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ショートショート5月〜4回目

魔王会

作者: たかさば

 ・・・ひんよよ、ひんよよ、ひんよよ・・・ぺぽっ!!


「ちーす!」

「どうも、どうもどうも」

「あ、こんにちはー!」

「・・・うす」

「……。」

「こんちは!!」

「失礼しマ~ス!」

「(頭下げて入室)」

「へいへい、失礼、失礼…」

「は、はじめまして、ええとー?! なんかいきなり、急にここに来ることになって、その、ええとー!!」


「あ、新人さんです? ようこそ魔王会へ!! この会は現代日本から異世界転移または異世界転生して魔王になった皆さんで集まって、不定期に開催されてるものでして!!基本的に平和でほのぼのとした近況報告会?になってるんです、世界ってのはホントたくさんありましてねえ~! 皆さん頂点に立つ存在なものですから、なかなか気軽に愚痴が吐けないような状況もありまして! いつから始まったシステムなんだかイマイチはっきりしないんですけどね、新魔王が生まれたタイミングで開催されてるんです!! 今回はね、あなたがこの会のきっかけなの!! 誰がどういう思惑で開催してんのかいまだに不明なんだけど、ま、ちょっとだべってポヤポヤしてるうちに終わるんで安心してね!!」


「今回のメンバーは…これで全部かな?…ちょっと減ったか?」

「あ、一人遅れてくるって連絡はいった…ほら、壁にライン(連絡)来てる」

「先にはじめよーぜ!」

「ええと、私、初めてなんですけど、ええと、そのー?!」

「あーあー、そんなに固くならないで!!」

「気楽にすごしてりゃいいんだよ、ここは気の置けないやつらしかいないし!」

「…黙ってたっていいんだぞ」

「とりま、様子見とけば?」

「(頷いている)」

「じゃ、新人さんがいるので、まずは恒例の名前と簡単な自己紹介から~、はい、キミから右回りで!!」


「ども、橋本です。現代日本っぽい国しかない星で魔王やってまーす」

「宮前だ。一応ラノベ系のワンパターンワールドで魔王やってる」

「石川ですよ、あたしゃ魔法がある事を隠しながら魔王やってる口でしてね」

「は、はじめまして、楯です、木へんの楯って漢字で一文字苗字でー!!新米魔王で!!」

「…黒崎。ごく普通の魔王やってる。」

「(ホワイトボードにちょっと丸っこくてかわいい字、『しまおか:普通のマオウ』と書いてある)」

「司会やってる僕は、御園井みそのいで~す!わりと風前の灯火ともしび系魔王っす!!」

「加藤と申します。人類とは直接関わらないタイプの魔王です」

「佐藤…一応、ここの最年長魔王かな?」

「田中です。前回は転生者と争ってて欠席してごめんちょ♡」


「じゃ、次は近況報告ね~、はい、じゃあ…楯さんが最後になるように、黒崎君から右回りで!!」


「転生者は今のところいないが、転移者は増える一方で頭が痛い。とりあえず滅ぼして地球に送還しているが、おかしな魔法を作って勘違いしている奴が多すぎて迷惑している…」


「今年の地球からの転移者数、100人突破したらしいですよ?」

「ラノベブームもようやく落ち着いてきたと思ってたけど、まだまだかぁ」

「今のブームは創造魔法らしいですね、あれはたちが悪くて…マイルールのねじ込み……」


 ひそひそ…ブツブツ…ザワ、ザワ……。


「じゃ、次はしまおかさんどぞ~!」


「(ホワイトボードに『ハーレムでラブラブ続行中♡』と書いてある)」


「やっぱ平和に仲良くラブラブだよなあ…」

「正直エロ系に走るのは邪道だって思い込んでたけど…それもありかも?」

「私はちょっとそういうのは苦手ですけど、平和なら何よりですね…争うよりまし…そうそう……」


 ひそひそ…ブツ…ザワ、ザワ……。


「じゃ、次は僕ね!う~んとね、なんか魔力が足りないとかで別世界からちょっとヤバいやつが乗り込んできちゃって、星自体がピンチなんだよね~! 今回が最後の出席になるかも~、みんな今までありがとね!!」


