第6階層-1 知っておくべきことと知らなかったこと
第6階層へとやって来た。
「おいおい、なんだよこれは」
到着したと同時に、思わず俺は声を出してしまった。目の前に広がっていた風景が、これまで見てきたものと全く別のものだったのだ。
第6階層に広がっていたのは、第5階層までにあった岩壁から、緑の木々が生い茂る森の景色だった。密閉した生臭い空間から一変して、風通しの良いさわやかな雰囲気があたりに広がっていた。
とても同じダンジョン内とは思えなかった。
「たった1つ階層が変わっただけで、こんなにも雰囲気が変わるものなのか」
「まあ、フロアが変わりましたからね。話には聞いていましたが、ここまでとは……」
予想外の風景にあたりをキョロキョロしてしまっている俺とは反対にラミアはあまり驚いている様子ではなかった。俺と同じようにあたりを見回しているものの、そこには落ち着きがちゃんと残されていた。
「ラミアは何か知っているのか?」
「ええ、無限迷宮のこの辺のことはまだ古い書物に記述がありましたから、なんとなくは知っています」
「古い書物?」
「ええ。王国内に出回るものではありませんが、古代バルダット王国の書物の中に、ここの浅い階層については記載された書物があるんです」
「ふ、ふーん。そうなのか」
まさか、このダンジョンに関して書かれていた書物があったとは。ミゲルはそんなこと教えてくれなかったぞ。
冷静に考えてみれば、古代からずっと存在しているダンジョンだ。攻略に乗り出す猛者が何人かいたって別に不思議なことではない。
ここでふとした疑問を抱く。
「でもここって、1度入ったら出てくることができないんじゃないのか? どうやって書物なんて残るんだよ?」
「それは、ここの封印が施されたのは、300年くらい前の話ですからね。それより前の人達が書き残していったものなのでしょう」
「そうなのか?!」
知らなかった情報の連続に思わず声を大きく上げてしまう。ミゲルのやつ、結構大事な情報はつかみ切れていなかったのだろうか。それとも俺のためにわざと教えないでいたのか。
俺の様子を見ていたラミアが1つため息をついた。
「もしかして、本当に何も知らずに突っ込んできたのですか?」
「ま、まあな」
「よく、それで生き抜いて来れましたね……」
ラミアは驚きというか、呆れたような表情をしていたが、そんなもの俺にされても困る。
正直俺は、この無限迷宮どころか、バルダット王国のことに関しても深く知っているわけではない。
1年前に異世界転生でやって来た俺はずっとバルト攻略を使命として打ち込んだ。そして、バルト攻略の後は、暇もないくらいにいろんな貴族たちの相手をさせられていた。
正直本を読む余裕なんてほとんどなかった。
そんな多忙な俺に対して、世界の教養を育めというのがおかしいことだ。
うん。そうだ、そうだ。
「なんか、必死に自分に言い訳してません?」
ラミアのこれまた鋭い質問が飛んでくる。独り言など言っていないはずなんだけどな。
「なんでわかるんだよ」
「いえ、なんかそんな表情をしていたので」
「まじか」
第5階層で出会ったときもそうだったが、ラミアは言葉以上のもので俺のことを見透かしているような気がする。
人間のステータスは見ることができないので正確にはわからないが、おそらくスキルではなく、敏感に人の心を感じ取れるのだと思う。複雑な事情を持っているようだし、瞬時に人の裏を読み取らなければいけない状況に身を置かれていたのだろう。
まあ、ここにいるのは俺とラミアだけだし、俺の心の中なんてどれだけ読まれても気にしないという訳だが。
「まあ、俺はグルすけやメラッシュと一緒に戦いはできるけど、この辺のことは全く知らないからよろしく頼むよ」
「しょうがないですね。なんて偉そうなこと言ってますが、私もそんなに深くまで知っているわけではないですよ」
「それでも助かるさ」
「わかりました」と答えてくれるラミアの表情は前の階層の時よりもさらに柔らかくなっていた。
笑う時に手を口元に持ってくる仕草が彼女の魅力を高めていた。ソフィーの豪胆さとはまた違う上品な魅力だ。
あらためて第6階層の探索を始めることにする。
雰囲気は一変してしまったが、特に環境の変化による害はなさそうだ。むしろ辛気臭かったさっきまでと比べて随分と空気がおいしく鳴ったようにも感じる。
グルすけとメラッシュも特に違和感なく適応できているので問題なさそうだ。
次の階層への階段と、新しく遭遇する魔物を追い求めてあるき進める。
「うごおおおおおおおお!」
しばらく歩きまわっていると、木々の向こうから地響きのような唸り声が突然聞こえてきた。
どうやら、新しい魔物のお出ましのようだ。
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前情報なしにレトロゲームをプレイしてみて、詰むタイプでした。
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