コミカライズ記念SS 黒い羽根
マンガボックス様にてコミカライズ!
本日2026年3月28日 連載開始です。
よろしくお願いいたしますm(__)m
白い薔薇の花束はウィスティリアが手にする前に、リリーシアに奪われた。
わたしの婚約者からの誕生日プレゼントを、勝手に受け取らないで。
グレッグ様もよ。あなたはいったいその花束を、誰に持ってきたの? 婚約者であるわたし宛のプレゼントではないの?
叫びたくなるのを、ウィスティリアは必死になって堪えた。
更に悪いことに、体勢を崩したリリーシアが、ぎゅっとグレッグにしがみついたせいで、 二人の体に挟まれた白薔薇の花束はぐしゃりと潰れた。
花束は、潰されて、ひしゃげてた。薔薇の花弁も床に散った。
グレッグの足元にも花弁が散っていた。
花びらを踏んだことにはグレッグは気が付かない。
踏みつけられた花弁は、まるで自分の心のようだ……と、ウィスティリアには感じられた。
その代りのように、黒い羽根が、どこからともなく降ってきた。
「何なのかしらね、これは」
自室に帰った後、その羽根は、しおりのように、本の間に挟んでおいた。
羽根よりも、 潰されて、ひしゃげてしまった薔薇の花を、さっさとどうにかしたかったからだ。
そうして、そのまま厨房に向かい、黒い羽根のことは忘れた。
……だけど、それ以来不思議な夢を見るようになった。
夢の中には長い黒髪と、背に黒い翼を持つ一人の男の人が現れた。
「あなたは……誰?」
人間とは思えないほど整った容姿。年は二十代前半に見えるが……。
「天使様……?」
首を傾げて、その男を見る。
男が何か言っているようだけど、うまく聞き取れない。
ウィスティリアと、自身の名を呼ばれているような気もする。
きっと、天使様だ。神様の御使い様に違いない。
ウィスティリアは、男に向かって祈りを捧げる。
手を胸の前で組み、敬虔に。
「どうか、もう二度と、何も奪われませんように……」
祈る。
「それが、お前の、望みか?」
問われたような気がして、頷いた。
頷きに、何と答えてもらったのか、分からない。
だけど、そんな夢を、ウィスティリアは度々見るようになった。
咳が酷くなり、体が重くて、どうしようもなくなった時も。
夢を見た後は、不思議と気分が良いような気がした。
いつの間にか眠っていたらしい。
ウィスティリアはベッドから身を起こそうとして……。
そのベッドの横で、床に膝をついて祈っているメアリーがいた。
「神様……、どうか、どうか、ウィスティリアお嬢様の病気を治してください」
ウィスティリアが起きたことにも気がつかないほど、真剣な祈りを捧げているメアリー。
「あり……、がと……」
寝起きのかすれた声で、言うと、メアリーは驚いて飛び上がった。
「ウィスティリアお嬢様!」
嬉しかった。
家族も婚約者も、見舞いに来ることはないのに。
使用人であるメアリーがこんなにも思ってくれている。
メアリーの手を借りて、半身を起こし、水を飲ませてもらった。
「あら? ウィスティリアお嬢様。お熱、下がりました?」
「そう……ね、ちょっと体が軽い気もするような……」
不思議な黒髪の男の人の夢を見た後だからか。
それともメアリーの気持ちが嬉しかったのか。
気分も軽くて、ウィスティリアは「ふふ……」っと笑った。
「よかった。お嬢様が微笑んでくださると、あたしたちも嬉しいですよ」
メアリーがちらとドアのほうに目をやった。
部屋の中には入ってこないが、アンソニー達男性使用人や、ダフネやグラディスたちまでもが、心配そうにしていた。
「みんな……」
ありがとう……と思う。
そして、ごめんなさい……とも思う。
ウィスティリアはもう疲れてしまった。早く楽になりたい
「お嬢様、エドがですね、リンゴとプルーンを水とはちみつで煮たものを作ったんです。その煮汁というか、シロップをですね、冷やしたそうですよ。あたしもちょっと味見させてもらったんですけど、冷たくて甘くておいしいんです」
気持ちに感謝して、二口だけ、シロップをすするようにして飲んだ。リンゴの酸味とプルーンの甘さ。口の中に広がる優しい味が嬉しくて、涙が出そうになった。
「早く元気になってくださいね。みんなまた、お嬢様と一緒に果物とか食べる機会を楽しみにしているんですよ」
メアリーの言葉。
黒い羽根。
夢の中の黒の天使様。
「ああ……。どうか神様」
祈る。
もしもわたしが、もしも、この先、死ぬとしても。
天使様のところへ行けますように。
メアリーやアンソニーがしあわせに生きていけますように。
祈る。
その祈りが、一度目の人生では叶わなかった……とは、まだ知らずに。
ただ、この時のウィスティリアは。
きっとこの世界のどこかに神がいること、そして、悪しき者は神が罰してくれると、そう信じていたのだ……。
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マンガボックス様にてコミカライズ!
本日2026年3月28日 連載開始です。
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初心に帰って、物語冒頭あたりのSSを書いてみました。
初心に戻って、物語冒頭あたりのSSを書いてみました。 *第2話のあたりと13話あたりです




