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白 い 金 魚 。

作者:   影



3か月前から

金魚が水槽に5匹。


4匹は仲良く、赤い尾ひれを絡ませながら

まわり、まわって遊んでいる。

家族のように、同じ、赤い尾ひれだった。



1匹は、ひとり

海草の中で静かに時を待っていた。

白い尾ひれを水の揺れにゆだねながら。

苦痛を感じていた。


でも、いったい白い金魚は何を待っていたのか。


このつまらない毎日を終わらせてくれる、自分を見染めて

この水槽から出してくれる人間を待っていたのか。


それとも生まれ変わって、皆と一緒に遊べるような

あの赤い尾ひれが自分の尾ひれになることを待っていたのか。








次の日

白い金魚は、優しそうな少女に買われていった。

1匹だけ。


赤い金魚たちはなにも気に留めなかった。




白い金魚は、泣いた。




白い金魚は、前者だった。

早く、誰かに連れ出してほしかったのだ。

嬉しくて、泣いた。

これで、もう1匹じゃない。 もうひとりじゃない。 苦痛じゃない。







それから3日。

白い金魚はあっけなく死んだ。


赤い金魚たちといた水槽の中では、3カ月も生きていられたのに。


気づいてしまったのだ。ほんとは、

長い長い日々を大きな水槽の中で、1匹で過ごすことが

とてつもなくさびしいものだということを。



ほんとに、ほんとに1匹になってしまったことに気付いた。


白い金魚を買った少女の家は静かだった。

なにも聞こえなかった。

なにも。なにも。




静かさが1番、

白い金魚にとって苦痛だったのだ。







白い金魚は死ぬ直前に願った。



【ああ、わたしに赤い尾ひれがほしい。】





白い金魚は

後者だった。




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