話を そのまま 思い起こす。


「・・・・・・・・・」


サヤさんは 確かこう言った・・・「私の魔力では 私の力では・・・・」と


「もし 魔力が足りれば お母さんを治療できるの?」


「そうね・・・でも そんな魔力を持った人なんて 3賢人くらいよ・・・」


「それじゃあ、サヤさんは 治療の方法はわかるけど 魔力が足りない そう言うことでいいのかな?」


「ええ、母さんの病状は3つの臓器が悪い組織に侵されているの」


恐らくは ガンなのだろう。そして 複数の臓器に転位している。


「素人考えなんですが 1つずつ治療はできないのですか?」


「治療した臓器と 残された悪い臓器は上手く繋がらないの。分けて治療すると お腹の中を切り裂いた状態になって激しい痛みの末・・・」


「だから、同時に処置しなくてはならなくて そのためには 大きな魔力が必要だと?」


「その通りよ。例えば 1つの臓器の治療に10の魔力が必要だとすれば 2つを治療には20じゃなくて 50くらいは必要になるわ。3つともなれば 150や200くらいは いるわね。マリアさんは私より大きな魔力を持っているみたいだけどそれでも まだ 足りないと思う」


「わかりました。今から言う提案は 今まで試したこともない、実験や検証もしていないぶっつけ本番 だから、最終判断はサヤさんに任せます」


「一体 どんな 方法なの?」


「サヤさんが俺の魔力を使って治療するんです」


聞いたサヤさんは落胆の色を隠せなかった。


「だから、大きな魔力が要るって言ってるでしょ。あなたの魔力はマリアさんより小さいじゃない!」


俺は魔力を解放し マリアの倍ほどを引き出すと その魔力は すでに3賢人をも 凌駕している。魔力を敏感に感じ取った サヤさんは驚き固まった。


「あ、あなた いったい!?だけど、人の魔力なんか使ったことなんかないわ そもそも そんなこと 不可能だわ」


「2人の魔力の波長をあわせればできますよ。2人の波長があわなければ そもそも治療はできない。治療中に 波長が乱れれば 失敗してお母さんは 苦しんだ上に・・・・どうしますか?」


これは 人体実験にも等しい行為だ。倫理的には許されるはずもないが サヤさんは じっと 考えた。5分がたち 10分がたち 気がつけば30分も経っていた。その間 俺やマリアにシオンさんは ただ、彼女を見守った。彼女は顔を上げ 力のこもった視線で俺を見つめ


「ナオキさん 手伝って!お願いします」


「やりましょう。2人でお母さんを助けましょう」





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