表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
25/25

25話

 咲姫の宮殿を発って3日。

 私達は件の組織の根城へと到達した。

 草木に囲まれた屋敷には「新斬組」とでかでかと看板が建てられている。

 さあぁ……。

 風に揺れて、草が木の枝が私達を出迎えてくれるかのように緩やかに踊っている。

「カトリーヌ様!コタロウ殿!伏せろ!」

「キャ……!」

「キ……!」

 そんな穏やかな空気を一閃したのは、背後から察知した殺気だった。

 バッ!

 私たち3人は、咄嗟に地面に膝をついた。

 む、せっかくの特注した制服に汚れがついたではないか。

 しかし、そんなことを気にしている余裕はない。

 地に伏したことで免れたが、我々が立っていたら上半身と下半身が、真っ二つにされていただろう。

「チッ、外したか」

 舌打ちがてら、手応えが無いことへの苛立ちが伺えた。

 顔をあげる。

 ゴリラだ。

 そう表現するしかないほど顔中が毛むくじゃら。

 身につけている海色の着物からは首から下は、どれほど毛深いかは伺えないが、チラリと見えるすね毛は体毛のジャングルだ。

 顔はいかつく、両の瞳はギラリと獲物を狙う肉食動物のそれだ。

 私が問う。

「何者だ?」

「それはこちらの台詞。我は新斬組の三番隊隊長、齋藤始(さいとうはじめ)だ」

 太く、警戒した声音。

「お主ら、この近辺では見ない顔だ。何用があってここに来た?」

「咲姫様の使いの者だ。これ以上無益な戦いをやめて両方が納得出来るように会談を提案しに参った」

「咲姫の……?」

 じっくりと私の顔を凝視される。

「よく見るとお主、咲姫に瓜二つだな。何奴だ?」

「平行世界の同一人物だ」

「ならば敵ぃ!」

 有無を言わさず刀を振り落とす。

 右側に反転して身を守る。

「コタロウ殿!カトリーヌ様を頼む!」

「ウキキ!」

 了解!

 しかし、私は気づいていた。

 敵は目の前の齋藤始だけではなく、既に囲まれてることに。

 だが、対峙してわかる。この男、相当の手練だ。

 私では1人ではカトリーヌ様を守り抜くことはできない。

「ウキィー!」

「キャー!」

 コタロウ殿も察していたのだろう。カトリーヌ様を担ぎ、高い木へとバネが高く飛ぶようにジャンプしていた。

 ザッ!

 1匹の猿とこの国には似合わない金髪の少女を追うのを諦めたのか、周りを囲っていた新斬組なる者たちが姿を現す。

「この人数だ。大人しく降伏しろ。場合によっては、四肢のいずれか1つ失う程度だ」

 ニィと勝ち誇ったように口角を上げる。

「我、覇道を進むものなり」

 パァと相棒が姿を見せる。

「ほう、やる気k……」

「奥義、光迅閃」

 ピカ!光が迸ると同時にゴリラ以外の相手は全員気絶していた。

「なっ……!」

「安心しろ、峰打ちだ」

「1人も殺さずとは愚かな……!」

 動揺、焦り。その2つの感情が表情を作り、かつそれを隠すための強がり。

「私達はお前たちを排除するために来たのではない。咲姫とお前たち新斬組の和平交渉へ来たのだ」

「和平だとぃ?今まで我らを糾弾していたのに見事な手のひら返しだな。誰の差し金だぃ?」

 殺気は感じない。

 穏やかな男がどこからともなく現れた。

 長身かつ、スラッとしたスタイル。

 顔立ちはシュッとしており、ニキビひとつない美形だ。

 右目の下の泣きぼくろが特徴で、パッチリした両目。

 綺麗な坂を描いた鼻。

 綺麗なピンク色の唇。

 うん、イケメンだ。

 紛うことなきイケメンだ。

「局長!」

「始、お前が門番を勝手でたから任せたら、なんだぃ?この有様は?」

「局長、ということはお主が新斬組のトップか」

「そうとも、俺が新斬組局長、近藤勇真(こんどういさみ)だぃ」

「イサミィィィィィィィ!」

「うおっ!なんでぃ!?」

「失礼、叫ばないと失礼だと思ってな」

「いや、初対面の相手の名前を叫ぶ方が失礼だろぃ……」

 うおっほん!咳払いを1つ。

「まぁいい。話を戻す。今まで俺たちの主張を無視していた相手が、急に和平交渉。誰の差し金だぃ?」

「私だ」

「齋藤との話は聞いていた。平行世界の同一人物、その相手を信じろと?」

「ああ」

 じっと相手の瞳を合わせる。

「わかった。その和平交渉、応じよう」

「局長!」

「ただしぃ!」

 齋藤始の言葉を遮る。

「3日だぃ」

 イサミは指を3本立てた。

「3日?」

「3日で咲姫本人を連れてこい。そしたらその交渉に臨んでやる」

「もし間に合わなかったら?」

「そのいちばん高い気に登っている金髪の女、あいつを殺す」

 人差し指でカトリーヌ様を指す。

 3日。

 咲姫の所からここまでで3日。戻るとなるとさらに3日。

 往復で6日だ。

「いいだろう」

「なにぃ!?」

「いいだろうと言ったんだ。3日で咲姫を連れてくればいいのだろう?」

「そんなこと出来るわけがないだろぃ!」

「できる」

 再び我々はお互いの瞳を見つめ合う。

「あっはっは!いいだろう。やってみろぃ!」

 驚きと興味本位、実際に達成するのか、挑戦させるかのような物言いだ。

「わかった。すぐに発つ。コタロウ殿、カトリーヌ様を頼んだぞ」

「ウキー!」

 敬礼で答える。

「風迅閃!」

 バッと私は風ともに駆け出した。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