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菫ノ詩集

魔法のナイフと楽しい食事

作者: 堅香子 擬々

ノリ


ここに一本のナイフがある

そしてこのナイフを自分に突き立てた

ぐちょぐちょぐちょと聞こえる程に

ナイフをかき混ぜた

かき混ぜているとよだれが垂れ流しそうな程

美味しそうな匂いが漂ってた

頃合いです

完成です

僕は丁寧に骨を

ポキリポキリとスナックのように

折りながら

複雑なようで単純な

不思議な組み立て方で

お皿にしました

僕は丁寧に

腸、胃、肝臓、肺、心臓にあたる部位

を取り出し

皿に並べた

臓器は皿に並べるものじゃない?

もしかしたら臓器を食べる気か?

いやいやいや、そんなはずなかろう

ほれみておれ、よーくみておれ

僕はフォークでまず同じ胃を取り

見せつけた

ほれよーく見ろよ

そう、これは胃なんて

呼びにくい名前の臓器ではない

これは、ただのくいものなのだ

ほら、ここを見ろ

僕は周囲にある

血溜をスプーンで掬い

啜った

うむ、うまいうまい

ほれ、飲んでみろ

スプーンを近付けた

ほれ、これはただのシチューだ

いや、ただのではないか

とても美味しいシチューだ

へ、食べたくない?

うむむむむむむ

はぁ、なら仕方ない

仕方ない

じゃあ、僕は食事にするよ

くれぐれも邪魔にしないでね

え、食べるのかって?

ん?食べたいでしょ、

美味しそうなら

へ、臓器を食べるのか?

ああ、言ってなかったっけ

このナイフね、

魔法のナイフなんだ

それも体を美味しくする魔法!

すごいでしょ

これを作った人を

褒め称えたいでしょ

では、いただきます

僕はパクパク食べた

僕から溢れでた血は

スプーンで啜って食べた

パクパクパクパク

ズズズ

パクパクパクパク

ズズズ

パクパクパクパク

ズズズ

完食

だけど、まだお腹は空く

それもそうだ

だって自分の臓器を

魔法で美味しくして

食べてるのだから

お腹は空く

そりゃそうだ

自分の臓器

ふむ

そこの君

ほれ、怯えないで

ほれ、なにもしないよ

いや、これはただの

提案なのだけど

君の臓器を

食べさせてくれるか?

何故って?

そんな野暮なこと聞かないでよ

君が美味しそうだからだよ

ほら、怯えないで

ほら、安心して

僕は馬乗りして

ナイフを突き立てた

ぐちょぐちょぐちょ

ぐちょぐちょぐちょ

ぐちょぐちょぐちょ

ナイフでかき混ぜた

美味しそうな香りだ

頃合いか

やめてくれ

死んでしまう

やめろ

お願いだ

生きたい

悪かった

何でもするから

赦して

許して

助けて

やめて

ふむ頃合いだ

うまそうだ

僕は丁寧に骨を

ポキリポキリと

スナックのように折りながら

複雑なようで単純な

不思議な組み立て方で

皿を作り出す

ああ、うまそうだよ

ほら、君はとてもうまそうだ

君はね

幸せだよ

ほら、僕に食べられるなんて

とても幸せなんだよ

ほら、なにか言ってみせてよ

我が愛おしきお方よ


月がなく

ややふるびれた

街灯に灯される

そんな日の出来事

街灯のもとに行われた

この素敵な晩餐会を

君もしたいかい

したいなら

夜道を歩きたまえ

月がない

夜道を歩きたまえ

きっと蛍光灯に

照らされた

魔法のナイフがあるから




つづかない

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