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ゲームプログラマーの怒り

人の事を呼んでおいて、何をすればいいのか。などロクに決めていないと言う彼女に対して酷い苛つきを覚えた。


「な、何もわかんないって…俺はどうすればいいんだよ!」


俺の必死の訴えを軽く受け止めると、彼女は自分が想定した通りとでも言うように話を進めた


「ですから…その脅威を見つけだし、貴方に授けた特殊な能力で事前に対処して欲しいのです!」


その説明を聞いて、とりあえず自分が今すれば良いことを理解した。 しかし、それ以上に耳に残ったのが『授けた特殊な能力』という言葉だ。


「特殊な能力?何だそれ」


「運動が特段できるわけでは無いのですから世界を救うのは難しいでしょう?だから私の残った力を使って貴方に『RPG化』の能力を授けたのです」


妙にトゲのある言い方をするな… しかし『RPG化』って何だ? そんな俺の疑問を払拭するように彼女は説明し始める


「実は常時発動してるんですけどね。試しにここにあるPCに触れ、覆うイメージをしてみてください」


彼女に言われた通りの行動をPCに触れてとってみると、目の前からPCが消えた。 それに驚いていると、次は『インベントリ』と書かれたウィンドウが出現し、そこに『PC×1』と記載されていた。


「上手くいきましたね!それではこの『PC×1』を3回タップしてください!」


「あ、ああ」


再度、言われた通りに3回タップすると 『売却が完了しました』 というテキストと共にPCが消失し、かわりに『25万エィン』というどう発音したら良いのかわからない通貨が入っていた


売却されたという事実に震えていると、笑顔でホロウは話しかけて来る


「これで少しは生活できるお金が入りましたね!」


その時、俺の中で何かが切れた音がした。


「…これ、ワープとかも出来るのか?」


「もちろん!試しに私の本体がいる場所に設定してみましょうか!」


言われるがままワープ先に『天界』が追加され、そのテキストに触れると、体の回りが光に包まれる

目を開くと、TVや酒、その他諸々が大雑把に散乱している部屋に俺はいた。


偶然にも自分の目的の場所についた俺は、片っ端から目に付く物をインベントリに入れ始めた それに気付かず、彼女は目を瞑り得意気に喋っている


「そういえば私に攻撃などしないで下さいね?私が授けた能力なので当然没収することもでき…」


俺がTV以外の全てをインベントリに入れ終わった頃、やっと喋ることを止め俺の不審な行動に気付いた


「…何を?」


「よーし、『売却』。おお!結構な金額に…」


俺が言ったその言葉を一瞬理解できずにいた彼女は酔いが覚めた直後恐ろしい真実に気づき震え出した

いい気味だ。


「TVだけは戻そうかな…なるほど、1回タップで出せるのか」


「わ、私の家具は…?布団は、どこで寝れば?」


そう困惑する彼女を無視し、俺は満面の笑みで返答する。勝手に異世界に呼んで、こんな素晴らしい能力を授けてくれてありがとう!許さねぇからな


「テーマは『娯楽以外の全てを捨てたミニマリスト』だ。部屋も俺の心もスッキリしたな!!」


「ぎ、ギャァァァァァァ!!!!」


到底女神とは思えない…言うなれば邪神のような叫び声をあげてその場に倒れ込んだ。


俺が自分の家に戻りしばらくすると彼女は戻って来たが、当分の間俺のことを『ゴミ』だとか『クズ』という言葉で罵倒してきた


お互い様だと思うのだが…


ーーーーーー

それからしばらくして、俺はその危機とやらが何なのか知るために近くの街に来た。


沢山の人が集まっており、賑やかな雰囲気が辺りには流れている


寂しいことに俺1人でここに来たのだが、これにはちゃんとした理由がある。 外界での彼女の体はいわば魂が乗り移った人形のようなものらしく、自身で設定した結界である家から出られないのだ。


「ん?この銅像…もしかしてホロウの像か?」


ふと横を見ると、女神をかたどったであろう巨大な像が設置されていた。

お爺さんやお婆さんがありがたがっているところ悪いのだが俺には邪神像にしか見えない


つまり、このご老人達も邪神崇拝しているようにしか見えない。

まあ、そんなことなど口に出せるはずもなく、何か情報が集まるところは無いのかと街中をウロウロしていると、ある場所が目についた。


冒険者ギルドだ。異世界ではここに人が多く集まるものだと知っているぞ。


「冒険者ギルドか!ここなら何かわかるかも」


そう希望に満ちた足取りで冒険者ギルドの扉を開ける。

しかし、自身の予想とは裏腹にギルド内はがらんとしており、指で数えられる程しかいなかった。

その状況に困惑していると、カウンターの奥にいた職員であろう女性が俺に話しかけてきた。


「あら!見ない顔ということは…冒険者志望の方ですね!こちらへどうぞ!」


その職員は俺をカウンターの方に呼び、側に駆け寄って来ると耳元で囁きはじめた。


「今日はイヴさんがいらっしゃいます…悪いことは言わないのでまた今度来た方が良いかと…」


職員はチラチラと1人の男の方を見ながらそう言った。ギルド職員がそんなこと言ってもいいのかと疑問に持ったものの、ギルドに全く人がいない理由はあの人が関わっているのだと知った。


その視線の先の男は、小さな丸メガネにセンターパートの髪型をしていて、四人が座れるであろう席に1人で座り黙々と硬そうなパンを食べていた。


しかし何より目を疑ったのが、地球でもアスリートでしか見ないレベルで筋骨隆々の体をしていたという点だ。

この世界でいうイヴが何を表すのか知らないが、あまりにも名前が合っていないだろうと感じる。


「…わかりました。また後日来ます」


彼の何が危険なのか知らないが、人が全くいないとなるとここにいる必要は無い。

そう思った俺は後ろを振り向きそこから去ろうとした。

しかし俺の歩みは突如として前に現れた壁によって阻まれる。


「…君、冒険者志望か」


声が上から聞こえてきて初めて気付いた。 それは壁ではなく一瞬の内にここまで移動してきたイヴという男だった。


「え、い、いや」


大きな図体に気圧され、思わず口を籠もらせてしまった。 彼はそのことなど気にしないように人差し指で眼鏡をかけ直すと、口を開いた


「どうだね、試験代わりに僕と一戦交えるというのは。君が一発でも僕に入れられたらその時点で合格としようじゃないか」


いや…俺冒険者志望じゃないんですが…

ビビってこの一言を言えなかった俺を心の中で強く責めた

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