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勇者と姫のそれから  作者: べるこさん
第1章 異世界編
28/135

028

「あなた、スズに何をしたの!」


慌てて ジンさんは 俺と サヤと呼ばれる女性の間に割り込む。


「サヤ 落ち着け。この方が 1人で森に入って魔物に襲われたスズを助けてくれたのだ」


「えっ?森に 1人で?わ、私・・・ごめんなさい とにかく 怪我の状態を見ます。中に運んでもらえますか?」


「わかりました」


答え中に入ろうとすると ジンさんは


「ナオキ殿 悪いが 私はここで 戻ります。例の盗賊の取り調べもありますし 長く詰所をあけれませんので」


「あっ はい。ありがとうございました」


「いや こちらこそ。感謝します。スズを救ってくれて ありがとうございました」


ジンさんは 深々と礼をした後 戻っていった。家に入り 奥に進むと 診察室のような部屋になっていて 消毒薬や医薬品の匂いがし元の世界の病院と変わらない雰囲気だった。


「そこの台に 寝かせてもらえますか」


サヤさんに 言われるまま 治療台の上に そっと スズをおろし 寝かせる。彼女は すぐに 服が破れている 胸の辺りを確認し 次に 同じように破れている 左腕の部分を 確認した。


「可哀想に・・・肩から肘にかけて 切り裂かれたのね・・・痛かったでしょうに・・・」


辛そうな表情のまま 俺のほうへ振り向き


「この子は スズと言い 私は 姉の サヤと申します。えーと あなた お名前は?」


「ナオキです。後ろの2人は マリアと シオンと言います」


いままで 事態を見守ることしかできなかった2人は 小さく頭を下げた。


「ナオキさん ありがとう 治療は完璧です。 状況を詳しく 教えてもらっていいかしら?」


頷き あの惨状を思い出しながら話し始める。


「俺が 駆けつけたときには すでに スズちゃんは 倒れ かなりの出血がありました。魔物はすぐに 退治したのですが、その魔物が スズちゃんに とどめをさそうとしてたことと まだ 体温が十分あったことを考えると 後 10秒でも早くその場に着いていれば こんな怪我などせずに済んだのに・・・・すみませんでした・・・」


「謝らないでください。別に ナオキさんが 悪いわけではないです。それより、続きをお願いします」


「治療魔法と回復魔法で傷を塞ぎ 増血もしたのですが 出血のショックからか 心臓も呼吸も止まっていたので 人工呼吸と心臓マッサージ 後は 電撃を与えて 約1分ほどで 蘇生しました。」


「本当に ありがとう!完璧な対応です。襲われてからの時間を考えても その短時間で蘇生できたのなら おそらく 後遺症も残らないでしょう。ところで、聞きたいのだけど 心臓マッサージと人工呼吸はわかるのだけど 電撃と言うのは?」


「それは 俺が居た せかい・・・俺が住んでいたところでは 電撃を与えて 蘇生すると言う方法があったので」


「なるほど・・・まだまだ 私の知らない 治療法があると言うことね」


「俺も聞きたいのですが・・・傷の痕が残らないように 綺麗に再生したつもりなんですが よく 傷の場所がわかりましたね?」


「こう見えても 私は医者よ。再生したところは 触ればわかるわよ」


サヤは少し自慢げに答えた後 深々と頭を下げる。


「とにかく、本当にありがとう。スズが助かったのはナオキさんのおかげよ。後は早く意識が戻ってくれらばいいのだけど」


スズの方へ向き直り 血で固まってしまった髪ではあるが それでも優しく いとおしそうに 撫でている。声をかけ 頭や体を撫で そんなことを続けていると スズは ようやく目を開けた。その場に居た 皆は安心したのだが ゆっくり上半身を起こし まだ虚ろな目をしていたスズは 次第に記憶が甦ったのか


