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あとがきに代えて~法を取ったシッダールタの話と本作誕生について~

本編をご愛読いただきありがとうございました。

あとがきに代えて、史実によるシッダールタと本作誕生について書いています。



あとがきに代えて




 「仏教聖典」、または仏教研究の諸説から、仏陀の生存時期は紀元前4世紀頃から6世紀頃と幅広い。


 また、シッダールタはよく伝えられるようにカピラ国の王子ではなく、コーサラ国の一部、カピラ地方の豪族の息子だった(これも諸説あるが)とも言われている。


 その生涯、伝えられるところによれば、十六歳で従姉妹であるヤショダラ姫と結婚し、息子をもうけている。

(名はラーフラ。のちに二人とも仏陀に帰依する。)



 しかし、現世を憂うシッダールタは、妻子を置いて二十九歳で出家する。


 当時のインドは修行所を多く抱えていた。シッダールタは、様々な師に付き修行をするが、思うような成果を上げられずにいた。


 「いかに苦行をしてこの身を痛めても、人の苦しみから逃れる術が見つからない」

 と感じた仏陀は菩提樹の下で瞑想に入る。


 長い瞑想で自らの欲や魔の誘いに打ち勝つうちに、全ての真理を知り、悟ったとされる。シッダールタ三十五歳のことである。


 以来、これより彼は「目覚めた人」仏陀、と呼ばれるようになった。


 ※ブッダというのはサンスクリット語のBuddhaのこと。

  「目覚めた人、心理を悟った人」等と訳される。



 その後、たくさんの弟子ととともに印度を渡り歩き、王国のほとんどは仏陀に帰依する。天界で暴れまわっていた阿修羅が帰依したとの物語も残されている。


 クシナガラに辿り着いたのは八十歳の時。仏陀はきのこか何かに中って腹をこわし、沙羅双樹の下で死に至ったと伝えられている。




 本作のシッダールタは、史実の伝えるところの仏陀より早く出家し、悟りを得たとしている。

 二十歳で出家し、三十歳で悟り、真理を会得している。


 剣を取った方が、早く出家することになっているのは、面白いところかもしれない。それほど、太く短い武人としての生涯を駈け抜けたということだろうか。


 史実〈とされているもの〉によれば、シッダールタは妻子を捨てて、修行の道に入る。当時、出家は崇高なものと言われていたとしても、嫁の立場から言えば、そりゃないよな。と思う。



 シッダールタは本当のところ、どんな人だったんだろうか? 生れてすぐ七歩歩いて「天上天下唯我独尊」と言ったとか、そういう話はないにしても。



 私は語られているよりも、より人間的で、野心家で、美しい人に恋する彼を書きたかった。


 そして世のため人のためでなく、もっと個人的な願い、例えば愛する人のために絶対的な存在になる。そんな姿を書きたかった。


 こうして生まれたのが本作だ。


 彼は幼少の頃に決めつけられたルートを嫌い、思うまま生きようともがく。美しい戦士に溺れるように恋をし、欲情するシッダールタ。



 阿修羅というのは、インド宗教の悪鬼神であり、戦神(いくさがみ)である。サンスクリット語ではアスラと呼ばれる。


 インドには時期を移して生れ融合した宗教が多々あるため複雑だ。多くの神話の中で、元々戦神だった阿修羅が宗教や時代によって悪鬼神とされた。


 ※この物語も実に興味深いが、ここでは割愛する。


 そして仏教においては、仏陀に帰依したことで再び善処に返り咲き、仏法の守護者となっている。



 阿修羅と仏陀の関りは意外に深い。沙羅双樹下の涅槃図で、阿修羅がその場にいたという絵や彫像は実際に多く存在している。



 シッダールタが恋する相手として、阿修羅ほど相応しい人はいなかった。戦いの神でありながら、華奢でしなやかな肢体を持つ美少女。


 ※阿修羅は、宗教、書物によって男性とも女性とも書かれていて、両性という記述もある。所謂「神」は性別がないともされている。



 二人は出会い、惹かれあって堕ちていく。その姿は激しく、美しく、そして切ない。



 私は結局、揺るぎない愛、唯一無二の愛を書きたかったのかな。と思う。そんなものは存在しないのかもしれないけど。だからこそ、書きたかったのだろう。


 彼らはそんな私の願いを健気に貫いてくれた。


 シッダールタには、その愛のために仏陀になって欲しかった。



 本編最後の一文は、シッダールタがちゃんと仏陀としての仕事したんだよ、というアピール。動機は不純? であっても、ちゃんと後世に伝えるべく、熱心に布教活動したことを伝えたかった。



 そしてもちろん、どんな時も仏陀、いや、シッダールタは阿修羅のことを忘れてはいなかった。ということもここで付け加えておこう。




 ありがとうございました。




緋桜 流



【お礼とお知らせ】


「流沙のごとく~仏陀聖王戦記異聞」を最後まで読んでくださってありがとうございます!


歴史ファンタジー、戦記の名を騙った、ベッタベタな恋愛ストーリーだった!

と思われた方もいるかもしれません。


読者様の満足いく最期だったかわかりませんが、心血を注いだ物語であったことだけは嘘偽りありません。

感想、不満等ございましたら、遠慮なくお知らせください。

評価も思うように入れていただければ喜びます。



さて、ここからはスピンオフのお知らせです。


本作ではとことんシリアスで、重い道のりを歩かせてしまったキャラたち。

明るく楽しいストーリーで彼らの労に報います!


誰得かわかりませんが、 少なくとも作者の精神衛生上必要です!


その1 悟りの後は二人で……  ~流沙のごとく・スピンオフ➀~

    

シッダールタが悟り、仏陀となるまでのことを書きます。


つまり、本作でゴソッと抜けてる部分ですね。


コメディはあまり自信ないのですが、彼らを楽しませたい。

そして読者の皆様にはほっこりしていただきたいと思っています。

    

おそらく二話くらいの短編になると思います。


その2 リュージュの憂鬱な日々 ~流沙のごとく・スピンオフ➁~


流沙のごとくの貴重なキャラ、リュージュが主人公。


これまた阿修羅の死後の彼を追います。

もちろん、シッダールタや阿修羅も登場します。


こちらも一話もしくは二話の短編です。



このままシリアスで終わらせたいと思われる方は、無理にとは言いませんが、

どうぞ幸せな彼らの姿も見てやってください。


内緒ですが、次作の下地にもなる予定です……。

(ガッツリ宣伝モード)



それでは、ありがとうございました!


また書きます!

   


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― 新着の感想 ―
[良い点] 一話から拝読させて頂きました。素晴らしい大作ですね。 戦闘シーンと恋愛シーンのバランスが絶妙で、登場人物の動き、振る舞いから感情が読み取れるような描写も非常に巧みで、とにかく惹き込まれまし…
2020/06/19 19:21 退会済み
管理
[一言] あぁ……終わってしまった……。 涙目になりながら呟いてしまいました。 もう一度初めから、通して読みます。 スピンオフ、楽しみに待ちます。
[良い点] 古代インドという舞台で、戦記物であり恋愛物という物語は初めてでした。 最後まで全力疾走で躍動感溢れ、本当に面白かったです。 剣を取ったシッダールタが仏陀となったのは、阿修羅を救うためだった…
感想一覧
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