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何処に 戻ろうか一瞬悩んだが 人に見られない場所と言う事で 生徒会長室に転移した。
「出雲さん!!」
名前を呼ぶと 出雲さんは 徐に席を立つと 俺のそばまで来て
ぱしぃぃぃーーーーーーっ!
小気味好い音を響かせ 手にもった書類で俺の頭をはたいて 一喝!
「何をやっている!人に見られたらどうするんだ!!」
「人に見られないようにと思って ここに出たんですが・・・・」
「お前はアホかっ!ここは 一般生徒が来ることもあるのだぞ!」
呆れた顔と声で 言われた言葉はまさにその通りで 返すこと言葉もない。
だけど・・・・
だって、日曜だし そもそもこの部屋には結構来てるけど 他の生徒なんか居たことなんてないじゃん!
と、心の中では抗議しつつも 素直に謝辞は伝えた。
「以後 気を付けます」
「まったく・・・・で、今度は何の用だ?」
「ああ、そうだ!ジェネレーターに詳しい人を紹介してもらえませんか?」
「それは、白鶴の修理と関係あるのか?」
「はい」
俺の返事を聞いた瞬間 手元にあったメモに何かを書いて 机の上を滑らした。
「すぐにそこへ行け!何なら魔法を使ってもいいぞ!」
って 出雲さん・・・・さっきと言ってることが違うのですが?本当に出雲さんの 自分の欲求には素直に 手段を選ばず 即決できるところは 羨ましく思える。
「あと、修理と言うか 作り替えることになるのでは白鶴では なくなってしまうのですが」
「それは、やむを得まい。修理もできず 折れたままでは 役にはたたないしな」
踊子さんの気持ちもあるだろうが 出雲さんの言う通りだろう。
そして、メモを手に取り 見ると 驚いたと言うか 納得できたと言うか・・・・。
さすがに 転移魔法は使わず歩いて学校を出て家の方に向かうが 家に帰るわけではない。向かったのは いつかの骨董品店、相変わらず不用心で 店には誰も居ない。店内に入り声をかけると 気だるそうに 頭をかきながら 望さんが出てきた。
「やあ、久しぶりだね。また、掘り出し物でもあったかい?」
「もしかして 望さんはWWAの人なんですか?」
俺の質問に望さんは一瞬だが ピクリとするが、それでもすぐに 立て直し 面倒そうに答えた。
「そうだが、どうしてそれを?
ああ、さっき出雲君から 連絡のあった 客とは君のことか。兎に角 この話は ここでは まずいので 奥に行きましょう」
望さんに連れられ店の奥に入ると そこは 普通の民家の普通の茶の間があった。冬なら こたつに みかん そして三毛猫が、似合いそうな感じだ。
「まあ、楽にして」
言われるがまま ちゃぶ台の前に座り しばらくすると 湯気のたった湯飲みをお盆に乗せた望さんが戻ってきた。
マッタリと日本茶をすする。
美味い!
って 和んでる場合でもない・・・・。
「ところで 望さんは どうして こんな って言ったら失礼ですが こんな店をしてるのですか?」
「そうね。予想は付いてるのでしょうけど 古い物にはたまに 魔力を有してる物があるのよ。そう言った物を 買い取って WWAの研究所に送るのよ」
「それじゃあ 俺の指輪も?」
「そうね。あれは 素晴らしかったわ!私も見た時 興奮しちゃったもの。ハッキリ言って オーパーツ級の指輪だったわ」
「・・・・いや あれ そんな大した物じゃ」
もし言葉で書くなら (汗) みたいな感じだ。向こうの世界じゃ 何軒かお店を回れば 見つけることのできる程度の物なんだけど。
「あっ ちなみに あの指輪には 体力回復の術式が刻まれてるので 魔力を持つ人が身に付ければ 疲労回復の効果があります」
2回 会っただけの人だが こんなに目をキラキラ・・・・いや ギラギラさせているのは始めて見た。いつも 気だるそうにしているから 尚の事 珍しく思える。
「その話 ちょっと 詳しく聞かせてくれるかな!」
ちゃぶ台に置いたお茶がこぼれそうな勢いで身を乗り出してきた。
「えっと・・・・その前に 俺の話を聞いてもらえます?」
「あー・・・・そうだったわね 何か 頼みごとがあるとか?」
面倒臭そうに 気だるそうに 聞かれた。落差が激し過ぎます。って言うか この人も出雲さんと同じタイプか。
「ジェネレーターを組み込んだ刀を作ってもらえませんか?」
「もしかして 出雲君が研究所に持ち込んだ 魔力を込める事のできる剣も 君が?」
「ええ」
「あの指輪といい あの剣といい 君は何者なの?」
「何者と言われましても 俺は地球人ですよ」
「ふざけてる?お姉さんも 怒る事くらいあるのよ?」
望さんの 探るような視線は 次第に 怒気が混じってきた。
「あの・・・・俺は 数年 異世界にいたので・・・・出雲さんから聞いてませんか?」
「聞いてないわね・・・・・まあ、いいわ。で、刀にジェネレーターを 仕込むのよね?難しいわね。あの剣の構造や素材には まだ分からないところが 多いのよ」
俺も詳しい事は知らなかったのだが 望さんの説明によると 構造は ある程度 判明したが、 素材については お手上げらしい。基本的に鉄でできているのだが そこに混ぜられている物質が この世界には存在しない未知の物だとか。
だけど この世界には無くても・・・・
「もし 仕組みに詳しい人がいて 素材が有れば 刀にジェネレーターを 組み込むことは?」
「それだけの条件が整えば できないわけがないわ」
「だったら、だったら一緒に来てくれませんか?
