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22話

「さて、使いの者の護衛だが、念の為戦えるようにしておきたい」

「うぬ?戦いに行くのではなく、交渉に行くのであろう?」

 首をかしげる咲姫。

 ポニーテールもそれに合わせて揺れる。

「念の為だ。こちらの目的は話し合いだが、向こうの者からしたら、敵が領地に踏み込んでくるのだぞ。問答無用で襲いかかって来る確率は高い。そこで咲姫よ、刀をいくつか見せて貰えないか?」

「構わぬが、お主には既に二刀あるではないか」

「ばかもの。先程の相手がまた襲ってきたらあれは顕現できないんだぞ」

 きょとんとした咲姫に私は叱る口調になる。

「なら先の戦いで猿が持ってきた刀は?」

「ウキキー!」

「こら、着物が伸びるではないか!」

 コタロウ殿が咲姫の着物を引っ張る。

「名前で呼ばないと怒るのだ。コタロウ殿は」

「はぁはぁ……。悪かったコタロウ」

「ウキキ」

 満足そうに「分かればよろしい」と愉快に鳴く。

「刀の件だが、ここからまっすぐ進んでいって、5つ目の分かれ道を左に進むと、この町一番の鍛冶屋がある『咲姫様の紹介だ』と言えば、快く迎えてくれるであろう」

「了解した」

「わしはこの間、使いの者の選定をしておく」

「わかった」

 和と洋が入り乱れた町中を進んでいく。

 がやがやと町の活気はそれなりにある。

 いい匂いがする。

 現在地から右側の店だ。

 どうやらコロッケを売っているらしい。

「ウキキ」

「一つ買っていくか?」

「ウキ!」

 笑顔のコタロウ殿。

「失礼」

「あいよ!」

「コロッケを2つください」

「失礼ですが、咲姫様と縁のあるお方ですか?」

 じっと私の顔を覗き込む店主。

 平行世界の同一人物、とは言えない。

「まぁ、遠縁の者です。故あって遠くの国で暮らしているのですが、咲姫様にご用事があって訪れさせて頂いております」

「そうですか!咲姫様の!2つと言わず4つほど持って行ってください!お代は結構です」

 笑顔でコロッケを4個袋に詰める親父さん。

「いえ、さすがに悪いのでお代は払わせてください」

「いえいえ、咲姫様の親戚の方からお代を受け取る訳には行きません!」

 単純に咲姫のことを恐れて、という表情ではない。咲姫を支持していてのご好意だ。

「ウッキー」

 店主から袋を受け取るコタロウ殿。

 遠慮するな。

 との事らしい。

「この猿は使いの者ですか?」

「ウキキー!」

「うわっ、どうした!?」

「この子は名前で呼んでもらえないと怒るのです。名はコタロウ殿」

「ははぁ、悪かった。コタロウくん」

「ウキキー」

 機嫌が治った。

「ところで、咲姫様は普段どういう風に振る舞われてますか?」

「そうですね。民たちのことを第1に考えておられる印象です。例えば、お金が無くて生活の苦しいものには、自身の宮殿で、使いとして働かせる代わりに、生活の支援をしたり、田んぼや畑仕事の手伝いを率先して行ったりしております」

「なるほど。ありがとうございます」

 真っ当な当主をやっているのだな。

「最初は我々も遠慮していたのですが、あの方は『自国の民が困っているのを見過ごせない』と強く豪語して行動されておられております」

「良い当主様ですね」

「はい。いつもお世話になっています」

 ペコペコと頭を下げる旦那。

「ところで、あなた様はこれからどちらへ?」

「実は」

 私は一連の流れをこの方へ説明した。

新斬組(しんざんぐみ)。確かに近頃騒ぎを起こしていますね」

「はい」

「しかし、穏便に話が通るかどうか……」

 困った表情をされた。

「そこはなるようにしかなりません。使いの者は私が絶対守ります」

「よろしくお願いいたします」

 ペコーと再度頭を下げられた。

「それでは失礼します。コロッケありがとうございます」

「こちらこそありがとうございます!」


「ウキキキキ」

「美味しいな、このコロッケ」

 私達はコロッケを頬張りながら町を歩く。

「5つ目の分かれ道、ここか」

 咲姫に言われた通りに進んでいく。

 少しすると鍛冶屋が見えた。

「すみませーん」

「あいよ……って咲姫様!?」

「い、いえ、似ていますが遠縁の者です」

「ははぁ……。確かに咲姫様に比べて背が高い」

 ちっこいからな、あいつ。

「ところでどのようなご要件で?」

「咲姫様の紹介で伺わせて頂きました。刀をいくつか見せて貰いたいのです」

「分かりました。あそこの棚の物が商品です」

 棚の上には刀がいくつも並べられていた。

 うん?

「店主、あの青く輝く刀は?」

「輝く刀?そんなものありなせんよ」

 小首を傾げられた。

 棚の隅に輝く刀。私は無意識にそれに近ずき、手にして、鞘から抜いて見せた。

 その刀はボロボロだった。

 刃こぼれは激しいし、若干錆び付いていた。

 誰も欲しがったりしないだろう。だが。

「店主、この刀いただきます」

「えぇ!?そんなボロ刀よりもっといいものが……この刀は廃棄する予定なんですよ!?」

 慌てる鍛冶屋。だが。

「何故か分かりません。ですが、この刀に選ばれた。そんな気がするのです」

「選ばれた?まさか真刀(しんとう)!?」

「真刀?」

「はい。刀が持ち手を選ぶのです」

「選ばれた者は能力以上の力が発揮できると言われています」

「能力以上とは如何程に?」

「分かりません。あくまで伝説として語り継がれている程度なので」

「ふむ。ますますこの刀が気に入りました。お代はいくらですか?」

「いえいえ、お代なんて……!廃棄予定かつ咲姫様のご親戚からお金をいただく訳には行きません!」

 ぶんぶんと手のひらを振って見せられる。

「ですが……」

「でしたら、条件が」

「なんでしょう?」

「この刀で咲姫様の力になってください」

 ぽかん……。

 一瞬思考が停止した。

 だが私は。

「分かりました。必ずや」

 力を込めて宣言したのだった。

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