26話
「光陣閃!」
私の体に光輝く。
今の私は光。高速、いや光速で駆け巡ることができる。
森の木々を伝い、新斬組の根城からどんどん離れていく。
だが光の速度で、移動するにはかなりの体力を消耗する。
「はぁはぁはぁ……!」
森を抜ける。通常であれば半日ばかりでここから新斬組の拠点へと辿り着いたが、光となった私は、その半分の時間で抜けることができた。
しかし、先ほども言った通り、この技の体力消費は激しい。
空はすっかり暗くなっていた。
闇に輝く星々が幻想的にその存在を主張していた。
新斬組の要求は三日で咲姫を連れてくること。
「あと2日か」
明日で咲姫の元へ辿り着き、明後日で戻ってくる。
私の力なら可能だ。
しかし今は休もう。
ザッザッザ。
雑草が私の足音を鳴らす。
キリキリキリ。
コオロギの合唱が耳を刺激する。
時々腰を下ろし、木の枝や、食べられるキノコを集める。
鹿辺りを狩って肉も欲しいところだが、それを得たところで1人では食べきれないし、保存する方法がない。無闇に命を奪うことは自然に対して失礼だ。
「こんなものか」
両手で抱えてギリギリこぼれ落ちないくらい集めれば十分だろう。
木の枝を一箇所にまとめて、実は持ち込んでいたライターで着火。
ボウっと闇が支配する夜に温かな炎が灯る。
ザァァ。
水の流れる音がする。近くに川があるのだろう。
一応収穫したキノコを洗うことに。
なんと聞いて驚け、見て笑え。
松茸が採れたのだ。
自然豊かゆえに大収穫だった。
しかし、汚れたまま食べるわけにもいかぬ。
香りと食感が悪くなるのはしょうがないが、洗うしかないだろう。
なんとも勿体無いが、贅沢は言っていられない。
川で松茸を洗い、火で炙って口に放り込む。
火がパチパチと音を立てて私の周囲を照らす。
ウトウト……。
明日で咲姫の元へ辿り着かねばならない。
今日はもう寝よう。
近くの木に背中を預けて瞼を閉じる。
すぐに眠ることができた。
翌日。
チチチと鳥の囀りで目を覚ます。
「いくか。光陣閃!」
目を覚ますや否や、私は再び光を纏う。
森を抜け、大正時代の街並みが並ぶ。
昼頃、咲姫の元へと辿り着いた。
「うぬ?早かったな、剣姫よ。猿とカトリーヌ姫はどうした?」
呑気に声をかける。
「実はな」
私は咲姫にこれまでの経緯を話した。
「うむ、仕方ない。ワシが赴かねばならぬか」
「よし、ではいくぞ」
「待つのじゃ」
「なんだ?」
「酔い止めを飲ませてくれ」
「何故だ?」
「主の力は酔うからに決まっておろう!」
咲姫拳を握りしめて叫ぶ。
そんなに酔うか?
まぁ、光速だし、結構揺れるかもだしな。
「待たせたのじゃ」
「うむ」
「光陣閃!」
私は咲姫を抱えて再び光に身を包む。
約1日後。
私の体力の限界や、咲姫の酔い覚ましで休憩を挟んだものの、新斬組の拠点へと辿り着いた。
「こいつは驚いたぜぃ……!本気で3日で戻ったきたな」
局長も驚きを隠せずにいた。
「新斬組局長」
咲姫は驚愕の表情をする局長に向かい合う。
「なんでぃ?」
「わしとしては、新しい文化を取り入れたい。しかし、お主らはそれを否定する何故じゃ?」
「それについては話が長くなる」
「構わん」
「新しい文化。それ自体は悪いことではないと考える」
「うむ」
「ただそれは、猿真似だ」
「猿真似?」
「うむ、剣姫さんたちの世界はこちらの世界より文化が発展してると聞く。それにただ追いつきたいだけだろぃ?」
「それの何が悪いのじゃ?」
「明確な目標がないからだ」
「明確な目標?」
「おう、咲姫様。あんたは向こう側の世界に追いついてなのがしたい?」
「それは……」
咲姫がグヌヌと言い淀む。
「答えられないだろぃ?だから無理に文化を発展させる必要がないと考える」
「咲姫よ。ミイラ取りがミイラになって申し訳ないが、私は新斬組に賛成だ」
「剣姫⁉︎」
「咲姫、無理に文化を進めなくても、お前はいい領主だ。今のままでもいいのではないか?」
「オイラたちもそう思うぜぃ。困ってる領民に手を差し伸べて、税も多くは求めない。そしてキチンとそれを返還している。オイラたちがこの森に身を潜める前から、あんたのことは評価していた。だからだ、だからこそ無理にこの国を変える必要はないんじゃないのかぃ?」
「わしは、剣姫たちの世界を羨ましく思っていた。農作業は機械の力を借りて便利に、かつ効率的に作業が進められる。他にもラーメンなど、喉からよだれが止まらない料理。それらが羨ましかった。領民の者どもにもそれらを知って欲しかった」
ポロポロと咲姫が涙を流す。
「姫様の言い分はわかった。姫様。あんたは優しい。これは痛いほど伝わった。農作業はみんなで協力すればいい。らぁめんなるものも、気になるが、現状維持で行こうや」
「ラーメンなら、私たちの世界に来て好きなだけ、ご馳走してやる」
「うむ……」
ゴシゴシと袖で涙と鼻水を拭う。
「それ、オイラたちもあやかってもいいかぃ?」
「構わん。ただ条件がある」
「なんだぃ?」
「こちらの世界と私たちの世界。この両方を救う手助けをしてもらいたい」
「どういうことだぃ?」
私は新斬組に現状を伝えた。
「それなら合点承知だ。クリア国が堕ちたと聞いていたが、自体は思った以上に深刻なようだな」
「ありがたい。すぐにでもカトリーヌ様たちの元へ向かいたいが、いいだろうか?」
「急かすな急かすな、準備くらいはさせてくれ」
「む……。すまない」
こうして新斬組という心強い味方ができた。




