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20話

「さて、着いたぞ」

 扉をくぐると、そこは緑に覆われた森の中だった。

 木々が空を覆い、太陽の光を阻む。

 さあぁっと流れる風が空を覆うそれを揺らしていた。

「キキっ?」

 まずはどうする?

 全ちゃん殿に与えてもらった力が早速役に立つ。

 あれ?そんな描写あったっけ?って人は予告無しで書き直したから見直してくれよな!

 はいはい、説明どうも。

「まずは咲姫(さき)に会いにいく」

「キキキッ」

 殿をつけないとは珍しい。

「そうだな、何せ咲姫はこの世界の」

「説明は不要じゃ!」

 甲高い声が静かな森に響く。

 身長は150cmあるかないかくらい。

 白いスーツの上に私とお揃いの黒いマントを羽織った女の子、顔立ちは私とほぼ同じ。違いがあるとすれば、私を少し幼くした感じだ。

 気づいた者はいると思うが、夜ノ神咲姫はこの世界の私だ。

 彼女の後ろには5人ほどのスーツにサングラスをかけた用心棒のようなお付が控えていた。

「視えていたか」

「うむ!」

 咲姫は未来視ができる。

 ただ、自分で好きなように視える訳では無い。

 世の中に重要なことが起こる時、不意に視えるのだ。

「私が来ることがわかったのなら、この世界で何かが起こるのだな?」

「うむ、こんなところで立ち話もアレだしのぉ、落ち着いた場所で話そうではないか」

「了解した」

 この世界に来てまずは彼女に会おうとしていたので、こちらとしても好都合だ。

 森を出て大河の街並みを進む。

 和と洋の入り交じった街は本当に明治時代を思わせる。

 木造で出来た建物、レンガで建てられた建物。

 道行く人々は、着物だったり、小洒落たスーツ姿の者が見受けられる。

「ここで話そうかの」

 咲姫が足を止めたのは、赤いレンガで建てられたカフェのようだ。

「ここのプリンは絶品なのじゃ」

 じゅるりとそれの味を思い出したのか、うっとりとした表情で口元からヨダレが垂れていた。

「汚いぞ」

「はっ、すまぬ」

 ゴシゴシとポケットから桜の花びら柄のハンカチを取り出し口元を拭う。

「それじゃあ入ろう」

 咲姫と私が店内に入ろうとした瞬間、叫び声が耳をつんざく。

「待て!剣姫!」

「どういうことだ?」

 振り返るともう1人の咲姫が息を切らしていた。

 着ている服、顔には汚れがついていて、ハァハァと肩で息をしていた。

「こやつは偽物だ!」

「何を言う!偽物は貴様だ!」

 現れた2人の咲姫。

 この子達に似た姿は私以外にありえない。

 どちらも自分が本物だと主張する。

「貴様だ!」

「いいや、貴様だ!」

 正直このふたりは双子と言っても違和感がないほど姿が一致している。

 どちらかが偽物で、どちらかが本物だ。

「こうしよう」

「「ぬ?」」

「第一回、作者の推しを当てろゲィーム!」

「作者の推しとな?」

「ああ、お前たちも同じ作者から生まれた存在だ。つまり、本物なら作者の推しがわかるはずだ」

「うむ!」

「いいじゃろう、乗った!」

 2人の承諾を得る。

「それでは第1問」

 ゴクリ。2人の喉を鳴らす音が聞こえた気がした。

「作者の中で永遠のヒロインと言えば?」

「天野遠子」

「遠子先輩」

「綺麗な方だ。連れて行け」

「なぜじゃ!?」

「作者は天野遠子とは呼ばん!」

「うぬぅ、もう1回じゃ!」

「いいだろう」

 ふぅっと体内の空気を入れ替える。

「第2問、作者の千○*万花の推しといえば?」

「芳野ちゃん」

「芳野」

「汚い方だ。連れて行け」

「何故!?」

「作者は芳野と呼び捨てにしない!」

「公式の呼び方ではないじゃろう!?」

「公式の呼び方なぞ知らん!」

「もう1回、もう1回じゃ!」

「いいだろう」

 2人の咲姫が私を注視する。

「咲姫、お前ちんまいよな」

「ちちち、ちんまくないわ!」

「あら?あたいは可愛らしくていいと思うわよ……。あ……」

 全員の注目が私を導いた咲姫へ。つまり綺麗な方の咲姫だ。

「マヌケは見つかったようだな」

「こうなったらしょうがないねぇ……」

 言うや否や羽織っていたマントを空中に放り投げる。

 全員の意識がマントに向く。

 バサッと地に落ちてきた頃には、偽物の咲姫が本来の姿を現していた。

 なんというか、華奢でグラマラスな身体に、それ服として機能してるの!?と問いただしたくなる程の薄着。

 薄着というか下着だろ、あれ。

 その細い体で持てるの?その斧と言った感じの大きな斧を構えていた。

「剣姫、気をつけろ、こやつワシらの能力(ちから)を封じることが出来るのだ」

「それは厄介だな、だがやるしかあるまい。我、覇道を進む者なり」

 ピカーと眩い光が私の腰に集まり、一振の刀が顕現しなかった。

「む」

 本当に力を封印するようだ。

 武器もなしにあの大斧とはやり合うことは出来ない。

「ウッキキー!」

 これを使え!

 コタロウ殿が一振の刀を投げ渡した。

「感謝する」

 鞘から刃を抜き、咲姫だった相手に向き合う。

「はあぁっ!」

 気合を入れて眼前の相手に斬りかかる。

 ガキン!ガキン!

 大きな斧腹に遮られて、相手に攻撃が通らない。

「ハァハァ……!」

 こちらは大きく身体を動かすが、相手は斧を構えているだけで涼しい顔をしている。

「次はあたいから行くよ」

 そう宣言して、斧を振りかぶり。

 斧は身体全体を動かして振るう武器だ。

 そのため大振りなムーヴになり、その軌道は読みやすい。

 頭上から私を狙う刃を落ち着いて右にステップして躱す。

 がら空きになった胴体に私のもつ刀が襲う。

 しかし、相手の腹部を貫くことは叶わなかった。

 華麗にそのセクシーな身体をひねらせて刀は空を突くだけで終わってしまった。

「危ないねぇ」

 よっと。

 余裕そうに斧を再び構える。

 能力が使えない分奇襲が出来ない。

 あの力に頼っているのだと気付かされた自分が腹ただしい。

 しょうがない。

 あれを使うか。

「すぅーはぁー」

 瞼を閉じて呼吸を整える。

「来ないのかい?」

 相手が挑発気味に誘う。

「それじゃあ、こっちから行くよ!」

 女が私を襲いかかる。

「え?」

 ぶしゃあ!と相手の脇腹から鮮血が吹き出す。

 吹き出した血の雨は、地面や私にも降り注いだ。

 私が相手を斬ったのだ。

 目にも止まらぬ速さで。

 否、光のように一瞬で私は相手の背後に回り込みながら切り伏せたのだ。

「これが奥義・光迅閃(こうじんせん)だ」

「こんな力を隠してたのかい?」

「ああ」

「あたいが傷を負わせられたのは久しぶりだよ。ここは一旦引こうかね」

 黒い渦が彼女を覆う。

 渦が消えると同時に、あの女の姿もなくなっていた。

「剣姫ぃぃぃぃ!」

 咲姫が抱きつく。

「咲姫、何があったんだ?」

「うむ、それを伝えるためにわしの宮殿に行こうでは無いか」

「了解した」

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