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第15階層-1 予想外の海

第15階層へとやって来た。


てっきりフロアボスだと思ってやって来た俺たちを待っていたのは、強大なフロアボスではなく、広大な海だった。


「なんじゃこりゃ……」


さっきまでとは全く変わってしまった景色に驚きを隠すことができない。

歩くことができていた砂浜は消え、完全に真っ青な海だけが目の前には広がっていた。


「フロアボスじゃなかったんですね」

「どうやら仕掛けが変わっているらしいな」

「完全に未知の領域に来てしまったという訳なんですね……」


てっきり5の区切りでフロアボスになるのかと思っていたが、それは第2フロアまでの話だったようだ。

ダンジョンが深くなれば、その分だけ長さも増えていくということだ。


そして、フロアボスに難易度が集中しない分ダンジョン自体の難易度も上がっていると考えた方がいいだろう。

なにせ、先人たちがその文献の中に残すことができなかった階層が続いていくのだ。気を引き締めていかないといけない。


現にこの階層にしたってそうだ。

確かな陸地はもうなくなってしまったのだから。


「ここの移動は、これでするしかないみたいだな」


俺たちの目の前にある、一隻の木船を指さした。

俺たちは今、船着き場にいる。ここが広い海の中で、俺たちの唯一の足場だった。

といっても、俺とラミアとグルすけが立つだけで幅がほとんど埋まってしまうような狭さのものだ。

そして、その船着き場に一隻の船がつながっている。

自分たちで漕いで進んで行かないといけない簡易的なものだ。俺たちの足場と命はこの木の容れ物に託されることになるという訳だ。


それにしても、いったい誰がこんな船を作っておいておいたのだろうか。

こういう人工的なものを見てしまうと、いよいよこのダンジョンの制作者なんて存在にも思いを巡らせてしまう。

わざわざ、こんな海の構造にしておいて、ご丁寧に船まで準備しておくなんて、絶対楽しんでいるだろ……


「本当に陸地がなくなっちゃいましたね……」


制作者へと思いをはせていた俺に、ラミアが話しかけてきた。

考えを振り払って、改めて目の前のことに意識を戻す。


「だな。まさか本当にこんなことになるとはな」

「……でも行くしかないんですもんね」


ラミアは大きなため息をつく。


彼女はじっと前に広がる広い海を眺めている。

泳げない彼女にとって、この光景はあるいみ、どこぞのフロアボスなんかよりも強敵に見えているのかもしれない。

表情には出ていないが、彼女の中の不安も大きいだろう。さっきまではからかっていたが、このフロアを抜けるまでは、彼女のことをうまくカバーしながら進むことを考えた方がよさそうだ。


悩んでいても先に進めないので、さっそく船に乗りこんで出発の準備を始める。


「俺が舟をこいでいくことにするよ。それで、グルすけは海の中に潜って、近づいてこようとする敵を相手にしていてくれ」

「ガウッ!」

「ラミアとメラッシュは上空から何か敵が来た時には、なるべく牽制をしてほしい」

「はい」「ニャウ!」

「……ジェリーはいい感じにサポートで」


ジェリーは頭の上でブルんと返事をする。あいかわらずのんきなやつだ。


「一応、基本方針はなるべく敵とは戦いすぎない方向で行く。この足場の中じゃグルすけが唯一の戦闘要員といっても過言ではないからな。変な消費はなるべく抑えたい」

「私が不甲斐ないばかりにすみません……」

「いいって、純粋に相性が悪かっただけだ」


「ガウッ!」


グルすけも海から顔を出してフォローしている。

その口にはすでにゲッスンを咥えている。

いや、いくら何でも仕事が早すぎないだろうか……


「今はラミア1人じゃないんだし、俺たちでサポートすれば何とかなるさ」

「……そうですね。ありがとうございます」


ラミアは俺たちのことを見渡すと、ようやくいつもの余裕な表情へと戻っていった。

彼女の中で、俺たちの存在が安心できるものにでもなるのならば嬉しい限りだ。


「ちなみに、船酔いとかは大丈夫か……?」

「多分……あまり船に乗ったことがないのでよくわからないです」

「まじか」


姫様の警護をしていたというのに、なんだかすごい大きな欠点なような気もするが大丈夫だったのだろうか。


「姫様は基本的に船に乗って移動なんてありませんでしたから」


ラミアは苦笑いをしている。

まあ、陸地戦に関してはラミアはかなりの強さだし、泳げなったとしても十分すぎる逸材だったのだろうな。


「まあ、あれだ。酔った時は頑張って耐えてくれ」

「……頑張ります」


正直それしか言えないのが申し訳ないが、永遠にこの海が続くわけではない。

ここさえ乗り越えてしまえばいいだけの話だ。


「さあ、出発だ」


俺は櫂を使って、船を動かし始める。

船はゆっくりと動き始め、やがて俺たちを広大な海の真ん中へと運び出すのであった。

お読みくださりありがとうございます!


ダンジョンの構造も複雑になってきました。

泳いでいく時は、ジェリーは羽ばたいて、メラッシュはリンドにつかまります。


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