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ほら吹き地蔵 第一夜 子どもを守る仏さま

【お断わり】今回は三題噺ではありません。


ボクのうちの裏庭に、お地蔵さんが引っ越して来ました。


そこに至る込み入った事情は、なにぶん狭い田舎では差し障りもあり、ここは一つ「石の地蔵さんに足が生えて歩いて来た」と言う事と致したい。

まあ、仏さんの縁起ものですから野暮は言いっこなしと言うことで。

ありがたや、ありがたや。


**********


さて、お地蔵さんをお迎えした第一夜、七人の子どもたちがボクの夢枕に立ちました。

そのうち四人は、ひと目で分かる病気の子でした。


一人目は慢性の扁桃腺炎もちだと言いました。いわく、

「微熱はいつでもグチュグチュと、腰まで浸かる水みたいにボクと共にあるけど、なあに、大した事ないよ。怖いのは土用波みたいに、一度にドンと来る高熱だ。そうならないのはお地蔵さんが守ってくれてるからだ。それよりも、ボクの隣りの子をご覧よ。」


隣の子は蓄膿症もちだと言いました。いわく、

「ボクの世界は頭痛を中心に回ってる。頭が痛い間は痛みがボクになる。でもまあ、頭痛でショック死はしないよ。そうならないのはお地蔵さんが守ってくれてるからだ。それよりも、ボクの隣りの子をご覧よ。」


隣の子は喘息もちだと言いました。いわく、

「咳が続く間は呼吸ができないから、ボクは半分死んでるようなもんだね。おかげでご覧の通り、蒸し饅頭みたいな色の肌になってしまった。でも、死なないのはお地蔵さんが守ってくれてるからだ。それよりも、ボクの隣りの子をご覧よ。」


隣にいたはずの子は、いつの間にかコツゼンと消えてました。

「小児白血病の子は、そうなんだ。アッと言う間に姿を消すんだよ」と言われました。


五人目の子は木から落ちて死に、

六人目の子は水に落ちて死に、

七人目の子は火事で死んだ。


これも、ひと目で分かりましたが、この三人は「ボクら、ほぼほぼ即死だったから、死んだと言われてもピンと来ないんだよね」と、ほんとにポカンとした顔をしてました。


そこにお地蔵さんがやって来て、七人とも、どこかへ連れて行っちゃいました。

「なんとか、ならんのですか」と談判したら、お地蔵さん、ニヤリと笑って、

「なあに、誰でも死ぬときゃ死ぬんだから。」

無責任な仏さんだなあ。


でも確かに、鼻の頭でも擦りむいたならともかく、ある程度以上の重い病気・ケガとなると、助かるかどうかは運しだいです。

かつぎ込まれた病院で、付いてくれたお医者さんが名医なのかヤブ医者なのかなんて、患者や家族には分かりません。そもそも、どんな名医にも誤診はあります。

お医者さまには「ベストを尽くしてくれ」以上の事は望みようがない。

これを悟りとは呼びたくない。

まあ、病人の生活の知恵みたいなもんでしょう。


誰でも死ぬときゃ死ぬ。


でも、お地蔵さんって、そういうもんでしたっけ?

なんか、いいことしてくれる仏さまじゃあなかったの?

ボクの心がそう叫んだところで目が覚めました。

外はまだ暗いけど、小鳥たちがピーチク、パーチク。

良かった。まだ死んでなかった。

ほら吹き地蔵の第一夜は、とりあえずここまでと言うことで。


(多分、続く)

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