異世界に!」
その後の 望さんの行動は速かった。あっという間に 店じまいをして スーツケースによく分からない機械を詰め込み
「さあ 行くわよ!」
って・・・・いつも気だるそうに しているのに こんな アクティブな人だとは知らなかった。まあ、会ったのは今日で二度目なんだけど 漂わせている空気からは想像もできない。
望さんの家から 直接 ディディさんの工房へ飛ぶ。
「勇者様よ、せめて入口から入ってきてくれよ。驚くじゃねえか」
と、言いながらも まったく 驚いた様子はないが、後ろに居る望さんに気付くやいなや 後ずさるほど 驚く。
「そ、そちらの?」
ディディさんは 吃りながら 聞いてきた。
「こちらは、望さんです。えっと 俺の故郷から来てもらいました。こう見えても 刀や 魔力を補助する仕組みに詳しいのです」
見ると 望さんは ぼー と と言うより 頬を赤らめ ポー としている。
「で、こっちは ディディさんです。こんな熊みたいな顔してますが 実は優しくていい人です。って望さん? おーい? 望さん!」
「ああ、ごめんなさい。えっと わ、私は の、の、の、望です」
「これは、ご丁寧に。俺じゃなくて 私は ディディと申します」
なんか 見たことはないが お見合いってこんな 感じなんだろうな。ディディさんが照れるのは 分かる。望さんって 結構 美人だし。でも意外なのは 望さんの趣味って ディディさんみたいな感じの人なんだ。まあ、ディディさんは いい人だけど 外見でかなり損しているのに それが いいと言う人も・・・・蓼食う虫も・・・・って それ以上は 二人に失礼だから やめておこう。
「ところで、ここは本当に異世界なの?しかも 勇者様って?」
望さんは 俺の生暖かい視線に気付き 誤魔化すように 小声で尋ねてきた。
「俺 こっちで勇者してたから」
そして 異世界かどうかは外に出れば 分かりますと言いながら 望さんを連れ一旦 工房の外へ出た。ここは町外れの高台にあり 町が一望できる。
望さんは 息をのみ 一言
「・・・・凄い」
住民が 思いのままに作った町なので 区画整備されているわけでもなく 建物も 木造も有れば 石造り レンガ造りもある。道も石畳もあれば 砂利道もある 全く統一感はない。王都や領主が住む町は 綺麗に計画的に町作りされているが それ以外の町や村は大体 こんな感じだ。
「町の外に出たら 魔物も居ますよ」
「・・・・・魔物、興味は尽きないわね」
「あっ でも だからって 外に出たら駄目ですよ。命の保障はできませんし、出るなら 俺かディディさんと一緒でお願いします」
「そうね でも今はいいわ。それより 戻って刀の話をしましょう」
工房へ戻り ディディさんと望さんは 刀の修理について 話し出した。
どちらも 出会いの時とは裏腹に 職人の目になっている。
「この刀に使われている金属は・・・・・」
「それは 玉鋼と言って・・・・」
「なるほど・・・・・」
任せておいたほうが良いだろうと判断し 静かに工房を出る。
時間つぶしに 町の中を散策してみることにした。町の中は かなり活気があるものの 工房から見下ろしていたときには 分からなかったが まだまだ 復興の途中と言った感じだ。聞けば この町も 半分以上が 破壊され 焼かれたそうだが それでも 町の人たちは 「町が半分も残ってたんだから」 と前向きだったのが印象的だった。
しかも 「勇者様が魔王を倒してくれたからだ」と 言っているのが ちょっぴり 恥ずかしかった。
厳密に言うと そう言われて 照れていたら 「なんで お前さんが 照れてるんだ!」って 笑われたのが 恥ずかしかった・・・・。
どれくらいだろう?結構な時間をつぶし 工房へ戻ると 二人はまだ 何かやっている。
机の上に 大きな紙を広げ そこに何かを書き込んだり 線を引いたり・・・・
真剣に討論してる中 声をかけずらい雰囲気ではあるが そろそろ 戻らないと時間的に向こうはもう夜だ。
「望さん そろそろ 戻らないと」
「あー もう そんな時間なの・・・・?ねえ 相談なんだけど 私 このままここに残っても良いかしら?」
「えっ?」
「だって まだまだ 知りたいこともあるし 着たり戻ったりじゃ 時間が勿体無い。そんなんじゃ いつまでたっても 仕事が終わらないし」
「でも・・・・」
「ディディさん ここに泊めてもらっても・・・・・」
また 頬を赤らめ 上目使いで ディディさんを見詰める。
もしかして、刀は口実で そっちが・・・・?
ディディさんも まんざらではない様子で
「お、おお・・・・俺は構わないぜ。部屋も余ってるしな!」
こうして 望さんを 異世界に残したまま
二人に春が来る事を願いつつ 一人 地球に戻る事なった。




