025
転移で モニリの町に戻り少し買い物を済ませ
宿の近くの風呂へと向かう。
この世界の風呂文化は 日本と遜色がない。
温泉もあるし 温泉の出ない所でも 魔法で水を生成し
魔法で湯を沸かす。
そして 何よりこの世界の住人は風呂が好きなのだ。
こんな逸話がある。
ある国で 魔王軍との戦闘が激化し 物資不足が進んだ。
風呂屋は 毎日 24時間 水を出し 湯を沸かす魔道具を
使っているため 魔力供給には オリハルコン
とまではいかないものの それなりに 希少性の高い
素材が使われている。 国はそれに目を付け 素材の
供出を求めたのだ。
しかし、それを知った町の人たちは 反対の声を上げ
次第に 暴動になりかけたのだ。慌てた国は すぐさま
要求を取り下げた と言うことがあったらしいのだ。
そして、俺も日本人として 風呂をこよなく愛している。
俺達は 風呂屋に着き 入口で3人分の料金を払い
中に入る。すぐに 大きな広間があり
そこには 売店もある。 軽食や冷たい飲物などが
売られ 奥の方には 本格的な食堂もある。
造りは 日本のスーパー銭湯と変わらない。
俺達は 風呂には直行せず 広間のすみに陣取り
ここに来るまでに買った 色鮮やかな 細い組紐を
取りだし机の上に置く。
「2人とも 呪符を出して」
2人から 呪符を受けとるが・・・生暖かい。
この呪符は 今まで 美女の柔らかな胸に挟まれていた。
・・・誰も居なければ 頬擦りしたい・・・匂いを・・・!
「ナオキ様?」
呪符をじっと見つめ 妄想の世界に入り込んでいたが
マリアの声で現実に引き戻される。
「どうなされたのですか?」
「な、何でもないよ。アハハハ」
俺って 誤魔化すの下手だよな・・・。
手渡された呪符も机に置き 手荷物から 1枚 取り出し
消費したシオンさんの分を補充する。
「何をなさるのですか?」
「まあ 見てて」
2枚を重ね1組にし 魔力を込めながら 紙縒りを
作ってゆく。出来上がった紙縒りを 先ほどの
組紐に 巻きつけ 再度 魔力を込めながら
モミモミしていくと あら不思議!
紙縒りと組紐は融合していった。
同じ要領で もう1つ作った。
「できた!」
「これは?」
「ミサンガかな?これを手首か足首に巻いておいたら お風呂で・・・その・・・はだかになっても大丈夫だろ?」
ついつい 2人の胸の当たりを凝視してしまった。
「ナオキ様 何か 想像していますよね?」
マリアはジト目で見つめてくる。
「そんなことないよ。2人の安全を考えてだな・・・」
「はいはい わかりました」
「まあ 俺から2人への 初めての贈り物ってことで!・・・・・・・ん?」
シオンさんは嬉しそうに
「ナオキ様からの贈り物・・・ありがとうございます!」
マリアも 俺と同じく何か引っかかっている様子だが
「・・・・・?ありがとうございます」
ちなみに 俺は言ってから 思い出した。
『そう言えば マグカップ買ったのに ペレスの件とかあって すっかり忘れてるや・・・
まあ アンナも増えたし 買い足してから まとめて渡すか』
「ところで やっぱ 手首に巻くのは まずいよね?」
マリアは
「そうですか?問題ないと思いますが?」
しかし さすがの常識人のシオンさんは
「ナオキ様の贈り物ですし そうでなくても 素敵なものとは思いますが さすがに王宮のお客様に対し 見えるところに付けるのは・・・」
「だよね?それじゃあ 足首にしようか?」
マリアは 椅子に座ったまま 足を俺に向けて突き出し
「では 足首で我慢いたしますが ナオキ様が 付けてください」
小さく溜息をつき マリアの前に 跪く
ズボンと言うか こういうのパンツルックって言うのかな?
