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ニセモノのシルバーキャット  作者: ビーデシオン
第二話 彼を探して
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26 ツノイシ迎撃戦

 私も、両足でどっしりと構え、杖を握り直します。


「わかってると思うけど、敵は登り側。そして、下れば川沿いだから、逃げ道は無いわ。私は一人でなんとかできるから、剣士のあなたはカヤちゃんを守ってあげて」

「わかった!」

「カヤちゃんもその人からできるだけ離れないで。とにかく、ツノイシを迎え撃つわよ!」

「了解です!!」


 少し治ったとはいえ男の子は負傷していますから、逃げるよりも迎え撃つ方が良い。

 それも私と二人一組なら、大きな動きなしに戦えると、そういうことでしょう。

 即座に作戦を立案し、端的に説明する、やっぱり師匠はすごいです。


「来るわよ! 構えて!」

「地に沸き流れる恵みの魔力よ……!」


 だったら私は魔法の準備で返事をしましょう。

 使う魔法はグレイナー。私が「撃てる」二つの魔法のうち一つ!

 地鳴りが大きくなり、薄暗い木々の間からツノイシの群れが現れます!

 数は……5体! だったら……威力は抑え込まなくていい!


「今ここに戻り、水流を生め! グレイナー!」


 ドドドドッという重低音と共に、ツノイシにむけて濁流が放たれます。

 五体のうち一体に直撃したことを確認して、すぐさまとなりのツノイシに杖を向けます。

 水が弾ける音で、ツノイシの声は聞こえませんが、確かな手ごたえがあります。

 実際、濁流が止んだ瞬間、湿った地面の落ち葉と共に、ツノイシは坂を転がり落ちていきました。


「せああああ!」「うおおおお!」


 ツノイシが数歩先まで近付いたところで、師匠と男の子が動きます。

 師匠は杖を、男の子は直剣を腰に携えてツノイシに向け踏み込みます。

 二人とも、取った行動はほとんど同じ。武器をツノイシに向けた刺突でした。


 大きな違いは、男の子はそのまま直剣を突き込み、師匠は杖をツノイシの下方に向けた事でしょうか。

 結果として、男の子の方のツノイシは痙攣しながら沈黙し、師匠の方のツノイシは、顎を砕かれながら進路をそらされて、斜面を転がっていきました。


 しかし、ツノイシはまだ一体残っています。

 男の子は剣を突き込んでしまってますし、師匠も一体を転がし落としたばかり。

 だったら次は、私の出番です。

 買ったばかりの杖ですが、金属製ならきっと……


「私も……!」

「私がやるわ!」

「っ、はい!」


 師匠の一言で、私は冷静になります。

 そうだ、今のはあくまで第一陣。

 ツノイシの群れは、まだまだいるはずなのです。

 だったら私は、次の魔法を準備するべきでした。


「せらああ!」

「地に沸き流れる恵みの魔力よ……!」


 集中を乱さない範囲で、師匠の影を追ってみれば、宣言通り、最後のツノイシを処理してくれたことがわかりました。

 それが分かったなら、私の仕事は、よくよく狙いを定めること!

 上方に固まった影が見えて、私はそこに杖を向けます。


「今ここに戻り、水流を生め! グレイナー!」


 水流が噴出されると同時に、固まった影も鮮明になります。

 所狭しと固まった、三体のツノイシ。

 このコースなら直撃でしょう!


「危ないぞ!」

「えっ?」


 彼の声の意味を理解するのに、一秒。

 その一秒で、水流の直撃したツノイシたちは、落ちてきました。

 姿勢を崩して、転がって、私のすぐ目の前に向けて。


「許してくれ!」

「ぐうっ!」


 ツノイシに激突される直前で、側面から衝撃。

 咄嗟に行われた、男の子の突進。

 私は突き飛ばされて、斜面を転がります。

 ツノイシと同じように、滑落してしまいそうになったところで、身体の回転が止まり、腕を掴まれます。


「無事か!? 立ってくれ!」

「はい!」


 頭の帽子を抑えて立ち上がり、彼に返事をします。

 決して文句は言いません。

 突き飛ばしてでも、高速で迫るツノイシの身体を躱せなければ、危ないところでした。

 しかし、その代償は、痛みだけでは済まなかったようです。


「武器を失った! 離脱する!」

「了解! 殿(しんがり)は任せて!」

「援護します!」


 男の子は先ほど私を助けた際に、武器を落としてしまったようです。

 彼が離脱の判断をすると、師匠は即座に、背後を守ると約束してくれました。

 だったら私は、最初の指示通り、男の子の横に立って、護衛するべきでしょう。

 私たちは宣言通りに動き、斜面に沿って走ります。

 結論から言えば、師匠は完璧にツノイシを押さえ込んでくれていたようで、私たちは、ほとんど走ることだけに集中できました。


「見ての通り。師匠は信頼できる人ですよ」

「ハッ、あなたもなかなか、頼りになりそうだ」


 走りながら軽口をたたいてみると、彼は即座に答えてくれました。

 なかなか粋な回答です。でも、百点ではないですね。


「それは前回で、証明できたと思ってましたけど?」

「ははっ、それはそうだな」


 足を動かして、息を切らして、走っているのに、しまいにはこんな会話までして。

 師匠に聞かれていたら、ため息の一つでも貰ってしまいそうですが、いいのです。

 だって私、今ものすごく満たされた気持ちになっているのですから。

 冒険者になってから、ずっとあこがれていた、特別な存在。


 「仲間」と一緒に走りながら、お互いを認め合えているのですから。


          ◆◇◆◇◆

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