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16話

「それじゃあカトちゃんまたねー」

「週明け学校で会おー」

昼過ぎ、カオリとサオリは手を振り私に別れを告げた。

去っていく背中を見送って、リードで繋がっている大型犬のムギと小型犬のチョコ、そして歩けないバニラを抱えたままベンチにうなだれる。

三びきともお腹が空いているのか、元気がない。

でも、このまま帰っていいものなのか?

リンタロウの様子がおかしいから居心地が悪いのだ。

ペロペロ。

腕に抱かれているバニラが私の頬を舐める。

この子なりに慰めているのかもしれない。

「カトリーヌ様、探しました」

バニラをベンチ脇に座らせて3びきの頭や顎を撫でていると、聞きなれた声が聞こえた。

「ツルギさん!と、あと……」

「まいど、全ちゃんやで」

黒いTシャツに紺色のデニムショートパンツ姿のツルギさんとゼンちゃん。

「全ちゃん殿、ポケ○ンのチ○ちゃんみたいな挨拶やめてください」

「ふふ、ごめんなさい」

困ったようにこめかみを押さえるツルギさんと、イタズラが成功したかのように微笑むゼンちゃん。

「あの、お2人はどうして?」

「カトリーヌ様にお渡しするものがありまして」

そう言ってポケットからひとつの機械を取り出した。

「これは……」

この世界の人達みんなが持っているもの、確かスマホだ。

「これ、高価なものと聞きましたが」

リンタロウやユキ、カオリとサオリが未成年は手に入れるのが難しいと話していた。

「安心してください。これは私のお手製です」

「はぁ」

「本来であれば、これは購入する時に様々な手間が必要で、使用頻度や方法によってお金を払う必要があります。しかし全ちゃん殿が用意したものは……」

ツルギさんの説明を遮ってゼンちゃんが語る。

「ふふ、これは通話、チャットアプリでのやり取りを初めとした普通のスマホの機能が搭載されているいます。

本来であれば剣姫さんの仰った通り、追加料金を支払う必要があります。しかし!これは私が創造したもので、それらが一切かかりません!

加えてカトリーヌさん。あなたの身の回りに危険が及んだ場合、剣姫さんのスマホがけたたましく鳴ります!」

「はぁ、でもすぐにツルギさんは駆けつけられるのですか?」

「カトリーヌ様、気づいておられませんか?」

「何にですか?」

見当がつかなくて首を傾ける。

「私の能力は、鞘から剣を抜いた一瞬だけ、任意の場所に瞬間移動できるのです。それは距離を選びません。この世界であれば、地球の裏側まで跳ぶことができます」

「でも私に危険が迫ってもどこにいるのか分からなかったら駆けつけることは難しいのでは?」

「そ・こ・で!」

神様が興奮したように叫ぶ。

「あなたのスマホにはGPS機能が搭載されています!」

「じーぴーえす?」

なんのことか分からず目が点になる。

「要はカトリーヌ様の現在地がわかるのです」

「はぁ」

なんかよくわからないけど、いつでもツルギさんが助けに来てくれるという安心感があるのはわかった。

それだけで胸が温かくなる感覚がした。

でもそれと同時に疑問が浮かんだ。

「あの、どうして御2人はこんなに私の身を案じてくれるのですか?」

「まだ話していなかったのですか?」

ツルギさんに向き直り神様が尋ねる。

「はい。タイミングが掴めず」

申し訳なさそうに視線を逸らすツルギさんを尻目にゼンちゃんがため息を吐く

「カトリーヌさん、あなたの命が狙われる理由、それはあなた方が魔法と呼ぶ力にあります」

「私の魔法?」

人差し指を立てて火を灯す。

「これではありません」

「じゃあ、治癒魔法のことですか?」

「そうです。本来治癒とは時間をかけて自然と行われるもの。しかし、カトリーヌさんのその力は気持ち次第では1度だけですが、死人を甦らせることが出来ます」

「私にそんな力が……!?」

「はい。あなたの元いた世界では、治癒魔法を使えるものは少なくありませんよね?」

「はい。でも多くの人が擦り傷や切り傷を治せる程度で、私のように骨折など大きな怪我は治せません」

「それほどあなたの力は強大なのです」

「でも、亡くなった人を生き返らせるなんて」

誰もが一度は思ったはず、大切な人の命を再び甦らせることを。それを私が可能……!?」

「ですが、それは一度きりです。そこまで力を酷使した場合、見返りにあなたが命をおとすのです」

「どうしてですか……!?」

震える声。希望と絶望が同時に襲いかかる。

誰かを生き返らせることが出来る代わりに私が死ぬのだ。怖いわけが無い。

「それほどまで亡くなった者の命を吹き返すのには代償があるのです。

あなたの国を焼いた犯人、悪魔王はその力を恐れています」

「悪魔……王……」

それが私たちの敵。

「そして悪魔王を討ち滅ぼせる力を持つのが天魔王」

「天魔……王……」

「しかし、神話の時代に悪魔王は天魔王に勝利しています。天魔王は最後の力を振り絞り、悪魔王を封印しました。しかし、悪魔王も愚かではありません。自分が復活する時まで力を蓄えていたのです。そしてそれが解放されかかっています」

「あの、話が見えないのですが……」

つらつらと続く真実、でもこれのどこに私の力が必要なのだろう?

困惑の表情が出てしまったのだろう、全知全能の神様がそれを破る。

「あなたの力は、天魔王を甦らせることができるのです」

凛と静かに通った声だった。

そして私の中にある思考が支配した。

私はそのための存在?その為だけに生かされていたの?

その天魔王が生き返れば私は用無しになるわけですよね?

私の命と引き換えに世界は救える?

でも私は?私の人生はそれでおしまい?

「そんなの嫌です……!」

両の瞼から大粒の涙が溢れ出る。

「私に死ねと!?世界を救う代わりに私に死ねと言うんですね!?」

ベルもツルギさんもゼンちゃんさんも私の死を望んでいる?

そう考えるとみんなが悪魔に見えてきた。

「カトリーヌ様、そういう意味では……」

ツルギさんが言い訳じみた言葉を発する。

「聞きたくない!!!!!!!」

だっと2匹の犬のリールを離して、その場から自分でもこんなに速く走れるんだと思うくらいその場から逃げ出した。

予告

次回番外編


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