スカートだったらと 下心を持ちながらも ズボンの
裾を少し上げると そこには な、生足・・・。
これはこれで なんか たまりません。
鼓動が早くなり 肌に触れるのすら躊躇う。
「ナオキ様 早くしてください。この体勢 かなり辛いのですが?」
マリアは頬を染め 恥ずかしそうに言うが
やらされている俺のほうが 真っ赤だろうし 恥ずかしい。
恐る恐る 足首に ミサンガを巻くが 指が肌に触れると
マリアはピクンとする。
「ごめん」
「いえ いいのです。続けてください」
なんとか 結び終えるが たかが 紐を足首に巻くだけなのに
汗だくです。疲れた・・・。
が、今度は違う方向から 足が差し出されてくる。
「ナオキ様 私もお願いします・・・」
シオンさん。そんな恥じらいながら 上目遣いで お願いしないでください。
たまりませんよ・・・。
ようやく 2人にミサンガを巻き終え
「さあ 風呂にしよう」
「そうですね。ナオキ様は 魔物と戦っても 顔色も変えず 汗すらかかないのに 今は汗だくですからね。早く 汗を流しませんと」
マリアの言葉に マリアとシオンさんは目を合わせ クスクス笑い出した。
「はあーーーー・・・・」
ナオキと別れ 脱衣場に入る。
すぐにシオンは
「今更なのですが この様な庶民の風呂にマリア様が入ってもよろしいのでしょうか?」
マリアは呆れ顔になりながら
「本当に今更ですね。身分を隠しているのだから ここに入るのは当然ですし 民の暮らしぶりを知るのも悪いことではないでしょう」
少し間を置き 鋭い目付きに変わり いい放つ。
「何より 町のお風呂は 王宮の物より 大きく広いと聞いています。私は それが楽しみで 早く入りたいのです。シオン 急ぎなさい!」
やはりマリアもこの世界の人間であり 多分に漏れず
風呂が好きなのだ。
子供の様に はしゃぎ 浴室に向かうマリア。
「走っては 滑りますよ」
「キャッ・・・・危うく 転ぶとこでした」
照れながら言うマリアに対し 一国の王女なのにと
呆れるシオンさんだった。
洗い場で2人 並び座る。
「シオン 後ろを向きなさい。背中を流してあげるわ」
「何を仰ってるのですか!マリア様にそのようなこと、畏れ多いです」
「私は、自分の命を助けてくれたものへ心を開けないほど狭量ではありませんよ」
「ですが、王家に忠誠を誓ったものが 命にかけて姫をお守りするのは当然の勤めかと」
「それでもです・・・が・・・・。私は・・・私は・・・シオンにお願いがあります」
マリアの言葉に戸惑いながら
「お願いだなんて。何なりとお申し付けいただければ」
マリアは 不安そうな表情だが 視線は決意に満ち シオンからはなさい。
「シオン!その・・・あの時 私を助けてくれた時の あなたのナオキ様への 私への気持ち 思いが痛いほど伝わってきました。そして あなたは私のことも あの・・・その・・・好きだといってくれました。・・・私も・・・私も・・・あなたのことは 好きなんだと思います。でも 正直 よくわからないのです。自分の気持ちも あなたのことも・・・だから だから・・・あなたのことを もっと知りたい・・・だから・・・・だから・・・・・・」
マリアは 詰まりながら しどろもどろになりながらも 必死に 自分の気持ちを
シオンに伝えようとしている。シオンもそれがわかるので マリアが 言い終わるまで
ただ じっと 待った。
「だから・・・・」
「だから・・・・その・・・・・」
「私と 私の友となってもらえないでしょうか?」
何を言うのか 待ち続けたシオンだが 発せられた言葉に 驚き戸惑う。
一国の王女が友達になって欲しいと言うのだから 当然だ。
マリアの真剣な眼差しに篭った 思いは それこそ 痛いほど伝わった。
『だけど・・・どうすれば・・・でも 私だってマリア様のことは好きだ。それに 同じ人を愛してしまった ライバルであり同士でもある・・・』
シオンは 決心が付かない。
「マリア様・・・その私などが・・・」
「違うわ!シオン あなただからこそなの」
そう言って マリアは手を差し出す。
「誰にでも こんなことは言わないわ。シオンだからこそ 言うの」
シオンはもう マリアの眼差しから目を逸らすことなどできなくなっていた。
『決心など付かない。どうしていいかもわからない。それでも 私は・・・』
そっと でも 力強く マリアの手を握り返した。
「シオン ありがとう。これからも よろしくね」
「その どうしていいかは わかりませんが よろしくお願いします」
「それじゃあ 背中を流しましょう。後ろを向いて 後で私のも お願いね」
シオンは 言われるがまま 後ろを向き マリアに背中を洗ってもらう。
「でも シオン。これだけは 言っておくわ」
「はい?」
「友達になったからといって 譲ったり 手を抜いたりはしませんわよ」
マリアが何を言おうとしてるのは 察しがつく。そしてシオンは
「私だって 姫様に 負けません」
振り返り マリアに向かって 宣言した。
しばし 2人は見つけあい クスクスと 笑いあった。




