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嗚呼、さようなら地球

高校2年生『作間サクマ ヨウ

俺は放課後のチャイムが鳴り響きがらんとした教室の中、一人椅子に座りながら製作途中のRPGの設定を必死に練っていた。


「えーと、あそこをこうして…」


「おい何してんだよヨウ!ブツブツ言ってないで早く帰るぞ!」


目を瞑って空想プログラミングしていることが気になったのか、俺の唯一の友人が話しかけてきた。

入学から学校に馴染めなかった俺に出来た大切な友だ。


「おう、そろそろ帰るか。俺にはゲーム製作という使命があるしな」


「お前そればっか言ってんな」


俺はバッグに教科書を詰め込み校舎から出た。

帰り道の途中、友人が俺に疑問を投げかける。


「そういや何でお前ゲームなんか作ってんだっけ?」


「…まあ反動かな、色々と制限されてた分ゲームにのめり込むようになってさ」


「ふーん、その割にはお前の作ったゲームつまんねーけどな」


「殴っていい?」


友人の辛辣な発言に多少傷つきながらも、極力家族に話しかけられないよう体を縮めながら足早く家に帰り、自分の部屋に逃げ込むように入る。


その場で一安心するとゲーミングチェアに深く座り込み、自腹で購入したパソコンを開く。 ゲーム製作において超高性能なPCだ。

このPCで『世界に散らばった9億匹のスライムを倒す』などといった良作ゲームを作り出しているのだ。


「オープンワールドのRPGとか作りたいけど…知識だけあってもなぁ…」


長時間PCと睨み合い、眼球に疲れが溜まってしまった俺は、気分転換がてら外に出ることにした。


ドアノブに手を置き、外開きのドアを開くと____


「は?」


目の前にはドラゴンがいた。 それは今までの日常を否定するようで、静かに喉を鳴らすドラゴンと自分の間に数秒の沈黙が流れた。

かろうじて見える後ろの景色は、大規模なゴルフ場にでもなったのかと思う程の草原に変わっている


「さっきまでここ、住宅街だったよな…?」


困惑の汗をかいている最中、生暖かいドラゴンの吐息が顔に当たった。直後にドラゴンは口を大きく開き鋭い牙を見せつけるように噛みつこうとした。


「しっ…失礼しましたぁ!!」


そのあまりにも日常からかけ離れた光景を前に 一度扉を閉めてしまう。


「…きっと幻覚だな。ゲームのしすぎで頭がおかしくなったんだ。」


そう言って目を強く擦りながらも先程の光景を自分の幻覚だと否定しつつ もう一度ドアノブに手をかけた


「幻覚ではありませんよ」


しかし、突如として後ろから聞こえてきたその声に驚きドアノブから手を離して思わず『ヒッ』という情けない声を出してしまう


恐る恐る後ろをふり向くと、見るからに慈悲深そうな、青緑の目をして白銀の神々しい服を纏った美女が座っていた。


「だっ誰、誰だお前!」


俺がそう言うと、先程まで俺が座っていたゲーミングチェアを物珍しそうに眺めた後に座り込む。

俺がそれを見ていると、前の女はやっと口を開いた。


「私はこの世界の調停者、『女神ネロ』です。貴方はこの世界を救う者として選ばれたのですよ。」


「……???」


突然の事が積み重なりすぎて一瞬程思考停止してしまった。 その無量空所のような状態から意識を取り戻すと、俺は立て続けに質問をした


「こっ、ここはどこなんだ!?ていうか世界を救うって何だよ!」


自身を女神と名乗る彼女はその質問を聞くと、ゆっくりとわかりやすいように説明し始めた


「ここは地球とは『別の世界』です。この世界に近づく『滅亡の危機を救ってもらう』ため、貴方を召喚いたしました。神である私に選ばれたのですよ」


「滅亡の危機?」


「はいそうです。私の言う事を疑うのですか?」


…勝手に召喚した上、妙に上から目線の口調であれやれこれやれって…なんか鼻につくな…


