5話
「まぁ、上がれ。お茶くらいは出す」
ユキにそう促され、私とリンタロウは中へ入れさせてもらった。
玄関を通るとすぐ廊下とキッチンが繋がっていた。
すぐ目の前には扉がありくぐると、ひとつのさほど広くない部屋だった。
正直、瑣末だと思った。
家の中に廊下とキッチンがほぼ一体化していて、そんなに広くない部屋。私の国ではもっといいお家を建ててあげるのに。
部屋の中は整われており、床には緑のマットが敷かれていた。
いや、マット?なんか草が編み込まれているような床だった。
部屋の中央には大きな机があり、何やら白い紙に絵が書かれていた。」
「少し待っていろ」
部屋の主はそう言うと廊下に行き、ガチャガチャとなにか用意を始めた。
「俺は机の上片付けておくぞー」
「頼む、だが原稿は見るなよ?」
「んな無茶な」
ユキとリンタロウがそう言い合う。
その数十秒後、ユキは戻ってきた。
両手にはお盆と3つのグラスが載せられていた。
ガラスで出来たグラスには、茶色い飲み物が注がれていた。
おそらくお茶だろう、それは分かった。
机の上にあった紙はリンタロウが隅にあった茶色い封筒に入れて棚の中へしまっていた。
2人が囲うようにお尻を床へ預けたので私もそれに習う。
カチャカチャ。
グラスがそれぞれに行き渡る。
「毒は入ってないでしょうね?」
私は反射的に聞いた。
ここは異世界。良くしてくれていると言っても、まだ出会ったばかり。
良い人ぶっていても、もし敵だったら?そもそもあの扉が敵の魔法だって可能性はまだ捨てきれない。
私はこんな見知らぬ地で死ぬ訳にはいかないから。
私は少し警戒気味に聞いた。
「チッ」
ユキは舌を打ち、眉間にシワを寄せた。そして自身のコップの中身を全て喉に通した。
「これでいいだろう?」
飲み干したあと、怒気を含ませて私に言った。
「ごめんなさい」
私は即座に謝罪をした。