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ニセモノのシルバーキャット  作者: ビーデシオン
第二話 彼を探して
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22 角の生えたイノシシ

 あの銀髪の女性と別れ、海岸から歩き始めて、今日で六日ほどか。

 随分歩いているが、未だ人の気配はない。


 反対に、獣の痕跡は増えて、道も険しくなってきた。地形も、山岳のように起伏のあるものになっている。

 川沿いの道は不安定で危険かつ、生き物も集まるため、しばらくは斜面の上の方、比較的足場の安定した場所を進むべきだろう。


 実際、今日の昼間には、川沿いで一体の獣と戦闘になった。

 そいつは随分と大きなツノの生えたイノシシで、目が合った瞬間興奮した様子で襲い掛かってきた。

 幸い、単純な突進をしてきた脳天に剣を叩き込み、仕留めることはできたが、一撃でなければ、どうなっていたかわからない。

 あの興奮具合では、喉や背中を叩いた程度では、その場で暴れだしていた可能性もある。


 返り血を浴びてしまったのも良くない。剣についてしまったものは、川の流れで流すことができたが、衣服にこびりついた方は、まだ完全には洗い落とせていない。


 まあ、川魚や木の実に代わる食料が手に入ったのはいいことなのだが、血抜きの方法などは覚えていない(あるいは知らない)ので、随分と獣臭い肉になってしまった。


 日持ちもしなさそうなので、肉の大半はその場に埋めてしまっているし、焼いて持ち歩いているものも、今晩中には食べきってしまった方が良いだろう。

 もろもろの匂いで、この辺りをうろつく獣が増えていなければいいのだが……


「そろそろ、火を焚くか……」


 誰に聞かせるでもなく、自分の思考の整理のため、声に出してみる。

 実際、日は落ち始めているし、ちょうど良い時間にも思える。

 今の足場は安定しているし、薪になりそうな植物もある。

 準備ができるうちに拠点を構えて、夜に備えることにしようか。


『カラカラ』


 小石が転がるような音、向きは上の斜面。

 声は上げずに済んだが、この場は開けている。

 剣に手をかけて振り向く。


「ギュオオオオッ!!」

「くそっ!!」


 気づかれてる! しかも鳴かれた!

 仲間を呼ぶ声か、威嚇かはわからないが、どちらにせよ、敵意の現れには間違いない。

 その証拠に、少し上の斜面に止まったツノイノシシは、酷く興奮した様子でこちらを見据えている。


 どうする? 逃げるか?

 いや、下の方に比べれば足場が安定しているから、わざわざもっと不利な場所に行くこともないか?

 逃げるにはリスクがありすぎる、しかし、攻勢に出るにも、上方を取られていては不利……だったら、待っていた方が良い。


 安定した地面に体重を預けて、右肩にどっしりと剣を構える。

 さあ、突進して来い。一度できたんだ。今度も勢いを逆手にとって、一撃で仕留めてやる。


「ぐっ!?」


 瞬間、ツノイノシシが二頭に増えた。

 茂みから飛び出して、もう一頭と同時に突っ込んできた。

 それだけのこと。動揺してはいけない。剣と身体、その両方で対処すればいい!


「うらあ!!」


 先に突っ込んできた一頭の側頭目掛けて剣を振る。

 左足を抜きながらイノシシの側頭を叩き、右足を軸に、止まった剣の反動を利用して身体を回転させる。


 後からきた一頭が剣の刺さった一頭に激突し、左脇を転がっていく。

 衝撃で剣を持っていかれそうになるが、右足の側面と左の踵で地面を削りながら耐え、剣を抜き切る。」


「ぐぅっ……!」


 しかしいよいよ耐えられず、俺の身体も仰向けに倒れる。

 足を開き、右手を付いて身を起こす。

 相手の方は、斜面ギリギリの低木に二頭まとめて引っかかっている。

 横倒しの状態で、立ち上がれずにいるようだ。


「うおおおらあ!!」


 すぐさま追撃するべく、突進する。

 まだ動いていて、起き上がろうとしている、手前側のイノシシの首元目掛け、剣を振り下ろす。

 上手く柔らかいところに入ったらしく、イノシシは断末魔もあげないまま、震えた後に大人しくなった。

 おそらく、仕留めた……はずだが!


「グギャアア!!」「うあっ!?」


 仕留めたはずのイノシシが動き出した。

 いや、仕留めたイノシシの下敷きになっていた、側頭を叩き割ったはずのイノシシが暴れているのか。

 さっきの攻撃で、気絶していただけだったようだ。

 振り下ろした剣はすぐには抜けない。

 今すぐ剣を手放し


「があっ!!」


 俺の身体が跳ね飛ばされた。ツノで跳ね上げでもしたのか?

 剣は持っていない……斜面スレスレに落ちた、イノシシの身体に刺さったままだ!


「ギュオオオオッ!!」

「クソっ!」


 イノシシがこっちに来る。

 剣の刺さった死骸を押しのけて進んでくる。

 地面は安定している。

 身体さえ起こせれば、十分に躱せる!

 転がりまわるように躱す、躱した!

 両手を付いて剣に向けて走れ!

 死骸に向け走って、剣を掴め!

 そのまま抜け!


「ギュオオオオッ!!」


 振り返れ! 剣を横にするだけでいい!

 後ろが斜面でも関係ない!

 刃をイノシシに向けろ!

 そうして、構えろ!!


「ああああああああっ!!」


          ◆◇◆◇◆

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