3話
気がつくと私は知らない場所に立っていた。
さっきまで夜空が覆っていたはずなのに太陽が出ていて、陽の眩しさに思わず目を細め、眩しさ遮断のため手で顔に日陰を作る。
ここは本当にどこだろう?
さっきまでいた場所は建物なんて建って無かった。ただここは石の砦?塔?のような細長い建物がいくつも建てられていた。
オマケに地面は草や土が全然見受けられない。
ただ、これも石なのかな?グレーの道が続いていた。
ここは本当にどこ?
さっきまでベルと一緒にお城から逃げ出して、そしたら不思議な扉があって、それをくぐったところまでは覚えている。
はっ!?さてはこれは敵の魔法!?
私とベルを分断させて個々で倒すための!?
もしそうだとしたら相当不味いのでは!?
急いでベルと合流して、それからそれから……!
「うぅ……!」
私は頭が混乱して両手で頭を抱え、唸っていた。
すると背後から声をかけられた。
「すみません」
「ひゃい!?」
驚いて振り返ると女の子が2人並んでいた。
歳は私と同じくらいだろうか?
ただ見たことの無い服を着ていた。
黒いリボンがまず首元につけられている。
袖は灰色、それ以外はピンク色、スカートはわかる。それも灰色。ていうかスカート短すぎません!?
そ、その……。大事なものが見えそうなくらい短かった。
2人同じ服だった。
いやよく見ると同じ服を着た子はたくさんいた。
しかも似てるけど、違う服を着用している人もいる。
なんだろう?民族衣装なんですかね?
その子たちは続ける
「いきなりすみません。お写真いいですか?」
「しゃ……しん……?」
なんだろう、本気で分からない。
女の子たちは顔を見合わせる。
2人の視線が絡み合うのを見守っていると、一人の子が言った。
「これです」
細長い板のようなものが出てきました。
しかし、板と言うには見えないそれは急に光った。
板の表面は黒かったのに命が吹き込まれたかのように様々な四角いマーク、そしてその後ろは今話している少女達がいた。
え!?この中にこの子達いるのに目の前にいる少女2人は……!?
私は戸惑っていると、たくさんの四角いマークからたくさんの絵が飛び出てきた。
え……?え……!?
まって、この絵はなに?すごくリアルだけど、画家さんすごすぎません!?
ひとつの絵が大きく映し出される。
この板を見せている少女達が笑っている絵だ。
可愛いけど、こんなに精密にまるでコピーされたかのように瓜二つである。
正直怖かった。私これから何されるの……!?
まさかこの中に閉じ込められる!?
こんな魔法があるの!?
「ごめんなさい!」
恐怖に駆られ、謝罪をしてからその場からダッシュで逃げた。
「え!?まってください!」
背後から驚いた声が聞こえたが、私は構わず走った。
この人達から逃げないと私は……捕まっちゃう!
人の目を気にせず、時たま肩と肩がぶつかったが、構わず駆けた。
どれくらい走っただろう?
人通りが少ない場所に出た。
今度は家がたくさん並んでいる。
しかし私の知っている木造やレンガの作りではなかった。
煙突もない。変な家屋。
そんな感想がまっさきによぎった。
「そろそろいいかな……はぁはぁ……!」
太陽の日と足を早めすぎた代償か、体は火照り、額や背中から汗が流れているのを感じる。
とりあえず、さっきの扉を探そう。
そうすれば戻れるはず……!
あてもなく辺りの捜索を開始する。
すると曲がり角で、人とぶつかった。
どん!
私とその人は互いに尻もちをついた。
今度は男の人だった。
私はその顔を知っていた。
さっきまで一緒にいたんだもん、見間違えるはずは無い。
「ベル!無事だったんですね!」
赤茶色髪に、キリッとした両目、シュッとした顔立ち。見間違えるはずは無い。
いきなり知らない土地に来て知らない人たちに話しかけられて怖かったが、見知った顔が見れて安心した。
「いや、人違いじゃ……え!?」
ベルの口から姫様無事だったんですね!と向こうも安心してくれると思った。しかし、相手の反応は予想外だった。
え?人違い?というかベル?もちょっと困惑している。
よく見ると顔立ちはちょっと違った。
髪色は同じだけど、すごくやる気のなさそうな印象だった。
「すみません、人違いでした!」
バッと立ち上がり、服の土埃を払い相手に頭を下げる。
「まって!」
「は、はい!?」
怖くて声が裏返る。
早く帰りたい。
そんな気持ちがはやった。
「もしかして、カトリーヌ?」
ピタッと足が止まる。
え?今なんと?カトリーヌといった?
いかにも私の名前はカトリーヌだ。
こんな知らない地でまさかその名を呼ばれるとは思わなかった。
そしてベルによく似た人。
これは偶然では思えなかった。
「あなたは?」
「あー、俺も名乗った方がいいかな?」
ポリポリと頬を指先でかく彼。
「はい」
「俺は吉野鈴太郎」
「ヨシノ、リンタロウ?」
初めて聞いた名だ。
だが彼との出会いが私の運命を大きく変えるとはこの時は思ってもいなかった。