「うわぁマジか…御園井さんの司会、めっちゃよかったのに!」

「最近他の世界まきこむ無謀な奴増えたよね…」

「俺の世界に転生して来たらさ、一緒にまた朝までノンジャムンジャやろうぜ!!」

「てゆっか次の司会は…いや、僕はダメだろ、今日来てないけど…あの人の方が……」


 ザワザワ…ブツブツ…ザワ、ザワ……。


「じゃ、次、加藤さ~ん!」


「うちはいよいよゴブリンが国を立ち上げました。ずいぶん人間に右耳を切り取られてましたが、なんとか今後は形勢逆転に持って行けそうですね。今後のドラマが楽しみです」


「あの討伐の印に右耳を切り取るってのは、わりかし悪趣味だよね…」

「…なぜ住み分けをして争わずに過ごせないのか」

「もういっそのこと一種類に…いや、そんなことしたら共食いが…そうだね、それもまた魅力的……」


 ぼそぼそ…ブツブツ…ザワ、ザワ……。


「次、佐藤さんお願しま~す!」


「何も変わらんなあ、そろそろ飽きてきたんで魔王を交代しようと思ってるんだけど、魔王の器になれそうなやつが全然召喚されてこなくてね、様子見をしている状態だね」


「ろくでもないやつに魔王任せるとね…ほかの世界にまで迷惑かかっちゃうからねえ」

「佐藤さんクラスの魔王はなかなか現れないんじゃない?」

「うーん、うちの新しい種族、持ってってみる? 人との相性は悪いけど…同族同士も……」


 ぺちゃくちゃ…ブツブツ…ザワ、ザワ……。


「次は…無事魔王の座を死守できた田中さんで~す!!」


「いやー、どうもどうも!! 今回はマジヤバかったねー♡まさかの破滅バンザイ系転移者でさあ、とりあえずチート活かしてやりたい事でもすればいいのに、何も関係ない一般市民に向かって人間は皆滅ぶべしとか宣っちゃってさあ!! いくら地球でクソ陰キャ扱いされたからって他の世界の人類恨んで甚振いたぶってどうすんのって感じでね?! 下手に魂残すと厄介だからさ、悪魔連合の皆さんに食べてもらったんだけどね、食中毒になっちゃってもうてんやわんやwww」


「(ホワイトボードに『しんそこおつ・・・』と書いてある)」

「なんで修復できないような拗らせ民を異世界に持って行くかね…神連合軍の考える事は本当にわからんな」

「やっぱさあ、不適合者返品システムは擁立すべきなんだよ、うん…何でもかんでもゴリ押しは……」


 ざわ…ブツブツ…ザワ、ザワ……。


「んじゃ、つぎは橋本さんお願い!」


「うちはね、ちょっと時代を逆行ブームに持って行こうとしてるんだ。SDGsブーストで一気に江戸時代までさかのぼってて! いいよー、江戸時代風!! 風俗乱れまくりで出生率上がりまくり♡堅苦しいルールを取っ払ったらわりかし平和になってね、おすすめ!!」


「まず日本風に持って行くのが難しいんだよ…彫りの深いこってりした顔と性格の民族をあっさりさせるのはまさに至難の業っていうか」

「わりと奇跡の賜物だよね、現代日本のシステム?微妙に節々でヌルイとことかさ! 魔法があったらこうはいかないと思う」

「化学は魔法が無くてこそ繁栄するもの…いや、それはオーパーツ…しかし……」


 わいわい…ざわざわ…アハハ……。


「盛り上がってるとこすんませんけど、次いいっすか?ではでは、次は宮前さん、どうぞ!」


「マルっとラノベ世界にブチこまれたからなんとなくそのまま来たんだが、どうも俺の世界観と違うので今さら困惑し始めた。急激な方向転換は崩壊につながるかもと躊躇している。血で血を洗う硬派な世界に今さらイチャイチャ甘ラブをどう入れたらいいのか見当もつかない」


「(ホワイトボードに『そこで謎の卵発見からのロリっ子爆誕→かわいいブーム到来』と書いてある)」

「ぼ、僕も今まさにそれで!!ケモミミがかわいくなくて混乱しっぱなしで!!」

「世界を変えるには魔王から…宮前さん自身がその鬼瓦のような風貌を手放してみては?…幼女も悪くない…恥ずかしくなんかないでしょ、みんなやってる……」


 ひそひそ…ぼそぼそ…クスクス……。


「はい、では次いきましょ~!!石川さんお願い!!」


「うちはいよいよ魔法の存在が隠しきれなくなってきて焦ってる。大昔にがめつい魔導士が魔力を総取りして魔法が無くなったって体にしてるんだけど、最近転生者が現れてさ、この世界には魔力があるって明言しちゃって…。やだなあ、もう文明が崩壊するの見たくないんだけど」


