Episode 10 楓ちゃんとコス合わせ③
私達は、最近話題になっているジェラートのお店に向かった。
ごくごく自然に手を繋ぐ楓ちゃんは、全然意識してないないのだろうか?
私は、意識しちゃったせいか少し緊張してしまい、繋いだ手に手汗をかいてしまっていた。
お店に到着すると、ガラスケースの中に沢山の種類のジェラートが並んでいる。
私達は、それぞれ違う味のジェラートを二種類ずつ選んだ。
私は、ピスタチオとチーズケーキ味で、楓ちゃんは、黒ゴマとカシス味。
買ったジェラートは、お店の外にある席で二人で並んで食べた。
ジェラートは、めちゃくちゃ美味しい。
正直初めて食べるってレベルなのでは、ないだろうか。特にピスタチオ味は、本物のピスタチオの味と濃厚なジェラートの甘味が絶妙にマッチしていた。
◇
チラッと楓ちゃんを見るとこっちを見ている。
表情に乏しい楓ちゃんは、何を考えているのか非常に分かりにくい。
暫く目が合ったあっと、楓ちゃんは、黒ゴマジェラートをスプーンですくうとまた私の口に持ってきた。
今回は、あーんの一言も無い。
何か餌を与えられているペットの様な気分になったが、黒ゴマジェラートの味は、格別であった。
「あっ、私のも食べる?」
「…………」
楓ちゃんは、暫く私のジェラートを見つめた後にやっと答えた。
「うん……ありがと……」
私は、自分のスプーンでジェラートをすくい、楓ちゃんに食べさせてあげた。
イチャラブなカップルの様である。
これは、特に問題無いのであろうか?
女装男子の中には、いろんなタイプがいるらしいが、楓ちゃんは、どんなタイプなんだろう?
いや、その前に私は、どうなんだろう?
今まで女の子に見える努力と女の子の声を真似する努力ばかりしてきたが……
恋愛の事など殆ど考えた事が無かった。
私達は、撮影場所に決めていた公園へと向かった。