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勇者と姫のそれから  作者: べるこさん
第1章 異世界編
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001


「よくぞ よくぞやってくれた!勇者 ナオキよ」


タラクシャ王は 俺が跪く前に 王座から立ち上がり 俺の前まで歩を進め


深々と頭をたれた後、手を取り何度も感謝の言葉を口にした。


この行為は 一国の王が臣下の前ですることではないが


その場にいる誰もが 異を唱えたり 不敬だと言うものはいなかった。


むしろ ウンウンと頷いたり 涙を浮かべている者すらいる。


そう、俺はこの世界の災厄とも言える 魔王を打ち滅ぼし この城へ戻ってきたのだ。


「勇者ナオキよ、タラクシャを いや、この大陸 この世界を代表し 礼を言わせてもらう。時に この功績に対し褒賞で答えたいのだが、まことに情けない話だが これほどの功績に対し 何で報いればよいのか まったく見当も付かん。

ありきたりで 申し訳ないのだが 爵位と領地 そして、我が娘 マリアをと思っている。」


周囲からどよめきが起こる。しかし、俺には ある思いがある。


「陛下 その褒賞 辞退させていただきたいと思います」


「ナオキよ、予の娘では 不服と申すか?」


俺の返答に、再度どよめきが起こり 王の怒気の混じった声で 静まり返る。


「いえ、陛下 私は 姫をお慕い申しております。マリア様は とても美しく 聡明で

お心もお優しい方です。姫を妻にできるならば 一生の自慢 喜びとなるでしょう」


王は 俺の言葉に満足したのか 怒気を押さえ 尋ねてきた。


「ならば 何故拒む?世界を救った英雄に対し 褒賞も与えぬのかと わが国は 他国より後ろ指を指されよう。よければ 理由を聞かせてはくれぬか?」


「陛下、私は勇者として この世界での役割は終わったと思っております。できる事ならば 元の世界へと戻り 家族や友人たちと再会したいのです。もし マリア様を妻に迎え 私が元の世界へと帰還すれば 未亡人も同然となり また 姫を同行し元の世界へと戻れば タラクシャとの 永遠の別れとなりましょう。どちらにしても 姫には辛い思いをさせることとなります。

領地についても 帰還の際には 捨てていかねばらず 領民に対して あまりに無責任なこととなると思います」


王はしばし 考え込み


「そなたの言い分は よくわかった。マリアや領民を思っての辞退だと言うのだな。では、

ナオキよ 他に何か望むことはないか?」


「では、陛下 帰還の方法についてこれから研究をしていきたいと思っていますので そのご助力を頂きたいです」


「うむ わかった。そもそもが 帰還の方法もなく無責任にこの世界へと呼び出したのは 我々だ。その願いを 拒むなど 恥知らずのすること。タラクシャ王の名に懸けて 全力でそなたの手助けをすることを約束しよう」


王の言葉を受け 広間に集まったものが 一斉に拍手喝采を送った。


「さすが、勇者殿!」

「なんと、誠実な!」

「うちの婿に!」


などなど 俺は自分の希望を口にしただけなのに 期せずして自分の評価を


上げてしまったようだ。


俺は 心の中で苦笑いをもらした。


「ナオキよ 欲しいものや やって欲しいことがあれば その都度 申せ。できる限りのことはしよう。褒美については 置くとして 今晩 そなたの労をねぎらい 祝宴を開きたいのじゃが、それには参加してもらえるな?」


「ありがとうございます。謹んで 参加させていただきます」


「何を申すか、そなたが主役じゃ ゆるりと 宴を楽しんでくれ。そなたも 戦いの疲れが残ってるであろう 準備ができるまで 自室にて 休んでくれ」


王は そう言うと 下がっていき 俺は 深々と頭を下げ 見送った。


周囲の者も同様に 王を見送り 王の姿が見えなくなると 一斉に俺を取り囲み 


賛辞の嵐を浴びせかけてきた。


30分ほど 揉みくちゃにされ さすがに 疲れてきたので 


「旅の疲れもございます。できれば 下がらせていただき 休息を取りたいと思うのですがよろしいでしょうか?」


との 俺の問いかけに 反対できる者もおらず なんとか その場を脱出した。


王城の中にある 俺にあてがわれた 一室。ベットに横たわり 召還されて以来


3年間のことを思い返していた。


俺は ごく普通の高校生だった。友人と帰宅途中 強い光に包まれたかと思った瞬間には


すでに この世界、この異世界に 召還されていた。


召還され しばらくの間は 実に情けなく まさに 醜態をさらしていた。


だってそうだろ?ごく普通の高校生に 魔王と戦って欲しいって 言われたって困る。


そもそも 武道はおろか 殴り合いの喧嘩をした経験すらないのにだ。


しかも 帰る方法すらないと聞かされ 拗ねていたのだ。


そんな俺を 救ってくれたのは マリア様だった。


出会った頃は マリア様も 14歳。妹と同じ年の 少女に救われたのだ。


姫は 優しく 慰めてくれ そして 俺にこの世界のことを教える先生にも


なってくれた。


姫のおかげで 一週間ほどで 立ち直り その後は 城で 剣技や魔法を習得し


半年がたったころには 世界に散らばったと言う 勇者の装備を見つける旅に出た。


世界中を回り 人々と出会い 人々の思いを知り 魔王を倒す決意を固め


先日 ついに 魔王と相見えた。


魔王との会話を 思い出し


決意する。


「俺は 絶対 元の世界に 帰るんだ。この世界のために 何より 俺 自身のために」





ナオキが 改めて 帰還への決意をしていた頃 城の別室に 3人の男が集まっていた。


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