俺が彼女の言葉に対してそう考えていると、彼女はさらに重ねてたたみかける。


「僭越ながら貴方の過去3年を調べさせて頂きました。引きこも…高校に通うかたわら、ゲーム製作をしていると、ならばこのような展開お好きなのでは?」


確かに俺はRPG…というかゲームが大好きだ。だからゲーム製作を始めたし さらに今、俺の好きなRPGのような展開に直面しているのだ。

ならば俺が放つべき言葉は______


俺は、決意したように深く息を吸い込み口を開く


「お断りします。元の世界に返してください」


彼女にとって予想外だったその言葉に、表情筋がピクッと動いたのがわかる。


「えっと…一応理由を聞いても?」


「ああ、えっと…ゲームが現実に起きる。となったら心配しかないっていうか…」


「…」


「…あ!もっと相応しい人とか紹介しましょうか?」


少しの間沈黙が流れてから、大きなため息をついて突然どこから取り出したのかわからない酒瓶を一気に飲み干した

「えっ、な、何!?」


「私の力のほとんどを使った術なんですよ…?」


空になった酒瓶を豪快に机の上に置くと、明らかに酔っ払った口調で俺にキレ気味で喋り出した


「黙って従ってください!私の世界に住む人々がかわいそうだと思わないんですか!!世界が滅ぶと給料減らされるんですよ私!!」


「!?な、何言ってんだお前!」


思わず人格が切り替わったのかと勘違いする程の女神の豹変ぶりと、人類への心配の次が自身の給料の心配という価値観に驚きつつも、ポロっと本音を漏らした彼女と口論になる


「あーあ!召喚ミスなんてしなければなぁ!!」


「はあ!?言ってたことと全ッ然違うじゃねぇか!本性現しやがったな!?」


俺が怒りながらそう言うと、彼女はため息を吐きながら、開き直ったように落ち着いて俺に語りかける


「はあ…もう貴方でいいから早く世界救ってくださいよ」


「ざけんな嫌だよ!何でお前の言いなりにならなきゃいけねーんだよ!」


「私を!私と人類を助けると思って!」


「うるせー!どうせ人類なんか建前で給料が一番心配なんだろ!!」


「…………さすがに人類の方が心配です!」


「ちょっと悩んでんじゃねーよ!!!」


少し悩んだように目を反らして発言した後、まさかの本日2本目の酒瓶を取り出して飲み干した

神が急性アルコール中毒になることってあるのだろうか。


「あー…やっぱアルコールはストレスを消してくれますね…人類が生み出した偉大な発明『酒・タバコ・ソシャゲ』これ3種の神器です」


「これ以上神のイメージを下げんな!!」


このままでは埒が開かないと考えた俺はさっさと元の世界に帰して貰おうと、その方法だけ聞くことにした


「…どうでもいいから早く帰らせてくれ!それに、ここは俺だけの家じゃないんだよ」


すると彼女は何かを思いついたように目をギラリと光らせ、酔った赤い顔で条件を提示した。


「そうですねえ…『この世界を救ってくれたら』考えますよ。この家自体は複製であり、地球では貴方の存在が消えているので誰も困らないのですが…」


大きな墓穴を掘ってしまったことに気づく。

しかも、サラッと衝撃の事実を明かしやがった

つまり彼女に従わないと、誰からも忘れられたままこの世界で一生を過ごす事になるのだ。

もう邪神だろコレ …


仕方ない、ここは自暴自棄になっても意味がないのだから、その脅威とやらを何とかしよう

そう感じた俺は滅亡の危機が何なのか聞くことにした。早く地球に帰るんだ


「…その危機ってのは?出来る限りは頑張るよ」


「それはわからないですね!そもそもこれは予言に似たような物なので!」


俺は生まれて初めて、神を殴りたいと思った。

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