「あ、あ、こ、来ないで・・・ま、魔物・・・来ないで・・・い、い、いやーーー!」


座ったままのスズはその体勢まま後退り 治療台から落ちそうになる。 慌てたサヤはスズの顔を両手で挟み無理矢理に自分の方を向かし


「スズ 落ち着いて!姉さんよ!ここは家なの!良く見なさい!!スズ!」


大きな声で 妹の名を呼び続け スズは顔を動かすことができないので 目だけで 何度も姉の顔と周囲の様子を確認した。自分がどこにいるのか理解したスズは安堵の表情を浮かべながら


「お姉ちゃん?お姉ちゃんなの?お姉ちゃん!お姉ちゃん!お姉ちゃん・・・・・・・・・・」


姉の胸の中で泣き、サヤもそんな妹を優しく抱き締めた。一頻り泣いた後 少しは話ができるかと判断したサヤは


「もう 大丈夫だから」


「うん」


「スズ、そこのお兄さん。ナオキさんて言うのだけど ナオキさんがあなたを助けここまで 運んでくれたのよ。ちゃんと お礼を言いなさい」


まだ、涙目で鼻声であったが それでも精一杯 大きな声で


「お兄ちゃん ありがとう!」


「無事で良かったよ」


スズちゃんの言葉を聞き 一安心できた。サヤは表情を引き締めスズに向き直る。


「スズ どうして森なんかに入ったの?」


「・・・・・・」


スズちゃんは 目を伏せ黙ってしまった。


「スズ!警備隊のジンさんや 町のみんなもあなたのことを一生懸命 探してくれたのよ。ちゃんとおっしゃい!」


「町で・・・森の奥にある湧水が・・・どんな病気でも治るって 聞いたから・・・」


「なっ!・・・・・・そんなの 迷信 嘘に決まってるじゃない!そんな物で 病気が治るわけがないでしょ!」


俺 マリア シオンさんは サヤさんの動揺した様子に 少々 驚く。


「だって・・・パン屋のお婆ちゃんと お客さんが話してるの スズ 聞いたんだもん」


「だから、そんなのは・・・」


何か言おうとしたサヤさんを スズは きつく睨み 言葉を遮った。


「だって!お姉ちゃんが お母さんのこと 治してくれないから 私が直してあげるんだもん」


「私だって・・・お姉ちゃんだって 一生懸命・・・」


「嘘だもん!お姉ちゃんは お母さんのこと嫌いだから お母さんのこと 治してくれないんでしょ!」


パシィィィーーー


部屋の中に 乾いた音が響いた。サヤさんは スズを叩いたのだ。


「バカ!そんなわけないでしょ!」


マリアは たまらず声をかけた。


「サヤさん 何も叩かなくても スズちゃんも お母さんが心配だったのでしょう」


「あなたは 黙っていてください!」


マリアは一蹴され 黙ってしまった。


「だったら 早く お母さんのこと治してよ!町の患者さんは いつもすぐに 治すじゃない。同じように お母さんのことも 治してよ・・・・」


また、サヤさんは 手を振り上げ それを見たスズは 身を硬くした。さすがに 俺も見かねて 声をかける。 「サヤさん・・・」 彼女は 静かに振り上げた手を下ろした。


「お姉ちゃんのバカ・・・バカ・・・ううう・・・」


スズは また俯き 泣いてしまった。


「スズ あなた 体も髪も 血だらけだから お風呂に入ってきなさい。ナオキさん 悪いのだけど スズと一緒に 入ってもらえないかしら?あなたも 血だらけですし」


俺は サヤさんに 向かい 小さく頷いた。


「さあ スズちゃん お風呂に行こう。案内してくれるかな?」


スズちゃんと2人で風呂に入ることになった。洗い場で髪や体を洗ってやるが 血が固まり 特に髪を洗うのが大変だった。スズちゃんが小さな手で懸命に俺の背中を洗ってくれる様子は 妹の姿と重なり ガキの頃 妹と一緒に風呂に入った事を思い出させた。一通り洗い終わり スズちゃんを膝の上に乗せ 湯船に浸かる。