「もしかしたら今度は魔法を平和に分け合えるかもしれないよ?」

「ないない、絶対ない。結局人間ってのは欲深くてドツボにハマるんだ、もうさっさと魔力根こそぎ確保しといたら?」

「まずは転生者と面談だな、邪悪な匂いがしたら即消滅…いや、確かに乱暴かもしれないが……」


 ひそひそ…ブツブツ…ボソッ……。


「は~い、では最後は今回初のご参加となる楯さん、どうぞ~!」


「は、はじめまして、楯です、ええとー、僕は早食い大会に出てたらいきなり世界が暗転して!!気が付いたらまさかの『きゃん☆あたしの推しメンが全力で甘いケーキ食べさせてくるっ♡まさか身も心も太らせて美味しくいただいちゃおうって寸法じゃないでしょうねっ!?』通称:心太ところてんという乙女ゲーの世界にですね?! どうしてもプレイヤーキャラとラブラブエンドになりたくなくて、闇堕ちに逃げたらまさかの魔王化、魔王化ッ…!!! いけ好かない人間を焼き払ってケモミミでもふもふしようとしたら、まさかの剛毛!! もう、僕、僕はっ…!!!」


「ああー、そこは剛毛を焼き払って、まるはげを堪能したら? ピタピタする感じもなかなかいいよ!!」

「(ホワイトボードに『ゲームの設定は50年過ぎれば気にならなくなるYO!』と書いてある)」

「エルフとかどうかね? つるペタだけどわりと真面目で一途だし、食も細いから環境にも優しいし…ああ、確かに魔王とは相性悪いかも、でもダークエルフ……」


 わいわい、…ザワ、ザワ…、パチパチ……。


「アーン、ごめんごめんごめーん!!星滅ぼしてたら遅れちゃった!!あ、人間多め・悪魔と天使も地上で暮らしてる世界で魔王やってる三木ですー!!あ、君が新しい魔王?」


「ど、どうも、エロゲ世界の魔王になっちゃった楯です、よ、ヨロ、よろしく!!」


「近況報告、ええと人間が召喚した47歳のおっさんがホント几帳面でウザくて、魔力もないくせに変なスキル使ってうっとおしいからつぶそうと思ったの!! フルパワーで消滅試みたらまさかの邪悪な星丸ごと召喚されちゃって!! 別世界から魔力持ってこられるとは思わないじゃない?! 力の正面衝突で星が崩壊しそうになって!! もう手の施しようがなくなっちゃって、仕方ないからおっさんごと別の世界滅ぼしてきて疲労困憊よぅ…!!」


「なんだ、僕の世界を滅ぼそうとしてたのは三木さんだったんだ~! じゃあ、責任とってもらって、次からの司会役やってもらいましょう!! 正直もうさ~、存在がかなりほら、あやふやになっちゃってて!!」


「げえ!! ちょっと待って、邪悪な星って…みそのいさんの世界だったの?! あたしてっきり、魔王なりたての初心者がやらかした星だとばかり!! ワーン!! ごめんね?! あ、アアア!!! 薄くなってきた!!! まだたい焼きおごってもらったお返ししてないのにー!!」


「あはは!!気にしないで~!もしまたどこかで会ったら仲良くしてね!! じゃ、あと…頼む…わ…‥・


 し―――――――――――ん……


「ううっ、と、という事でっ!!今回の魔王会は、ここでお開きとさせていただきますぅううう!!! 次回開催時にまたお会いしましょう、ええともし私がキモいおっさんに負けた時は、司会は…塩対応の黒崎君で!!! ではでは…皆さんお達者で、…ワーン!!」


「…仕方ない、覚えておこう」

「ほーい、おつかれー」

「じゃ、また」

「じゃあね」

「は、はへ?! こ、こんな感じ?!」

「(ホワイトボードに『おつ』と書いてある)」

「では皆さん、ごきげんよう」

「わしも代替わりするかもしれんなあ、よろしく頼むよ」

「うーわ、何このカオスwww」


 ・・・ひんよよ、ひんよよ、ひんよよ・・・ぺぽっ!!

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