03. 疎外感?
「オーガスタ、生徒会関連の相談がしたいんだけど、お昼を食べながらどう?」
「おっ! あれか? あれだな?」
「そうそう。あれ」
偵察に巻き込むべく、セラフィが騎士団長の息子・オーガスタに声をかけると、即座に陰の任務の件だと察したオーガスタは声を弾ませた。
「了解! 食堂…じゃないよな? 持ち運べるもの買った方がいいよな?」
「ううん、オーガスタの分も用意してあるから大丈夫」
「いいのか? 俺めっちゃ食うけど」
「だと思って、めっちゃ持ってきたの」
「おお~ありがとう! 楽しみ!」
書記・オーガスタはわかりやすく脳筋設定なので、真っ直ぐで裏表がない。簡単に表情に出てしまうのは貴族の子息という意味ではマイナスポイントなのかもしれないが、こんな風に全開の笑みでお礼を言って貰えたら素直に嬉しい。変にややこしいキャラにしなかった前世の自分に賞賛を贈りたい。
そこに、ポツリと小さな呟きが落ちてくる。
「…二人で一緒に昼食を摂るの…?」
セラフィが声の方に振り向くと、すぐ目の前に、生徒会長・リーンハルトの姿があった。
「任務の一環だってことは分かってるんだけど、普通に楽しそうだね。何だか羨ましいな」
リーンハルトは、寂しそうな笑顔を浮かべている。
リーンハルトも、セラフィやオーガスタと同じ第一学年。現生徒会の役員構成は、第二学年が二人、第一学年が三人なので、リーンハルトだけ仲間外れにされているように感じているのかもしれない。
セラフィとしては、ただただこの茶番間違いなしな事態からリーンハルトを遠ざけたいだけであって、オーガスタとのランチそのものに拘りがあるわけではない。
不自然さを感じさせずに男爵令嬢・ミーナの側に陣取る方法が、ランチくらいしか思いつかなかっただけのことに過ぎない。
まだ偵察もさわりの段階なので、名乗りやキメポーズの出番は当分先のことと考えていいだろう。今のうちであれば、リーンハルトが大惨事に巻き込まれる可能性は相当低いはず。
核心に迫る前までの間に、リーンハルトにもちょこちょこと携わってもらって、疎外感を払拭してもらっておいた方が、万が一にも戦隊ヒーローもどきの扮装をしなきゃならない事態に陥ったとしても、リーンハルトが我先に飛び出していくような事態は回避できるかもしれない。
そう考えたセラフィは、恐る恐るリーンハルトに声をかけてみた。
「あの…、もしよろしければ、会長もご一緒にいかがですか…?」
「ありがとう是非!」
リーンハルトは秒で食いついた。
王族が口にするものは基本的に毒見が必要になるはずだが、急には担当者の手配などが難しいように思うので、セラフィ的には完全にダメモトのつもりだったのだが…。
これは相当寂しい思いをさせてしまっていたってことなんだろう。
自分が居たたまれなさから逃れたいばかりに、何の非もないリーンハルトに申し訳ないことをしてしまった。
いい加減な世界観とはいえ、前世のセラフィが描写していない部分も含めて世界は回っている。書いてないからといって、何も考えていないわけでも感じていないわけでもなく、人にはそれぞれの思いがある。
セラフィは、絵に描いたような『ザ・王子様』なリーンハルトにだって、ちゃんと意思があり感情があるってことを、改めて実感したような気がした。
今話は、第2話から切り出したため短めです。
第2話内で、場面転換が複数回あるのは散漫かなあと思いまして…。
さすがに短かすぎるので、本日はもう1話公開予定です。