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パリ・オペラ座のある広場にて
久しぶりに戻ってきたパリで、お気に入りだったケーキ屋を探す
何もかもが久しぶりだった。
景色も、空気も、空間すべてが懐かしかった。
旅の計画を思い立った瞬間から、自分の中でこの旅の目的だけが、ただ一つ、決まっていた。
「あのミルフィーユがもう一度食べたい。」
それがこの旅の目的だ。
シャルルドゴール空港からパリ1区に入ったところまでは順調そのものだったが、問題はオペラ座のある広場についてからだった。
肝心の店が見つからないのだ。
オペラ座の広場から目と鼻の先にあったはずの店が見つからない。
もう何百年も何一つ変わらず保たれた街並みとこの広場で、どうして見つからないのか。
放射線に伸びた通りを一本ずつ探したが、とうとう最後の一本になっても見つけることができなかった。
どこか別の世界に迷い込んでしまったかのように、見つけることができない。
途方にくれベンチに腰掛けた私に視線を向ける少女がいた。
金髪で青い目をしていて、ブラウスに赤いスカートを履いている。
少女はいぶかしそうな目で私をみている。
そのことにただ違和感を感じていた。