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贖罪

 自分を化け物と自称した彼女の家に案内されている時に彼女は唐突に振り向き言い放った。

「そういえば言ってなかった、私の事は近藤とでも呼んでくれ、それと私色んな奴に命狙われてるから」

 冗談なんかじゃないのは分かった、でもどこかおちゃらけた様な言い方だった。

「今だって狙われてる、まあ今回のは言ってしまえば特別枠だがな」

 今も狙われている、どこからだろうか、見渡したところでただの通行人しか見えない、その中に暗殺者でも居るのだろうか、でもそれだと特別枠にはならない気がする。

「やっぱりよく見えてるね、特別枠なんて嬉しい事言ってくれるじゃねえか、今回は連れもいるようだが、邪魔はしないんだろうな?」

 声が聞こえる、でもどこからかは分からない、スマホにイヤホンを付けている様な感じで上下左右前後の全方向から聞こえる。

「こいつが邪魔出来る様に見えるのか?ただ気になっただけだ」

「気になっただけか、まあそういうことにしてやるよ」

「ここじゃあなんだ、私は貴方の様に姿を消すことが出来ないからな」

「しょうがねえな、そこのガキも一緒か?」

「頼む、ただ少し待っていてくれ」

 何が何だか分からんがどこかへ行くようだ、多分人の目が無いところだろう。

「今から君には見えない物を見える様にする目をあげる、そうすれば今私が対峙している奴が見えるはずだ」

 そう言われた途端僕の視界の情報量が数倍に膨れ上がった。

 まず目に入ったのは近藤さんの心臓あたりで光っている無色透明に光るもの、無色透明で光ると無色透明なのに光る言うのもおかしな話だがそうとしか言えない、心臓部で光るものは周りを歩く人達にも見られた、恐らく魂のようなものだろう、もちろん僕の胸にもあった。

 だが僕らの目の前にいる女性には無かった。

 いつの間にか見えるようになっていた目の前にいる女性は特に衣類などは着ておらず全裸で金髪の髪が雑に伸びており手入れをしていないのかボサボサしている、それ以外は基本美女と言われる様な容姿だ。

「準備は整ったようだな」

 そう女性が言った途端僕らは真っ白な空間に居た。

 移動したとかじゃない、その場に元々居た感覚だ、本当に何が起こっているのか分からないが確かにクソったれのつまらない世界ではない、奇怪な世界だ、そんな世界を僕は楽しみたいと思えた。

「ここからは死闘だ、見られないようならば見るな、だが面白い物ではあるはずだ」

「分かりました」

「じゃあ始めるか」

 そう言った途端近藤さんの上半身が弾け飛んだ。

 死への恐怖が爆発的に増殖していった、さっきまで自殺しようとしていたがそれでも自ら死ぬのと殺されるのには天と地との差、さらに言えば僕は今死のうとなんて思っていない。

 死への恐怖故に僕はその場に蹲る事しか出来なかった。


 私は上半身を消し飛ばされた、いつも通りの展開だ、普通の人間なら死んでいるでも私は人間じゃない、私達は普通のただの化け物だから、死なないし死ねない。

 私の体は再生していく、だがそれと同時にあいつが私の腕を足を頭を体を欠損させていく。

 攻撃は避けれるような攻撃ではないので諦め欠損したら再生を繰り返し、彼女のもとへ近づいて行った。

「君は本当に死ぬ気あるのか?」

「あるさ、死にたい、前からずっと、今もずっと、これからもずっと、私は死を求め続ける」

  私は彼女が理解できない、生きる事は劇的で感動的で最も素晴らしい事なのに、彼女はそれを否定する、そんな彼女を私も否定し続けた、結果何百回もこの殺し合いは続いてきた。

「逆に聞くがなんでお前はこの世界で生き続けたいと思える?」

「この世界が面白いからだが?」

「分からないわ、私にとってこの世界は何もない、何でもない」

 私とは正反対な彼女の考えは未だに理解出来ない、故に何度もの死闘を繰り広げたのだろう、そのたびに彼女を救うことも殺すことも出来なかった。

「そうか、まあじゃあ殺してやるよ」

 今回こそは、未だに彼女の事を理解出来ないから、だからこそ今ここで本気で殺しに行く、それが彼女にとっての助けになると信じて。

 ようやく私の間合いに入れた。

 私の持っている力全てを彼女にぶつけた。

 それでも尚彼女には傷一つ付ける事は出来なかった。

「いやあやっぱり私は死ねないのか、なんでだろうなあ、何か悪い事でもしたのかな」

「そうじゃないかな、私も悪い事をしたから、人間から化け物になった」

 私は罪を犯した、自覚している、その代償人間から化け物に成り果てた、今となってはその代償に感謝しているが、彼女はそうじゃなかったのだろう、だからこうして殺し合っている、意見の押し付け合いをしている。

「私は何をしたかすら分からない、罪を贖えたならば私は死ねるのかな、その点羨ましいよお前は私と違って自分以外に特別な物があって、それが生きがいになってて、私と違って死のうなんて毛頭も考えていなくて、そうなれたら私も悩まずに生き続けられるのにな」

「すまないな、私はまだ力になれない、貴方を殺せないし貴方の特別にはなれない」

「まあ今回もこんなところで良いか、新しい出会いもあったしな、彼が私に何か多大なる影響を与えてくれることを期待するよ、じゃあこれで私は帰るよ、ただその前にあの子に少し話してくる」


「やあ少年、もう大丈夫だ、顔を上げても」

 近藤さんと死闘を繰り広げていただろう女性が話かけてきた。

 蹲ってからは二人の会話を聞いていたが悪い人では無い印象だった。

「良い事を教えてやる、あいつが君を選んだ理由は魂の形だ、過去に君と同じ様に人を連れている時期があった、そいつと君の魂の形は似ている、いや同じかもしれないな、まあそれだけと言えばそれだけだ、どうしても気になるなら前世の記憶を探すことだ、」

「分かりました」

「じゃあね」

 真っ白の空間からさっきあったように別の場所に移動していた。

「気が利くな、ここが私の家だ」

 目の前にあるのは山奥にあるただ一つの一軒の家だった。

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