「お兄ちゃん どうしたの?」


俺が物思いに耽っていると スズちゃんは聞いてきた。


「昔はこうやって妹とお風呂に入ったなと思い出してたんだ」


「もう一緒にお風呂 入らないの?」


スズちゃんの純粋な疑問に苦笑いを浮かべてしまった。俺が この世界に来たとき 妹とは14歳の中2 さすがに 一緒に風呂に入ろうと誘ったら殴られそうだ。


「もう 一緒にお風呂に入る年じゃないしね。それに 俺 1人で遠くまで来ちゃったから もう 会えないかもしれないんだ」


「えっ?もう会えないの?お父さんもお母さんも?」


「うん。そうだね。もう一度 会えるように 今 頑張っているんだけどね」


「お兄ちゃん 寂しくないの?」


「たくさん 友達もできたから 平気だけど やっぱり 寂しいかな・・・」


「だったらね スズがお兄ちゃんの妹になってあげるよ」


「スズちゃん・・・。ありがとう とても嬉しいよ」


スズちゃんは 笑顔は天使のように見えた。この世界の人達は 皆 とても優しい。会う人、会う人とても良くしてくれる。まあ ペレスのような例外もあるが・・・。だからこそ この世界の人達のために 俺は元の世界に帰らなければならない。いや・・・それは この世界の人達の優しさを言い訳にしてるだけか。マリアやシオンさん 俺が大切にしている人達を失うのが嫌なだけなんだ。


一人は嫌だ。


一人は辛い。


一人は寂しい。


また、一人になるのが怖いのだ。また、あんな思いをするのが怖いだけなのだ。だから、だから、スズちゃんには・・・。


「お母さん 病気なの?」


「・・・うん」


「お兄ちゃん わたしの手をきれいに治してくれたけど お医者様なの?お母さん 治せない?」


「ごめん、俺は医者じゃないんだ。怪我は治せるけど病気は治せないんだ」


「お姉ちゃん お母さんのことが嫌いだから 治してくれないの」


スズちゃんは 悲しそうな表情で言った。


「スズちゃん その事なんだけど サヤさんは お姉ちゃんは お母さんのこと 嫌いじゃないと思うよ」


「だって、近所のおばさんたちが そんな話をしてるの聞いたんだもん」


「じゃあ お姉ちゃんが 嫌いって言った訳じゃないんだろ?」


「そうだけど・・・・」


「だったら、どうしてお母さんを治してくれないの?お姉ちゃん すごいお医者様なんだよ!遠くの町から お姉ちゃんに診て欲しくて 来る人もいるんだよ!」


「家族ってね、何があっても嫌いになったりしないんだよ。スズちゃんはお姉ちゃんのこと 嫌いになれるかい?」


「なれないと思う」


「だったらね、お姉ちゃんと いっぱい お話してごらん。お姉ちゃんの気持ち ちゃんと 聞いてごらん。スズちゃんには、まだ難しい話かもしれないけど お姉ちゃんもスズちゃんのこと好きだから わかるまで ちゃんとお話してくれるよ」


スズちゃんは「わかった!」と言ってくれた。実際、どこまで俺の言った事を理解したのかはわからない。だけど、家族ですれ違いなんて 寂しいじゃないか・・・一人は寂しいんだよ・・・。




スズとナオキが 風呂に行ったあと サヤは血で汚れた治療台や廊下の掃除を始めた。


「私達も手伝います」


マリアとシオンは申し出た。


「ありがとう。じゃあ そっちの廊下をお願い。この薬をつけて拭いたら簡単に取れるから」


掃除も終わり リビングに通された2人。居心地が悪そうにしていると


「お客様に 掃除まで手伝わせて ごめんなさいね。今 お茶を淹れるから そこに座ってて」


促されるまま ソファーに座り 少し待つと とてもいい香りのお茶を 運んできた。


「いい香りでしょ?私が王都に居たときに買った 取って置きのお茶なの」


3人でまったり お茶をしていたが マリアとシオンは目をあわせ 意を決したマリアは問い掛ける。


「サヤさん 先程の・・・」


言いかけたマリアだが サヤは


「あっ、さっきは ごめんなさい。気が立っていたから」


「お母様が ご病気なのですか?」


「ええ・・・母さんは・・・もう・・・長くないの・・・・・」


サヤは震える声で答えたのだった。


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